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ブループリントシンデレラ
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日本最大級の大型ドームのバックヤード。開演が間近に迫ったコンサートの準備に追われるスタッフ達がざわざわと行き来する中に、一際目を引く輝きを放つ青年がいた。
ふんわりと艶やかなプラチナブロンドは、人工的には出せない美しい色味。抜けるような白肌も、宝石のようなアイスブルーの瞳も、望んだ所で決して得られるものでは無い。それは内側から発光しているかのような透明感だった。
現実に生きているのがにわかに信じがたい美しい容姿には、肩章と腕章、そして繊細な細工をあしらった、貴族か王族かといった煌びやかな衣装がよく映える。
壁に背を預ける彼が眺めるスマートフォンの画面には、SNSのタイムラインが映し出されている。「#REVERSESpringtour」とタグ付けされた投稿には、物販の戦利品や、コンサート会場の写真、開演を心待ちにするファンの楽しそうな声が、どこまでスクロールしても途切れる事なく集められていた。
睫毛の長い目元が嬉しそうに細められる。そんな彼に、慌てた様子の足音が駆け寄ってきた。
「ユキ君助けて下さい! 影縫君が出たくないって駄々こねて隅っこで動かなくなっちゃったんです!!」
縋り付いてくるスタッフの声を聞きつけ、スマホから顔を上げる。
「ええ? アイツまたやってんの?」
「そうなんです何とかして下さい! 本番までもう時間ないのに!!」
「ウケる~」
「笑ってる場合じゃないですって! もうとにかくこっち来て下さいッ!!」
ライブTシャツとジーンズ姿の女性に手を引かれ、苦笑しながら小走りで相方の下へと向かっていく。
一色紅率いるK-productは数年で急成長を見せ、中でも水方ユキと朔宮影縫のユニット「REVERSE」は、事務所どころか国内を代表するトップユニットとなった。特にユキの活躍たるや凄まじく、その奇跡のルックスから「国民の王子」と称され、写真集が海外でも発売されたり、外資系ブランドのイメージモデルに起用されたりと、活躍の幅は日本国内のみに留まらない。
あの日、あの時、紅と一緒に決めた通りの未来が、今、現実というスクリーンに映し出されていた。
隅っこの方で一人お葬式をしている黒髪に、ユキは怯む事なく近づいていく。
「ほら影縫立って立って」
「うぅ……」
「終わったら一緒にゲームしよ。なっ?」
「……子供じゃないんだからゲームで機嫌取れると思うなよ……」
「はいはい分かった分かった。ほら大人しくコッチ来ましょうね~」
「最近あしらい方雑だぞお前……」
「だって影縫のこれもう様式美じゃん。いちいち真面目に心配してられないでしょ」
隣同士に並んでイヤモニとマイクを身に着ける。そんな二人の周りを数人のスタッフが取り囲み、髪の一束、装飾の一つに至るまで、最後の最後まで入念に手直しが施される。やがて皆が舞台装置から離れ、後は二人でステージに出て行くだけという状態になった時だ。隣に立つ気配が変わった。くすりと笑いを零すユキ。どんなにグズった所で最後にはどうせスイッチを入れて舞台に立つくせに、毎度毎回世話の焼ける相方である。
視線が交差して、手のひら同士が無言で打ち付けられた。『ユキは俺が支えるから』腹の決まった影縫から送られてくる心強さをお守りに、舞台へとせり上がっていく。
視界が開けていった先では、360度のコンサートホールを観客が埋め尽くし、紫と黄色のサイリウムが煌めいていた。それはさながら満点の星空のようで、ユキはこの光景が大好きだった。
ホールに満ちた喜びのエネルギーを肺いっぱいに吸い込んで、両手を広げてとびっきりの笑顔を見せる。
「迎えに来たよ~~~お姫様~~~~~~~ッ!!」
ぐるりと回って全方位にライブの開演を告げた瞬間、一際大きな歓声が爆発した。真っ白な容姿はスポットライトでさらに輝きを増し、瞳はきらきらと光を反射して、大観衆を前にステージに立つユキは、まるで水を得た魚のようだった。ユキの放ったときめきのエネルギーに観客が共鳴を起こし、頬を染め、息を呑み、涙ぐみ、瞳を輝かせる。その景色を目にした時、ユキの胸の中で炎が燃え上がり、魂はビリビリと喜びに打ち震えるのだ。
(ああ最高に幸せ!! 神様ありがとう!!)
渦巻く歓喜を全身で噛み締めて、一曲目の歌い出しを響かせた。
ふんわりと艶やかなプラチナブロンドは、人工的には出せない美しい色味。抜けるような白肌も、宝石のようなアイスブルーの瞳も、望んだ所で決して得られるものでは無い。それは内側から発光しているかのような透明感だった。
現実に生きているのがにわかに信じがたい美しい容姿には、肩章と腕章、そして繊細な細工をあしらった、貴族か王族かといった煌びやかな衣装がよく映える。
壁に背を預ける彼が眺めるスマートフォンの画面には、SNSのタイムラインが映し出されている。「#REVERSESpringtour」とタグ付けされた投稿には、物販の戦利品や、コンサート会場の写真、開演を心待ちにするファンの楽しそうな声が、どこまでスクロールしても途切れる事なく集められていた。
睫毛の長い目元が嬉しそうに細められる。そんな彼に、慌てた様子の足音が駆け寄ってきた。
「ユキ君助けて下さい! 影縫君が出たくないって駄々こねて隅っこで動かなくなっちゃったんです!!」
縋り付いてくるスタッフの声を聞きつけ、スマホから顔を上げる。
「ええ? アイツまたやってんの?」
「そうなんです何とかして下さい! 本番までもう時間ないのに!!」
「ウケる~」
「笑ってる場合じゃないですって! もうとにかくこっち来て下さいッ!!」
ライブTシャツとジーンズ姿の女性に手を引かれ、苦笑しながら小走りで相方の下へと向かっていく。
一色紅率いるK-productは数年で急成長を見せ、中でも水方ユキと朔宮影縫のユニット「REVERSE」は、事務所どころか国内を代表するトップユニットとなった。特にユキの活躍たるや凄まじく、その奇跡のルックスから「国民の王子」と称され、写真集が海外でも発売されたり、外資系ブランドのイメージモデルに起用されたりと、活躍の幅は日本国内のみに留まらない。
あの日、あの時、紅と一緒に決めた通りの未来が、今、現実というスクリーンに映し出されていた。
隅っこの方で一人お葬式をしている黒髪に、ユキは怯む事なく近づいていく。
「ほら影縫立って立って」
「うぅ……」
「終わったら一緒にゲームしよ。なっ?」
「……子供じゃないんだからゲームで機嫌取れると思うなよ……」
「はいはい分かった分かった。ほら大人しくコッチ来ましょうね~」
「最近あしらい方雑だぞお前……」
「だって影縫のこれもう様式美じゃん。いちいち真面目に心配してられないでしょ」
隣同士に並んでイヤモニとマイクを身に着ける。そんな二人の周りを数人のスタッフが取り囲み、髪の一束、装飾の一つに至るまで、最後の最後まで入念に手直しが施される。やがて皆が舞台装置から離れ、後は二人でステージに出て行くだけという状態になった時だ。隣に立つ気配が変わった。くすりと笑いを零すユキ。どんなにグズった所で最後にはどうせスイッチを入れて舞台に立つくせに、毎度毎回世話の焼ける相方である。
視線が交差して、手のひら同士が無言で打ち付けられた。『ユキは俺が支えるから』腹の決まった影縫から送られてくる心強さをお守りに、舞台へとせり上がっていく。
視界が開けていった先では、360度のコンサートホールを観客が埋め尽くし、紫と黄色のサイリウムが煌めいていた。それはさながら満点の星空のようで、ユキはこの光景が大好きだった。
ホールに満ちた喜びのエネルギーを肺いっぱいに吸い込んで、両手を広げてとびっきりの笑顔を見せる。
「迎えに来たよ~~~お姫様~~~~~~~ッ!!」
ぐるりと回って全方位にライブの開演を告げた瞬間、一際大きな歓声が爆発した。真っ白な容姿はスポットライトでさらに輝きを増し、瞳はきらきらと光を反射して、大観衆を前にステージに立つユキは、まるで水を得た魚のようだった。ユキの放ったときめきのエネルギーに観客が共鳴を起こし、頬を染め、息を呑み、涙ぐみ、瞳を輝かせる。その景色を目にした時、ユキの胸の中で炎が燃え上がり、魂はビリビリと喜びに打ち震えるのだ。
(ああ最高に幸せ!! 神様ありがとう!!)
渦巻く歓喜を全身で噛み締めて、一曲目の歌い出しを響かせた。
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とても、元気になるお話でした。また、ユキくんと、紅さんに、会いたいです。