未実装のラスボス達が仲間になりました。

ながワサビ64

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一章

008

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 ロス・マオラ城は12層から成る巨大な建造物で、そのうちの6層は各魔王達の〝世界〟がある。

 宝物庫、貯蔵庫、最下層は捕虜の収容所、そして現在修太郎達がいるこの最上部には客間(魔王達の簡単な自室となっている)や王の間、作戦室が存在する。

 修太郎は紳士服エルロードに連れられ、ロス・マオラ城の施設説明を受けていた。そして現在、二人はおどろおどろしい雰囲気漂う地下の牢獄へと来ている。

「――そしてここは我々でもあまり来ない〝収容所〟です。主に我々の〝世界〟で悪さをしていた存在を永久に捕らえ、自らの愚行を未来永劫悔い改めさせる場所です」

 満面の笑顔を貼り付け淀みなくそう語るエルロードに、修太郎はかなり引きながらもその薄暗い収容所を恐る恐る進む。

 修太郎はまだ入っていないが、エルロードの言う〝世界〟は彼等が統治する世界そのままの意味であり、eternalに存在する下手なエリアよりさらに広い空間がそこには存在する。

 本来であれば終盤も終盤、プレイヤー達がロス・マオラ城を攻略する際、その世界一つ一つを突破してゆき、最後に序列一位のエルロードを撃破することで、エリア完全クリアとなる仕組みだったものだ。

 エルロードのいう悪さとは、同族殺し、親殺し、子殺し、共食い、反逆などの、特に非道な行為を働いたmobを指している。

(悪さをした……つまみ食いとか?)

 実のところ、エルロードの言う悪さと、修太郎が想像する悪さのレベルはかなりかけ離れているのだが、お互い知る由もない。

 収容所は簡素な牢獄のようで、中には今にも襲い掛かってきそうな凶暴なmobが涎を垂らし、目を血走らせて暴れている。

 収容所内は興奮したmob達の威嚇の大合唱がはじまり、鉄格子の金属音が鳴り響く。
 修太郎は怯えた様子で身を縮めた。

「彼等は凶暴ながらかなり強い力を持っているため飼い慣らす方法を模索していましたが――主様に危険が及ぶ可能性がありますし、今夜、全て処分致します」

 エルロードは淡々とそう述べ「さあ、次はこちらへどうぞ」と、収容所の外へ手招きする。修太郎は一度振り返った後、収容所を後にした。

「では主様、部屋はこちらをお使いください。何もない部屋ですが、主様専用の階層も作らせておりますゆえ」

「あ、え、どうも……」

 最後に修太郎が通されたのは、海外の豪華な家の一室を引き延ばしたかのような広々とした部屋だった。あるのは豪奢なベッド、テーブル、椅子、そして廊下と同じ絨毯。

 扉が閉められ、足音が遠くへ行くのを確認した修太郎は大きなため息と共にベッドに腰をかけ、胸に抱いたスライム――プニ夫を愛でる。

「君が唯一の癒しだよプニ夫」

 現状、呼び出せるmobはスライム一種類だけだったし、なにしろこの建物には6人の化け物が在住する。本来であればダンジョンを堅固にするためスライムを50から配置する所ではあったが、その必要性が感じられずプニ夫だけに留まっている。

 色が青だから男子トイレの色から連想し、プニ〝夫〟と名付けた修太郎だったが、スライムのmob説明から引用するに、単細胞生物であるため彼等に性別は無い。

 修太郎は何気なくスキル概要からダンジョンメニューを操作し、プニ夫を召喚したことで追加された〝育成〟と〝合成〟を開いた。

 育成では、経験値やステータス、スキルなどを稀に得る事ができる。

 合成では二体以上のmobを選択し、どちらかをベースにした強化、もしくは全く新しいmobを錬成することができる。

(合成するmobもいないからなぁ)

 博打要素もあるが、効率良く強いmobを得るなら、最初に手に入るスライムと次に追加される何かしらを合成し個体値の優秀なmobを引き当て育成するのが良いとされる。

 とはいえ、ポイントを使いすぎてしまうと罠やダンジョンの拡張が疎かになってしまうため、何事もバランスが大事である。しかし修太郎は、この強固な要塞と警備、そして王達が居れば罠も拡張も不要と考え、現在あるすべてのポイントをプニ夫に費やす事に決めたのだった。

 なぜならプニ夫は、修太郎に唯一癒しを与えてくれる存在だったから。

 気を遣ってもらっているとはいえ、少し前まで中学生だった修太郎にとって、見知らぬ大人ばかりのこの空間はかなり息苦しく感じていた。

 育成を選ぶ前に、ひとまず合成を選ぶ。
 本来ならば他のmobを召喚していないため選択肢は0のはずなのだが――

「あ、収容所のmobは合成になら使えるのか」

 そこにはご丁寧に〝収容中〟という文字が書き加えられた多種多様なmob達が並んでおり、2、3度スクロールした限りでは終わりが見えないほどの数が存在していた。

(こんなに居たのか。でも今晩全員殺されちゃうっていってたよね)

 並んでいるmobの強さはまばらでレベル80~110から居るが、レベル120の魔王達からしてみれば、言葉の膨張なくゾウとミジンコくらいの差がある。

 この世にあるゲームには、僅かなレベル差によって恐ろしいほどステータスに差が生まれてしまうものがある。特にレベルが上がるにつれ膨大な経験値量がさらに倍になってゆくゲームなどがそれに当たるが、このeternalにおけるレベル格差がまさにそれだった。

 レベル差が5ほどあれば、ステータスが一桁も変わってくるのである。

(勿体ないなーなんて)

 彼が処分すると言ったからには、間違いなくmob達は処分されるのだろう――と、修太郎はエルロードの冷徹な顔を思い出しながら考えていた。

 合成はベースを決め、他のmobを与える事で見た目をそのままに強化する事ができる。更に、最初の合成は召喚の時同様に初回ボーナスでポイント無料と書いてあった。

「処分されちゃうくらいなら……」

 どうかプニ夫と一緒になって、生まれ変わってくれ――と、修太郎はプニ夫をベースに置き、収容所に囚われた〝万〟を超えるmob達を一括選択して、そのまま合成開始の項目をタップ。

 次の瞬間、プニ夫は眩い光に包まれた。
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