未実装のラスボス達が仲間になりました。

ながワサビ64

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一章

009

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デスゲーム9

 一方その頃、王の間に集まった六人の魔王は、ぽっと出で自分達の上に君臨したあのひ弱な少年の処遇についてを話していた。

 王の間は、中心に空いた巨大な穴を囲む形で材質の異なる六つの玉座が置かれた部屋で、青髪の執事服エルロード白い少女バンピー黒髪の騎士セオドールに加え、およそ三メートルを超える体躯の〝第三位ガララス〟、銀色の髪の美女〝第四位シルヴィア〟、そして玉座に前のめりに座って興味津々な様子の金髪騎士〝第六位バートランド〟が集った。

 金髪の騎士バートランドが口を開く。

「除け者なんて釣れないな。ガララスとシルヴィアこの二人はまだしも、僕は肯定派なのに」

「バート。お前は余計な事を口走るから呼ばなかったんだ」

 軽薄そうに笑う金髪の騎士バートランドに、両眼を瞑って腕組みをするセオドールが釘を刺す。

 抗う術なく支配下に置かれたとはいえ、彼等全員が、各種族の頂点に君臨している王。現状を受け止め忠誠を誓った者もいれば、受け入れられず沈黙する者もいた。

「認められない。私は」

 銀髪の美女シルヴィアが静かに言う。
 誰もが息を飲むほどの美貌と、まるで獣のような鋭い眼光、犬歯が特徴的だった。

 彼女は誇り高い戦士で、誰よりも実力主義な所があった。だから実力の拮抗する他の五人は認めていたし、自分の能力の相性を理解していたから第四位の位置付けにも納得していた。

 しかし、圧倒的な力を誇示されたわけでも
、ましてや剣を交えたわけでもない者を手放しで認めるなど、彼女にはできなかった。

 エルロードは困ったように口を開く。

「残念ながら我々の心情は関係ありません。彼は無自覚ながら我々を支配しているのが現状。魔王としての威厳は分かりますが、認めて忠誠を誓う他ないと考えますが?」

 エルロードの意見に口淀むシルヴィア。
 何かに耐えるように下唇を噛む。

「そんな簡単に決められない」

「堅物だなぁ」 

 バートランドが冷やかすと、シルヴィアは鬼のような形相で十本の光の剣を召喚した。

 ジジジと白雷を纏いしその剣は、剣先をバートランドに向ける形でシルヴィアの周囲を浮遊しており、彼女が放つ銀色のオーラも相まって、他の五人にも緊張が走る。

 場は一時騒然となったが、白い少女バンピーの一言で再び沈黙が訪れる。

「もし私たちが外界へ出られるとしたら?」

 彼等は籠の中の王だ。
 自分の世界と城へは行き来できても、プレイヤー達のいる外界への出口は、死門という堅固な扉によって塞がれたまま――外界進出は、魔王達の長年の悲願でもあったから。

 それを聞いた、特にガララスとバートランドは「おぉ……!」と歓喜の声を漏らす。

 シルヴィアは不機嫌そうに剣を消すと玉座に深々と座り、押し黙る。

「外界への出入りは魅力的ではないか! 数百年の退屈に終止符が打てるとあれば、我も忠誠を誓いにゆくとするか」

「アンタは単に利用したいだけじゃねえか」

 その巨躯をゆっくり起こし、豪快な笑みを浮かべるガララス。バートランドもそれに続き、玉座から立ち上がった。

「話は終わっていない。座れ」

 目を伏せたまま、セオドールが静かに言う。
 ガララスは顎髭に手を当て、興味深そうに黒髪の騎士を見下ろした。

「もしや、我に言ったのか?」
「そうだ。座れと言っている」
「第五位風情が、思いあがるなよ」

 二人の体からそれぞれ黒と赤のオーラが立ち込めると、建物が悲鳴を上げるようにビキビキと音を立てて揺れ始める。

 それを見て愉快そうに笑うバートランドと、いつもの光景に頭を悩ませるエルロード――しかしここで、六人全員が何かを感じ取り、同じ方向に視線を向ける。

 修太郎の部屋の方角だった。


 * * * *


 光がおさまった時、修太郎の手中に居たプニ夫は――プニ夫のままだった。

 修太郎がスライムをスライムのままで運用したいがためにベースをプニ夫に設定した結果、形には変化が起こっていないものの、見た目には大きな変化が見られた。

 最初は鮮やかな青色の液体だったプニ夫は、様々な色を混ぜ合わせて完成した黒のような、どこか禍々しい物体に変化していた。 とはいえそれでも手触りは変わらないし、修太郎の中では相変わらずの愛玩具である。撫でられるプニ夫は変わらず嬉しそうに体を震わせている。

 実際には別の所に、恐ろしい変化が起こっていたのだが――

「主様! 何事ですか?!」

 珍しく動揺した様子で入ってくるエルロードと、それに続いて五人が揃って入ってきた。
 そして修太郎の手の中にあるその邪悪なスライムを見て、一気に警戒心を強める。

「……主様、ソレは?」

「ああ、さっき召喚したプニ夫だよ? 合成したら色が変わっちゃったけど」

「!!!!」

 〝合成〟という言葉を聞いて、全員の背中に冷や汗が流れる。当人の修太郎は何気なく使ったそのmob合成は、六人の魔王を凍り付かせるに十分な脅威として突きつけられたのだ。

「し、失礼しました。大人数で押しかけてしまい……」

「え。ここは皆の家なんだから遠慮なんてしないでよ。僕が居候なんだし」

 そう言って無邪気に笑う修太郎。

 邪悪なスライムと戯れる主の部屋から足早に退出し、再び王の間に集った六人――中でもシルヴィアは額に汗を流しながら、体を震わせていた。

「収容所のmob達の気配が全て消えたのを、皆、察しましたね? 大きな存在に生まれ変わる気配も」

 焦るエルロードの言葉に、全員が無言で頷く。

「驚いた……合成とはつまり、眷属や捕虜を掛け合わせて新しい存在を生み出す禁忌のような力と解釈した」

「それに、収容所の奴等は理性も意思もないから同意したとも思えない。つまり眷属側には拒否権なく執行する強制力があるって事だよなァ? は、ははは……」

 ガララスとバートランドも、自身が生まれてから今日まで感じた事のない〝死の恐怖〟を感じており、牙を抜かれた獣のように、先ほどまでの威勢は消え失せる。

 二人は〝勝てそうにない〟相手には会っているが〝戦いたくない〟と思ったのは今回が初めての経験だった。

 正確には、彼等には戦う権利すらないのだが。
 
「我々の力では主様に傷一つ付けられない上に、主様の気分次第で〝あのスライムに我々が合成される可能性〟も、十分にあります――単なる糧として」

 勿論、修太郎の意図する所では無かったが、魔王達から見た修太郎は、眷属達からの攻撃完全無効化に加え、強制的に別mobへの合成材料にできる悪魔の力を所持していると同義であった。

 あらゆるベクトルからの攻撃に絶対的な防御手段を持つ魔王達が、初めて心の芯から感じた恐怖は、築き上げたプライドや尊厳をへし折るに十分な威力だった。

「攻撃も通らず、防御も不可能――私が培ってきた武力でも歯が立たないのなら、私は迷わず主様に忠誠を誓おう」

 シルヴィアは狼の耳を力なく垂らす。

 修太郎を利用しようと画策したガララスや、心の中では全く信用していなかったバートランドも今回ばかりは素直に同意した。

 一度の恐怖で忠誠を誓う。
 中途半端に実力のある者ならそれを臆病だと揶揄しただろう。しかしここに集いしは百戦錬磨、生ける伝説達。見ている次元が違う。

 かくして、修太郎はスライムをたまたま合成強化してみせただけで、魔王六人を完全に支配下に置いたのだった。
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