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8話 なに?スライムが進化じゃと?

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 トイレとゴミ箱設置から少し経った。

 相変わらず道に粗相する者はいるものの、その絶対数は確実に減っていた。エブリがこだわったトイレの快適さを知った者は、用がなくとも座りに行くほどだった。

 トイレはゴーレムの材質で汚れにくく、それでいて常にスライムが便座やその周りも綺麗にするため清潔が保たれている。そして便座も老若男女が座りやすい形を追求し、用を足せば「お湯による洗浄」が行われ、そこに快楽を覚える者も多くいる。

(しかしこれは新発見じゃな……)

 噴水広場にちょこんと腰掛け、エブリはスライムの詳細を見ながら不敵に笑っていた。


創造可能

スライム   アナライズ・スライム
       バイオ・スライム
       バブル・スライム
       

 なんと、スライムが「進化」していたのだ。

 エレメンタル類は属性に応じて多種創造できるが、それは属性が違うだけで同じエレメンタルに変わりはない。しかし今回増えたスライム達は、数値や項目も全て従来のものとは違っている。



バイオ・スライム
――――――――――
人間への攻撃性:3
病気液:4
菌吸収:4
形状:1



バブル・スライム
――――――――――
人間への攻撃性:3
洗浄液:5
形状:1
吸収:4



 実は、トイレとゴミ箱に入れたスライムのほかに、エブリは別にスライムのグループに町中を徘徊させていた。

 彼等の役割は町全体の清掃で、汚れた道や壁、ゴミ箱に入れてないゴミの処理などで、ゴミ箱と徘徊清掃の両面からアプローチしたことで、町の中を清潔に保つことに成功したのだ。

 そして劣化確認のためにゴミ箱徘徊をしていた時、たまたま下水施設で見つけた1匹が「バイオスライム」に進化していた。

 この個体は以前、エブリに「う○こを食うんじゃ」と指示され忘れ去られたスライムで、巡り巡って町で最も汚物が集まる下水施設に辿り着いていたのである。

 体の色は全体的に赤黒く、毒々しい。

「なんとも珍しい種類ですね」

 執事のエドワールが興味深そうに唸る。

「下水施設に病気があったということかの?」

「恐らくそういうことでしょうな。それもかなり強力な病原菌の類だと思われます」

 病気を多く吸収した結果の進化であるため、エブリの考察は概ね正しかった。

 難民の中には得体の知れないものを食べ飢えを凌いだ者や、病気を患った者もいた。それらの排泄物が適切に処理されず、飽和状態だったことで、強力な病気が生成されていた――しかしそれも、スライムが処理している。

「引き続き此奴らに働いてもらおう」

 エブリは下水施設に追加のバイオスライムを派遣しつつ、バブルスライムに視線を移す。

 見た目は鮮やかな空色。こちらは町内徘徊清掃の集団の中に何体か見られた。

 バイオスライムの進化条件から察するに、頑固な汚れを落とすために、清掃に特化した進化を遂げたのだと考えられる。

 洗浄液には抗菌と消毒の効果もあるようだ。
 液は基本泡にして射出しているらしい。
 泡をつまんでみると、柑橘系のいい香りがした。

「もこもこあわあわじゃ」

 手洗い用としてトイレに1匹置くのもアリじゃなと考えるエブリ。そして最後の進化先は実に興味深い能力を持っていた。



アナライズ・スライム
――――――――――
人間への攻撃性:3
分析:5
擬態:3
吸収:3
形状:1



 これはバイオ・スライム達の中に紛れていた個体で、体全体が白いのが特徴的である。

 能力は他の進化形態に比べて数値が高く、そして特異な物がいくつか見られる。

「これはまたなんとも調べ甲斐がある……」
 
 などと呟くエブリ――の、後頭部に強烈な衝撃が走った。

「いっでええのう!!」

 てんてんと、ボールが転がってゆく。

 取って食ってやるぞと言いながら振り返ると、そこには町の子供達が「ごめんなさーい」などとヘラヘラしながら立っていた。

「ぎゃははは! 大当たりー!」

 ひときわ体格のいい男児が笑う。
 どうやら犯人は彼のようだ。

「エブリちゃんもボール蹴りで遊ぼうよ!」

 その中の一人が声をかけてきた。

 彼等はエブリを同じ歳くらいの子だと認識しているらしく、町中を散策する中で仲良くなった(一方的に友達だと思われているだけだが)。エブリはこれまで幾度となく遊びに誘われている。

 エブリはやれやれと首を振った。

(……劣等種族のお遊戯じゃな)

 そう言ってボールの所へ歩いていくと、体格の良い男児めがけて思い切りそれを蹴り飛ばした。腹に受けた男児が吹き飛ぶと、他の子供から歓声が上がる。

「わしも混ぜろーー!」

「わあい!」

 微笑ましそうに眺めるエドワール。
 その後みんなでめちゃくちゃ遊んだ。
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