本当は、やめてほしくなかった

さい

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1章

3.秋の夜風

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 病室の、カーテンの閉めてない窓から、淡い月の光が差し込んできている。悠太は窓際に立って、車のない駐車場の方を、これといった理由もなく見下ろしていた。車はアンビュランスを除いて、3台ほど止まってある。車の出入りはなく、人の気配もそこにはなかった。
 
 悠太はそっと窓を開けて、冷気を含んだ夜風にあたろうとする。体中流れていた嫌な汗の痕跡を消したかったのだ。睡眠時に、まるで子供のように体が暑くなって大量の汗をかいてしまう悠太にとって、この秋の夜風の存在は大きかった。よく眠れない日に、こうやって、窓を開けて夜風にあたると、少し心が落ち着いてくる。嫌なことは、汗と共に忘れられて行く。
 
 きっと少しは眠ったのだろう。どれぐらい眠ったのかは覚えてないが、頭は幾分すっきりしていて、性欲を感じられるほどには、体力も回復していた。

 「怜…」

 悠太は、怜のことを思っていた。意識することなくその名前を何度か口にしてしまっていた。左手に刺されている点滴の針を抜いた。鬱陶しかったのだ。すると、血が何滴か床にこぼれた。それから、ガウンをはだけて、正面の窓ガラスに半透明に映し出されている自分の体を、しばしの間眺めていた。筋肉量の足りてなく、扱いを間違ったらすぐにでも壊れてしまいそうな、そんな危うさを帯びた体を。その痩せ細った手足のついた白い体は、夜の色と重なっていて、ところどころ窪んでいて、体の何かが欠けているように見えている。悠太は身体中の黒々としたその欠けを一つ、また一つと辿っていった。点検するように、指で少しずつ力を加えながら、その疼きを確かめていった。

 「痛いよ、怜」

 悠太は「怜、怜」と繰り返し、その名前を呼びながら、痛みに浸っている。その数を数えて、また最初から数え直すことを繰り返した。その度にもっと強く力を加えて行く。悠太のペニスは大きく、硬くなっていた。

 後ろを向くと、ベッドに突っ伏して眠っている霞が見える。悠太は霞を起こさないように、ゆっくりドアを開けて、廊下に出た。そして右の突き当たりのトイレの個室に入って、施錠をした。

 ドアにもたれて、そそくさとパンツを下ろして、爆発しそうなペニスを外に出した。紐を結んでなく、合わせ目が開いているガウンの間から突き出ているペニスを握り、上下に動かし始めた。それから右手で首を締め付けるように握って、少しずつ、ぎりぎり息が止まってしまわない程度に、指に力を込めていく。

 「怜、怜!」

 左手の動きはどんどん激しさを増していった。それにつれて、首周りの、熱い手の感触が、怜の手の感触に変わっていき、苦しみと共に自ずと喘ぎ声が漏れ始める。

 「はっ……あっ、んっ…ああっ……はあっ」

 「はっ、あぁんっ……」

 いつのまにか、怜のペニスが頭の中でいっぱいになっていた。巨大なそのペニスが、自分の喉奥にまで突っ込まれて、ジュポッジュポッとやらしい音を立てながら、口の中が、怜のペニスでいっぱいになって、苦しそうな声を出して…
 怜は自分の頭を両手でしっかりと握って放そうとしない。自分が苦しそうな声を漏らすたびに、怜はもっと激しく頭を動かし始める。それに合わせて腰の動きも早くなる。怜の気持ちよさそうな声が聞こえる。
 唾と怜の先っぽから漏れている体液とが混ざり合って、変な味がする。やがてそれは溢れ出して、床に滴り落ちる。

 「そろそろ出る」

と怜は言って、もっともっと激しく動かして行く。そして射精。

 「ああっ……」

 怜の生暖かい精液が喉の奥までいっぱいになっていた。濃厚な精液の味と、においとで、頭がおかしくなりそうだ。

 悠太も自分の硬くなっているペニスを激しく動かして、射精する。洋式便器のあちこちに精液が飛び散った。
 
 「そろそろ戻らないと…」

 気力を使い果たして、何もする気になれなかった悠太は、床に崩れ落ち、しばらくその余韻に浸っていた。
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