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運命の出会い
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朝、窓から差し込む光で目が覚める。
「んー……今日も、眩しいなぁ」
まぁ五月だし、そんなもんか。とぼんやり思いながら倫人はベットから起き上がった。地毛の茶色い髪を触ると、癖が付きやすい髪質のせいであちこち跳ねていた。
制服に着替えてリビングに入ると、いつも通りラップのかかったご飯がある。
倫人の母親は相変わらず朝も夜も働いているような生活で、倫人はまともに会話をした日がここ最近では思い出せない。それでも倫人が起きる前に食事を用意して出勤し、夜遅くに帰って来る。疲れた様子の母はすぐに寝てしまうので、倫人も一言声をかけるだけになる。
母さんは、俺のこと怖がってる。
母が倫人を見る時、普通に振舞っていても悲しい、怖い、という気持ちが滲んでいる。何かをうかがうように、母は倫人を見る。倫人はそんな母親を見ているのが怖い。
いつか、いなくなってしまうかもしれない。
面と向かって話したらそう言われそうで怖くて、倫人もなるべく顔を合わせないようにしていた。いつものようにご飯を食べてから、制服を着て学校へ行く。
今倫人は中学二年生になっていた。
外を歩く時は、なるべく人を見ないようにじっと地面を見て歩く。人を見なければ感情に酔うこともない。
今では人が近付けば感情の気配を察知して、その人のいる方向や場所がわかるようになっていた。
黙々と歩き続け、学校にたどり着く。人がいない頃を見計らって早めに来るようにしているが、学校に近づくと朝練をする部活の生徒の声が聞こえてくる。
「……いいなぁ」
思わず、声が漏れてしまった。
部活なんて多分一生出来ないんだろうな、となんとなく寂しく思う。周りに人が沢山いるのは苦手だし、接触がある活動はもっと嫌だ。羨ましいなと視線を一度グランドに投げ、倫人は足早に校舎に入った。
今日も、憂鬱な一日が始まる。
教室では、ずっと自分の机に突っ伏している。朝だけじゃなく休み時間や昼休みも、授業以外のときはなるべく周囲を見ない。人が苦手なのに、それでも倫人が毎日学校に来ているのは将来のためだ。
いつか、母がいなくなっても一人で生きていけるようにならなくてはいけない。
そう思って周囲の視線やイジメにも耐えた。小学校の時と同様に、倫人は基本的には周りからは遠巻きにされている。
大抵の場合存在を無視されていることがほとんどだが、時には小学校では無かった陰湿なイジメもあった。大人しい倫人に対して、横柄な生徒が机にわざとぶつかったり、聞こえるような陰口を平気で口にする。足をひっかけたり肩をぶつけるのは倫人が避けてしまうのでほとんど成功しないが、それでも時々不意打ちで転ばされたり突き飛ばされたりした。
そういう気配に対しては、倫人はどんどん敏感になっている。幸か不幸か、人の悪意に対する倫人のレーダーはどんどん研ぎ澄まされていた。
五月のある平日、学校から帰るといつものように家を出て目的もなく歩き始めた。家にいると夕方に一度帰ってくる母と会ってしまうかもしれない。そう思うと家にいられなかった。
「最近、母さん彼氏が出来たみたいだし……」
歩きながら、ぽつりと独り言を言う。最近母はたまの休みでも家に居ないことが増え、倫人を見ると何か言いたげにしている。
どうしたらいいんだろう。
家から追い出されたら、さすがにまだ一人では生きていけない。ふらふら路地裏を歩きながら考える。知り合いに会わないように、隣町まで歩いた。
人の色が目に入るのが嫌で人通りを避けて歩くと、自然に路地裏や薄暗いところを辿って行くことになる。治安が悪い隣町では、不良や目つきの悪い集団に絡まれることもあるが、彼らの感情はクラスメイトよりましだった。所構わず苛立つ感情はわかりやすい。単純な怒りは見ていて酔ったりもしなかった。
難癖をつけられて摑みかかられても、はっきりした感情に乗った拳は動きが読みやすく、相手が一人なら殴りかかられても拳をかわして逃げることが出来た。
今日もその辺で拾ったビニール傘を護身用に、倫人は路地裏の細い脇道を歩いていた。集団で囲まれると分が悪いぶん、リーチの取れる武器は振り回せば間合いを取れるため都合がいい。
その日のその時間、その場所に行ったのはなんとなくだった。道をぶらぶらしていると、なんとなく騒々しい雰囲気を感じて脇道から曲がり角をのぞいてみた。
「え……?」
目に見えたものが信じられず、瞬きした。
思わず息を止める。
路地の先を見つめた。明らかに素行の悪そうな集団が、高校生くらいの少年四人を取り囲んでいる。体格が上回る不良集団と少年達は何か言い争っているようだ。倫人は少年達のうちの一人の、中でも一際背が高い黒い髪の少年を食い入るように見つめた。
なんで、見えないんだ。
彼には、色がなかった。
周りの人間にはいつも通り感情の起伏の色が見える。今はお互いに対して苛立っているのか、どれも赤っぽい色を漂わせていた。なのに、黒い髪の少年の周りには色が一切見えない。
「なんで……?」
倫人の頭を疑問が駆け巡る。
瞬きするのも忘れてその人を見つめた。黒い髪と同じ漆黒の眼に剣呑な色を浮かべて、彼は不良達を睨みつけている。精悍な顔つきで眉を寄せた顔には年上の男達に引けを取らない凄みがあった。
「調子乗んなよガキが!!」
大きな声が聞こえて、倫人はハッとして黒髪の少年から視線を逸らした。
カツアゲか何かが上手くいかなかったのか、しびれを切らした不良集団が一斉に少年達に殴りかかる。加勢に入るか躊躇して、倫人は傘を右手に握りしめた。しかし少年達は慣れているのか多勢を相手に余裕の立ち回りを見せた。
小柄な少年が拳をかわし、横から隙をついて細身の金髪の少年が蹴りを入れる。残りの二人はそれぞれで動いているが喧嘩慣れしているようで、青っぽい髪の少年が格闘技のような綺麗な足技で相手を薙ぎ倒した。例の黒髪の少年は殴りかかられた拳を片手で受け止め、相手の襟元を掴み返して引き倒しながら顔面に拳を入れていた。
明らかに喧嘩慣れしている様子に、倫人はほっとして傘を握る手を緩める。
しかし、少年達から見えない死角に不穏な色が湧き上がったのに気付いた。一度返り討ちにあった男が気配を殺し四人の後ろから近づいていた。男が纏う黒い霧が見えた瞬間、倫人は曲がり角から飛び出した。
「危ない!」
走っても青い髪の少年に向けて背後から振り上げられた鉄パイプを止めるのは間に合わない。危険を叫んで知らせるより他になかった。
倫人の声に全員が驚いて一瞬動きを止めた。
「……ぐっ」
「しのぐ!」
振り下ろされた鉄パイプが鈍い音を立てて、殴られた少年が地面に倒れる。少年の一人が叫び声をあげて駆け寄った。
「てめぇ!」
倒れた少年を背後に庇って小柄な少年が鉄パイプの男と対峙するが、長さのあるパイプに阻まれてうまく間合いが取れない。
「あらし!」
少年が大声をあげて、その声に不良を蹴り倒した黒髪の少年が駆けつけた。不良のうちで立っているのはもうその鉄パイプの男だけだ。
「くっそおおおお! てめぇら死ねや!」
鉄パイプを振り回しながら男が突進する。倫人には真っ黒な霧がどんどん大きくなっていくのが見えた。
「たくみ! しのぐを見てろ!」
「わかった!」
金髪の少年が倒れた仲間に駆け寄った時、ようやく倫人は少年達の近くにたどり着いた。
「死ねぇえええ!!」
振りかぶられた鉄パイプの真下に入った黒髪の少年が、パイプをぐっと両手で受け止める。
「止めちゃ駄目だ!」
必死で大声をあげ、彼に駆け寄った。憎悪の煙が、パイプと上着の胸ポケットに集中しているのが見えていた。そこに何か持っている。
にやりと嗤った男が鉄パイプを少年に押し付けるように投げ出すと、胸ポケットから素早くナイフを取り出した。体勢を崩した少年めがけて、勢いよく振り下ろされる。ナイフの下に、倫人は夢中で自分の身体をねじ込んだ。
「っ!」
ガツンと音がして、両手で持った傘にナイフがぶつかる。
衝撃と同時に、視界をいっぱいに覆う赤黒い霧に包まれて、一気に鳥肌が立った。
いきなり飛び込んできた倫人に不良は一瞬驚いたが、更に激怒してもう一度倫人に向かってそれを振り下ろす。身を縮めてぎゅっと目を瞑った。
「死ね!!」
ガキンッと金属の擦れる嫌な音がしたが衝撃はなく、そろりと瞑った目を開いた。
目の前に、体勢を立て直した黒髪の少年が今度は倫人と相手の間に立ち塞がり、鉄パイプで相手の腕を押さえていた。弾かれたのか、ナイフは地面に落ちている。
「てめぇ一旦死んどけ」
地を這うような低い声に、不良が怯んだ。鉄パイプを払って拳を振り上げた少年は鮮やかなストレートを相手の顔面に決め、その一撃で地面に沈めた。
男が地面に転がって気絶すると、周囲を取り巻いていた赤黒い霧は一瞬で霧散した。
倫人はようやく詰めていた息を吐き出し、傘を投げ出すと深呼吸する。久しぶりに強烈な感情の渦を見て、頭が圧迫されたようにくらくらした。
倫人に背を向けていた黒髪の少年が振り向いて、まともに正面から目が合う。
やっぱり、ない。
倫人は驚きで目を見張る。
こんな人、今まで見たことがない。
近くで見ても、やっぱり彼の周囲には何も見えない。先程の喧嘩の様子から考えても、感情が動いていないはずはないのに、倫人の目には彼の色は完全に無色透明にしか見えなかった。
「んー……今日も、眩しいなぁ」
まぁ五月だし、そんなもんか。とぼんやり思いながら倫人はベットから起き上がった。地毛の茶色い髪を触ると、癖が付きやすい髪質のせいであちこち跳ねていた。
制服に着替えてリビングに入ると、いつも通りラップのかかったご飯がある。
倫人の母親は相変わらず朝も夜も働いているような生活で、倫人はまともに会話をした日がここ最近では思い出せない。それでも倫人が起きる前に食事を用意して出勤し、夜遅くに帰って来る。疲れた様子の母はすぐに寝てしまうので、倫人も一言声をかけるだけになる。
母さんは、俺のこと怖がってる。
母が倫人を見る時、普通に振舞っていても悲しい、怖い、という気持ちが滲んでいる。何かをうかがうように、母は倫人を見る。倫人はそんな母親を見ているのが怖い。
いつか、いなくなってしまうかもしれない。
面と向かって話したらそう言われそうで怖くて、倫人もなるべく顔を合わせないようにしていた。いつものようにご飯を食べてから、制服を着て学校へ行く。
今倫人は中学二年生になっていた。
外を歩く時は、なるべく人を見ないようにじっと地面を見て歩く。人を見なければ感情に酔うこともない。
今では人が近付けば感情の気配を察知して、その人のいる方向や場所がわかるようになっていた。
黙々と歩き続け、学校にたどり着く。人がいない頃を見計らって早めに来るようにしているが、学校に近づくと朝練をする部活の生徒の声が聞こえてくる。
「……いいなぁ」
思わず、声が漏れてしまった。
部活なんて多分一生出来ないんだろうな、となんとなく寂しく思う。周りに人が沢山いるのは苦手だし、接触がある活動はもっと嫌だ。羨ましいなと視線を一度グランドに投げ、倫人は足早に校舎に入った。
今日も、憂鬱な一日が始まる。
教室では、ずっと自分の机に突っ伏している。朝だけじゃなく休み時間や昼休みも、授業以外のときはなるべく周囲を見ない。人が苦手なのに、それでも倫人が毎日学校に来ているのは将来のためだ。
いつか、母がいなくなっても一人で生きていけるようにならなくてはいけない。
そう思って周囲の視線やイジメにも耐えた。小学校の時と同様に、倫人は基本的には周りからは遠巻きにされている。
大抵の場合存在を無視されていることがほとんどだが、時には小学校では無かった陰湿なイジメもあった。大人しい倫人に対して、横柄な生徒が机にわざとぶつかったり、聞こえるような陰口を平気で口にする。足をひっかけたり肩をぶつけるのは倫人が避けてしまうのでほとんど成功しないが、それでも時々不意打ちで転ばされたり突き飛ばされたりした。
そういう気配に対しては、倫人はどんどん敏感になっている。幸か不幸か、人の悪意に対する倫人のレーダーはどんどん研ぎ澄まされていた。
五月のある平日、学校から帰るといつものように家を出て目的もなく歩き始めた。家にいると夕方に一度帰ってくる母と会ってしまうかもしれない。そう思うと家にいられなかった。
「最近、母さん彼氏が出来たみたいだし……」
歩きながら、ぽつりと独り言を言う。最近母はたまの休みでも家に居ないことが増え、倫人を見ると何か言いたげにしている。
どうしたらいいんだろう。
家から追い出されたら、さすがにまだ一人では生きていけない。ふらふら路地裏を歩きながら考える。知り合いに会わないように、隣町まで歩いた。
人の色が目に入るのが嫌で人通りを避けて歩くと、自然に路地裏や薄暗いところを辿って行くことになる。治安が悪い隣町では、不良や目つきの悪い集団に絡まれることもあるが、彼らの感情はクラスメイトよりましだった。所構わず苛立つ感情はわかりやすい。単純な怒りは見ていて酔ったりもしなかった。
難癖をつけられて摑みかかられても、はっきりした感情に乗った拳は動きが読みやすく、相手が一人なら殴りかかられても拳をかわして逃げることが出来た。
今日もその辺で拾ったビニール傘を護身用に、倫人は路地裏の細い脇道を歩いていた。集団で囲まれると分が悪いぶん、リーチの取れる武器は振り回せば間合いを取れるため都合がいい。
その日のその時間、その場所に行ったのはなんとなくだった。道をぶらぶらしていると、なんとなく騒々しい雰囲気を感じて脇道から曲がり角をのぞいてみた。
「え……?」
目に見えたものが信じられず、瞬きした。
思わず息を止める。
路地の先を見つめた。明らかに素行の悪そうな集団が、高校生くらいの少年四人を取り囲んでいる。体格が上回る不良集団と少年達は何か言い争っているようだ。倫人は少年達のうちの一人の、中でも一際背が高い黒い髪の少年を食い入るように見つめた。
なんで、見えないんだ。
彼には、色がなかった。
周りの人間にはいつも通り感情の起伏の色が見える。今はお互いに対して苛立っているのか、どれも赤っぽい色を漂わせていた。なのに、黒い髪の少年の周りには色が一切見えない。
「なんで……?」
倫人の頭を疑問が駆け巡る。
瞬きするのも忘れてその人を見つめた。黒い髪と同じ漆黒の眼に剣呑な色を浮かべて、彼は不良達を睨みつけている。精悍な顔つきで眉を寄せた顔には年上の男達に引けを取らない凄みがあった。
「調子乗んなよガキが!!」
大きな声が聞こえて、倫人はハッとして黒髪の少年から視線を逸らした。
カツアゲか何かが上手くいかなかったのか、しびれを切らした不良集団が一斉に少年達に殴りかかる。加勢に入るか躊躇して、倫人は傘を右手に握りしめた。しかし少年達は慣れているのか多勢を相手に余裕の立ち回りを見せた。
小柄な少年が拳をかわし、横から隙をついて細身の金髪の少年が蹴りを入れる。残りの二人はそれぞれで動いているが喧嘩慣れしているようで、青っぽい髪の少年が格闘技のような綺麗な足技で相手を薙ぎ倒した。例の黒髪の少年は殴りかかられた拳を片手で受け止め、相手の襟元を掴み返して引き倒しながら顔面に拳を入れていた。
明らかに喧嘩慣れしている様子に、倫人はほっとして傘を握る手を緩める。
しかし、少年達から見えない死角に不穏な色が湧き上がったのに気付いた。一度返り討ちにあった男が気配を殺し四人の後ろから近づいていた。男が纏う黒い霧が見えた瞬間、倫人は曲がり角から飛び出した。
「危ない!」
走っても青い髪の少年に向けて背後から振り上げられた鉄パイプを止めるのは間に合わない。危険を叫んで知らせるより他になかった。
倫人の声に全員が驚いて一瞬動きを止めた。
「……ぐっ」
「しのぐ!」
振り下ろされた鉄パイプが鈍い音を立てて、殴られた少年が地面に倒れる。少年の一人が叫び声をあげて駆け寄った。
「てめぇ!」
倒れた少年を背後に庇って小柄な少年が鉄パイプの男と対峙するが、長さのあるパイプに阻まれてうまく間合いが取れない。
「あらし!」
少年が大声をあげて、その声に不良を蹴り倒した黒髪の少年が駆けつけた。不良のうちで立っているのはもうその鉄パイプの男だけだ。
「くっそおおおお! てめぇら死ねや!」
鉄パイプを振り回しながら男が突進する。倫人には真っ黒な霧がどんどん大きくなっていくのが見えた。
「たくみ! しのぐを見てろ!」
「わかった!」
金髪の少年が倒れた仲間に駆け寄った時、ようやく倫人は少年達の近くにたどり着いた。
「死ねぇえええ!!」
振りかぶられた鉄パイプの真下に入った黒髪の少年が、パイプをぐっと両手で受け止める。
「止めちゃ駄目だ!」
必死で大声をあげ、彼に駆け寄った。憎悪の煙が、パイプと上着の胸ポケットに集中しているのが見えていた。そこに何か持っている。
にやりと嗤った男が鉄パイプを少年に押し付けるように投げ出すと、胸ポケットから素早くナイフを取り出した。体勢を崩した少年めがけて、勢いよく振り下ろされる。ナイフの下に、倫人は夢中で自分の身体をねじ込んだ。
「っ!」
ガツンと音がして、両手で持った傘にナイフがぶつかる。
衝撃と同時に、視界をいっぱいに覆う赤黒い霧に包まれて、一気に鳥肌が立った。
いきなり飛び込んできた倫人に不良は一瞬驚いたが、更に激怒してもう一度倫人に向かってそれを振り下ろす。身を縮めてぎゅっと目を瞑った。
「死ね!!」
ガキンッと金属の擦れる嫌な音がしたが衝撃はなく、そろりと瞑った目を開いた。
目の前に、体勢を立て直した黒髪の少年が今度は倫人と相手の間に立ち塞がり、鉄パイプで相手の腕を押さえていた。弾かれたのか、ナイフは地面に落ちている。
「てめぇ一旦死んどけ」
地を這うような低い声に、不良が怯んだ。鉄パイプを払って拳を振り上げた少年は鮮やかなストレートを相手の顔面に決め、その一撃で地面に沈めた。
男が地面に転がって気絶すると、周囲を取り巻いていた赤黒い霧は一瞬で霧散した。
倫人はようやく詰めていた息を吐き出し、傘を投げ出すと深呼吸する。久しぶりに強烈な感情の渦を見て、頭が圧迫されたようにくらくらした。
倫人に背を向けていた黒髪の少年が振り向いて、まともに正面から目が合う。
やっぱり、ない。
倫人は驚きで目を見張る。
こんな人、今まで見たことがない。
近くで見ても、やっぱり彼の周囲には何も見えない。先程の喧嘩の様子から考えても、感情が動いていないはずはないのに、倫人の目には彼の色は完全に無色透明にしか見えなかった。
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