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第2章
人はそれを転校生の食堂事件と呼ぶ 拓海side
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◇◇◇拓海side
その日、拓海は朝から嫌な予感がしていた。
嵐が章吾のファイルを見つけ、転校生の名前に興味を持った様子を見て、とてつもなく嫌な予感がしていたのである。
章吾に気をつけるように連絡して、嵐に会わないようにと指令を出していたにもかかわらず、何故よりによって食堂で出くわすのか。
そもそも嵐だって昼食はいつも生徒会室で食べている癖に、今日になってわざわざ食堂に行くと言い始めた。
食堂に来て中を見回すと、奥のテーブルにオレンジ色の頭を見つけてしまった。向かいに座っているのは凌。
──な・ん・で、あいつらは呑気に食堂にいるんだ~??
さり気なく奥に向かわないよう嵐を誘導しようとしたが、突然現れた生徒会長と副会長の姿を見ようと生徒が集まってしまい身動きが取れない。
駆けつけた嵐の親衛隊にすぐに周りを固められ、「奥の方にどうぞ。お席を確保しました」と誘わたら進まざるを得なくなり、嵐が章吾達の方に歩き出してしまった。
統率の取れた動きで誘導してくれる親衛隊に別の場所がいいとも言えず、拓海は表情に出さないように素知らぬ顔で凌と章吾の側を通過しようと足早になる。
幸い、倫人は別行動のようだ。
一緒にいるのは章吾と凌、それにたまに見る凌のクラスメイトの小柄な生徒の三人だ。凌は身体がこちらに向いているため顔が見えるが、章吾は凌と向かい合って座っているため後頭部しか見えない。
すれ違い様凌と目が合い、お互いに何も言わずに目を逸らした。
「ん?凌じゃねーか。久しぶりだな」
拓海は通過したが、嵐の方が凌を見つけて立ち止まってしまった。内心舌打ちして嵐を振り返る。
「……どーも」
周りに大勢人がいる手前、凌はいつもより丁寧な返事をして軽く頭を下げた。
「あ、悪い。久しぶりに見つけたからつい」
すまなそうな顔で嵐は軽く手を振った。
「またな」
と嵐が再び足を進める。
ピロリンッ
章吾がテーブルに置いていたスマホから間の抜けた音が響いた。
「やべっ」
章吾が呟いてスマホを手で押さえる。バンっと勢い良く響いた音に、嵐が振り返った。
テーブルの上のスマホと、章吾の顔に視線を移した嵐は、微かに目を細めた。
すたすたと章吾の前まで戻り、章吾をじっと見つめる。
それから章吾の前に座る凌を見て、最後に後ろに立っている拓海を振り返った。
──げ。
拓海は内心焦りながらも表情を変えず、自然な動作で首を傾げた。
「嵐?どうしたの」
その拓海の言葉にすっと目を細めた嵐が、また章吾に視線を戻す。
じっと見つめられても視線を合わせようとしない章吾から目を離さず、嵐は向かいに座る凌に問いかけた。
「凌、お前のツレか」
「……まぁな」
一瞬答えを選ぶような間があって、答えた凌の返事に嵐は軽く眉を上げる。
「生徒調書の写真と髪の色が変わってるけど、転校生だよな」
確認するような嵐の問いに、凌も章吾も答えなかった。凌の隣に座っている小柄な生徒が何事かと戸惑った顔で嵐と章吾を見比べている。
周りの生徒達も生徒会長に何かあったのかと章吾達のテーブルに注目していた。
嵐が章吾の横に立った。
「名前は?」
その問い掛けに、章吾がスマホを掴む手に力が入る。
小さく息を吐いた章吾が顔を上げた。
挑むような目で真っ直ぐ嵐を見上げ、二人の視線が正面からぶつかる。
「立花章吾」
はっきりとした口調で言った章吾を、嵐は目を細めてじっと観察していた。
何かを探るような、思い出そうとするような顔をして、それから小さく息を吐く。
「駄目だな。思い出せない」
ぽつりと呟いた嵐の言葉に、章吾は微かに目を見開いた。嵐はもう一度章吾を見つめる。
「お前が章吾だよな」
問いかけというよりは断定に近いその言葉を聞いて、嵐が確信していることを察した。
──俺と凌の態度でバレちゃったかぁ。
他人の振りをするのは案外難しい、と心の中で頭を掻いて凌を見ると、凌の方でも何となくバツが悪そうな顔をしていた。
嵐の視線を黙って受け止めていた章吾は、しばらくしてふん、と鼻を鳴らした。
「だったら?」
「聞きたいことがある」
真面目な顔をした嵐が言うと、章吾は軽く笑った。
「俺にはねぇよ」
章吾の態度に周囲がざわりと波立った。
険のある視線を集めた章吾はスマホをポケットに入れて立ち上がる。
「俺、先に教室戻るわ」
そう言ってトレーを持った。
凌が頷くのを見て、章吾は嵐に背を向けた。
「待てよ」
嵐が章吾の肩を掴んだ。
章吾が顔を顰めて嵐を振り向く。
「何すか」
棘のある視線を受け止めて、嵐は真剣な眼差しで口を開いた。
「忘れたことは、謝る」
「……は?」
章吾が低い声を漏らした。
「忘れたらしいと気付いた時から謝ろうと思ってた。俺達がどういう知り合いだったのか、今の俺にはわからない。でも、一方的に忘れられていい感情が湧かないのはわかる。悪かった」
「おい」
章吾の声が一段と低くなったが、嵐は続けた。
「出来れば、みさきという奴にも謝って話をしたいと思ってる。一年以上経って今更思い出せるかわからないが、謝るつもりで」
「黙れって!」
テーブルにトレーを乱暴に叩きつける音が響いた。
「嵐、てめぇふざけんなよ!!」
大声で怒鳴った章吾が拳を振り上げた。
不意をつかれた嵐は避ける前に左頬を殴られてよろめく。
周囲から悲鳴とどよめきが上がった。
波のように広がるざわめきの中、凌は座ったまま「やりやがった」と小さな声を漏らし、側に立っていた拓海は片手で顔を覆った。
周囲の声など耳に入っていない様子で、章吾は怒りに打ち震えて嵐を睨みつけている。
「お前、俺がそんなことにこだわってると思ってんのか」
怒りを孕んだ章吾の言葉に、嵐は眉を寄せた。
「どういう──」
「俺は!」
憤ろしいものを吐き出すように、章吾が怒鳴った。
「俺は……俺はな!お前が俺を忘れたことに怒ってんじゃねぇよ!そんなことに腹なんて立ててねぇよ!」
章吾の言葉に、嵐は目を見開く。
「俺は、お前が、あの頃俺たちになんも言わなかったことにすっげぇ腹が立ってんだよ!この馬鹿野郎!」
呆気にとられている嵐を章吾は強い眼差しで睨んだ。
「俺たちを頼らねぇで、一人で抱え込んだりするから、お前今こんななっちまってんだろーが!そんななるくらい辛かったんなら、頼れよ!弱音くらい吐けよ!俺たち友達じゃなかったのかよ!」
大声で怒鳴ってから、章吾は唇を噛みしめる。
一見泣く寸前にも見える章吾の表情を、嵐は目を見開いたまま凝視していた。
「みさきだって……お前にもっと頼られたかったはずだ。大事にしてたのもわかるけどな、自分のことを適当に考えてる奴が、人のこと大事になんてできる訳ねーんだよ。……今そんなこと言っても、お前には、わかんねぇかもしれねぇけど」
自分の最後の言葉に自分で我に返ったのか、章吾はため息を吐くと怒気を緩めて嵐を見た。
章吾の目の前で、嵐はまだ目を丸くしたまま章吾を見つめている。
その顔を見て、章吾は自嘲気味に笑った。
「そんなこと言われても、今のお前じゃさっぱりわかんねーよな」
「いや……」
「ま、そういうことだ。俺は嵐に忘れられたことを怒ってる訳じゃねーから。今のお前から謝罪はいらねぇよ。ま、思い出したらもう一発殴るけどな」
怒鳴ってすっきりしたのか、章吾はにやっと笑って言った。
「みさきのことは俺も教えねぇよ。聞いても無駄だ。言っとくけどな、あいつも嵐に謝ってほしいなんて思ってねぇぞ。それよりも、さっさと思い出して迎えに行けバーカ。謝るくらいならさっさと思い出せ」
ふんと笑って章吾は背を向ける。言いたいことは済んだとばかりにさっさとトレーを持ち直して出口に向かって歩き始めた。
堂々と歩き去る章吾に、集まった生徒は思わず道を開けた。
一部始終を見ていた拓海は、嵐の後ろでやれやれと頭を振る。
──章吾の奴、マジでやりやがった。
これから親衛隊を巻き込んで面倒な騒動になることが目に見える。
しかし、心の中ではどこかすっとしていた。
多分、自分も章吾と同じ気持ちだった。
嵐の事情をよく知っていただけに、あの頃は何度も歯がゆく思っていた。
「さすがだなぁ。章吾」
苦笑いしながら呟いた。
こういうとき、勢いだけで嵐のど真ん中にボールを打ち抜く章吾に感心する。他人の目を気にする自分には到底真似できない。
テーブルに座ったままの凌と目が合った。向こうもどこか楽しそうな目をしている。
「嵐、もう行こう」
だんだんと騒ぎが大きくなる食堂の雰囲気を感じて、拓海は嵐の肩を叩いた。
「ああ……」
まだ章吾の去った方を気にしている嵐を引っ張る。
食堂でのランチは中止だ。親衛隊の子に頼んで何か買ってきてもらおう。
出口に向かいながら、隣を歩く嵐に拓海はちらりと視線を投げた。
「ねぇ。俺だってね、嵐のこと大事な友達だと思ってんだよ。今も昔も」
ぼそっと言うと、嵐はこちらに目を向ける。
そのやけに真剣な顔を見返して、口角を上げた。
「……さんきゅ」
小さく呟く声を聞いて、前を向いて破顔した。
その日、拓海は朝から嫌な予感がしていた。
嵐が章吾のファイルを見つけ、転校生の名前に興味を持った様子を見て、とてつもなく嫌な予感がしていたのである。
章吾に気をつけるように連絡して、嵐に会わないようにと指令を出していたにもかかわらず、何故よりによって食堂で出くわすのか。
そもそも嵐だって昼食はいつも生徒会室で食べている癖に、今日になってわざわざ食堂に行くと言い始めた。
食堂に来て中を見回すと、奥のテーブルにオレンジ色の頭を見つけてしまった。向かいに座っているのは凌。
──な・ん・で、あいつらは呑気に食堂にいるんだ~??
さり気なく奥に向かわないよう嵐を誘導しようとしたが、突然現れた生徒会長と副会長の姿を見ようと生徒が集まってしまい身動きが取れない。
駆けつけた嵐の親衛隊にすぐに周りを固められ、「奥の方にどうぞ。お席を確保しました」と誘わたら進まざるを得なくなり、嵐が章吾達の方に歩き出してしまった。
統率の取れた動きで誘導してくれる親衛隊に別の場所がいいとも言えず、拓海は表情に出さないように素知らぬ顔で凌と章吾の側を通過しようと足早になる。
幸い、倫人は別行動のようだ。
一緒にいるのは章吾と凌、それにたまに見る凌のクラスメイトの小柄な生徒の三人だ。凌は身体がこちらに向いているため顔が見えるが、章吾は凌と向かい合って座っているため後頭部しか見えない。
すれ違い様凌と目が合い、お互いに何も言わずに目を逸らした。
「ん?凌じゃねーか。久しぶりだな」
拓海は通過したが、嵐の方が凌を見つけて立ち止まってしまった。内心舌打ちして嵐を振り返る。
「……どーも」
周りに大勢人がいる手前、凌はいつもより丁寧な返事をして軽く頭を下げた。
「あ、悪い。久しぶりに見つけたからつい」
すまなそうな顔で嵐は軽く手を振った。
「またな」
と嵐が再び足を進める。
ピロリンッ
章吾がテーブルに置いていたスマホから間の抜けた音が響いた。
「やべっ」
章吾が呟いてスマホを手で押さえる。バンっと勢い良く響いた音に、嵐が振り返った。
テーブルの上のスマホと、章吾の顔に視線を移した嵐は、微かに目を細めた。
すたすたと章吾の前まで戻り、章吾をじっと見つめる。
それから章吾の前に座る凌を見て、最後に後ろに立っている拓海を振り返った。
──げ。
拓海は内心焦りながらも表情を変えず、自然な動作で首を傾げた。
「嵐?どうしたの」
その拓海の言葉にすっと目を細めた嵐が、また章吾に視線を戻す。
じっと見つめられても視線を合わせようとしない章吾から目を離さず、嵐は向かいに座る凌に問いかけた。
「凌、お前のツレか」
「……まぁな」
一瞬答えを選ぶような間があって、答えた凌の返事に嵐は軽く眉を上げる。
「生徒調書の写真と髪の色が変わってるけど、転校生だよな」
確認するような嵐の問いに、凌も章吾も答えなかった。凌の隣に座っている小柄な生徒が何事かと戸惑った顔で嵐と章吾を見比べている。
周りの生徒達も生徒会長に何かあったのかと章吾達のテーブルに注目していた。
嵐が章吾の横に立った。
「名前は?」
その問い掛けに、章吾がスマホを掴む手に力が入る。
小さく息を吐いた章吾が顔を上げた。
挑むような目で真っ直ぐ嵐を見上げ、二人の視線が正面からぶつかる。
「立花章吾」
はっきりとした口調で言った章吾を、嵐は目を細めてじっと観察していた。
何かを探るような、思い出そうとするような顔をして、それから小さく息を吐く。
「駄目だな。思い出せない」
ぽつりと呟いた嵐の言葉に、章吾は微かに目を見開いた。嵐はもう一度章吾を見つめる。
「お前が章吾だよな」
問いかけというよりは断定に近いその言葉を聞いて、嵐が確信していることを察した。
──俺と凌の態度でバレちゃったかぁ。
他人の振りをするのは案外難しい、と心の中で頭を掻いて凌を見ると、凌の方でも何となくバツが悪そうな顔をしていた。
嵐の視線を黙って受け止めていた章吾は、しばらくしてふん、と鼻を鳴らした。
「だったら?」
「聞きたいことがある」
真面目な顔をした嵐が言うと、章吾は軽く笑った。
「俺にはねぇよ」
章吾の態度に周囲がざわりと波立った。
険のある視線を集めた章吾はスマホをポケットに入れて立ち上がる。
「俺、先に教室戻るわ」
そう言ってトレーを持った。
凌が頷くのを見て、章吾は嵐に背を向けた。
「待てよ」
嵐が章吾の肩を掴んだ。
章吾が顔を顰めて嵐を振り向く。
「何すか」
棘のある視線を受け止めて、嵐は真剣な眼差しで口を開いた。
「忘れたことは、謝る」
「……は?」
章吾が低い声を漏らした。
「忘れたらしいと気付いた時から謝ろうと思ってた。俺達がどういう知り合いだったのか、今の俺にはわからない。でも、一方的に忘れられていい感情が湧かないのはわかる。悪かった」
「おい」
章吾の声が一段と低くなったが、嵐は続けた。
「出来れば、みさきという奴にも謝って話をしたいと思ってる。一年以上経って今更思い出せるかわからないが、謝るつもりで」
「黙れって!」
テーブルにトレーを乱暴に叩きつける音が響いた。
「嵐、てめぇふざけんなよ!!」
大声で怒鳴った章吾が拳を振り上げた。
不意をつかれた嵐は避ける前に左頬を殴られてよろめく。
周囲から悲鳴とどよめきが上がった。
波のように広がるざわめきの中、凌は座ったまま「やりやがった」と小さな声を漏らし、側に立っていた拓海は片手で顔を覆った。
周囲の声など耳に入っていない様子で、章吾は怒りに打ち震えて嵐を睨みつけている。
「お前、俺がそんなことにこだわってると思ってんのか」
怒りを孕んだ章吾の言葉に、嵐は眉を寄せた。
「どういう──」
「俺は!」
憤ろしいものを吐き出すように、章吾が怒鳴った。
「俺は……俺はな!お前が俺を忘れたことに怒ってんじゃねぇよ!そんなことに腹なんて立ててねぇよ!」
章吾の言葉に、嵐は目を見開く。
「俺は、お前が、あの頃俺たちになんも言わなかったことにすっげぇ腹が立ってんだよ!この馬鹿野郎!」
呆気にとられている嵐を章吾は強い眼差しで睨んだ。
「俺たちを頼らねぇで、一人で抱え込んだりするから、お前今こんななっちまってんだろーが!そんななるくらい辛かったんなら、頼れよ!弱音くらい吐けよ!俺たち友達じゃなかったのかよ!」
大声で怒鳴ってから、章吾は唇を噛みしめる。
一見泣く寸前にも見える章吾の表情を、嵐は目を見開いたまま凝視していた。
「みさきだって……お前にもっと頼られたかったはずだ。大事にしてたのもわかるけどな、自分のことを適当に考えてる奴が、人のこと大事になんてできる訳ねーんだよ。……今そんなこと言っても、お前には、わかんねぇかもしれねぇけど」
自分の最後の言葉に自分で我に返ったのか、章吾はため息を吐くと怒気を緩めて嵐を見た。
章吾の目の前で、嵐はまだ目を丸くしたまま章吾を見つめている。
その顔を見て、章吾は自嘲気味に笑った。
「そんなこと言われても、今のお前じゃさっぱりわかんねーよな」
「いや……」
「ま、そういうことだ。俺は嵐に忘れられたことを怒ってる訳じゃねーから。今のお前から謝罪はいらねぇよ。ま、思い出したらもう一発殴るけどな」
怒鳴ってすっきりしたのか、章吾はにやっと笑って言った。
「みさきのことは俺も教えねぇよ。聞いても無駄だ。言っとくけどな、あいつも嵐に謝ってほしいなんて思ってねぇぞ。それよりも、さっさと思い出して迎えに行けバーカ。謝るくらいならさっさと思い出せ」
ふんと笑って章吾は背を向ける。言いたいことは済んだとばかりにさっさとトレーを持ち直して出口に向かって歩き始めた。
堂々と歩き去る章吾に、集まった生徒は思わず道を開けた。
一部始終を見ていた拓海は、嵐の後ろでやれやれと頭を振る。
──章吾の奴、マジでやりやがった。
これから親衛隊を巻き込んで面倒な騒動になることが目に見える。
しかし、心の中ではどこかすっとしていた。
多分、自分も章吾と同じ気持ちだった。
嵐の事情をよく知っていただけに、あの頃は何度も歯がゆく思っていた。
「さすがだなぁ。章吾」
苦笑いしながら呟いた。
こういうとき、勢いだけで嵐のど真ん中にボールを打ち抜く章吾に感心する。他人の目を気にする自分には到底真似できない。
テーブルに座ったままの凌と目が合った。向こうもどこか楽しそうな目をしている。
「嵐、もう行こう」
だんだんと騒ぎが大きくなる食堂の雰囲気を感じて、拓海は嵐の肩を叩いた。
「ああ……」
まだ章吾の去った方を気にしている嵐を引っ張る。
食堂でのランチは中止だ。親衛隊の子に頼んで何か買ってきてもらおう。
出口に向かいながら、隣を歩く嵐に拓海はちらりと視線を投げた。
「ねぇ。俺だってね、嵐のこと大事な友達だと思ってんだよ。今も昔も」
ぼそっと言うと、嵐はこちらに目を向ける。
そのやけに真剣な顔を見返して、口角を上げた。
「……さんきゅ」
小さく呟く声を聞いて、前を向いて破顔した。
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