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あかり、完璧ブラコン番長と交流を深める
第7話 あかり、『妖怪食堂』に案内する②
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「俺、あかりねーちゃんのご飯食べてみたい」
夏樹くんの声に、私はハッと我に返る。
「あー……それは、無理なんだよね」
「え、なんで? 『ほうちょーし』なんだろ?」
舌足らずな発音に、私は「『見習い』ね」と付け足す。
「私はまだ中学生だから、労働しちゃダメなんだよ」
「『包丁師』も、人間の法律が適応されるのか?」
冬夜くんが目を瞬かせた。あるよそりゃ。ここ人間が経営してる店だし。
ちえー、と唇を尖らせる夏樹くん。そこに、音子さんの声が飛んできた。
「店員としては無理だけど、この子の『包丁師』としての仕事が見たいなら、できるよ」
「え?」
「練習として、亡霊の子たちに食べてもらってるの」
音子さんのセリフに、私は説明を付け足した。
「他にも、退治した妖怪を弔うためにさばいたりね」
「退治した妖怪……ってことは、こないだの大蛇か?」
冬夜くんの言葉に、私はうなずく。
「『包丁師』の仕事は大きく分けて二つあるの。一つは料理を作ること、もう一つは殺すこと」
私の言葉に、夏樹くんが目を見開いた。
「ヒトの領域を侵す妖怪を退治するのも、私たち『包丁師』の仕事の一つ。
退治した妖怪の肉は、私たち包丁師の食事になるの」
「……食うの? 退治した妖怪を?」
夏樹くんの言葉に、私はうなずく。ちょっとショッキング的なことだろうけど、私はごまかさず伝えたかった。
そっか、と夏樹くんがつぶやいた時、音子さんが「持ってきたよ」と運んできた。
「ごろごろ夏野菜カレーと、ピンクのポテトサラダだよ」
「ピンクのポテトサラダ!?」
私が頼んだメニューに、驚いた二人が声を揃える。
「え、なんで!? なんでピンク!?」
「ビーツが入ってるんだよ。それがポテトサラダと混ざって、ピンクになるの」
「ビーツって何!?」
「ロシアとかウクライナでよく食べられる、ボルシチとかに入ってるやつだよ」
「ボルシチって何!?」
「とりあえず食べてみる?」
音子さんに頼んで小皿をもらい、二人によそう。
二人は恐る恐る口元にいれた。
「……割と味はイモっぽい、か?」
「なんか、シャリシャリしてる」
「冷凍したやつを使ってるからね」
音子さんが言うと、へえ、と冬夜くんが言う。
「妖怪に食べさせる飯って聞いたから、もっと純和食なのかと思っていたけど、そうでもないんだな」
「まあ、米だって元々は中国から来たしね。天ぷらはポルトガルだし」
通路を挟んで隣に座る、スーツを着た女性が声をかけた。
「人間の文化が変化すれば、妖怪の文化も変化するさ」
「お前も妖怪なのか?」
夏樹くんの言葉に、そうだよ、と鷹揚に彼女は答えた。ペロッと、赤くつややかな唇を舐める。
「お姉さん、割とメジャーな妖怪なんだけど、何だかわかる?」
「……化け猫……いや、ろくろ首ですか?」
冬夜くんの言葉に、お、と彼女――ろくろ首の吉子さんは目を見開いた。
「正解。よくわかったね?」
「いや……食べているものを見て……」
冬夜くんが見ているのは、彼女が頼んだ献立を見ていた。
天ぷらにチャーハン、油淋鶏、アヒージョ。油を多く使う料理が並んでいる。
「ろくろ首は行灯の油を舐める話があったから、油を多くとる性質があるのか、と……」
「そうそう。見ての通り、燃費の悪い体でね」
はあ、と溜息をつきながら、身体の向きはそのまま、首を伸ばす。
「うおっ」びっくりした夏樹くんと冬夜くんの身体が強ばった。
ぐるっと店内を回って、吉子さんはカウンターにいる店長に尋ねた。
「てんちょー、ジョッキで油飲めない?」
「飲めないよー」
そう言われて、吉子さんはシュルシュルと首を戻した。
「はー、石油王の彼氏欲しい」
「油の方で欲しがる人、初めて見たな……」
吉子さんのセリフに、冬夜くんが思わず突っ込んだ。
「はい、おまたせ。なんちゃって精進料理だよ」
今度は店長が運んできた。
冬夜くんのところに、菜の花の辛子和合、五穀ごはん、わかめときゅうりの酢和え、ごま豆腐、れんこん餅の揚出し、春野菜の炊き合わせ、アワビに似せた椎茸のお吸い物、果物と寒天のデザートが置かれる。
「と、おまたせ~。夏樹くんが頼んだ、山盛り油淋鶏定食だよ!」
こんもり積み上げられた油淋鶏に、夏樹くんは目を輝かせた。
「唐揚げだー!」
「油淋鶏だって」
「それ、同じでしょ?」
「いや、本場の油淋鶏は衣つけないし、タレ付けるし」
「そういや、竜田揚げと唐揚げの違いって何?」
常連の皆が口々に言うのを気にせず、夏樹くんは大きな口を開けて油淋鶏を頬張った。
「~!!」
鼻息を荒げて、パクパクと夏樹くんは食べ始める。
「うめー!! サクサクしてんのに、じゅわーってする!」
「カレーも食べる?」
あらかじめ用意しておいた小皿を出すと、夏樹くんは元気よく「食べる!」と言った。
分けてあげると、夏樹くんはカレーの上に油淋鶏をのせ、大きな口で食べる。
それはもう、とっても幸せそうな顔だ。
わかる。カレーライスとから揚げって、最高の組み合わせだよね。これは油淋鶏だけど。
「冬夜くんは?」
「俺はいいよ。小野が食べてくれ」
そう言われて、私は頼んだ夏野菜のカレーライスを食べ始める。
こうして、『妖怪食堂』での食事会は過ぎていった。
「俺、あかりねーちゃんのご飯食べてみたい」
夏樹くんの声に、私はハッと我に返る。
「あー……それは、無理なんだよね」
「え、なんで? 『ほうちょーし』なんだろ?」
舌足らずな発音に、私は「『見習い』ね」と付け足す。
「私はまだ中学生だから、労働しちゃダメなんだよ」
「『包丁師』も、人間の法律が適応されるのか?」
冬夜くんが目を瞬かせた。あるよそりゃ。ここ人間が経営してる店だし。
ちえー、と唇を尖らせる夏樹くん。そこに、音子さんの声が飛んできた。
「店員としては無理だけど、この子の『包丁師』としての仕事が見たいなら、できるよ」
「え?」
「練習として、亡霊の子たちに食べてもらってるの」
音子さんのセリフに、私は説明を付け足した。
「他にも、退治した妖怪を弔うためにさばいたりね」
「退治した妖怪……ってことは、こないだの大蛇か?」
冬夜くんの言葉に、私はうなずく。
「『包丁師』の仕事は大きく分けて二つあるの。一つは料理を作ること、もう一つは殺すこと」
私の言葉に、夏樹くんが目を見開いた。
「ヒトの領域を侵す妖怪を退治するのも、私たち『包丁師』の仕事の一つ。
退治した妖怪の肉は、私たち包丁師の食事になるの」
「……食うの? 退治した妖怪を?」
夏樹くんの言葉に、私はうなずく。ちょっとショッキング的なことだろうけど、私はごまかさず伝えたかった。
そっか、と夏樹くんがつぶやいた時、音子さんが「持ってきたよ」と運んできた。
「ごろごろ夏野菜カレーと、ピンクのポテトサラダだよ」
「ピンクのポテトサラダ!?」
私が頼んだメニューに、驚いた二人が声を揃える。
「え、なんで!? なんでピンク!?」
「ビーツが入ってるんだよ。それがポテトサラダと混ざって、ピンクになるの」
「ビーツって何!?」
「ロシアとかウクライナでよく食べられる、ボルシチとかに入ってるやつだよ」
「ボルシチって何!?」
「とりあえず食べてみる?」
音子さんに頼んで小皿をもらい、二人によそう。
二人は恐る恐る口元にいれた。
「……割と味はイモっぽい、か?」
「なんか、シャリシャリしてる」
「冷凍したやつを使ってるからね」
音子さんが言うと、へえ、と冬夜くんが言う。
「妖怪に食べさせる飯って聞いたから、もっと純和食なのかと思っていたけど、そうでもないんだな」
「まあ、米だって元々は中国から来たしね。天ぷらはポルトガルだし」
通路を挟んで隣に座る、スーツを着た女性が声をかけた。
「人間の文化が変化すれば、妖怪の文化も変化するさ」
「お前も妖怪なのか?」
夏樹くんの言葉に、そうだよ、と鷹揚に彼女は答えた。ペロッと、赤くつややかな唇を舐める。
「お姉さん、割とメジャーな妖怪なんだけど、何だかわかる?」
「……化け猫……いや、ろくろ首ですか?」
冬夜くんの言葉に、お、と彼女――ろくろ首の吉子さんは目を見開いた。
「正解。よくわかったね?」
「いや……食べているものを見て……」
冬夜くんが見ているのは、彼女が頼んだ献立を見ていた。
天ぷらにチャーハン、油淋鶏、アヒージョ。油を多く使う料理が並んでいる。
「ろくろ首は行灯の油を舐める話があったから、油を多くとる性質があるのか、と……」
「そうそう。見ての通り、燃費の悪い体でね」
はあ、と溜息をつきながら、身体の向きはそのまま、首を伸ばす。
「うおっ」びっくりした夏樹くんと冬夜くんの身体が強ばった。
ぐるっと店内を回って、吉子さんはカウンターにいる店長に尋ねた。
「てんちょー、ジョッキで油飲めない?」
「飲めないよー」
そう言われて、吉子さんはシュルシュルと首を戻した。
「はー、石油王の彼氏欲しい」
「油の方で欲しがる人、初めて見たな……」
吉子さんのセリフに、冬夜くんが思わず突っ込んだ。
「はい、おまたせ。なんちゃって精進料理だよ」
今度は店長が運んできた。
冬夜くんのところに、菜の花の辛子和合、五穀ごはん、わかめときゅうりの酢和え、ごま豆腐、れんこん餅の揚出し、春野菜の炊き合わせ、アワビに似せた椎茸のお吸い物、果物と寒天のデザートが置かれる。
「と、おまたせ~。夏樹くんが頼んだ、山盛り油淋鶏定食だよ!」
こんもり積み上げられた油淋鶏に、夏樹くんは目を輝かせた。
「唐揚げだー!」
「油淋鶏だって」
「それ、同じでしょ?」
「いや、本場の油淋鶏は衣つけないし、タレ付けるし」
「そういや、竜田揚げと唐揚げの違いって何?」
常連の皆が口々に言うのを気にせず、夏樹くんは大きな口を開けて油淋鶏を頬張った。
「~!!」
鼻息を荒げて、パクパクと夏樹くんは食べ始める。
「うめー!! サクサクしてんのに、じゅわーってする!」
「カレーも食べる?」
あらかじめ用意しておいた小皿を出すと、夏樹くんは元気よく「食べる!」と言った。
分けてあげると、夏樹くんはカレーの上に油淋鶏をのせ、大きな口で食べる。
それはもう、とっても幸せそうな顔だ。
わかる。カレーライスとから揚げって、最高の組み合わせだよね。これは油淋鶏だけど。
「冬夜くんは?」
「俺はいいよ。小野が食べてくれ」
そう言われて、私は頼んだ夏野菜のカレーライスを食べ始める。
こうして、『妖怪食堂』での食事会は過ぎていった。
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