完璧ブラコン番長と町の謎

佐賀ロン

文字の大きさ
8 / 33
あかり、完璧ブラコン番長と交流を深める

第7話 あかり、『妖怪食堂』に案内する②

しおりを挟む
 ■

「俺、あかりねーちゃんのご飯食べてみたい」

 夏樹くんの声に、私はハッと我に返る。

「あー……それは、無理なんだよね」
「え、なんで? 『ほうちょーし』なんだろ?」

 舌足らずな発音に、私は「『見習い』ね」と付け足す。
 
「私はまだ中学生だから、労働しちゃダメなんだよ」
「『包丁師』も、人間の法律が適応されるのか?」

 冬夜くんが目を瞬かせた。あるよそりゃ。ここ人間が経営してる店だし。
 ちえー、と唇を尖らせる夏樹くん。そこに、音子さんの声が飛んできた。

「店員としては無理だけど、この子の『包丁師』としての仕事が見たいなら、できるよ」
「え?」
「練習として、亡霊の子たちに食べてもらってるの」

 音子さんのセリフに、私は説明を付け足した。

「他にも、退治した妖怪を弔うためにさばいたりね」
「退治した妖怪……ってことは、こないだの大蛇か?」

 冬夜くんの言葉に、私はうなずく。

「『包丁師』の仕事は大きく分けて二つあるの。一つは料理を作ること、もう一つは殺すこと」

 私の言葉に、夏樹くんが目を見開いた。

「ヒトの領域を侵す妖怪を退治するのも、私たち『包丁師』の仕事の一つ。
 退治した妖怪の肉は、私たち包丁師の食事になるの」
「……食うの? 退治した妖怪を?」

 夏樹くんの言葉に、私はうなずく。ちょっとショッキング的なことだろうけど、私はごまかさず伝えたかった。
 そっか、と夏樹くんがつぶやいた時、音子さんが「持ってきたよ」と運んできた。

「ごろごろ夏野菜カレーと、ピンクのポテトサラダだよ」
「ピンクのポテトサラダ!?」

 私が頼んだメニューに、驚いた二人が声を揃える。

「え、なんで!? なんでピンク!?」
「ビーツが入ってるんだよ。それがポテトサラダと混ざって、ピンクになるの」
「ビーツって何!?」
「ロシアとかウクライナでよく食べられる、ボルシチとかに入ってるやつだよ」
「ボルシチって何!?」
「とりあえず食べてみる?」

 音子さんに頼んで小皿をもらい、二人によそう。
 二人は恐る恐る口元にいれた。

「……割と味はイモっぽい、か?」
「なんか、シャリシャリしてる」
「冷凍したやつを使ってるからね」

 音子さんが言うと、へえ、と冬夜くんが言う。

「妖怪に食べさせる飯って聞いたから、もっと純和食なのかと思っていたけど、そうでもないんだな」
「まあ、米だって元々は中国から来たしね。天ぷらはポルトガルだし」

 通路を挟んで隣に座る、スーツを着た女性が声をかけた。

「人間の文化が変化すれば、妖怪の文化も変化するさ」
「お前も妖怪なのか?」

 夏樹くんの言葉に、そうだよ、と鷹揚に彼女は答えた。ペロッと、赤くつややかな唇を舐める。

「お姉さん、割とメジャーな妖怪なんだけど、何だかわかる?」
「……化け猫……いや、ろくろ首ですか?」

 冬夜くんの言葉に、お、と彼女――ろくろ首の吉子さんは目を見開いた。

「正解。よくわかったね?」
「いや……食べているものを見て……」

 冬夜くんが見ているのは、彼女が頼んだ献立を見ていた。
 天ぷらにチャーハン、油淋鶏、アヒージョ。油を多く使う料理が並んでいる。

「ろくろ首は行灯の油を舐める話があったから、油を多くとる性質があるのか、と……」
「そうそう。見ての通り、燃費の悪い体でね」

 はあ、と溜息をつきながら、身体の向きはそのまま、首を伸ばす。
「うおっ」びっくりした夏樹くんと冬夜くんの身体が強ばった。
 ぐるっと店内を回って、吉子さんはカウンターにいる店長に尋ねた。

「てんちょー、ジョッキで油飲めない?」
「飲めないよー」

 そう言われて、吉子さんはシュルシュルと首を戻した。

「はー、石油王の彼氏欲しい」
「油の方で欲しがる人、初めて見たな……」

 吉子さんのセリフに、冬夜くんが思わず突っ込んだ。

「はい、おまたせ。なんちゃって精進料理だよ」

 今度は店長が運んできた。
 冬夜くんのところに、菜の花の辛子和合、五穀ごはん、わかめときゅうりの酢和え、ごま豆腐、れんこん餅の揚出し、春野菜の炊き合わせ、アワビに似せた椎茸のお吸い物、果物と寒天のデザートが置かれる。

「と、おまたせ~。夏樹くんが頼んだ、山盛り油淋鶏定食だよ!」

 こんもり積み上げられた油淋鶏に、夏樹くんは目を輝かせた。

「唐揚げだー!」
「油淋鶏だって」
「それ、同じでしょ?」
「いや、本場の油淋鶏は衣つけないし、タレ付けるし」
「そういや、竜田揚げと唐揚げの違いって何?」

 常連の皆が口々に言うのを気にせず、夏樹くんは大きな口を開けて油淋鶏を頬張った。

「~!!」

 鼻息を荒げて、パクパクと夏樹くんは食べ始める。

「うめー!! サクサクしてんのに、じゅわーってする!」
「カレーも食べる?」

 あらかじめ用意しておいた小皿を出すと、夏樹くんは元気よく「食べる!」と言った。
 分けてあげると、夏樹くんはカレーの上に油淋鶏をのせ、大きな口で食べる。
 それはもう、とっても幸せそうな顔だ。
 わかる。カレーライスとから揚げって、最高の組み合わせだよね。これは油淋鶏だけど。

「冬夜くんは?」
「俺はいいよ。小野が食べてくれ」

 そう言われて、私は頼んだ夏野菜のカレーライスを食べ始める。
 こうして、『妖怪食堂』での食事会は過ぎていった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】夫に穢された純愛が兄に止めを刺されるまで

猫都299
児童書・童話
タイムリープしたかもしれない。中学生に戻っている? 夫に愛されなかった惨めな人生をやり直せそうだ。彼を振り向かせたい。しかしタイムリープ前の夫には多くの愛人がいた。純愛信者で奥手で恋愛経験もほぼない喪女にはハードルが高過ぎる。まずは同じ土俵で向き合えるように修行しよう。この際、己の理想もかなぐり捨てる。逆ハーレムを作ってメンバーが集まったら告白する! 兄(血は繋がっていない)にも色々教えてもらおう。…………メンバーが夫しか集まらなかった。 ※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、Nolaノベル、Tales、ツギクルの6サイトに投稿しています。 ※ノベルアップ+にて不定期に進捗状況を報告しています。 ※文字数を調整した【応募版】は2026年1月3日より、Nolaノベル、ツギクル、ベリーズカフェ、野いちごに投稿中です。 ※2026.1.5に完結しました! 修正中です。

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。  大事なのは最後まで諦めないこと——and take a chance! (also @ なろう)

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

トウシューズにはキャラメルひとつぶ

白妙スイ@1/9新刊発売
児童書・童話
白鳥 莉瀬(しらとり りぜ)はバレエが大好きな中学一年生。 小学四年生からバレエを習いはじめたのでほかの子よりずいぶん遅いスタートであったが、持ち前の前向きさと努力で同い年の子たちより下のクラスであるものの、着実に実力をつけていっている。 あるとき、ひょんなことからバレエ教室の先生である、乙津(おつ)先生の息子で中学二年生の乙津 隼斗(おつ はやと)と知り合いになる。 隼斗は陸上部に所属しており、一位を取ることより自分の実力を磨くことのほうが好きな性格。 莉瀬は自分と似ている部分を見いだして、隼斗と仲良くなると共に、だんだん惹かれていく。 バレエと陸上、打ちこむことは違っても、頑張る姿が好きだから。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

この町ってなんなんだ!

朝山みどり
児童書・童話
山本航平は両親が仕事で海外へ行ってしまったので、義父の実家に預けられた。山間の古風な町、時代劇のセットのような家は航平はワクワクさせたが、航平はこの町の違和感の原因を探そうと調べ始める。

処理中です...