異世界で演技スキルを駆使して運命を切り開く

井上いるは

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第三章

調査結果

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迷いながらも、その夜、私はリオネルに自分の調査結果を伝えることにした。

「リオネル、あの台本には確かにリスクが伴う。でも、私たちは動くべきだと思うの。」

リオネルは黙って私を見つめ、私の言葉を待った。

「実は、調査しているうちにわかったことがあるの。古代魔法都市の生き残りである賢者が、ゼルダ帝国に囚われている可能性がある。」

「賢者…?」

「300年前に滅びたとされる古代魔法都市の唯一の生き残り。」

リオネルの目は驚きで大きく見開かれた。

「図書館でその確かな証拠を見つけたのか?」

「確かな証拠はまだないけれど、いくつかの記述と証言が一致しているの。もし本当にそうなら、彼を救うことは私たちにとっても大きな意味があると思うわ。帝国が魔法で世界を支配しようと本当に考えているのなら、この国にとっては危険なことよ。」

リオネルはしばらく考え込んだ後、深い息をついた。

「サラ、君の気持ちはわかった。でも、これは個人的な感情だけで動く問題じゃない。劇団全体に関わることだから、慎重に判断しないといけない。」

「もちろん、その通りだと思うわ。だからこそ、みんなの意見を聞きたいの。」

リオネルは頷き、真剣な表情で私に答えた。

「わかった。みんなで話し合おう。君の調査結果も含めて、どうするかを決めよう。」

その言葉にほっとして、リオネルの理解に感謝した。
しかし、心の奥底では、リオネルにまだ言わなければならないことがあると思った。

「リオネル、実は……もう一つ、あなたに話しておきたいことがあるの。」

リオネルは驚いた表情で私を見つめた。

「何だい?サラ。」

「実は、私の旅のことなんだけど……。本当はこの世界の人間じゃないの。ある日突然、こちらの世界に転移してしまって……。日本という国の東京という都市から来たの。私はずっと、元の世界に戻る方法を探しているの。今まで言えなくてごめんなさい。」

リオネルは一瞬言葉を失ったが、すぐに真剣な表情になった。

「サラ……どういうことなんだ?」

リオネルの目を見つめ、必死に説明を続けた。

「私は元々、日本という国で、俳優をしていたの。ある日、仕事を終えて公園で休憩していたら、突然この世界に転移してしまったのよ。」

リオネルは眉をひそめ、疑いの表情を浮かべた。

「そんな話……君が他の世界から来たなんて……。」

私はふと思い出して、腰につけていたポーチからスマートフォンを取り出した。

「これを見て。元の世界から持ってきたものよ。」

リオネルはスマホを手に取り、怪訝そうに眺めた。

「は……何なんだ?」

「これは『スマートフォン』という機械で、私の世界では当たり前に使われているの。電波がないから使えないけど、本来は通信機能があって、遠くの人とも話したりメッセージを送ったりできるわ。ここでは見たこともないでしょう?これが私が異世界から来た証拠よ。ちょっと待って、電源を入れてみるわ。写真を見せたらわかるはず。」

スマホの電源を入れた。
充電ができないので、ずっと電源を切っていた。

数秒待つと、電源が入った。
リオネルはスマホの画面を触り、不思議な光景に驚いていた。

「確かに、こんなものは見たことがない。これが君の別の世界からの証拠か……。」

リオネルはスマホを見つめ、深い息をついた。

「これが写真よ。私の服装も食べ物も、建物も見たことないでしょ。」

私は写真をスライドさせながら見せた。

「そうだったのか……。だから君の言動や考え方が時折、この国の常識とは少し違っていたのか。でも、どうして今それを打ち明けてくれたんだ?」

「賢者エリオスが転移空間魔法の第一人者だということを知ったから。彼に会えば、元の世界に戻る方法が見つかるかもしれないと思って。だから、私はどうしても彼に会わなければならないの。」

リオネルは深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。

「君の決意はわかった。君が別の世界から来たこと、それがどうしても賢者エリオスに会いたい理由なんだな。みんなには君の秘密を言わない。だけど、この計画を進めるためにはみんなの協力が必要だ。」

「ありがとう、リオネル。」

彼の理解と支援に感謝しながら、私はこれからの挑戦に向けて気持ちを引き締めた。
リオネルと一緒に、この計画を劇団の仲間たちにどう伝え、協力を得るかを考え始めた。

リオネルは劇団の全員で再度話し合い、最終的な決断を下すことを提案した。
私もその提案に賛同し、全員で真剣に議論する場を設けることに賛成した。

この演目を上演すれば、この台本を書いた人にも会える。
その人なら、書物には載っていない情報を持っているかもしれない。
そうすれば、賢者エリオスを救うための具体的な一歩となる……。
元の世界にもどれるかもしれないという希望が見えてきた。
差し込んだわずかな光が、希望の光に思えた。


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