異世界で演技スキルを駆使して運命を切り開く

井上いるは

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第三章

図書館での調査

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図書館は街の中心部に位置し、歴史と風格を感じさせる建物で周囲から一際目立っていた。

灰色の石造りで、高くそびえ立つ塔がいくつも連なり、先端には金色の装飾が施され、太陽の光を受けて輝いていた。
正面には広々とした階段があり、両側には精巧な大理石の彫刻が飾られている。
図書館の入口には重厚な木製の扉があり、その上にアーチ型の窓が設置されていた。

扉を開けると、広大なホールが広がっていた。
高い天井には複雑な模様が描かれ、シャンデリアが吊るされている。
ホールの中央には大きな受付カウンターがあり、司書たちが忙しく働いている。
壁には天井まで届く本棚が並び、棚には無数の書籍が並んでおり、古代の知識や歴史が詰まっているように感じられた。

床には美しいタイル模様が施されており、足音が響くたびにその模様が微かに反射する。
各書架の間には椅子とテーブルが配置されており、利用者たちが静かに読書や調査を行っている。
窓から差し込む自然光が室内を柔らかく照らしている。

奥にはさらに広がる部屋があり、そこには特別な書籍や古文書が保管されていた。
これらの書籍は厳重に管理されており、閲覧には特別な許可が必要だった。

静かな一角で、リヴェール王国とその周辺国家について情報を集める。
棚から古びた本を取り出し、ページをめくると、リヴェール王国の詳細な記述が目に飛び込んできた。

「リヴェール王国……平和で安定している国だが、隣国との緊張関係が存在する。文化や芸術が盛んで、劇場や劇団が多く存在する。また、主要産業は農業と繊維業で、広大な農地と豊かな織物が特産品となっている……。」

小さく声に出して読んだ。
ここが、私が転移してから滞在している国であり、劇団「ルミナス」の本拠地でもある。

次に、ゼルダ帝国のページを開いた。
ゼルダ帝国はリヴェール王国の隣に位置する大国で、強大な軍事力と拡張主義を掲げている。
ゼルダ帝国は皇帝を頂点とする専制君主制であり、魔法技術が発展しているが、一般市民には制限されている。
主要産業は鉱業と兵器製造で、豊富な鉱物資源と高い技術力を誇っている。

「ゼルダ帝国……彼らの魔法技術はすごいけど、一般市民には制限されているのね……。そして、鉱業と兵器製造が主要産業なのか……。」

さらにページをめくり、オルタス公国についても調べた。
リヴェール王国と友好関係にある小国で、リヴェールの南に位置している。
自然の美しさと豊かな資源が特徴で、リヴェール王国との貿易が盛んだという。
政治体制は公爵による統治で、主要産業は観光業とワイン生産。
美しい景観と高品質のワインが名産となっている。

「オルタス公国……観光とワインが主要産業なのね。美しい自然と豊かな資源が魅力的だわ。」

最後に、ノーザン連邦の記述に目を通した。
ノーザン連邦はリヴェール王国の北に位置する連邦国家で、複数の自治領が連合している。
自治領ごとに文化が異なるが、全体として結束力が強い。
ノーザン連邦は魔法技術よりも科学技術が発展しているという点が他の国と異なっていた。
主要産業は機械工業と海洋漁業で、技術力の高い機械製品と豊富な海産物が特産品である。

「ノーザン連邦……科学技術が発展しているのね。魔法とはまた違ったアプローチがあるのかしら……。機械工業と海洋漁業が主要産業なのね。」

その後、古代魔法都市についての記述を見つけた。
300年前に滅びたとされる伝説の都市であり、「賢者エリオス」がその唯一の生き残りだと書かれていた。
古代魔法都市は高度な魔法技術を持っていたが、内紛や外部の攻撃により滅亡した。
現在は廃墟となっているが、そこには魔法の遺物が残されているという。

「古代魔法都市……賢者エリオスが生き残り……。」

賢者エリオスは、300年前、転移空間魔法の第一人者だったそうだ。

転移空間魔法……?

この言葉を読んで、雷に打たれたような衝撃を受けた。
なぜこの人が300年前から生きているのかは不思議だけれど、もしかしたら私が元の世界に帰る方法を知っているかもしれない。

帰れるかもしれない……!

この世界に来て初めて、帰れるという希望を本当に感じたのだ。

私は本を閉じ、リヴェール王国とその周辺国家、そして古代魔法都市についての情報を心に刻んだ。

次に新聞のコーナーで、賢者エリオスについての記事を探し始めた。
調査を進めるうちに、賢者エリオスがゼルダ帝国に囚われていることがわかった。

10年前、彼が古代魔法都市の遺跡を訪れ、魔法を使って帝国の遺跡探検者を救ったことから始まる。
その出来事がきっかけで、彼は帝国に迎えられたとされている。

「最初は友好的に迎えられたのに、今は囚われているなんてどういうことなの?」

ゼルダ帝国が魔法で世界を支配しようとしているという書物もあった。
魔法を使える人々が帝国に拐われるのを恐れて隠れている現状も書かれていた。

「こんなことが……。」

図書館の静かな一角で、震える手で書物を閉じた。
ここは魔法の存在する世界なんだ。
もしかしたら、強力な魔法が使える人々は、帝国を恐れて魔法を使えないふりをしているのかもしれない。

賢者エリオス……。
どうしても、この人に会いたい。
しかし、これは私のためであって劇団のためではないかもしれない。
リオネルにどう伝えればいいのだろうか。
賢者エリオスにどうしても会いたいと正直に伝えた方が良いだろうか。



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