異世界で演技スキルを駆使して運命を切り開く

第三章

自粛要請

その日の夕方、劇団「ルミナス」の全メンバーが集まり、リオネルが国からの通知と戦争の背景を説明するための会議を開いた。

リオネルは真剣な表情で会議室に入り、劇団員たちを見渡した。

「皆、集まってくれてありがとう。重要な話がある。今朝の号外は見たと思うが、その件で国の担当者に確認したところ、当面の間、上演は自粛となった。ゼルダ帝国がノーザン連邦に宣戦布告したことで、リヴェール王国は非常事態に入った。」

劇団員たちは驚きと不安の表情を浮かべた。

「まず、ゼルダ帝国とノーザン連邦の関係について話そう。ゼルダ帝国は長い間、魔法技術を独占し、それを軍事力の強化に利用してきた。しかし、ノーザン連邦は科学技術の発展を重視し、魔法に頼らない強力な兵器を開発している。そのため、ゼルダ帝国はノーザン連邦を脅威と見なし、その技術を手に入れようとしている。」

リオネルの言葉に、劇団員たちは静まり返った。

「さらに、ゼルダ帝国は資源の豊富なノーザン連邦を侵略し、その資源を奪うことでさらに軍事力を強化しようとしている。ノーザン連邦は独立を守るために必死に抵抗しているが、ゼルダ帝国の圧倒的な軍事力に対抗するのは容易ではない。」

エレナが手を挙げて質問した。

「リオネル、それなら私たちのリヴェール王国はどうなるの？私たちも戦争に巻き込まれるのかな。」

リオネルは深く頷き、話を続けた。

「リヴェール王国は今のところ中立を保っているが、ゼルダ帝国の野心が止まらない限り、私たちも無関係ではいられないだろう。特に、戦争による食料や物資の不足が懸念される。国からも質素倹約を求められている。国民には贅沢を控え、生活を引き締めるようにとのことだ。劇団の活動も制限されるが、これは国全体の安全と安定を守るためだ。」

劇団員たちは互いに顔を見合わせ、リオネルの言葉に真剣な表情で耳を傾けた。

「この戦争がどのように進展するかは分からないが、皆で協力し合って乗り切っていこう。」

リオネルの言葉に、劇団員たちは静かに同意した。

会議の後、私はリオネルに話しかけた。

「リオネル、相談があるんだけど。」

「どうした？」

上演ができなくなった今、自分にできることは何かを考えていた。
私はもともと、賢者エリオスに会いたい願っていた。
帰りたいと思っているからだ。
しかし、どんどん遠回りしていくような気がしている。
マルコのことだって、助けられたらと思う反面、結局何もできていない。

私はこのモヤモヤした思いを、リオネルに聞いて欲しかった。

「リオネル、私にできることって何だろう。」

「サラにできること？」

「上演できなくなった今、私はここにいるだけで何の役にも立てない。賢者エリオスに会いたいという夢も叶えられないし、捕らえられた友人も助けることができない。」

「俺も同じ気持ちだよ。でも、俺はここにいて、皆を守っていかなければならない。それが団長としての責任だと思っているんだ。俺たちに何ができるのか、一緒に考えていくっていう答えじゃだめかな。サラにしかできないことは必ずある。でも、今は自分の安全を最優先してほしい。俺は君が大切だから。」

リオネルも大変なのに、ちゃんと話を聞いてくれる。
それだけでも救われるはずなのに、納得がいかない自分がいた。

私はなぜここにいるのだろう。
何のためにこの世界に来たのか。
帰りたいのに、帰れない。
私はここで立ち止まっていていいのか。


しかし、答えは出なかった。