異世界で演技スキルを駆使して運命を切り開く

井上いるは

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第四章

再会を待つ日々

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拠点での初日は忙しかったが、役に立てることにやりがいを感じた。
訓練で怪我をした人の手当てをし、食事の準備を手伝いながら、少しずつ仲間たちと打ち解けていった。

ある日、訓練中に怪我をした兵士が運び込まれてきた。
深い傷を負っており、即座の手当てが必要だった。

「大丈夫、しっかりして。すぐに治療しますから。」

私は兵士に優しく声をかけ、包帯や消毒液を用意した。
手が震えを必死で抑え、治癒師の処置を手伝った。

治癒師のエルウィン先生は年配の男性で、穏やかな瞳を持ち、長い白髪を後ろで束ねていた。
彼の手際は鮮やかで、的確な指示により私は安心して作業に集中できた。

「サラ、大丈夫か?」

心配そうにアレクシスが尋ねた。

「はい、大丈夫です。」

自分の声が震えているのがわかったが、兵士の痛みを和らげることに集中した。
エルウィン先生の指導の下、包帯を巻き、傷口を消毒した。

処置が終わると、兵士は安堵の表情を浮かべ、感謝の言葉をかけてくれた。

「ありがとう、サラ。君のおかげで助かったよ。」

その言葉に、私は胸が熱くなった。

「お手伝いをしただけです。先生のおかげですよ。」

エルウィン先生は優しく微笑んで言った。

「君の助けがあってこそ、治療がスムーズに進んだんだよ。これからもよろしく頼むよ、サラ。」

誰かの役に立てる喜びと、命を救う責任の重さを感じた。


ある日、アレクシスが書類に頭を悩ませているのを見かけた。

「どうしたのですか?」

私は声をかけた。

「この計算が合わなくて困っているんだ。」

アレクシスが言った。

「手伝いましょうか?」

そう言って計算を手伝うと、問題はすぐに解決した。

「サラ、君は計算が得意なんだな。助かるよ。これから事務仕事を頼んでもいいか?」

私の数学レベルは高くないが、ここでは十分役に立つようだ。
それから私は事務仕事を任されるようになった。
資金管理や物資の分配、情報の整理をしながら、時折怪我人の手当てをしつつ、リックさんの帰りを待っていた。

拠点では毎日訓練や作戦会議が行われ、私はサポート役として忙しく働いた。
新しい環境での日々は忙しかったが、その忙しさが私の心を落ち着かせた。
自分にも役立てることがあると思うと、素直に嬉しかった。

一日の仕事を終え、ふとリックさんのことを思い出した。
彼の強い腕に支えられた時の安心感、優しい笑顔、別れ際の温かい言葉が心に残った。

「早く戻ってきてね……。」

そうつぶやきながら、彼が無事に戻ってくることを祈った。
リックさんが戻るその日まで、ここでの生活を精一杯過ごそうと決意を新たにした。

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