異世界で演技スキルを駆使して運命を切り開く

井上いるは

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第四章

謎の力

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リックさんの帰還を待ちながら、拠点での生活に追われていた。
日々の業務に集中しようとしても、心の片隅には常に彼のことがあった。
無事に帰ってくることを祈る生活は、家族を案じる気持ちに似ていた。
それは、彼が私にとって素直に甘えられる唯一の存在だからだ。
彼が帰ってきたら、リオネルに話したように本当のことを話して、賢者エリオスに会いたい理由を聞いてもらおうと思っている。

毎朝目が覚めると、まず最初にリックさんのことを考える。
今日は帰ってくるだろうか、といつも思う。
なかなか戻らない彼を心配する一方で、早く会いたいという思いが募っていった。


ある日、エルウィン先生が話しかけてきた。

「サラ、君が手当てをした人たちの回復が異常に早いことに気づいているか?」

驚きつつも笑顔を浮かべて答えた。

「気のせいじゃないですか?エルウィン先生の力だと思っていました。」

エルウィン先生は首を振った。

「いや、サラ。確かに私の治療も効果があるが、君の手当てを受けた者たちは特に回復が早いんだ。何か特別なことをしているのか?」

その質問に困惑した。

「特別なことはしていません。ただ、回復を願いながら処置をお手伝いしていただけです。」

その夜、自分の治癒能力について考えた。
もしかすると、私の中には特別な力があるのかもしれない。
そんなことがあるだろうか?
私は異世界人だ。
異世界から来たことも、本来ならあり得ないことなら、何らかの治癒能力が発現してもおかしくはないかもしれない。

翌日、エルウィン先生が再び話しかけてきた。

「サラ、君が昨日言っていた回復を願う力、それが何か重要な鍵を握っているかもしれない。」

「そんな力があるのでしょうか。ただの偶然かもしれません。」

エルウィン先生が深く考え込んでいた。

「これがただの偶然だとは思えない。君の中には何か特別な力があるのかもしれない。それがどこから来るのかはわからないが、自分の力を信じることが大切だ。」

その言葉を聞いて、少し不安になった。
この世界で私がどのような力を持つのか、全く予想がつかない。
それでも、リックさんのために何かできるなら、その力を受け入れたい。

彼の温かい眼差しや、そばにいるだけで感じる安心感が、私を支えていた。
彼が私のことを「大切な人」と言ってくれたことも、大きな支えだった。

過ごした日々は決して長くないが、リックさんとの思い出が次々と蘇る。
彼と初めて出会った日のこと、共に過ごした時間、彼が私を助けてくれた数々の瞬間。
その全てが、私を強くしてくれる。
彼の励ましの言葉と優しさは、私の宝物だ。
彼が戻ってきた時に、もっと強くなった自分を見せたいと思っている。
そして、彼の隣で堂々と立ちたい。

日々の業務に戻りながら、エルウィン先生の言葉を胸に刻んだ。
もしかすると、本当に私には特別な力があるのかもしれない。
もっと自分の力を信じてみようと決意した。

リックさんの帰還が待ち遠しい。
彼が帰ってきたら、伝えたいことがたくさんある。
異世界から来たこと、賢者エリオスに会いたい理由、そして私の中に眠っているかもしれない特別な力のこと。

彼と共に未来を切り開いていくために、今できることに全力で取り組もう。
彼に誇れる自分でいるために。

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