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第六章 ディアーナの首飾りと夢の魔女
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それからの日々、私はミーナさんとの距離がとても近づいたような気がした。おしゃべりする時間はとても増えたし、ミーナさんは私の世間話を興味深そうに聞いていた。日本の学校のことや私の持つ端末で何ができるか、いろんな食べ物があってどんな漫画が流行っていたのかそんなことを。
やはりというべきかミーナさんはこのカフェやイースさんのお店、このカフェを営むに必要な最低限以外のこと以外は知らないようだった。それは魔法の世界に触れる私ととてもよく似ていたし、本当にどうでもいいことで笑い合う時間が、冬の雲が空を覆っていくのを忘れるほど幸せだった。何もかもを忘れてしまうくらいに幸せだった。
その日の朝もいつも通り身支度を終えて家を出ようとすると、珍しくカーディガンを羽織った母が私を呼び止める。どうしたの?と靴をはきながら私がそう聞くと、母は首を横に振って困ったような顔を浮かべた。
「最近頑張りすぎじゃなの?今日くらいは休んだら?」
「ん?大丈夫だよ。最近はすっごく調子がいいし、今度、お母さんもカフェに遊びに来てよ」
そうね。と母は困ったような大気中に溶けてしまいそうなほどの曖昧な笑みで私を見送った。いつもとは違う不安げな表情に、どうしたんだろう?と不思議に思う。ただ私は今はカフェ・ノードで過ごしたい。
ミーナさんと一緒にいたかった。世界の端っこであっても心地よい場所で。いつまでも留まり続けたい。
ただそれだけでは行けないとは思う。世界においていていかれた場所で、いつまでも生きていける。そんなに世間は甘くはない。只今だけは、ミーナさんの心をもっと知りたかった。
それでも尋ねられなかった。なぜカフェ・ノードを開こうと思ったのですか?と。
外へ出ると冬にしては珍しく湿り気を含んだ風がどこからか吹いてる。なんだか嫌な風だなと思いながら私は大通りへと足を踏み入れた。それでも嫌な予感というものは心から去ってくれない。私はディアーナの首飾りに触れる。これさえあれば大丈夫だ。そう信じることにした。
大通りの向こう側に四人組の男女が見えるた。歳は私と同じくらいで学校の制服を着ていた。
私の背中に冷たい汗が一筋流れる。私は大通りから逸れてその四人組に見つからないように住宅街へと進路を変える。どんなに逃げようとも現実はゆっくりと私の後ろから追いかけてきて、油断するといつだって目の前に立ちふさがる。逃げ場なんてないよ。そういうように。
だからこそ、住宅街に逃げ込もうとする私に気がついた四人は逃してなんてくれはせずに、先回りしたのか私の前に今、立ちふさがっているのだ。
「あらー。琴音さんじゃない?学校にもいかないで何してんだか」
先頭に立つ女は私のクラスメートだ。制服に包まれて黒髪は短く整えられている。そのクラスメートは腕を組んで見下すように私を見ていた。取り巻きの男女と共に教室で、私のお弁当を床にぶちまけた時と同じような笑顔で私を取り囲む。
「知ってるぞ?俺らが頑張ってる間にも街中で遊んでんだろ?ひどいなぁ。俺たちはこんなにお勉強を頑張っているのにカフェでランチとかふざけてんな?」
男が取り出した端末には私とミアスが並んで写っていた。あの迷子の子供を家に送り届けた時だと私は自分のうかつさに嫌気がさした。私を取りか囲む四人組は笑っている。私は何も言い返すことができなかった。締め付けられた胸はうまく言葉を作ることができない。あの教室で感じた自分の無力感が心も体も支配していた。
私は変われていない。変われなかった。無力感だけが体を包む。漠然と・・・何もかもうまくいく。そんな呑気に考えていた自分に吐き気を覚えた。
「ほら。なんとか言いなさいよ。偽善者!」
ひとりの女が私を強く突き飛ばし私は体勢を崩す。
「おら。先生だって心配してたぞ?お友達の君たちが学校に連れてきなさいって」
私を突き飛ばした女の体格にいた男もまた私を突き飛ばす。その拍子に胸元から首飾りが飛び出して揺れる。リーダー格の女はそれを見てふん。と鼻を鳴らしてそれに手を伸ばした。
私が必死に振り払おうとも、後ろから羽交い締めされた私に抵抗するすべはない。リーダー格の女は首飾りを握ると強引にそれを引っ張った。首元の小さな鎖はそれに耐えられることができずに、裂かれた鎖は地面にパラパラと落ちた。
「返して・・・」
なんとか出せた言葉もその程度だった。リーダー格の女がそれを分厚い空にかかげて首飾りの装飾を眺めている。
「何これ?これでおしゃれのつもり?全然似合わない。これを壊せっているのも、うなずけるね」
そう吐き捨てると右手を大きく振りかぶり、私が息を吸い込む間もなく、首飾りを地面に叩きつけた。
かしゃんと乾いた音が響く。中央の大きなエメラルドに亀裂が入るのがゆっくり見えた。宝石が砕けると共にそれを取り囲んでいた銀の装飾もまた砕けた。私は自分を羽交い締めにしていた男を振り払い、その破片を必死に拾う。
尖った破片が指を刺し赤い筋が手のひらに流れても痛みは感じない。こんなことで私が出会えた新しい世界とのつながりを失いたくはなかった。守ることはできたはずなのに守れなかった事実を受け止めなたくはなかった。変われたと信じていた自分が、何も変われていないことを信じたくはなかったのだ。
「何こいつ?気持ち悪いな」
男は私の背中を蹴り、飛ばされた私は頬を地面にぶつける。頬が熱く口の中には血の味が広がった。
なぜこいつらはこんなことをして笑うことができるのだろう。私にはその四人組がもう人に見えなかった。この街に生きる魔女や精霊たちの方がずっと人間らしい。いや、人間よりも優しい。
なぜこんな人に私が足蹴にされているのか。でもそれ以上に何もできずにいる自分が嫌だった。何も変わっていないと思うと目頭が、だんだんと温度を上げていき頬から涙がこぼれた。頬を伝う涙は傷のできた頬を濡らしてじくじくとした痛みを感じる。
「こいつ泣いてんぞ?笑えるな。でもこれで安心してまた学校にいけるんだから俺らに感謝しないとな」
男は私の髪を乱暴に掴んで立たせる。なんで私はこうも弱いのか、それだけが悔しかった。
目の前の男は笑っている。笑いにはいろんな種類があると思った。こんなにも下品な笑みは見ているのが嫌だと心底思う。ミーナさんのあのやわらかな笑顔を見たかった。
その時、男は急に白眼を剥き、糸の切れた人形のようにぞの場に崩れ落ちた。あっ・・・と私はいつの間にか隣に立つミーナさんを見上げる。ミーナさんはそのままぎゅっと私を抱き寄せた。
「もう大丈夫よ」
やはりというべきかミーナさんはこのカフェやイースさんのお店、このカフェを営むに必要な最低限以外のこと以外は知らないようだった。それは魔法の世界に触れる私ととてもよく似ていたし、本当にどうでもいいことで笑い合う時間が、冬の雲が空を覆っていくのを忘れるほど幸せだった。何もかもを忘れてしまうくらいに幸せだった。
その日の朝もいつも通り身支度を終えて家を出ようとすると、珍しくカーディガンを羽織った母が私を呼び止める。どうしたの?と靴をはきながら私がそう聞くと、母は首を横に振って困ったような顔を浮かべた。
「最近頑張りすぎじゃなの?今日くらいは休んだら?」
「ん?大丈夫だよ。最近はすっごく調子がいいし、今度、お母さんもカフェに遊びに来てよ」
そうね。と母は困ったような大気中に溶けてしまいそうなほどの曖昧な笑みで私を見送った。いつもとは違う不安げな表情に、どうしたんだろう?と不思議に思う。ただ私は今はカフェ・ノードで過ごしたい。
ミーナさんと一緒にいたかった。世界の端っこであっても心地よい場所で。いつまでも留まり続けたい。
ただそれだけでは行けないとは思う。世界においていていかれた場所で、いつまでも生きていける。そんなに世間は甘くはない。只今だけは、ミーナさんの心をもっと知りたかった。
それでも尋ねられなかった。なぜカフェ・ノードを開こうと思ったのですか?と。
外へ出ると冬にしては珍しく湿り気を含んだ風がどこからか吹いてる。なんだか嫌な風だなと思いながら私は大通りへと足を踏み入れた。それでも嫌な予感というものは心から去ってくれない。私はディアーナの首飾りに触れる。これさえあれば大丈夫だ。そう信じることにした。
大通りの向こう側に四人組の男女が見えるた。歳は私と同じくらいで学校の制服を着ていた。
私の背中に冷たい汗が一筋流れる。私は大通りから逸れてその四人組に見つからないように住宅街へと進路を変える。どんなに逃げようとも現実はゆっくりと私の後ろから追いかけてきて、油断するといつだって目の前に立ちふさがる。逃げ場なんてないよ。そういうように。
だからこそ、住宅街に逃げ込もうとする私に気がついた四人は逃してなんてくれはせずに、先回りしたのか私の前に今、立ちふさがっているのだ。
「あらー。琴音さんじゃない?学校にもいかないで何してんだか」
先頭に立つ女は私のクラスメートだ。制服に包まれて黒髪は短く整えられている。そのクラスメートは腕を組んで見下すように私を見ていた。取り巻きの男女と共に教室で、私のお弁当を床にぶちまけた時と同じような笑顔で私を取り囲む。
「知ってるぞ?俺らが頑張ってる間にも街中で遊んでんだろ?ひどいなぁ。俺たちはこんなにお勉強を頑張っているのにカフェでランチとかふざけてんな?」
男が取り出した端末には私とミアスが並んで写っていた。あの迷子の子供を家に送り届けた時だと私は自分のうかつさに嫌気がさした。私を取りか囲む四人組は笑っている。私は何も言い返すことができなかった。締め付けられた胸はうまく言葉を作ることができない。あの教室で感じた自分の無力感が心も体も支配していた。
私は変われていない。変われなかった。無力感だけが体を包む。漠然と・・・何もかもうまくいく。そんな呑気に考えていた自分に吐き気を覚えた。
「ほら。なんとか言いなさいよ。偽善者!」
ひとりの女が私を強く突き飛ばし私は体勢を崩す。
「おら。先生だって心配してたぞ?お友達の君たちが学校に連れてきなさいって」
私を突き飛ばした女の体格にいた男もまた私を突き飛ばす。その拍子に胸元から首飾りが飛び出して揺れる。リーダー格の女はそれを見てふん。と鼻を鳴らしてそれに手を伸ばした。
私が必死に振り払おうとも、後ろから羽交い締めされた私に抵抗するすべはない。リーダー格の女は首飾りを握ると強引にそれを引っ張った。首元の小さな鎖はそれに耐えられることができずに、裂かれた鎖は地面にパラパラと落ちた。
「返して・・・」
なんとか出せた言葉もその程度だった。リーダー格の女がそれを分厚い空にかかげて首飾りの装飾を眺めている。
「何これ?これでおしゃれのつもり?全然似合わない。これを壊せっているのも、うなずけるね」
そう吐き捨てると右手を大きく振りかぶり、私が息を吸い込む間もなく、首飾りを地面に叩きつけた。
かしゃんと乾いた音が響く。中央の大きなエメラルドに亀裂が入るのがゆっくり見えた。宝石が砕けると共にそれを取り囲んでいた銀の装飾もまた砕けた。私は自分を羽交い締めにしていた男を振り払い、その破片を必死に拾う。
尖った破片が指を刺し赤い筋が手のひらに流れても痛みは感じない。こんなことで私が出会えた新しい世界とのつながりを失いたくはなかった。守ることはできたはずなのに守れなかった事実を受け止めなたくはなかった。変われたと信じていた自分が、何も変われていないことを信じたくはなかったのだ。
「何こいつ?気持ち悪いな」
男は私の背中を蹴り、飛ばされた私は頬を地面にぶつける。頬が熱く口の中には血の味が広がった。
なぜこいつらはこんなことをして笑うことができるのだろう。私にはその四人組がもう人に見えなかった。この街に生きる魔女や精霊たちの方がずっと人間らしい。いや、人間よりも優しい。
なぜこんな人に私が足蹴にされているのか。でもそれ以上に何もできずにいる自分が嫌だった。何も変わっていないと思うと目頭が、だんだんと温度を上げていき頬から涙がこぼれた。頬を伝う涙は傷のできた頬を濡らしてじくじくとした痛みを感じる。
「こいつ泣いてんぞ?笑えるな。でもこれで安心してまた学校にいけるんだから俺らに感謝しないとな」
男は私の髪を乱暴に掴んで立たせる。なんで私はこうも弱いのか、それだけが悔しかった。
目の前の男は笑っている。笑いにはいろんな種類があると思った。こんなにも下品な笑みは見ているのが嫌だと心底思う。ミーナさんのあのやわらかな笑顔を見たかった。
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