10 / 26
第二章 奴隷文化と身の危険
2 高級奴隷用品店
しおりを挟む
「……ここが、その、お店……?」
白塗りの壁、ツヤツヤした瓦の屋根。窓の枠とか扉とかには金色の装飾があるし、透明なガラスが窓に嵌ってるし。
何より、大通りにあるってのが、この、『文化』が、当たり前なんだって、分からされてしまう……。
「そうです。ほら、決めたんですから、さっさと済ませましょう」
キリナは言って、旅支度の間にキリナに文字を教えてもらったからなんとか読める『高級奴隷用品店・マーヴェント』とかいう店の扉を開けた。
◇
この前、また、頭をぐるぐるさせてるうちに寝ちゃったらしい私は、ミーティオルに起こしてもらって、キリナが持ってきた夕食の、白身魚のフライサンドイッチをもぐもぐしながら、……首輪について考えて。
『……キリナ。側仕えの奴隷の首輪って、どんなの……?』
なんとか、そう言った。
キリナとミーティオルに色々教えてもらって、私は決意を固めて、それで、今、こうしてる。
ミーティオルにはオオカミ姿になってもらって、首には、主人の居ない奴隷が仮に嵌めるっていう、鎖付きの首輪を付けてもらった。
もうそれで既に泣きそうなんだけど、泣いてたら『ワーウルフ』の奴隷を買った人には見えないと思うから、なんとか、我慢してる。
「いらっしゃいませ」
これまたピシッとした身なりの、店員らしい男の人が声をかけてきた。
そして、私たち三人を見てから、キリナへ顔を向けて、
「そちらのワーウルフの物を、お探しですか?」
にっこりと、接客用の笑顔を向ける。
普通のオオカミと、ワーウルフのオオカミ姿は、体の大きさが違うんだそうだ。普通のオオカミより、ワーウルフのほうが、二回りくらい大きいらしい。
だから、オオカミ姿でも、『ワーウルフ』だと、判別がつく。
「ええ。このお嬢さんが買いましてね。僕は、何かあった時のための護衛を頼まれました。欲しいのは側仕え用の首輪です」
キリナが鞄から、このために用意した、仮の契約書を店員に見せる。
私は今『護衛を雇って旅行に来てる、好奇心旺盛で我が儘な金持ちのお嬢様』の設定だ。
宿で身綺麗にして、このために買った旅行用のドレスワンピースと靴下と靴を身に着けて、髪結師を呼んで髪もまとめてもらって、お金持ちや貴族は大概付けてるっていう、手袋もして。
そんで、ミーティオルの鎖の先の輪っかを握ってる。
「側仕え、ですか」
店員が、ミーティオルに目を向ける。
ライカンスロープ──ワーウルフの男性、成体のオスは、見世物とか労働用に買われることが多いんだって、キリナから教えてもらった。
けど、私は『好奇心旺盛で我が儘なお嬢様』だから。
「そうよ? 何か問題ある? この子の魅力、アナタには分からない?」
ミーティオルに抱きついて、店員に笑顔を向ける。
「この子、ミーティオルって名前にしたの。瞳の色も毛艶もとっても良いでしょ? この子に似合うものが欲しいの。こんなちゃっちい首輪じゃなくて、キレイな首輪をね。あと、服も。お金はちゃんと持ってきてるから心配しないで?」
無言の、ミーティオルの頭を撫でながら言う。
「ええ。そのお嬢さんの言葉通り、金に糸目はつけませんよ」
キリナが、まだ何も書いてない小切手を出してみせると、店員の目の色が変わったのが分かった。
「さようでございますか。では、個室へご案内します」
案内された個室もまた、綺麗な部屋で。
出された首輪は、どれも宝石みたいなものが散りばめられてて。
ミーティオルが着る衣類も、これまた質が良さそうだ。
「ミーティオル、戻って」
私の言葉で、ミーティオルはオオカミ姿から、いつもの姿になる。
「ミーティオル、喋っていいわ」
「……分かった」
ミーティオルの口調に、最初店員も、首輪や衣類を持ってきた店員たちも、ちょっとびっくりしてる。
「なぁに? アナタたちも文句あるの? この喋り方だから良いんじゃない。畏まった言葉遣いなんて、この子には似合わないわ」
てか、さっきから、表情が読めやすすぎんだよ。『高級店の店員』なんだろが。もっと訓練しろや。
「いえ、失礼しました」
最初の店員が頭を下げて、周りもそれにならう。
そこからは、首輪と服を選んでく。
どれも、ミーティオルが良いって言ったものにすると、決めている。
最終的に、首輪は、大きめのサイズのを、壊れた──壊された時の予備も含めて、三つ。
衣類も大きめのを五着、買うことに。ミーティオルは平均的な『ワーウルフ』より体格が良いみたい。……こんなふうにして、知りたくなかった。
お金は、教会のじゃなくて、キリナの個人口座から出されることになってる。
キリナ、フルネームはキリナ・ニウミアっていうらしくて、代々カーラナンの、それも優秀な神父や修道女を輩出してきた、貴族みたいな家柄らしい。
だから単独行動も許されてて、こういうお金の使い方もできるんだって。
「じゃあまず、首輪ね。これでアナタは、私の物よ」
やっと外せるって思いながら、鎖付きの首輪を外して、心の中で、ごめんって言いながら、首輪を嵌める。
ミーティオルがその場で着替えさせられそうになって、
「アナタたち、馬鹿じゃないの? この子は一匹でも着替えられるわ。キリナ、別の部屋へ連れてって」
って言って、ミーティオルとキリナが別室で着替えるのを待って。
「あら、見違えたじゃない。さすが私のミーティオルだわ」
カッコイイ燕尾服みたいのが似合ってるのは本音だけど、それが奴隷用の服だってのが、複雑。
キリナが小切手で会計して、予備の首輪以外の荷物をミーティオルに持ってもらって、予備の首輪はキリナが持って。
宿に戻って、割り当てられた部屋に入って、キリナが扉を閉めたのを確認してから。
「……ごめんね、ミーティオル。ごめんなさい」
ミーティオルに、抱きついた。
「謝ることじゃない。ニナが頑張ってくれたから、こうして宿にも戻れてる」
頭に手を乗せて、言ってくれるけど。
「……それが、複雑」
宿にスムーズに入れたのが悔しい。
道中、騒がれなかったのが、悔しい。
『ちゃんとした』奴隷ってだけで、こんなにも、周りの態度が変わるのが、悔しい。
ミーティオルが鎖付きの首輪を嵌めても、宿を変えたり、準備してる間は、何度か騒がれかけたのに。
「ニナさん。鍵、今渡しても大丈夫ですか?」
「……ありがとう」
なんとかミーティオルから体を離して、キリナから、首輪の鍵を受け取る。その鍵に、用意してた紐を括り付けて、首にかけて、服の中に仕舞う。
「名演技でしたよ。それで、どうします? 食堂も利用出来ますし、少し早いですが、夕食にしますか?」
「ミーティオルは、どうしたい?」
見上げれば、また、頭に手を乗せられて。
「ニナ、ここんとこ、出来立て食ってないだろ。食堂行って、出来立て食って、それから休もう」
◇
食堂で頼んだ、湯気の立つトマトベースのスープは、お肉と野菜とショートパスタみたいなのが入ってて、とても美味しかった。
キリナはもちろん、ミーティオルも出来立てを食べることが出来て、それも嬉しかった。
周りの目も、ミーティオルの首輪か身なりか──首輪だろうけど、それで判断したのか、また、騒ぎが起きることも無かったし。
うん、切り替えよう。大神殿に着くまでの間だし。本物の奴隷じゃないし。
お腹がいっぱいになって、クサクサしてた私の気持ちは、だいぶ、落ち着いた。
ら、食べ終わって、果実水を飲んでるところで、眠くなってきた。
く、くそう。八歳の体が憎い……。体力と気力が……。
「ごめん……二人とも……眠い……寝そう……」
体がすでにゆらゆらしてる……。
「分かった。部屋まで運ぶから、コップから手、離せるか?」
ミーティオルに言われて、コップを支えてくれて、なんとか、コップから手を離す。
「ニナ。支えてるから、寝て大丈夫だ」
コップを置いたミーティオルの大きな手が、私の肩を持ってくれて、自分に凭れさせてくれて。
やっぱりミーティオルが好きだなぁって思って、それを言いたかったけど、そのまま、寝ちゃった。
◇
「こういうところは、八歳ですね」
部屋に戻り、ミーティオルにベッドへと寝かされるニナを眺めながら、キリナが言う。
「それ、店でのニナと比較してか?」
ミーティオルの言葉に、「ええ、まあ」とキリナが複雑そうに言う。
「あなたが従順な振る舞いをするのは、店の人間もあまり不思議には思っていませんでしたが。大人顔負けの洞察力と、自分で設定した通りの『振る舞い』は、本音で名演技だと思いましたよ」
「アレな。本当にそんな『お嬢様』に見えかけたよ。どこで覚えたんだろうな」
苦笑しながら、ニナの頭を撫でるミーティオルに、
「……僕の覚えている限り、教皇の家系で、オレンジ色の髪と水色の瞳を持つ人物は、僅かしかいません」
キリナが、薄い茶色の目を細めながら言う。
「誰が生みの親か、見当がついてるのか?」
「いえ、逆です」
キリナのその言葉に、ミーティオルがニナからキリナへと顔を向ける。
「オレンジと水色。両方持つのは、初代から数名のみ。そこからは、何人か、片方の色を持つ方々の記録がありますが、今や、両方はめっきりです」
「……隔世遺伝って可能性は?」
「否定はできませんが……最後にオレンジの髪を持つかたは、三百年ほど前。水色の瞳を持つかたは二百三十……まあ、そのくらい前なんです。聖紋がなければ、誰もニナさんを教皇の血筋だとは思わないでしょうね」
言って、ため息を吐いたキリナを見て、
「……俺よりニナのほうが、危ないとか、あるか」
ミーティオルが慎重に問う。
「出発前にも言いましたが、聖女候補な時点で、その力を悪用しようと狙ってくる輩は沢山居ます。殺そうとしてくる者たちも。だから、僕のような『正司祭階級』以上の神父がついて、神殿まで身の安全を確保するんですよ」
白塗りの壁、ツヤツヤした瓦の屋根。窓の枠とか扉とかには金色の装飾があるし、透明なガラスが窓に嵌ってるし。
何より、大通りにあるってのが、この、『文化』が、当たり前なんだって、分からされてしまう……。
「そうです。ほら、決めたんですから、さっさと済ませましょう」
キリナは言って、旅支度の間にキリナに文字を教えてもらったからなんとか読める『高級奴隷用品店・マーヴェント』とかいう店の扉を開けた。
◇
この前、また、頭をぐるぐるさせてるうちに寝ちゃったらしい私は、ミーティオルに起こしてもらって、キリナが持ってきた夕食の、白身魚のフライサンドイッチをもぐもぐしながら、……首輪について考えて。
『……キリナ。側仕えの奴隷の首輪って、どんなの……?』
なんとか、そう言った。
キリナとミーティオルに色々教えてもらって、私は決意を固めて、それで、今、こうしてる。
ミーティオルにはオオカミ姿になってもらって、首には、主人の居ない奴隷が仮に嵌めるっていう、鎖付きの首輪を付けてもらった。
もうそれで既に泣きそうなんだけど、泣いてたら『ワーウルフ』の奴隷を買った人には見えないと思うから、なんとか、我慢してる。
「いらっしゃいませ」
これまたピシッとした身なりの、店員らしい男の人が声をかけてきた。
そして、私たち三人を見てから、キリナへ顔を向けて、
「そちらのワーウルフの物を、お探しですか?」
にっこりと、接客用の笑顔を向ける。
普通のオオカミと、ワーウルフのオオカミ姿は、体の大きさが違うんだそうだ。普通のオオカミより、ワーウルフのほうが、二回りくらい大きいらしい。
だから、オオカミ姿でも、『ワーウルフ』だと、判別がつく。
「ええ。このお嬢さんが買いましてね。僕は、何かあった時のための護衛を頼まれました。欲しいのは側仕え用の首輪です」
キリナが鞄から、このために用意した、仮の契約書を店員に見せる。
私は今『護衛を雇って旅行に来てる、好奇心旺盛で我が儘な金持ちのお嬢様』の設定だ。
宿で身綺麗にして、このために買った旅行用のドレスワンピースと靴下と靴を身に着けて、髪結師を呼んで髪もまとめてもらって、お金持ちや貴族は大概付けてるっていう、手袋もして。
そんで、ミーティオルの鎖の先の輪っかを握ってる。
「側仕え、ですか」
店員が、ミーティオルに目を向ける。
ライカンスロープ──ワーウルフの男性、成体のオスは、見世物とか労働用に買われることが多いんだって、キリナから教えてもらった。
けど、私は『好奇心旺盛で我が儘なお嬢様』だから。
「そうよ? 何か問題ある? この子の魅力、アナタには分からない?」
ミーティオルに抱きついて、店員に笑顔を向ける。
「この子、ミーティオルって名前にしたの。瞳の色も毛艶もとっても良いでしょ? この子に似合うものが欲しいの。こんなちゃっちい首輪じゃなくて、キレイな首輪をね。あと、服も。お金はちゃんと持ってきてるから心配しないで?」
無言の、ミーティオルの頭を撫でながら言う。
「ええ。そのお嬢さんの言葉通り、金に糸目はつけませんよ」
キリナが、まだ何も書いてない小切手を出してみせると、店員の目の色が変わったのが分かった。
「さようでございますか。では、個室へご案内します」
案内された個室もまた、綺麗な部屋で。
出された首輪は、どれも宝石みたいなものが散りばめられてて。
ミーティオルが着る衣類も、これまた質が良さそうだ。
「ミーティオル、戻って」
私の言葉で、ミーティオルはオオカミ姿から、いつもの姿になる。
「ミーティオル、喋っていいわ」
「……分かった」
ミーティオルの口調に、最初店員も、首輪や衣類を持ってきた店員たちも、ちょっとびっくりしてる。
「なぁに? アナタたちも文句あるの? この喋り方だから良いんじゃない。畏まった言葉遣いなんて、この子には似合わないわ」
てか、さっきから、表情が読めやすすぎんだよ。『高級店の店員』なんだろが。もっと訓練しろや。
「いえ、失礼しました」
最初の店員が頭を下げて、周りもそれにならう。
そこからは、首輪と服を選んでく。
どれも、ミーティオルが良いって言ったものにすると、決めている。
最終的に、首輪は、大きめのサイズのを、壊れた──壊された時の予備も含めて、三つ。
衣類も大きめのを五着、買うことに。ミーティオルは平均的な『ワーウルフ』より体格が良いみたい。……こんなふうにして、知りたくなかった。
お金は、教会のじゃなくて、キリナの個人口座から出されることになってる。
キリナ、フルネームはキリナ・ニウミアっていうらしくて、代々カーラナンの、それも優秀な神父や修道女を輩出してきた、貴族みたいな家柄らしい。
だから単独行動も許されてて、こういうお金の使い方もできるんだって。
「じゃあまず、首輪ね。これでアナタは、私の物よ」
やっと外せるって思いながら、鎖付きの首輪を外して、心の中で、ごめんって言いながら、首輪を嵌める。
ミーティオルがその場で着替えさせられそうになって、
「アナタたち、馬鹿じゃないの? この子は一匹でも着替えられるわ。キリナ、別の部屋へ連れてって」
って言って、ミーティオルとキリナが別室で着替えるのを待って。
「あら、見違えたじゃない。さすが私のミーティオルだわ」
カッコイイ燕尾服みたいのが似合ってるのは本音だけど、それが奴隷用の服だってのが、複雑。
キリナが小切手で会計して、予備の首輪以外の荷物をミーティオルに持ってもらって、予備の首輪はキリナが持って。
宿に戻って、割り当てられた部屋に入って、キリナが扉を閉めたのを確認してから。
「……ごめんね、ミーティオル。ごめんなさい」
ミーティオルに、抱きついた。
「謝ることじゃない。ニナが頑張ってくれたから、こうして宿にも戻れてる」
頭に手を乗せて、言ってくれるけど。
「……それが、複雑」
宿にスムーズに入れたのが悔しい。
道中、騒がれなかったのが、悔しい。
『ちゃんとした』奴隷ってだけで、こんなにも、周りの態度が変わるのが、悔しい。
ミーティオルが鎖付きの首輪を嵌めても、宿を変えたり、準備してる間は、何度か騒がれかけたのに。
「ニナさん。鍵、今渡しても大丈夫ですか?」
「……ありがとう」
なんとかミーティオルから体を離して、キリナから、首輪の鍵を受け取る。その鍵に、用意してた紐を括り付けて、首にかけて、服の中に仕舞う。
「名演技でしたよ。それで、どうします? 食堂も利用出来ますし、少し早いですが、夕食にしますか?」
「ミーティオルは、どうしたい?」
見上げれば、また、頭に手を乗せられて。
「ニナ、ここんとこ、出来立て食ってないだろ。食堂行って、出来立て食って、それから休もう」
◇
食堂で頼んだ、湯気の立つトマトベースのスープは、お肉と野菜とショートパスタみたいなのが入ってて、とても美味しかった。
キリナはもちろん、ミーティオルも出来立てを食べることが出来て、それも嬉しかった。
周りの目も、ミーティオルの首輪か身なりか──首輪だろうけど、それで判断したのか、また、騒ぎが起きることも無かったし。
うん、切り替えよう。大神殿に着くまでの間だし。本物の奴隷じゃないし。
お腹がいっぱいになって、クサクサしてた私の気持ちは、だいぶ、落ち着いた。
ら、食べ終わって、果実水を飲んでるところで、眠くなってきた。
く、くそう。八歳の体が憎い……。体力と気力が……。
「ごめん……二人とも……眠い……寝そう……」
体がすでにゆらゆらしてる……。
「分かった。部屋まで運ぶから、コップから手、離せるか?」
ミーティオルに言われて、コップを支えてくれて、なんとか、コップから手を離す。
「ニナ。支えてるから、寝て大丈夫だ」
コップを置いたミーティオルの大きな手が、私の肩を持ってくれて、自分に凭れさせてくれて。
やっぱりミーティオルが好きだなぁって思って、それを言いたかったけど、そのまま、寝ちゃった。
◇
「こういうところは、八歳ですね」
部屋に戻り、ミーティオルにベッドへと寝かされるニナを眺めながら、キリナが言う。
「それ、店でのニナと比較してか?」
ミーティオルの言葉に、「ええ、まあ」とキリナが複雑そうに言う。
「あなたが従順な振る舞いをするのは、店の人間もあまり不思議には思っていませんでしたが。大人顔負けの洞察力と、自分で設定した通りの『振る舞い』は、本音で名演技だと思いましたよ」
「アレな。本当にそんな『お嬢様』に見えかけたよ。どこで覚えたんだろうな」
苦笑しながら、ニナの頭を撫でるミーティオルに、
「……僕の覚えている限り、教皇の家系で、オレンジ色の髪と水色の瞳を持つ人物は、僅かしかいません」
キリナが、薄い茶色の目を細めながら言う。
「誰が生みの親か、見当がついてるのか?」
「いえ、逆です」
キリナのその言葉に、ミーティオルがニナからキリナへと顔を向ける。
「オレンジと水色。両方持つのは、初代から数名のみ。そこからは、何人か、片方の色を持つ方々の記録がありますが、今や、両方はめっきりです」
「……隔世遺伝って可能性は?」
「否定はできませんが……最後にオレンジの髪を持つかたは、三百年ほど前。水色の瞳を持つかたは二百三十……まあ、そのくらい前なんです。聖紋がなければ、誰もニナさんを教皇の血筋だとは思わないでしょうね」
言って、ため息を吐いたキリナを見て、
「……俺よりニナのほうが、危ないとか、あるか」
ミーティオルが慎重に問う。
「出発前にも言いましたが、聖女候補な時点で、その力を悪用しようと狙ってくる輩は沢山居ます。殺そうとしてくる者たちも。だから、僕のような『正司祭階級』以上の神父がついて、神殿まで身の安全を確保するんですよ」
10
あなたにおすすめの小説
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
もう我慢しなくて良いですか? 【連載中】
青緑 ネトロア
恋愛
女神に今代の聖女として選定されたメリシャは二体の神獣を授かる。
親代わりの枢機卿と王都を散策中、初対面の王子によって婚約者に選ばれてしまう。法衣貴族の義娘として学園に通う中、王子と会う事も関わる事もなく、表向き平穏に暮らしていた。
辺境で起きた魔物被害を食い止めたメリシャは人々に聖女として認識されていく。辺境から帰還した後。多くの王侯貴族が参列する夜会で王子から婚約破棄を言い渡されてしまう。長い間、我儘な王子に我慢してきた聖女は何を告げるのか。
———————————
本作品の更新は十日前後で投稿を予定しております。
更新予定の時刻は投稿日の17時に固定とさせていただきます。
誤字・脱字をコメントで教えてくださると、幸いです。
読みにくい箇所は、何話の修正か記載を同時にお願い致しますm(_ _)m
…(2025/03/15)…
※第一部が完結後、一段落しましたら第二部を検討しています。
※第二部は構想段階ですが、後日談のような第一部より短めになる予定です。
※40話にて、近況報告あり。
※52話より、次回話の更新日をお知らせいたします。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです
籠の中のうさぎ
恋愛
日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。
「はー、何もかも投げだしたぁい……」
直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。
十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。
王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。
聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。
そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。
「では、私の愛人はいかがでしょう」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる