赤ずきんはオオカミを救いたいし狙ってるし結婚したい【第三章了◆第四章準備中】

山法師

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第三章 闇の組織、妖精と精霊

2 三重聖域攻撃反射バージョン

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 宿のランクが上がっても、スキラー・クレスミーからの襲撃は、無くならない。
 けど、アニモストレたちの姿は全然見かけない。ミーティオルもキリナも、アニモストレたちの気配を掴んだりしてない。

「アニモストレたち、ミーティオルのこと、諦めてくれたのかな」

 隣の街に到着して、数日。街の、真ん中辺りにある宿。その部屋で、フリスビーくらいの大きさの防御壁を三個出して、空中でヒュンヒュン操りながら、どちらともなしに聞いてみる。

「どうだろうな。様子を窺ってるだけかも知れない」

 私を膝の上に乗せてくれてるミーティオルは、そんな返事をくれる。

「そうですね。大神殿に到着するまでは気を抜かないほうが良いかと」

 キリナもそう言って、

「ですが、ニナさん。防御壁をそのように扱うのは、道中だけにして下さいね。聖域に細工を施すのも。聖女は本来、他者を守護し、導く存在です。力を武力として使うのは、推奨されません」
「でも、私、守られてばっかなんだもん。対抗手段が欲しいんだもん」

 私の創り出す防御壁は、持てるだけじゃなくて、めちゃくちゃ硬いらしい。それを鈍器代わりに使えないかって試行錯誤してたら、こういう使い方ができちゃった。
 キリナが言った聖域の細工っていうのは、攻撃を跳ね返す──防ぐだけじゃなくて、同じ威力の反撃を反射で出せないかって思いついて、やってみたら成功した、それについてだ。

「それにさ、できたってことは、神様がこういう使い方をしても良いよって、言ってくれたみたいなことでしょ?」

 私の言葉に、キリナは短くため息を吐いてから、

「ですから、道中は使っても構いません。ニナさんの身の安全は最優先です。大神殿に到着したら、その使い方をやめてほしい、そういう意味です。ほら、そろそろ夕食を食べに行きますよ」

 ◇

「ニナ!」「聖域」

 食堂で夕食を食べて、部屋に戻ってきた瞬間に、二人に言われた。即座に、三重聖域攻撃反射バージョンを展開する。
 ほぼ同時に、私を抱き上げたミーティオルの、ライカンスロープの力を使う気配がした。

「キリナ、伏兵含めて八人だ」
「そうですね。ミーティオルさんが居てくれて手間が省けます」

 キリナは言いながら、窓を開けて、ミーティオルが捕まえた不審者八人の意識を奪って、また、いつもの流れ。

「今回もまた、スキラー・クレスミーですね。あちらも本腰を入れ始めたようですね」

 全員を手早く縛り上げて、武器とかをぽいぽいしながら、キリナが言う。

「ああ。気配の鋭さが違った。俺の対策をしてか匂いも薄くしてあるし、武器も暗器が多いな。ニナを捕まえるためのものもちゃんと用意してる」

 ミーティオルも静かに言いながら、私をぎゅっと抱きしめてくれる。

「なんなのかなぁ、スキラー・クレスミーの人たち。もうめんどい。色々めんどい。敵の懐に入って壊滅させたい」
「嘘でもやめてくれ、ニナ」
「ニナさん。スキラー・クレスミーを甘く見ないほうが良いですよ」
「分かってる。愚痴だもん」

 もうここ一週間は毎日のように襲撃されてるし。寝る時も三重聖域攻撃反射バージョンを常時展開して寝るようになったし。
 こんな状況、また気持ちがクサクサしてくるってもんよ。

「全員タトゥーをしていますし、タトゥーを隠す工作もしています。ミーティオルさんが言った通りに武器も暗器が多いですし、ニナさんを捕らえる用意もしてある。組織の尖兵、といったところでしょう。──さて、彼らからはどれだけ情報を得られますかね」

 調べるのを終えたキリナは、立ち上がると、

「ミーティオルさん、ニナさんを頼みましたよ。僕は宿の人間に伝えてきます」

 そう言って、部屋から出ていった。

「……スキラー・クレスミー、生物の売買をしてるんだよね?」

 縛られた奴らを見ながらの、私の問いかけに、

「ああ。闇ルートでな」

 ミーティオルが、頭を撫でてくれながら、静かに答えてくれる。

「そしたら、私みたい狙われてる人も、捕まった人も、売り買いされたりしてる人も、沢山居るんだよね?」
「そうだろうな。里も、スキラー・クレスミーだろう奴らに、被害を受けたことがある」

 ミーティオルの里もか。マジぶっ潰してぇ、スキラー・クレスミー。
 私はイライラしながら、宿の人経由でキリナが呼んだ警備兵にスキラー・クレスミーの奴らがしょっ引かれてくのを眺めてた。
 それから四日。
 不自然に感じるほどぱったりと、スキラー・クレスミーからの襲撃が無くなった。

「なに? 組織も様子見を始めたワケ?」

 朝からガッタンゴットンの辻馬車に揺られて、次の街へ向かう途中。最初の休憩場所でナッツを食べながら、グチグチ言う。
 私はいつもの如く、ミーティオルに片腕で抱えられております。

「そうかも知れませんね。襲ってくるよりそのほうが気が楽です。ニナさん、こちらの精神を衰弱させるのが目的かも知れないので、あまり気を張り詰めないようにお願いしますね」

 ジャーキー干し肉を齧りながらのキリナの言葉に、「はぁい」と答えておく。
 季節はもう、夏真っ盛りである。旅が順調だったら目的地の大神殿まで目前の筈だけど、色々あって、まだ半分ちょいくらいだ。
 この世界の夏はカラッとした暑さの夏で、日本みたいに蒸し蒸しむわむわしていない。その点では過ごしやすい。
 けど、暑いのに変わりはないし、日差しも強いので、みんな木陰で休んでる。
 ミーティオルだって、黒い毛が多いから熱を溜め込みやすい。それと、ライカンスロープの服じゃないからいつもより暑く感じるって言っていて、今も、私が浄化した水をごくごく飲んでる。

「ミーティオル、熱中症なってない?」

 私の言葉に、ミーティオルは水を飲むのをやめて、少し考え込んで、

「……ああ、大丈夫だと思う。それっぽい症状もないしな」
「キリナは?」

 神父の目印のその上着、通年着るって聞いたけど。

「大丈夫ですよ。体調管理には気を付けてますので。ニナさんは不調や違和感などありますか? 子供は、熱中症などの体調不良の症状を自覚するのが難しい場合が多いですからね」
「うん、大丈夫だと思う。目眩とかダルさもないし、ちゃんと水分とミネラル補給してるし」

 そんな会話が成り立つこの世界、熱中症や夏バテの知識や療法が、ちゃんとある。
 異世界あるあるっぽい、「え? 熱中症って何?」みたいな展開にならなくて済んでるから、それは有り難いけど。
 でも、逆に考えれば、それが広まってるくらい、熱中症や夏バテが身近なものだってことだ。
 ずっと山で暮らしてた私は、今までは夏でもそれなりに涼しく過ごせていたので、熱が溜まりやすい地域だっていう、この辺の暑さに慣れてない。
 ……うん、旅慣れしてるキリナは大丈夫だとしても、私とミーティオルの健康には一層気を付けよう。
 そんなふうに思いを新たにしたところで、休憩は終わりだと、辻馬車の人たちが声を張り上げた。


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