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6. 使命①
しおりを挟むSランクパーティーの遺跡攻略失敗に世間がざわつく中、俺は教会に来ていた。特に何か用があったわけではない。ただ、なんとなく寄っただけだ。
教会には像が置いてあった。美しい女神像。おそらく、俺を転生させた女神の像だろう。その下には文字が刻まれている。『創造神・ルミナリエ』と。
「…美しい名だ」
柄ではないが、俺は祈る。感謝の気持ち、それとこの世界でのことを伝えたかったのだ。すると、辺りが静寂に包まれた。…あの声が聞こえる。
――目を開けなさい
目を開けると、そこはあの空間だった。転生の時に訪れた、あの白い空間。そして、やはりそこには女神・ルミナリエの姿があった。
「…久しぶりだな」
「久しぶりね」
彼女はそう頷くと、さらに言葉をつづける。
「しばらくお話ししたいけど、貴方がこの空間にいられるのは少しだけ。時間がないから要件を伝えるわ」
「…うむ」
「貴方は“魔の森”の遺跡、“運命之道ルート・オブ・フェイト”に行くことになるわ。…そして、そこで自らの使命を知ることになる」
「…どういうことだ?」
“運命之道”とはおそらく俺たちが見つけたあの遺跡のことだろう。だが、意図が分からない。
「詳しいことは教えられないわ。ただ、一つだけ。貴方は使命を全うしなさい。他のことは何も考えないこと。それがこの世界を救う唯一の方法なのだから」
女神は悲しみを交えた笑顔を見せる。転生の時と同じだ。…何が悲しいというのだ。
「…もう少し具体的に」
「ごめんなさい、もう時間だわ。…貴方とこの世界に幸あらんことを」
光に包まれる。
「っ!?おい」
教会を後にしてギルドに向かうと、さっそくマスター室に連れてかれる。
「お前たちに遺跡の攻略を依頼したい」
「ふむ…」
「…驚かないんだな」
女神からのお告げがあったからだが、正直に言っても信じてもらえないだろうから黙っておくことにしよう。
「お前たちの戦闘能力はSランクの冒険者たちを大きく超えていると考えている。…他に頼める者がいないのだ。」
まぁ、戦闘能力でいえばその通りだろう。俺はもちろん、セリーも依頼をこなすたびに激しく成長し、Sランク冒険者と遜色ない実力を得た。だが…。
「…何か遺跡の情報は?」
「何もない。全員帰ってこなかったからな」
…Sランクパーティーが全滅か。こうなると仕方がない。
「セリー、今回は俺一人で行くことにする」
「…いや。私も行く」
「だが危険すぎる」
「私とシオンはパーティー。シオンが行くなら絶対ついてく!」
セリーは見たこともない真剣な表情を見せる。その力強い言葉に押し負けてしまった。
「…決まったか。これを渡しておく。危険だと判断した場合はすぐに帰ってきなさい」
そういうとおっさんは帰還石を取り出した。使えばすぐに設定された地点にワープできる、いわば緊急避難用の道具だ。ただ…。
「しかし、これは…」
「安いものだ。お前たち二人が無事に帰ってくるならな」
かっこつけやがる。帰還石は、一つで屋敷が3つ建つほど高価なものだ。
「…ありがたく受け取っておく」
石を受け取り、マスター室を後にした。
「ついにか…」
あれから、2か月後、俺とセリーは遺跡の最下層へ続く階段を下っている。これまで、かなりの難敵に何度も遭遇した。中にはAランク、さらにはSランクの魔獣も含まれる。セリーの魔法がなければ厳しい戦いもあった。いてくれてよかったと、心から思う。
「次はボス魔獣…」
彼女は緊張した様子だ。ボス魔獣というのは各遺跡の最下層にいる魔獣のことだ。それまでの魔獣とは比較にならないほどの戦闘能力を携える高ランク魔獣であることが多いらしい。
階段を下りきり、ついに最下層へ降り立つと、大きな扉が一つ。
「他に道はないみたい…」
「ならばこの扉の先にボス魔獣か」
「大丈夫かな…」
セリーは不安そうだ。だが、根拠のない慰めはできない。
「わからんが、進むしかあるまい」
2時間ほど休憩した。
セリーの覚悟も決まったらしい。扉を開く。
―――……ッ゛゛グォ゛ォオ……ア゛……ガ……ガァ゛゛゛ァアアアアッ!!!!
すさまじいうめき声とともにやはり魔獣が現れた。
「あれはッ!?深淵咆鬼グロル=ザヴァ…」
「知っているのか」
「…えぇ。古い文献でしか読んだことがないけど、間違いない…。昔、突如現れて国を5つ滅ぼしたバケモノ。ランクはSSランクだったはず…」
「SSランク…」
――ギィ゛……グッ……ア゛……アアアアアアァアァアア!!!!!!
突如すさまじい炎が部屋一面を覆いつくす。
「クッ!避けろ!!」
「きゃあっ」
…何とか無事なようだ。だが、今ので分かった。こいつは強い。今まで遭遇したどのモンスターよりも、圧倒的に。…俺たちで勝てるのか。
「シオンっ!どうする?」
「っ!?…まずは魔法攻撃で様子を見よう」
ひるんでいる場合じゃない。覚悟を決めろ。
セリーの眼差しはそう言っている。…まさかセリーに教えられるとはな。
セリーの放った魔法は直撃した。少しだけだが、ダメージを与えられたようだ。
(これなら…)
「セリーっ!離れたところからさっきのを打ち続けてくれ!俺は近接で攻撃する」
――【影踏み】×【殺迅】
最初から全力だ。双剣で相手の弱点であろうところを突き続ける。これも効いている。
よしっ!!
俺はスキルを使って近接攻撃、セリーは魔法攻撃という戦い方が1時間ほど続く。魔獣は徐々に弱ってきているように思える。
(もう少し…)
その時、
――ヴ゛ォォォ……ヴギィ……ガ゛アアアッ!!!!!!
突如大きな唸り声をあげた魔獣はセリーに向かってすさまじいスピードで走り出す。スキルがクールダウン状態にある俺は間に合わない。
「セリーーーーッ!!!!」
「シオン、ごめん…」
…セリーが吹き飛んだ。
急いで彼女の方へ向かうと、彼女はまだかすかに息をしている。どうやらとっさに防御魔法を構築したようだ。だが、このままでは…。
俺は帰還石のことを思い出した。
「セリー。今からお前をギルドに送る。すぐに手当てしてもらえ」
「…シ……オン…は?」
「俺はこいつを倒して帰る」
「そん……な…」
「大丈夫だ。必ず戻る」
俺は帰還石を掲げた。セリーが輝き、姿を消す。さて…。
「……許さねぇ」
胸の奥から何かが爆ぜる。
焼けるような怒り。
黒く濁った殺意。
ここまでの殺意は前世でも今世でも初めてだ。
そして…。
【殺迅】
あふれるほど、最大限の殺意を込めた。身体能力が跳ね上がる。
「殺す」
一瞬で魔獣の裏に回り込むと…
――ザシュッ!!!!
双剣で首を落とした。
そして同時に意識が遠のいていく。スキルに殺意を込めすぎた反動だろう。
(クッ…これは、無理か…)
――バタッ
シオンは意識を失った。
目が覚めた。どれほど時間が経ったかわからない。頭はかなりさえている。
「…あれは」
入ってきたモノの他にもう一つ大きな扉があることに気づく。おそらく宝がある部屋だろう。
扉を開ける。
「この部屋は……空っぽ?」
いや。中央の台座には、何かが置かれていた。
一冊の古文書。
それは、この世界の“真実”が記された書だった。
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