8 / 9
8. 光神塔
しおりを挟む自分の使命を知って8日後の夜、俺は〔光神塔〕の前に立っていた。
(セリーは怒っているだろうな)
そんなことを考えながら、警備員に推薦状を見せる。
「“ウェルグラード”のギルドマスターからの推薦状ですね。…確かに確認いたしました。〔光神塔〕へは初めての挑戦ですか?」
「あぁ」
「でしたら、ワープゲートをご説明させていただきます。ワープゲートとはその名の通り、ワープができる場所です。各階層に存在し、そのすべてがこの入場門に繋がっています。」
「ふむ」
「そしてこの入場門のワープゲートは前回のワープ元に繋がっているのです。」
…つまり、攻略途中に何度でも帰ってこれられるということか。そして次はその階層からスタートできる。
便利だな。あえて攻略しやすいシステムが作られているようだ。まるで、この遺跡を攻略してほしい人物が設計したような…そんな感じがする。
「説明は以上となります。お気をつけて!」
そんな言葉で見送られながら、俺は〔光神塔〕の攻略を開始する。
さすがは世界最高の迷宮といったところか。低層の敵ですらかなり高ランクの魔獣が出現する。初日は23層まで到達したところでワープゲートをくぐった。
攻略開始から3週間。俺は人類の最高到達点である66層を超えた。非常に強い魔獣もいたが、それでもあの深淵咆鬼《グロル=ザヴァ》には遠く及ばない。
ここまでの魔獣は情報があった。それ相応の対策もしてきたからこそ、ここまでスムーズに進むことができたのだ。しかし、ここからは俺が先駆者となる。一切の情報がない。
(より、気を引き締めなければな)
そんなことを考えながら67層へ踏み込む。
はじめのうちは特に変わることなく攻略を進めていった。
――異変が見えたのは91階層からだ。
ここからは各階層にボス魔獣のような存在が確認できた。ボス魔獣は本来遺跡に一体のはずなので、おかしい。この遺跡特有のモノなのか、神の力が弱まったことによる異常なのか、定かではないが、ボス魔獣を倒さないと次の階層に進めない。それが厄介であった。
91、92、93層のボス魔獣は虫の魔獣だった。91層は蜂、92層はアリ、93層はカブトムシのような見た目だ。蜂は空間を埋め尽くす毒針の雨を放ち、アリは軍勢で襲いかかってきた。だが一番厄介だったのは、あの鉄甲に身を包んだカブトムシだ。
あの深淵咆鬼《グロル=ザヴァ》とも肩を並べるような強さだったと思える。…だが正直あまり苦戦はしなかった。あれから1か月ほど遺跡に通っている俺は、さらなる強さを手に入れていたからだ。
94,95、96層はそれぞれ、サル、狼、ライオンの動物をモチーフにした魔獣だった。が、これも正直余裕のある戦いであった。動物をモチーフにした魔獣は多いため、慣れていたこともある。
――厳しいのはここからだった。
97層はユニコーン。角から強力な魔法を連撃してくる他、自身が光っているため影がない。【影踏み】を効果的に使うことができなかったのだ。
かなり苦戦したが、【殺迅】でスピードをあげ距離を縮めて、首を切り落とした。
98層はフェニックス。極端に強い炎系の魔法と、何度殺しても生き返ってくる特性を持っている。炎魔法は一度くらったが、地獄のような体験だった。回復ポーションを用いてもなお、腹部と左腕に派手なやけど痕が残る。
50回ほど殺したところで、炎が尽きたようだ。次に殺したら生き返ることはなかった。
そして99層はドラゴン。こいつは本当に強かった。俺の双剣でもかすり傷程度で済んでしまう強靭な肌とこの世のすべてを破壊するであろう威力のブレス。何度攻撃しても効いている様子がない。三日三晩戦い続けても勝てる未来が見えないので、捨て身の勝負に出ることにした。
まず相手がブレスを使うタイミングで【影踏み】で口内に移動。素早く体内に滑り込んで【殺迅】を用いた状態で暴れまわる。これはさすがに堪えたようで、しばらくしたら動かなくなった。
そして今、ついに――最深部、100層。
(最後はどんな魔獣だ…)
そう考えていた俺は驚愕する。
「…俺?」
そう。そこに立っていたのは俺、シオンであった。驚く間もなく、偽シオンは姿を消す。
(これはっ!?)
――ズバッ!!
俺の襟が破られる。【影踏み】だ。偽シオンは俺のユニークスキルも所持しているようだった。
(…ということは【殺迅】もか)
予想通り、偽シオンは【殺迅】を使ったようであった。異常な身体能力を見せる偽シオンを前に、俺は頭の中を整理していた。相手は自分自身。力は全く同じである。本来勝てるはずがなく思える……が、俺はそうは思えない。
“この迷宮は攻略されたがっている”。ワープゲートの話を聞いたときに抱いた仮説を、攻略を勧めるうちに確証したからだ。
(何か、……何かあるはずだ)
刃が交差したその瞬間、彼の口元が微かに揺れていることに気づいた。
「…ころ…したく…な…い」
そうか。つまり、このシオンはそういうことなのだ。
俺は撃ち合いながら、彼にあることを耳打ちする。
「ほん…と?」
彼は俺の言葉を聞くと攻撃を止めた。
「なら、や…く…そく」
偽シオンは静かに微笑むと、自らの双剣を胸元に突き立てた。血の代わりに、光が弾ける。
残されたのは、わずかに温もりの残る黒いマントだけだった――
「…」
何とも言えない気持ちが沸き上がる中、大きな扉が現れた。
――この先に…
俺は扉に近づいた。
0
あなたにおすすめの小説
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!
たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。
途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。
鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒!
素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。
裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる