前世で伝説の暗殺者だった俺、異世界でもしっかりと無双する〜俺の暗殺術が異世界で通用しすぎる件について〜

ハナマル

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9. 俺たちの冒険

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「――待っていたわ」

 扉を開けると、やはり女神・ルミナリエが立っていた。

「…一つ聞きたいことがある」

 女神は黙ってうなずく。

「……あなたが俺をこの世界に呼んだ理由。それは、これだったってわけか?」

 女神は一つ呼吸をおいて答える。

「えぇ、そうよ。貴方は暗殺のプロだった。…貴方なら私を殺してくれると、そう思ったの」

「そうか」

「それに、貴方は可哀そうな人だった。あんなのが貴方の最後なんて嫌だったの。この世界で、少しでも楽しいこと、面白いことを体験してほしかった」

 確かに俺は前世で、幼少期に組織に拉致され、殺人マシーンとして育て上げられた。楽しみも何もない、可哀そうと言われれば可哀そうな人生だった。

「……楽しいことならたくさんあったさ。ギルドの奴らは、がさつでうるさい連中だったが、今思えばよくしてくれた。……ギルドマスターのおっさんも、受付嬢のルカさんもそうだ。あんなに本気で俺のことを想ってくれる人たちはじめてだった。…それに、信頼できる仲間……セリーにも出会えた」

「そう。よかった」
 女神は嬉しそうに微笑む。

「……感謝してる。……今の俺があるのは、あんたのおかげだ」

「どういたしまして」

 静寂の時間が流れる。


「本当にこれでいいのか…?」
 先に言葉を発したのは俺の方だった。

「えぇ、私が死んで、貴方が神になる。それしかこの世界を救う方法はないの。貴方には悪いけど…」

「お前はそれでいいのかと聞いているんだ」

 女神は少し驚いた様子だったが、すぐに微笑みの表情に切り替える。

「…いいのよ。もう疲れたわ。死にたいくらいにはね」

「……嘘をつくな」

「うそ?嘘なんて何も…」

「――この遺跡は攻略されるのを待っていた。いやそのように作られたと言う方が正確か。……あなたが作ったのだろう?」

「え、えぇ。貴方が現れたときに、この場所にたどり着けるように……」

「では、最後の敵。あれは何だ?」

「…最後の敵?あれは私が一番強いと思うモノのコピーを作ったの。ドラゴンよりも強力な生物なんて貴方しかいないと思って…」

「……あのシオンは…何度も言葉を発していた。『殺したくない』と。おそらく、あなたがあのシオンを作ったときの想いを、あのシオンは受け取ったのだろう」

「ッ!?」

「あなたは、本当は死にたくないんだ。…違うか?」

 少し間があり、女神が口を開く。
「――死にたくないわよっ!!もっとこの世界を見ていたい。感じていたいっ。でも、…でも私がいる限り、この世界は終末に近づくの。そのせいで犠牲になる人もいる。私はどうすればいいの?」

 その眼には涙が今にも零れ落ちそうにたまっている。

 …やはり仮説は合っていた。女神は死にたくはないのだ。ただ、自らの滅びゆく運命に、抗おうとしなかった。生きたいというその気持ちを隠していただけ。


「――ならば、俺に任せておけ。お前の願いも、この世界も、俺が全部背負ってやるよ」


 ――その日、“光神塔”は静かに崩れ落ちた。
 天を突いていた白い尖塔が、まるで長い旅を終えた旅人のように、そっと膝を折った。
 ……空には、ただ一羽の金色の鳥が、はばたいていた。






 ――3か月後、“ウェルグラード”


「シオンっ!いいところに来た。お前たちに指名依頼を頼みたいんだが…」
 またおっさんに声を掛けられる。ここ最近は毎日だな。
「…仕方あるまい。話を聞こう」


 ――冒険者たちの声が聞こえる。
「……あれが、Sランクパーティーか」

「あぁ。“光神塔”を攻略したSSランク冒険者、シオンが率いる世界最強パーティー。それにしても、セリーナちゃん今日もかわいいなぁ」

「おいおい、セリーナさんはSランク冒険者だぞ。ちゃん付けはやめとけ。…俺は最近入った治癒師さんの方が好みだなぁ。あれ、名前なんだっけ」


 …女神はもういない。だが、俺たちの旅は続く。ルミナという名の仲間と共に。

 さぁ、世界を見に行こう。

「――セリー、ルミナ、冒険の時間だ」


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