2 / 3
仮面の胡騎
しおりを挟む
幸か不幸か、王冉は友の仇と再び相まみえることとなった。
「私は王冉という者だ。貴様、名は何という」
「……コウガだ」
敵はあの甲高い声で答えた。あの雁門での一件以来、王冉は片時たりともこの少年の声を忘れたことはない。
王冉の切れ長の目に、殺意の炎が灯った。対するコウガと名乗った胡騎は、少しも顔の皮を動かさない。
先に動き出したのは王冉であった。殺意を乗せた矢が空を切りながら飛んでいくが、そう簡単に勝負はつかない。コウガはその矢を躱し、そして返礼とばかりに矢を返してゆく。
艶のある黒髪を揺らし、玉のような雫を首筋に垂らしながら、王冉は馬を走らせる。敵の仮面もまた、小兵でありながらしっかりと馬腹を締めて戦場を疾駆する。
互いの弓射に決定打となるものは生まれなかった。騎射というものは高等技術であり、自らが馬の背で跳ねながら同じく馬を走らせ動き回る敵を射るのは容易ならざることである。だがそれでもこの二人の狙いは正確であり、並の騎兵であれば立ちどころに射抜かれていたであろう。
いつの間にか、二人の周りに他の兵の姿はなくなっていた。互いに一人の相手の命を取ることにのみ執着しすぎて、味方から遠ざかりすぎたのだ。
王冉は甚だ疲労していたが、それ以上に馬が疲れ始めていた。明らかに動きが悪くなっている。だが見た限り、それは相手の馬も同様であった。
王冉は、再び動き出した。敵に向かって一直線に突っ込むように馬を駆けさせる。それを迎え撃つように、コウガは弓を引いた。すぐに放つことはしない。限界まで引きつけて放てば、確実に仕留められる。それがコウガの算段であった。
だが次の瞬間、コウガは信じられないものを目にした。
「なっ――」
普通、騎射での戦いは、相手を自分の左側に収めるよう立ち回るのが常である。馬上から弓を引く場合、右利きであれば正面と左側には矢を射かけることができるが右側には矢を向けられず、そこが死角となるためだ。だからコウガは当然、王冉が自分の左側に向かってくるものと思って弓を構えていた。
だが、王冉は予想に反して、自分の右側に突っ込んできたのだ。
その理由は、次の瞬間に判明した。王冉は、まだ矢筒に矢が残っているにも関わらず左手に持つ弓を捨てたのだ。そして――
「李解の仇だ!」
「何! 剣だと!」
王冉は、腰に佩いている剣を抜いた。想定外の行動に反応しきれず、コウガは弓で白刃を受け止めたが、当然弓は切り裂かれ、自身も刃を避けた際に体勢を崩して落馬してしまった。
王冉は、賭けに勝ったのだ。一旦通り過ぎた王冉は、再び馬首を返してコウガの方に向き直った。
「……貴様よくも……」
コウガはすぐさま顔を上げた。その顔を見た時、王冉ははっとした。
その顔には、黒い仮面がなかった。恐らく落馬の時に外れてしまったのであろう。白日の下に晒された彼の顔貌は、どんな女人よりも艶やかであった。照灼と輝く美貌に、王冉は呆気に取られてしまった。
コウガは幼き頃より騎射に長け、神童と持て囃されていた。武を尊ぶ匈奴においては、弓馬に長けることこそ何よりも重たい評価軸である。だが一方でその優しげな、女子とも見紛う麗しい顔によって、他者から侮りを受けることも珍しくなかった。それを常々苦々しく思っていた彼は、黒塗りの仮面を作り、人前では常にこれを用いて顔を隠すようになったのである。
美しく透き通るような目は、温麗でありながらもやはりそこは戦士というべきか、鷹のように鋭い眼光を発して王冉を睨んでいる。
王冉は馬を降りた。馬の疲労が溜まりすぎて、これ以上は走らせようがない。自分に近づいてくる王冉に対して、コウガもまた立ち上がって蛮刀を引き抜いた。ここからは、短兵器同士の戦いとなる。
先に斬りかかったのは王冉であった。コウガはその剣撃を受け止めたが、力で押されて後ずさった。匈奴の得意とするのは騎射であり、実は意外と白兵戦は苦手である。加えてコウガは王冉に体格で劣っているため、どうしても刀剣同士のぶつかり合いでは不利になる。
続け様に二度三度、剣をぶつけ合った。そのいずれも、コウガの方が押されている。王冉は執念深く敵に斬りかかり、そしてとうとう、力負けしたコウガが蛮刀を取り落としてしまった。
「勝負あったな……」
剣の切っ先を、憎き仇に向ける王冉。コウガは逃げ出すでもなく、目の前の褐色少年を睨み返した。
「これが天命というものか」
コウガは天を仰ぎながら呟く。その声色に、怯えは感じられない。
「お前は、我が友李解の仇であった。天が私に仇を討つよう導いてくれたのだ」
「ならば、その友とやらを俺が射たのも天命だ」
「ああ、そうかも知れぬ」
王冉の胸中には、目の前の敵に対する怒りも悲しみも湧かなかった。仇討ちの高揚感さえ生まれない。敵が今ここで自分に討ち果たされようとしているのが天命であるなら、李解がこの敵に射倒されたのもまた天命であるかも知れない。不思議と、王冉はそういった考えに納得した。
「俺も天命に随い、戦場の土となろう」
「言われずとも。この大地の土となるがいい」
王冉は剣を横薙ぎに振るった。胡人の美しい顔は胴から切り離され、赤い飛沫を散らしながら宙を舞う。そうしてそれは空しく地面に転げ落ちた。
王冉は、深く呼吸をした。その脳裏には、今は亡き李解の姿が浮かんだ。彼の仇を、今ここで討ち果たしたのであった。
趙充国の部隊は、包囲を破って敵陣を襲い、大いにかき乱した。李広利もそれに続いて敵に猛攻を加え、囲みを解いて脱出することに成功した。その様はさながら破れた袋から水が零れ出るが如きである。そうして、漢軍は窮地を脱することができたのであった。
長安に帰参した趙充国を見た武帝は、驚愕と共に嘆息せざるを得なかった。激戦の最中にあって自らの身を危険に晒した彼は、二十数か所に渡って矢傷を負っていたからだ。これによって趙充国は中郎(皇帝の近侍の武官)となり、車騎将軍長史(高位の将軍である車騎将軍の属官)に任じられた。
その後、趙充国は武帝、昭帝、宣帝の三代に渡って仕え、匈奴、氐、羌などの異民族と戦って大いに軍功を挙げた。それによって彼は後漢代、班固が現した歴史書「漢書」内に「趙充国辛慶忌伝」という列伝を立てられ、そこに彼の活躍が記述された。宣帝の使者に「羌の勢力はどれほどか。我々はどれだけの兵力を用意すればよいか」と問われた際に彼が答えて言った「百聞は一見に如かず」という言葉は、今日の日本人の多くが知る所であろう。
その後、趙充国は武帝、昭帝、宣帝の三代に渡って仕え、匈奴、氐、羌などの異民族と戦って大いに軍功を挙げた。それによって彼は後漢代、班固が現した歴史書「漢書」内に「趙充国辛慶忌伝」という列伝を立てられ、そこに彼の活躍が記述された。宣帝の使者に「羌の勢力はどれほどか。我々はどれだけの兵力を用意すればよいか」と問われた際に彼が答えて言った「百聞は一見に如かず」という言葉は、今日の日本人の多くが知る所であろう。
一方の李広利はどうか。彼はその後、中山靖王劉勝(この名前に思い当たる節がある人は三国志の愛好家であろうと推察する。蜀の劉備は中山靖王劉勝の子孫を自称し、劉勝の父親である景帝の血を引いているとしていたからだ)の子で武帝の甥に当たる丞相劉屈氂と謀り、李広利の妹李夫人の産んだ昌邑哀王劉髆を太子として立てようと画策した。武帝の崩御後に外戚として権力を握ろうと目論んだのである。
ところがこの目論見は李広利にとって悪い方向へ進んだ。郭穣なる者が「劉屈氂夫人が呪詛を行って陛下を呪い殺そうとし、李広利と共に昌邑王を次代の帝にしようと祈祷している」と上奏したのだ。劉屈氂はこれによって腰斬刑に処せられ、その妻子もまとめて族誅された。李広利もまた共謀者とされ、彼の妻子にも連座制が適用されて同様に処刑された。
この時、李広利は七万の軍を預けられて五原郡より出撃し、匈奴討伐の陣中にあった。本国で自らの妻子が巫蠱(木製の人形を地中に埋めて対象を呪詛するという呪術)の疑いをかけられ誅殺されたという報を受けた李広利は大いに憂懼したが、軍功を挙げようと進軍を続けた。功があれば許されると踏んだのかも知れない。その後李広利軍は敵の左大将を討ち、多大な損害を敵に与えたが、属官たちが「弐師将軍は衆兵を危険に晒して軍功を求めているが、必ず敗れるに違いない」と言い、共謀して李広利を捕縛しようとした。李広利はこれを斬って尚も戦闘を続けたが、激しい戦いに漢軍、匈奴共に多くの死傷者を出した。その後、匈奴が後方から奇襲をかけ、漢軍はさんざんに打ち破られてしまった。
――これはもう敵わない。
ここに至って、李広利はとうとう降伏したのである。
匈奴に降った李広利は、単于に優遇された。しかし、李広利が自分よりも高い位に昇ったことを恨んだ衛律なる亡命漢人が単于に彼のことを讒言した。単于は怒って李広利を処刑したのであるが、李広利は死の間際に「私は死しても匈奴を滅ぼさん」と言い残した。その後、匈奴に災いが降りかかった。雪が数か月降り続き、家畜が死に、人々は疫病にかかり、作物も実らなかったのである。単于は恐れを為して李広利のために祠を作り、そこに彼を祀ったのであった。
「私は王冉という者だ。貴様、名は何という」
「……コウガだ」
敵はあの甲高い声で答えた。あの雁門での一件以来、王冉は片時たりともこの少年の声を忘れたことはない。
王冉の切れ長の目に、殺意の炎が灯った。対するコウガと名乗った胡騎は、少しも顔の皮を動かさない。
先に動き出したのは王冉であった。殺意を乗せた矢が空を切りながら飛んでいくが、そう簡単に勝負はつかない。コウガはその矢を躱し、そして返礼とばかりに矢を返してゆく。
艶のある黒髪を揺らし、玉のような雫を首筋に垂らしながら、王冉は馬を走らせる。敵の仮面もまた、小兵でありながらしっかりと馬腹を締めて戦場を疾駆する。
互いの弓射に決定打となるものは生まれなかった。騎射というものは高等技術であり、自らが馬の背で跳ねながら同じく馬を走らせ動き回る敵を射るのは容易ならざることである。だがそれでもこの二人の狙いは正確であり、並の騎兵であれば立ちどころに射抜かれていたであろう。
いつの間にか、二人の周りに他の兵の姿はなくなっていた。互いに一人の相手の命を取ることにのみ執着しすぎて、味方から遠ざかりすぎたのだ。
王冉は甚だ疲労していたが、それ以上に馬が疲れ始めていた。明らかに動きが悪くなっている。だが見た限り、それは相手の馬も同様であった。
王冉は、再び動き出した。敵に向かって一直線に突っ込むように馬を駆けさせる。それを迎え撃つように、コウガは弓を引いた。すぐに放つことはしない。限界まで引きつけて放てば、確実に仕留められる。それがコウガの算段であった。
だが次の瞬間、コウガは信じられないものを目にした。
「なっ――」
普通、騎射での戦いは、相手を自分の左側に収めるよう立ち回るのが常である。馬上から弓を引く場合、右利きであれば正面と左側には矢を射かけることができるが右側には矢を向けられず、そこが死角となるためだ。だからコウガは当然、王冉が自分の左側に向かってくるものと思って弓を構えていた。
だが、王冉は予想に反して、自分の右側に突っ込んできたのだ。
その理由は、次の瞬間に判明した。王冉は、まだ矢筒に矢が残っているにも関わらず左手に持つ弓を捨てたのだ。そして――
「李解の仇だ!」
「何! 剣だと!」
王冉は、腰に佩いている剣を抜いた。想定外の行動に反応しきれず、コウガは弓で白刃を受け止めたが、当然弓は切り裂かれ、自身も刃を避けた際に体勢を崩して落馬してしまった。
王冉は、賭けに勝ったのだ。一旦通り過ぎた王冉は、再び馬首を返してコウガの方に向き直った。
「……貴様よくも……」
コウガはすぐさま顔を上げた。その顔を見た時、王冉ははっとした。
その顔には、黒い仮面がなかった。恐らく落馬の時に外れてしまったのであろう。白日の下に晒された彼の顔貌は、どんな女人よりも艶やかであった。照灼と輝く美貌に、王冉は呆気に取られてしまった。
コウガは幼き頃より騎射に長け、神童と持て囃されていた。武を尊ぶ匈奴においては、弓馬に長けることこそ何よりも重たい評価軸である。だが一方でその優しげな、女子とも見紛う麗しい顔によって、他者から侮りを受けることも珍しくなかった。それを常々苦々しく思っていた彼は、黒塗りの仮面を作り、人前では常にこれを用いて顔を隠すようになったのである。
美しく透き通るような目は、温麗でありながらもやはりそこは戦士というべきか、鷹のように鋭い眼光を発して王冉を睨んでいる。
王冉は馬を降りた。馬の疲労が溜まりすぎて、これ以上は走らせようがない。自分に近づいてくる王冉に対して、コウガもまた立ち上がって蛮刀を引き抜いた。ここからは、短兵器同士の戦いとなる。
先に斬りかかったのは王冉であった。コウガはその剣撃を受け止めたが、力で押されて後ずさった。匈奴の得意とするのは騎射であり、実は意外と白兵戦は苦手である。加えてコウガは王冉に体格で劣っているため、どうしても刀剣同士のぶつかり合いでは不利になる。
続け様に二度三度、剣をぶつけ合った。そのいずれも、コウガの方が押されている。王冉は執念深く敵に斬りかかり、そしてとうとう、力負けしたコウガが蛮刀を取り落としてしまった。
「勝負あったな……」
剣の切っ先を、憎き仇に向ける王冉。コウガは逃げ出すでもなく、目の前の褐色少年を睨み返した。
「これが天命というものか」
コウガは天を仰ぎながら呟く。その声色に、怯えは感じられない。
「お前は、我が友李解の仇であった。天が私に仇を討つよう導いてくれたのだ」
「ならば、その友とやらを俺が射たのも天命だ」
「ああ、そうかも知れぬ」
王冉の胸中には、目の前の敵に対する怒りも悲しみも湧かなかった。仇討ちの高揚感さえ生まれない。敵が今ここで自分に討ち果たされようとしているのが天命であるなら、李解がこの敵に射倒されたのもまた天命であるかも知れない。不思議と、王冉はそういった考えに納得した。
「俺も天命に随い、戦場の土となろう」
「言われずとも。この大地の土となるがいい」
王冉は剣を横薙ぎに振るった。胡人の美しい顔は胴から切り離され、赤い飛沫を散らしながら宙を舞う。そうしてそれは空しく地面に転げ落ちた。
王冉は、深く呼吸をした。その脳裏には、今は亡き李解の姿が浮かんだ。彼の仇を、今ここで討ち果たしたのであった。
趙充国の部隊は、包囲を破って敵陣を襲い、大いにかき乱した。李広利もそれに続いて敵に猛攻を加え、囲みを解いて脱出することに成功した。その様はさながら破れた袋から水が零れ出るが如きである。そうして、漢軍は窮地を脱することができたのであった。
長安に帰参した趙充国を見た武帝は、驚愕と共に嘆息せざるを得なかった。激戦の最中にあって自らの身を危険に晒した彼は、二十数か所に渡って矢傷を負っていたからだ。これによって趙充国は中郎(皇帝の近侍の武官)となり、車騎将軍長史(高位の将軍である車騎将軍の属官)に任じられた。
その後、趙充国は武帝、昭帝、宣帝の三代に渡って仕え、匈奴、氐、羌などの異民族と戦って大いに軍功を挙げた。それによって彼は後漢代、班固が現した歴史書「漢書」内に「趙充国辛慶忌伝」という列伝を立てられ、そこに彼の活躍が記述された。宣帝の使者に「羌の勢力はどれほどか。我々はどれだけの兵力を用意すればよいか」と問われた際に彼が答えて言った「百聞は一見に如かず」という言葉は、今日の日本人の多くが知る所であろう。
その後、趙充国は武帝、昭帝、宣帝の三代に渡って仕え、匈奴、氐、羌などの異民族と戦って大いに軍功を挙げた。それによって彼は後漢代、班固が現した歴史書「漢書」内に「趙充国辛慶忌伝」という列伝を立てられ、そこに彼の活躍が記述された。宣帝の使者に「羌の勢力はどれほどか。我々はどれだけの兵力を用意すればよいか」と問われた際に彼が答えて言った「百聞は一見に如かず」という言葉は、今日の日本人の多くが知る所であろう。
一方の李広利はどうか。彼はその後、中山靖王劉勝(この名前に思い当たる節がある人は三国志の愛好家であろうと推察する。蜀の劉備は中山靖王劉勝の子孫を自称し、劉勝の父親である景帝の血を引いているとしていたからだ)の子で武帝の甥に当たる丞相劉屈氂と謀り、李広利の妹李夫人の産んだ昌邑哀王劉髆を太子として立てようと画策した。武帝の崩御後に外戚として権力を握ろうと目論んだのである。
ところがこの目論見は李広利にとって悪い方向へ進んだ。郭穣なる者が「劉屈氂夫人が呪詛を行って陛下を呪い殺そうとし、李広利と共に昌邑王を次代の帝にしようと祈祷している」と上奏したのだ。劉屈氂はこれによって腰斬刑に処せられ、その妻子もまとめて族誅された。李広利もまた共謀者とされ、彼の妻子にも連座制が適用されて同様に処刑された。
この時、李広利は七万の軍を預けられて五原郡より出撃し、匈奴討伐の陣中にあった。本国で自らの妻子が巫蠱(木製の人形を地中に埋めて対象を呪詛するという呪術)の疑いをかけられ誅殺されたという報を受けた李広利は大いに憂懼したが、軍功を挙げようと進軍を続けた。功があれば許されると踏んだのかも知れない。その後李広利軍は敵の左大将を討ち、多大な損害を敵に与えたが、属官たちが「弐師将軍は衆兵を危険に晒して軍功を求めているが、必ず敗れるに違いない」と言い、共謀して李広利を捕縛しようとした。李広利はこれを斬って尚も戦闘を続けたが、激しい戦いに漢軍、匈奴共に多くの死傷者を出した。その後、匈奴が後方から奇襲をかけ、漢軍はさんざんに打ち破られてしまった。
――これはもう敵わない。
ここに至って、李広利はとうとう降伏したのである。
匈奴に降った李広利は、単于に優遇された。しかし、李広利が自分よりも高い位に昇ったことを恨んだ衛律なる亡命漢人が単于に彼のことを讒言した。単于は怒って李広利を処刑したのであるが、李広利は死の間際に「私は死しても匈奴を滅ぼさん」と言い残した。その後、匈奴に災いが降りかかった。雪が数か月降り続き、家畜が死に、人々は疫病にかかり、作物も実らなかったのである。単于は恐れを為して李広利のために祠を作り、そこに彼を祀ったのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。
幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる