一本の桜 ➤ 記憶

藤原 向夏

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陸 の 正体

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 「  雷  ? どうしたん  。」彼が私に声を掛けてきた 。「  えっ。 あ ...  陸  。  なんでもないよ 」私は 動揺しながら彼にそう答えた。 すると 彼は 「  ふーん 」と
答えた。私は、そのまま彼と歩き続けた。でも彼は何も話さなかった。どうしたんだろう。いつもならいっぱい話してくるのに。
「  陸  。 どうしたの  ?」私は首を傾げながら陸に聞いた。
「  えっ、 別に 。 なんでもない  」彼は動揺しながら私にそう答えてきた。怪しいな ~ 。でもあんまり聞くと嫌われちゃうから聞かないでおこうかな。うー...、でもやっぱり気になる 。 聞いてみようかな 。
「 ねぇ。 陸 」私は陸に声を掛けた 。
「 どうしたん?雷 」彼は首を傾げてそう言ってきた。
「 さっき、動揺してたけど考え事でもしてたの?」私は首を傾げながら彼にそう聞いた。彼は、微笑みながらこう言った。「 そうだよ。好きな人の事を考えてた」好きな人って誰なんだろ。私の事ではないのは確定してるけど、恋愛の相談なら私得意なのになんで私に聞いてこないのかな 。私は「 そうなんだ 」と答えた。そこから暫く、無言が続いた。
「 私、家こっちだから またね 。」私は陸に手を振り走って家に戻った。

次の日になった。今日は珍しく陸が学校にいない。その時、一人の女の子に声を掛けられた。その子は前まで佐野 秋雷さんを虐めていた人。
「  ねぇ。 あんた 」彼女が私を睨みながら声を掛けてきた。
「 なんですか ?」私は首を傾げながらそう答えた。すると彼女は「 陸くんの事 好きなの? あんた 常に陸くんの近くにいるけど」彼女は私にそう聞いてきた。私は返事に困った。確かに私は常に陸の隣に居る。でもそれが好きという感情からなのか友達だからという理由なのか分からないで自分もいた。だからいきなり指摘されて返事に困っていた。
「  好きなら、やめた方がいいわよ。」彼女がそんな事を言った。私は「 なぜ?」首を傾げて彼女にそう聞いた。「 アイツを好きになった人は必ず、記憶が無くなる。幼馴染の子との記憶が必ず消えてるの。僕の友達もそれで幼馴染の事を忘れた。」彼女がそう言った。「 えっ。でも、それだったら。」私は、記憶が少しずつ無くなっている事になんとなく気づいていた。でもそれが陸のせいだとは思ってはなかった。自分の記憶力の問題だと思っていた。違ったんだ。でもなんで自分の事を好きになった相手の記憶を消すんだろ。てゆうかなぜ、彼女はその事を知っているの。
「 なぜ、陸のせいだと言い切れるの ?」私は首を傾げて彼女に聞いてみた。すると彼女は「 アイツ、桜の木に良く来てるみたいでしょ。あの桜の木、戦争やってた頃にここ、一度焼け野原になって桜の木も焼けてそれっきり、植えてないらしいの。なのになぜ、その桜の木があるの。おかしいでしょ。」彼女がそう言ってきた。確かにおかしいかもしれない。歴史でここは一度焼け野原になった後に植物を植える行為はしていない。したらまた狙われる可能性があるからと先生が言っていた。でもあの桜の木は戦争の半ばからある。
「 えっ。 じゃあ... あの桜の木は ...」私が彼女に聞いた。「 記憶を無くす桜の木 、それもその桜の木の主神が陸って事。」彼女がそう言ってきた。信じられない。陸が私や彼女の友達の記憶を消したって事。でもなんのメリットがあるの。陸にとってのメリットがない気がする。「 でも、それじゃあ陸にとってのメリットは ...」私が彼女にそう聞いた。すると彼女は「好きな子を近くにおく為に邪魔者、その子の大切な人との思い出を自分と塗り替えて愛される。それがあのクソ野郎のメリットだろ」彼女がそう言った。確かにそれだった辻褄が合う。大切な人を自分に塗り替えれば愛される。私は、陸に好意を抱いてた、陸も私に好意を抱いてた。私の好意は陸によって作られた嘘だったんだ。
「 貴方。どうするの ?」彼女がそう聞いてきた。
「 どうするのって ...」私は言葉が出なかった。どうしたいのか分からなかったからだ。
「 陸に良いようにされて悔しくないの ?」彼女が睨みながらそう聞いてきた。確かに、嘘で塗られた好意を抱かせられていた事は悔しい。でも大切な人を忘れられるのはいい事ではないの ...かな 。縁を切っても思っていた、呪縛を陸は解放してくれたんじゃないの 。
「 悔しいよ。でも、陸にその事を言ってもし陸が消えたら、それの方がもっと嫌だ っ.ᐟ.ᐟ」私は彼女にそう言った。すると彼女は「 なら、消させなければいいじゃない。」と答えた。
「 どうやって。」私は彼女にそう聞いた。
「 だから、アンタが本当の気持ちを応えてアレが失望すると思うの?って事。」彼女がそう答えた。
「 好きなら消すんじゃなくて思いを伝えろっての。あの阿呆が。」少し彼の悪口を彼女がいい。
「 想いを伝えたら消えないかもしれないって事?」首を傾げて彼女に聞いたら。「そういうこと」と返された。
「 わかった。 陸が学校に来たら、想いを伝えてみる。ありがとう、瑠花さん」私は彼女にお礼を言った。
「 別にいい。 どうか、僕の友達の記憶を取り返してあげて。」彼女が悲しそうな笑顔で私にそう言ってきた。
「 わかった。」私は、頷き「 またね」と彼女に声を掛けた。彼女も「 バイバイ」と言ってくれた。
陸に想いを伝えるか... 。告白みたいになるなぁ。でもそうすれば、瑠花さんの友達の記憶と自分の記憶が戻ってくるかもしれない。
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