まおはちゆと結ばれたい

ちぇのあ

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侍の国

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門を潜る際には検問はなく、陽水に引けを取らない活気が街に満ち溢れている。
目の前の露店には青海の先から輸入されたと言う、この国の世界地図まで販売されているから驚きだ。

千癒「あたし達以外にも浴衣を着ている人が多いね!」

真桜「そうだね、浴衣で着て正解だったようだ。」

地図を広げると自分の知らない領域がいくつか描き示されている。
黒海に青海・・・未開地域・・・冒険心がくすぐられる。
縁日の露店を進み中央の広場へ進むと、何やら太鼓や笛の音に合わせて外側を人々が中央を囲むように踊っている。
その内側を美しい女性達が舞っている。

真桜「周りの人に話を聞いたところ、年に一度催される宝刀祭だそうだよ。」

千癒「あの刀・・・怖い。」

目を凝らせば、遠くからでも禍々しさが伝わってくる。
空気は場に似合わないように寒い。
見れば腕に鳥肌が立っている。
この広場に長居は無用だ。
笛の音が遠ざかっていき、また活気の良い喧噪が辺りを包む。
もう大丈夫だろう。

真桜「ちゆちゃん、もう大丈夫かな?」

千癒「うん、びっくりしちゃった。相当年代物の刀だったのかなぁ?」

樹箱に厳重に仕舞われていた刀の切っ先は赤く染まっていた、
まるでつい最近何かを斬ったかのように・・・深く考えるのは止めたほうが良さそうだ。
縁日をしばらく巡ると良い匂いがする。
近くで見れば芋や海藻を鍋で煮詰めているようだ。
この匂いは・・・魚介出汁を使っている?

真桜「少し早いけど、ここでお昼にしようか。」

千癒「やった♪ちゆ鍋料理大好き~。」

簡易的に作られた部屋に入り、畳に腰を降ろす。
時期は温かくなり出された飲み物はよく冷えた麦茶。
道中の田園の麦から作ったのだろう。
濃厚であるが味わいは澄んでいる。

千癒「お茶おいしいね♪」

真桜「そうだね、歩き疲れた体に染み渡るよ。」

喉を爽やかな麦が駆け抜けてゆく。
昼から贅沢をして大きめの鍋のサイズを二人でよそい食べる。

千癒「具が染み込んでいておいしい♪」

真桜「ほほう…これは何回も熱を加えて冷ますのを繰り返さないとできない柔らかさだ。」

よく染みた昆布や大根を美味しく頂く。
浴衣のちゆちゃんを対面で見るのも僥倖だ。
和の雰囲気を楽しみつつ昼食を完食する。

千癒「まおくん、ごちそうさま!」

真桜「旅の醍醐味のひとつは美味しいごはんだからね!美味しく食べれたかな?」

千癒「うん、満腹だよ~。」

真桜「それは何よりだね♪」

食後にちゆちゃんを連れて城内を観光すると言う体裁で潜入することにした。
どうやら天守閣で軍議が行われているらしい。
今回は魔王としての力を使い、人物として感知されにくい状態を30分間継続させる。
並みの者では存在に気付く事は無い。
数多の歴戦を経て隠形降魔として畏れられたのは伊達ではない。

具足鎧の衛兵達が階段を行き来している。

千癒「わぁ、こんなに近いのに全然気付かない~。」

真桜「そうだね、それにしてもこの柱は立派だなあ。」

樹齢300年はありそうな大黒柱を中心にして、階段が続いてゆく。
途中で茶室のような部屋に座りちゆちゃんとくつろぐ。
上の方から声が小さいが聞こえてくる。
上に登れば何か情報が得られるだろうか。

千癒「まおくん、まおくん。」

真桜「あ…どうしたの、ちゆちゃん?」

千癒「も~、さっきから何回も呼んだのに~。」

真桜「ごめんね、つい考え事しちゃったよ。」

千癒「今は魔王じゃなくて、ただのまおくんなんだから、難しい事は考えちゃだめだよ?」

真桜「うんうん、そうだよね。」

千癒「お昼からちゆを可愛がって欲しいなっ?」

静かに畳に横になり僕を見つめるちゆちゃん。
浴衣が程よくはだけて魅惑的な姿が映り、黒髪ロングの可憐な美少女に見つめられる。
この国の情報など気にしている場合では無い。

真桜「日が暮れるまでちゆちゃんをかまっちゃおうかな♪」

千癒「このお部屋でお泊まりしてもいいんだよ?♪」

まったく、お泊まりデートは最高だぜ!
ちゆちゃんを存分に撫でていると、下りの階段から強い気配を感じる。
登ってきた人物は迷わずこちらに向かい襖を開ける。

????「…気のせいか。」

気配を感知しているのか。
咄嗟に霧隠れを併用して正解だった。
件の人物はまた階段を上がっていった。
ちゆちゃんと話をして、続きは城下町の旅籠でしようと決めた。
階段まで行くと上からの話し声が鮮明に聞こえる。

家臣「魔族討伐の同盟はつつがなく進んでおります。」

侍の国の大名「であるか。しかし宝刀祭…お主の手にも余るか。」

剣聖「は、まだ修行中の身にござれば…。それを抜いてもあの剣は異形なり。城下町どころか街道の外からも悪い噂が絶えない。」

侍の国の大名「罪人に罪人を斬らせとったんじゃ…余興でな。あの剣の管理法に生き血を滴らせるとある。あの後は笑えんかったわい。」

家臣「剣が罪人の斬口から離れぬと思うたら、赤く血管を浮かせ吸っておりましたな…。」

家臣「剣聖殿の御助力が無ければ、討ち取る事叶いませなんだ。」

剣聖「男の意思に反して刀が暴れ、片腕とは思えぬ怪力、剣速…。腕を斬り落とした後も剣だけが動くのを見て身が震え申した。恐らくこの国から生まれた物では無いのだろう。」

話を聞くにあの剣の処分に困っているようだ。
器次第では制御不能になり、厄災と化す。
文字通り両刃之剣と言える。
それでも手離せないのだ。
爆弾を他人にあげる馬鹿は居ない。

真桜「…降りようか。」

千癒「うん!」

この国の闇を垣間見つつ、活気ある光の空間へ逃れるように来た道を引き返すのであった。
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