君との距離

月城

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いつもの場所。

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いつもこの場所にいる。

学校の屋上は自分が一番のんびりできる場所。

いつも上から、ぼんやりと人の姿を眺めるのも好きだし、何より静かに自分の時間を過ごせるのが一番好きだ。

そう思いながらも、ここの屋上はあまり人が来ないので、ゆっくりできる。

ここの学校は屋上が四つに分かれていて、自分がいるのは一番人気のない四番目の屋上。

人気があるのは一番目の屋上と、二番目の屋上。

一番クラスから近い屋上のため、生徒がよく使っている。

自分がいるのは、あまり使われることのない教室があるため、ほとんど人が来ない。

それ以外にも、四番目の屋上は一番校舎から遠い。

そのこともあり、ほとんどの人がここに屋上があるのを知らない。

それをいいことに、自分はのんびりとここで一人ゆっくりご飯を食べている。

言い方を変えればボッチ飯を食べているけど、そんなものは一人暮らしをしている人にはあまり関係ないと思っている。

そんな気ままにご飯を食べて、余った時間は、寝っ転がり、空を眺めるのが日課だった。

最近は目が悪くなってきたのも少し気になっている。

メガネはできるだけかけたくないから、かけないようにしてる。

でも休日はかけることが多い。

本当は緑色を見たほうがいいというけど、緑を見ると目がちかちかしてしまうため、今は少しでも遠くを見ようと思い、空を眺めて、これ以上目を悪くしたくないという思いがある。

そう思いながら、ぼんやりと空を眺める。

空の上は風が強いのか、雲の流れが今日は早い。

そう思いながら、予鈴がなるまで、こうしていようと思った。

昔は、こうしてると必ずあの子が探しに来て、一緒にご飯を食べて、一緒に横になっていたっけ?

太るよと言うと、太ってもまだ標準超えてないって、よく言われたっけ。

そんな高校の時の思い出を頭の中に流しながら、空を眺めていた。

あの時は、こうして眺めてると、自然にあの子が仲良しだよ。とか言いながら手を握り締めてきたっけ。

こうしてると本当にあの子のことしか浮かばない。

それ以外確か何か思い出あったはずなのに、屋上だとあの子のことが一番多いな。

そう思いながら、ゆっくり目を閉じるとすぐに予鈴がなりだした。

このはじめの予鈴は、授業が始まる10分前のことを教える予鈴のはず。

そう思いながら、腕時計を確認する。

確かに授業まで10分前だった。

「ここの時間は正確で助かるよ。」

そう言いながら、階段をゆっくりと降りてく。

一番遠い校舎と言っても、自分の足だと五分もかからないので、というか、近道を知っているのでそんなに急いで歩くこともない。

そんなことをして、余裕で教室につく。

「みんな、まだついてないか。」

クラスの中を見渡すと、そこには教室でご飯を食べていた生徒がいた。

「いつも先生早いよね。どうやってあんな遠い屋上からこんなに早く来れるんだよ?」

一人の男子生徒が普段から気にしてることを聞いてくる。

「そんなこと教えたら、お前らが四番目の屋上使いだすだろう?そうすると俺ののんびりした貴重なお昼休みがダメになる。」

先生は少しえばったように言い返す。

大井時雨(おおいしぐれ)はここの高校の卒業生でもあり、昔は校内をかなり歩き回って、いろいろ道を覚えた。

そのため、もう何回も歩き回ったところを、簡単に教えてしまうのは楽しくない。

そう思っていたので、あまり教えたくないので、最終的には自力で探せという。

「さて、みんなが揃うまで待つか。」

そうして待ってると、次から次へと生徒が教室に入ってくる。

「時雨ちゃんいつも早いよねー。」

女子生徒は何人かは、大井のことを下の名前でちゃん付けして呼ぶ。

「お前らより年上なんだから、ちゃんはないだろう?」

そんな軽く口を聞くと、何人かは笑う。

「まだ若いからチャンでいいでしょー。」

そう言われて、小さくため息をついた。

「なら、それでいいよ。」

少しあきらめ気味に言うと、何人かがやったといいながら楽しそうに笑う。

こんなに穏やかだと、授業したくなくなる。

そう思い、全員集まるまで出席を取らずに待つことにした。

そうしてると、授業が始まって15分すぎてから、出席を取り始める。

「今日、授業面倒だから、ニュース見よう。」

大井はそんなことを言い出して、教室にあるテレビをつける。

いつも夏休みになると決まって、このニュース番組を見る。

生徒は授業がないことに喜んで、おしゃべりをしようとしていたけど、ニュースをつけたらみんなニュースにくぎ付けになっていた。

最近は何だかこうやって授業をやらないでのんびりすることが増えてきた。

こうしていても、クラスの出席率は皆出てくるから悪くない。

なんだかんだ言って、授業は結構順調に進んでるし、こうやってたまには違うことをやるとみんな黙って話を聞いてくれるし、なおかつニュースをつけてるときは変に授業をやるより、みんな静かにしているから逆にテレビの力ってすごいなとある意味関心してしまう。

そんな感心していながら、ニュースを見る。

今回は自分的にこれと言って気になるニュースは出てこなかった。

そう思いながら、授業を終わらせると、クラスの中からは気になったニュースの話が飛び交っていた。

やはり年齢によって、気にするニュースが違うんだな。

そう思いながら、今日はもう授業がないから、帰りの準備をしていた。

その時に、屋上に忘れ物をしたことに気が付いた。

「何で気が付かなかったんだろう?」

自分でもなんで忘れていたのか不思議なぐらいだ。

それは簡単に作ったテスト問題。

そんなものを忘れてくるなんてどうかしている。

けど、あそこの屋上には誰も行かないと思う余裕から、あとで行けばいいかと、帰りの下校時刻を過ぎてから向かった。

ここの屋上のカギは近くについているから誰でも入れるけど、ダイアル式の番号南京錠のため、番号がわからないとカギを開けることができない。

そのため生徒は誰も番号を知らないから、四番目の屋上に来ても番号がわからなくて開けることができない。

そのため、生徒が入ってることは無い。

南京錠を開けるとカギがはいていない。

「あれ?」

おかしいな?

そう思いながら、ドアノブをひねるとカギが開いていた。

誰かがいるということはわかった。

たまに教師で、カギを持ったまま屋上に入ってしまう人がいる。

珍しいな。

そう思いながら、屋上に入って、自分が寝っ転がっていたところに向かう。

誰かいることは何となくわかっていたけど、少し予想外にであった。

そこには、自分と同じように仰向けで寝ている一人の女の人がいた。

しかも、大井が取に来たテストを頭の下に引いて、枕代わりにして眠っていた。

両手はお腹に置かれていた。

何でこの人はここで寝てるんだろう?
しかも俺の作ったテスト問題を枕にするって?
なんて神経が図太い。

素直にそう思ってしまった。

そう思ってると、その人は目を覚ました。

「あ、この持ち主さん?」

その声を聞いて、あ、起きた。と思った。

「枕にされてるものを忘れたものです。」

素直にそう言うと、その人はへへとなぜか照れたように笑うとゆっくりと起き上がり、枕にしていたものを手渡した。

「はい、どうぞ。枕にしててごめ・・・・・。」

途中まで言葉を言うと、その人から言葉が消えた。

「あの?何か?」

そう言いながら、差し出された忘れ物を受け取ろうと手を伸ばしていたが、言葉が途中で止まる。

何だろう?
この人見たことある?

そう思ったときに、その人口から懐かしい言葉が出てきた。

「時雨君?」

その言葉を聞いて、え?と一瞬顔が呆けた。

「何で名前知ってるんですか?」

見たことあるような、でも誰か知らないのになんでこの人は自分の名前を知ってるんだろう?

そう思うと、その人は自分の名前を名乗った。

「リア。中森(なかもり)リア。覚えてないですか?」

そう言って、その人は長かった髪の毛を一つに結んで髪の毛が短く見えるようにした。

その姿を見て、大井は思い出した。

「犬リア!」

名前の前に犬をつけて名前を呼ばれた。

「犬は余計です!時雨先輩!」

犬リア。
そう呼ばれていたのは、よく多いが屋上にいたときに、わざわざ探しに来て、一緒にご飯を食べて、一緒に寝っ転がった人。

犬と最初についたのは、本当に子犬みたいにコロコロと大井の後をよく追いかけてきたので、犬みたいだから最初は犬と呼んでいたけど、本人は犬と呼ばれるのが不満だったらしく、ずっと犬を否定していた。

「その呼び方直してください。そうしないと生徒にまでうつります。」

テスト問題を手渡すと、何食わぬ顔で大井の隣に来る。

「時雨先輩もう帰りますよね?一緒に帰りましょう。」

そのまま中森は大井の手を握る。

「おい、なんで手を握るんだよ?」

少し不満があるようで、手を振り払おうとする。

「昔はこうしてくれてましたよ。」

中森は楽しそうに笑いながら当然のように手を握ってきた。

この中森リアと言うのは、大井の一つ下の後輩。
同じ学校を出ていて、今こうしてよく会っていた屋上で再開した。
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