『完結』セプトクルール 超文明Sの野望

マイマイン

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3章 自由の章

ティアの依頼

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 今度の依頼いらいは、東の恐怖の森にある妖精ようせいたちの国、
『アールヴヘイム』からで、手が空いているすぐるとボブが依頼を受けることにしました。

「へえ、あの森には、エルフと言った妖精たちが住んでいるんだ・・・
きれいな森だから、妖精とかいそうだなとは思っていたけど・・・」
くわしい話はエルフの里にある王宮でするらしいぞ」
 すぐるとボブはスピネル王都を出て、恐怖の森に入ると、今度は森をさらに東へと進んで行きます。

「白いきりがだんだんくなっていくぞ・・・」
「霧につつまれた森ってなんだか、神秘的しんぴてきだね・・・
という事は、ここはもうアールヴヘイムの中だね、
エルフの里は、ここから北の方にあるってね、迷わないようにしなきゃ・・・」
この辺りは、方位ほうい磁石じしゃくくるってしまう
独特どくとく磁場じばを持っていますが、
すぐるは魔法使いとしての感を持っており、
霧の森の中でも、感覚が迷うことはなく、まっすぐ北へと進むことが出来ました。

 霧が晴れ木々が開けてくると、そこは丸太を重ねて建てられたログハウスが目立つ湖畔こはんの村で、
その周りを、とがった耳を持ち、
白と緑のローブをまとった人間そっくりな妖精、エルフたちが行きかっていました。

「ここがエルフたちの里か・・・素朴そぼくだけど、きれいなところだね」
すぐるはあたりを見渡みわたして言います。
「平和そうだな」里の北の方へ行くと、
白い石を組み上げて建てられたアールヴヘイムの女王の城が見えてきました。
見張りの兵士に依頼書を見せると、すぐるとボブは城の中の玉座の間へと急ぎます。

 すぐるとボブの視線の先に、高貴なドレスを身にまとい、
長い黒髪を後ろでお下げにしたエルフの女性が玉座に座っています。
「えっと・・・あなたが依頼主のティア様ですね」すぐるが依頼書を見て言います。

「はい、そうです。女王の妹に代わり、私が留守を預かっています」
「わぁ・・・美人だな・・・!」ボブがティアに見とれていると、依頼内容を話し始めました。

「皆さま、よく来てくださいました。依頼というのは他でもありません。
アールヴヘイムの王権おうけん象徴しょうちょうであるかんむりが、
何者かに盗まれてしまったのです。ぜひ、冠を取り返してきて欲しいのです」
すぐるたちは、依頼内容を聞き終わると、ティアに一礼をして、城の外へと出て行きました。

「冠を探しに行くのはいいけど・・・」
「まず、どこをさがせって言うんだよ・・・?」
エルフの里を出ようとすると、広場に人だかりができているのが分かりました。

「とんでもない話だわ!」すぐるとリリスはハッとして、人だかりに近づいてみました。
その場には、キーパー協会に所属するエルフのテイルと白魔法使いのカインの他、
エルフや森に住む魔法使いたち、そして、スピネルの国民たちが集まっていました。

「ゴーシャがまた森を開発だなんて・・・!」
「またこりもしないでねぇ・・・!」
「そんな・・・!森にはエルフや魔法使いたちが住んでいるというのに・・・!」
それを聞いたすぐるたちはハッとしました。
「えっ!?この森、開発されちゃうんですか!?」それに、テイルとカインが答えます。

「あら、あなたたちはすぐるとボブね。ええ、そうよ、北の国ゴーシャの王が、土地を広げる計画を立てたそうよ。
まったく!すでに、話し合いをしたのに、また私たちの故郷こきょうを・・・!」
テイルがいかりにふるえていると、カインが続けて言います。

「しかも、森で暴れているのはゴーシャの人間たちだけじゃない。
混沌カオス帝国エンパイアの連中も、
人間どもを野放しにはできんと言って、アールヴヘイムの王権の冠を盗み出し、
ゴーシャの者たちを追いだし、森の外へと乗り出そうとしているみたいだ」
それを聞いたボブは言いました。

「そうか、それで冠が盗まれたんだな!取り返すぞ!」ボブは駆(か)け出そうとすると、
すぐるがボブのうでをつかんで言います。
「待ってよ!どこにあるの!?」
「そうだよ、手がかりもないのに、どこ行くんだい?」
話を聞いていたさるの獣人が言いました。

「あなたは?」
「ぼくはハヌマーン・ワイルド、スピネルジャーナルの記者きしゃだよ」
ハヌマーンと名乗った猿の獣人は、赤いチョッキと白いズボンを着用し、
赤のキャップをかぶった半目はんもくの青年で、
こしには短剣を差しています。

「へえ、ぼくらがよく読むあの新聞の記者さん!?なんであなたがここに?」
「ぼくも反対運動に加わったまでさ。そもそも、なんでやつらは冠を盗んだんだろうね?」
それを聞いたすぐるはハッとします。
「そういえばそうだ!なんで盗んだんだろう?お金目当てかな?それとも・・・?」

「いや、これはうわさだけど、あの冠があると、絶大ぜつだいな力が手に入るって言われているんだ」
「絶大な力・・・?奴らはその力で、人間や反対勢力はんたいせいりょくい出そうとしているのかな?」
すぐるがこう言うと、ハヌマーンが答えます。

「まあ、世界支配を目論む混沌カオス帝国エンパイアなら、その可能性はあるだろうね。
そして、これはぼくの推察すいさつだけど、
この事件はかげで糸を引いている者がいるだろう」

「・・・陰で糸を引いている者?」
「そうさ、ぼくは帝国の真実を追っているんだ。
情報によると、帝国は北の塔を根城にしているらしい、
これに、連盟も動き出したようだ」

こうやって話していると、エルフたちがやって来て言いました。
「大変!ゴーシャの者たちとホワイト団が、森の木々を切り倒し始めたの!」
それを聞いたすぐるたちはすぐさま、そちらへ向かいます。
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