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8章 真実の章

傲慢の試練

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 シルトたちは最上階の特別房を目指して上って行き、途中、妨害ぼうがいしてくる聖戦士たちをけ散らしながら、さらに上を目指します。最上階の特別房の入り口に着くと、目の前に、青い高貴な服と白いミニスカートを着用した、青いひとみの長い金髪の少女が、よろいに身を固めた四人の聖騎士をひきいて現れました。

「あら、ここまで来るなんて思いもしませんでしたよ・・・シルトの皆さん・・・!今まで散々、連盟の邪魔じゃまばかりしてくれましたね・・・!」エリーがこぶしを鳴らしながら言います。

「シルトの旗印(はたじるし)は、『自由と正義』だ!それを脅(おびや)かす者は放っておけん!」メガロが言いました。
「『自由と正義』ですって?アハハハハ!あなたのかかげる正義なんて真の正義ではありませんわ!真の正義は平和のために力を注いでいる我々、世界平和連盟ですのよ!」

「そんな!無理やり相手の両腕りょううで両足をちょん切るのが正義なの!?」カインが言います。
「ああ、あの不埒ふらちな乱暴者の事?あの男、格闘かくとうに長けている事をいいことにはばを利かせていましたね・・・!あんな凶暴きょうぼうなヤツを野放しにしておいては、いずれ、社会に害毒がいどくをもたらすでしょう!あれで少しはおとなしくなるでしょうよ!」

「そんな!確かにあいつはイヤな奴だったけど・・・!じゃあ、テイルの腕と足も切断せつだんするの!?」
「テイル?ああ、あのエルフの武闘家ぶとうかね、女でありながら凶暴きょうぼうでつつしみを知らないし、いいかもしれないわね・・・!」エリーがにやりと笑うと、それを聞いたカインは首を横に振ります。

「違う!テイルは試合以外、悪くない人は絶対になぐったりしないよ!ひどいことをしないで!」
「いいえ!秩序ちつじょおびやかす者にはばつを与えないとね・・・!首をられないだけでも、ありがたいと思いなさい!あなたに手あつ介護かいごしてもらえれば感無量かんむりょうでしょう・・・!」それを聞いていたメガロは、鼻で笑うように言います。

「ほう、平和の名のもとなら手段を選ばないのが、お前たちの正義か!?」エリーは動じることなく言い返します。
「あなた、自分は連盟とはちがうと思っているでしょう?あなたたちシルトだって、自由のためなら平気で法をおかし、暴力ぼうりょくで解決するじゃない!どこが違いますの?」それを聞いたメガロはハッとしますが、ランスロットが前に出ました。

「だまれっ!貴様とメガロ殿どのは違う!」ファフナーも叫びます。
「キャプテンメガロには、弱き者に対する心があるが、貴様きさまにはそれがない!」シルフィーもおどり出ます。
「そうよっ!両腕がなくなったら、愛する人をくこともできないじゃない!」それを聞いたメガロの目からは迷いが消えました。

「・・・そうか、ありがとう、みんな!」メガロたちはエリーたちを見据みすえます。
「ええい!どこまでも連盟に逆らう気なの!?だったら、力ずくで屈服くっぷくさせるまでですわ!」聖騎士たちが身構みがまえると、そこに、閉じ込められていた人々が現れたのです。

「今度はぼくらがメガロを助ける番だ!」
「そうだそうだ!」皆の気迫きはくに、エリーたちはタジタジで、降参こうさんするしかありませんでした。

 あれから、煉獄収容所は陥落かんらくし、収容されていた人々は、全て解放され、エリーはそのままとらわれてしまいました。カインもテイルと無事に再会し、おたがいにき合います。

「ありがとう、カイン!」テイルの目からは、うれしさから涙がこぼれています。
「何言ってるのさ、パートナーなら当然だよ」そして、お互いに口づけをかわしました。

 すぐるとリリスも、後から来たエルニスやキャンベルとも再会します。
「えっ!?もう助けられたの!?」エルニスは唖然あぜんとしています。

「お主ら遅いぞ!」
「やっぱりメガロは英雄だったよ!」
「よかったですね、さあ、スピネルに帰りましょう!」

 メガロは、赤い法衣をまとう、白髭しろひげたくわえたセント・ニコラウスと話しています。
「セント・ニコラウス殿どの、ケガがなくて何よりです!」

「うむ、メガロもよくやってくれた!さあ、今度は我々分教会の拠点きょてんを連盟から取り戻せねば!」そこに、すぐるがやって来ました。
「メガロ、ありがとう!これを・・・!」すぐるが青い六角の『聖者のメダル』を手渡すと、メダルは彼のてのひらで青くかがやいたのです。

「うむ!どうやら『正義』と対になる『傲慢ごうまん』の試練を乗りえたようじゃな!」セント・ニコラウスが言うと、メガロは聖堂騎士たちをひきいてアーケロン号に乗り込み、ラップランドを目指しました。

 ラップランドのノースポールにあるポーラー大聖堂に着いたアーケロン号が停泊ていはくすると、メガロひきいる聖堂騎士団が一気に押し寄せてきました。連盟の聖戦士たちも抵抗しますが、戦力は聖堂騎士団の方が圧倒的あっとうてきに上で、どんどんり返していき、最後その場を仕切っている、よろいとドレスに身を固め、長い金髪を後ろでたばねた、連盟の聖騎士ジュリアとメガロの一騎打いっきうちも、真の正義に目覚めたメガロの杖がジュリアの剣をへし折ったことで勝負がつき、ジュリアはその場を去って行きました。

 分教会の総本山そうほんざんを取り返した聖堂騎士団の団長メガロは、奥にある祭壇さいだんに行き、そこで祈りをささげると、祭壇の前にメガロとうりふたつの姿をした水と海を司る神ポセイドンが現れました。

「うむ、北の聖者玄武げんぶよ、よく傲慢ごうまんの試練に打ち勝った!さあ、その聖者のつえをかざすがよい!」メガロが銀色の十字杖じゅうじじょうをかざすと、中央の青い石から青い閃光せんこうが放たれ、その光のベールは杖全体を包み、光がおさまると、銀色の杖が真珠のように見る角度によってうっすら虹色に輝いて見えます。

「うむ、聖者の杖は『神罰しんばつの杖』となった!そしてメガロには最高の防御魔法『純潔じゅんけつの氷河』をさずけた!さあ、氷河の守護聖人しゅごせいじんメガロよ、行くがいい!」
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