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第2話 ブラック・サンタクロース
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次に訊くのは、陽子の夫、茂和。
「あなたが第二発見者だと伺っています。その時の状況について詳しくお聞かせください」
茂和もパジャマ姿で、当惑した様子で話し始めた。
「あ、はい。……朝、妻に揺り起こされまして、リビングにいったら、あの状況で……」
「あの状況とは、サンタクロースが倒れていたことですか」
「そうです」
「その時、リビングに電気はついていましたか」
「ついていました」
志賀が陽子を振り向く。
「奥さん、いつ電気をつけたか覚えていますか」
「……すみません、覚えていません」
「そうですか。わかりました」
最後に訊くのは、一人息子の翔太。翔太もパジャマ姿である。
「翔太くんは、朝、どうやって起きたのかな。誰かに起こされた? それとも自分で起きた?」
「自分で起きた。お母さんとお父さんの話し声で」
「夜、何か物音は聞こえた?」
「ううん、聞こえなかった」
「ありがとう」
同じ質問を陽子と茂和にもしたが、二人とも何の物音も聞こえなかったといった。
「先生、広尾に連絡つきました。代わりのサンタクロースがくるそうです」
「そうか」
代役サンタの到着を待つ間、志賀は凶器と思われるブロンズ像から、鑑識の簡易キットで指紋を採取した。陽子と茂和、二人の了承を得てそれぞれの指紋と照合したが、いずれにも当てはまらなかった。
「先生、きたみたいです」
日菜子がカーテンを少し開け、窓の外を見ていった。鈴がシャンシャン鳴る音が聞こえてくる。志賀が表に出ると、ちょうどトナカイに引かれた橇から代役サンタが降りるところだった。
「ホウホウホウ、メリー苦しみマス」
「あほかお前は」
志賀はあきれて首を振った。
「いや、今日は楽しいクリスマスじゃないですか、陽気にいきましょう」
「おい、待て」
丸井家に入ろうとする代役サンタを引き止める。
「何ですか」
「何ですかじゃない、何だその格好は」
代役サンタの格好は、確かにサンタクロースなのだが、基調となっている色が黒だった。
「葬式にきたつもりか? お前のシンボルカラーは赤だろうが」
「ホウホウ、知らなくても無理はありません、これサンタクロースの喪服ね」
「縁起の悪いサンタだな」
「サンタクロースが殺されるなんてめったにないことね」
「そりゃそうだが、赤じゃないと調子狂うな」
「そんなことないね。名前にもちゃんと入ってるからね」
「は?」
「サンタ、黒ースってね」
「帰れよもう」
とりあえず家の中に入ってもらう。突然の黒サンタに丸井家の家人らは驚いていたが、志賀が説明して納得してもらった。
「おい、黒サンタ。この鑑識スリッパを履け。あんまり踏み荒らすなよ」
「ホウホウ、わかってます」
先ほど詳細には中を検めなかった袋の中身を、一個ずつ手に取っては黒サンタが持ってきた新しい袋の中に詰め直していく。
「ゲーム大人気ね。親御さんたちは大変だね」
「余計なことはいわんでいい」
ポイポイ中身を移していって、プレゼントの量が少なくなってきた時、志賀はふと、その中のおもちゃに目を止めた。
「…………」
「先生、どうかしましたか」
志賀が急に黙ったので日菜子が訊ねた。
「う~ん……」
袋の中に顔を突っ込み、色々確認し終えて、志賀は唸ってしまった。
「……よし。日菜子、悪いが黒サンタと一緒に今移し終えたプレゼントを一個ずつ確かめてくれないか」
「どうかしたんですか」
「うん。もしかすると、濡れてるかもしれないんだ……血で」
「血痕が付いてたんですか? マズいですねそれは」
「ああ。そんなプレゼント配れないからな。そうだろ、黒サンタ」
「ホウホウ、もちのろんね」
「あの、奥さん。ちょっと風呂場お借りしたいんで、ついてきてもらえますか」
「え? ……あ、はい……」
志賀はおもちゃの入った袋を手に持ち、陽子と一緒に風呂場に向かった。二人きりになると、志賀はそのおもちゃを陽子に見せた。陽子は赤面した。
「奥さん。本当のことを話してもらえますね」
「あなたが第二発見者だと伺っています。その時の状況について詳しくお聞かせください」
茂和もパジャマ姿で、当惑した様子で話し始めた。
「あ、はい。……朝、妻に揺り起こされまして、リビングにいったら、あの状況で……」
「あの状況とは、サンタクロースが倒れていたことですか」
「そうです」
「その時、リビングに電気はついていましたか」
「ついていました」
志賀が陽子を振り向く。
「奥さん、いつ電気をつけたか覚えていますか」
「……すみません、覚えていません」
「そうですか。わかりました」
最後に訊くのは、一人息子の翔太。翔太もパジャマ姿である。
「翔太くんは、朝、どうやって起きたのかな。誰かに起こされた? それとも自分で起きた?」
「自分で起きた。お母さんとお父さんの話し声で」
「夜、何か物音は聞こえた?」
「ううん、聞こえなかった」
「ありがとう」
同じ質問を陽子と茂和にもしたが、二人とも何の物音も聞こえなかったといった。
「先生、広尾に連絡つきました。代わりのサンタクロースがくるそうです」
「そうか」
代役サンタの到着を待つ間、志賀は凶器と思われるブロンズ像から、鑑識の簡易キットで指紋を採取した。陽子と茂和、二人の了承を得てそれぞれの指紋と照合したが、いずれにも当てはまらなかった。
「先生、きたみたいです」
日菜子がカーテンを少し開け、窓の外を見ていった。鈴がシャンシャン鳴る音が聞こえてくる。志賀が表に出ると、ちょうどトナカイに引かれた橇から代役サンタが降りるところだった。
「ホウホウホウ、メリー苦しみマス」
「あほかお前は」
志賀はあきれて首を振った。
「いや、今日は楽しいクリスマスじゃないですか、陽気にいきましょう」
「おい、待て」
丸井家に入ろうとする代役サンタを引き止める。
「何ですか」
「何ですかじゃない、何だその格好は」
代役サンタの格好は、確かにサンタクロースなのだが、基調となっている色が黒だった。
「葬式にきたつもりか? お前のシンボルカラーは赤だろうが」
「ホウホウ、知らなくても無理はありません、これサンタクロースの喪服ね」
「縁起の悪いサンタだな」
「サンタクロースが殺されるなんてめったにないことね」
「そりゃそうだが、赤じゃないと調子狂うな」
「そんなことないね。名前にもちゃんと入ってるからね」
「は?」
「サンタ、黒ースってね」
「帰れよもう」
とりあえず家の中に入ってもらう。突然の黒サンタに丸井家の家人らは驚いていたが、志賀が説明して納得してもらった。
「おい、黒サンタ。この鑑識スリッパを履け。あんまり踏み荒らすなよ」
「ホウホウ、わかってます」
先ほど詳細には中を検めなかった袋の中身を、一個ずつ手に取っては黒サンタが持ってきた新しい袋の中に詰め直していく。
「ゲーム大人気ね。親御さんたちは大変だね」
「余計なことはいわんでいい」
ポイポイ中身を移していって、プレゼントの量が少なくなってきた時、志賀はふと、その中のおもちゃに目を止めた。
「…………」
「先生、どうかしましたか」
志賀が急に黙ったので日菜子が訊ねた。
「う~ん……」
袋の中に顔を突っ込み、色々確認し終えて、志賀は唸ってしまった。
「……よし。日菜子、悪いが黒サンタと一緒に今移し終えたプレゼントを一個ずつ確かめてくれないか」
「どうかしたんですか」
「うん。もしかすると、濡れてるかもしれないんだ……血で」
「血痕が付いてたんですか? マズいですねそれは」
「ああ。そんなプレゼント配れないからな。そうだろ、黒サンタ」
「ホウホウ、もちのろんね」
「あの、奥さん。ちょっと風呂場お借りしたいんで、ついてきてもらえますか」
「え? ……あ、はい……」
志賀はおもちゃの入った袋を手に持ち、陽子と一緒に風呂場に向かった。二人きりになると、志賀はそのおもちゃを陽子に見せた。陽子は赤面した。
「奥さん。本当のことを話してもらえますね」
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