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6.婚約者を敵と確信した日
しおりを挟むイザベラが、フェルナンドとアーロンらが密談をしている場面を見てしまったのは、一年と少し前のことだった。
イザベラは王宮に無数に存在する書庫を渡り歩き、片端から書物を読んでいることが多かった。
王宮から出ることも出来ないし、書物はよほど上手く毒を仕込みでもしない限り、彼女を害すためには使われない。
それに、イザベラにとっての書物は、外の世界を知ることが出来る、唯一開かれている窓のような存在だった。
その日は大きなカウチがある、書庫の隣の物置きのようになっている部屋で、書庫から持ち出した本を読んでいた。
ところがそこに人がやってくる音が聞こえて、イザベラは慌てて大きなカウチの陰に隠れた。
侍女たちにも気づかれないように部屋を抜け出して来ていたからだ。
しかし何の因果か、そこに彼らがやって来てしまった。
その声から、彼らの正体はすぐに分かった。弟のアーロン、アーロンの母の兄であるカーディ侯爵、フェルナンド、フェルナンドの父親のユペール侯爵の四人に違いなかった。
彼らは、フェルナンドがイザベラを大人しくさせ、囲っておくことを確認しているようだった。
それを条件に、イザベラとフェルナンドの結婚後、フェルナンドの父親が副宰相の地位につき、フェルナンドが将来的にその地位を継ぐことになっているらしい。
イザベラは、弟のアーロンの地位を脅かさないために、名門ではあるものの今では特別大きな力はないユペール侯爵家へ降嫁させられる。
そして、そのユペール侯爵家がカーディ侯爵家と姻戚関係にもあるのもとっくに知っている。
それに、あの暗殺未遂事件の時、フェルナンドは隣の席に座っていた。
彼ならば、あのグラスに毒を仕込むことだって出来ただろうとずっと思っていた。
それが確信に変わった瞬間だった。
彼らがその部屋を出て行った後、イザベラは自分の人生をあの男たちの好きにはさせないのだと心に誓ったのだ。
とはいえ、それから一年近く経った今、もう結婚からは逃げられそうもない。
イザベラは自由に人に会うことすら出来ない身分だ。
何度か夜会で他の家の者との接触を試みたけれど、エスコートは婚約者のフェルナンドが務めるのが常だったし、彼から離れる時には別の見張りがつけられた。
だから、カーディ侯爵らと別の派閥の者とは、言葉を交わすことさえ出来なかった。
アーロンと繋がっているフェルナンドに嫁いだら、状況が変われば、あっさりと殺されるかもしれないというのに。
イザベラは結婚後の自分自身をどう守っていったらいいのか考え続けていたけれど、答えはまだ見つかっていなかった。
そして、そんな情けない自分が心底嫌だった。
イザベラの気持ちが沈む中、訪問用のドレスを選ぶ侍女たちはとても楽しそうだ。
イザベラは自分の身を守るため、その日は護身用の短剣を持って行こうと決めたのだった。
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