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8.あの時の傷痕
しおりを挟むイザベラはフェルナンドの「あなたは私と結婚しなければ、殺されるんですよ」と言う言葉に怒りを感じた。
自分を殺そうとした、その実行犯かもしれない男にそんなことを言われるなんて。
「何を言っているの。あなたが私を殺そうとしているのではなくて?」
「は……?」
「そう簡単に私を思い通りに出来ると思ったら大間違いだわ」
イザベラはスカートに隠れた足首にくくりつけていた短剣を取り出した。
「……なぜ、そのような物を?」
「敵地に乗り込むのだもの。武器の一つも持たずに来られるものですか」
「敵地……」
彼は美しい顔を顰めると、イザベラに近づいて来た。
そして、彼が目の前にやってきたのに戸惑っているうちに、イザベラは短剣を取り上げられていた。
彼はそれを見ながら「こんな、危ない物を」と呟いて、短剣を近くの引き出しに隠してしまう。
イザベラは悔しくてたまらなかった。男性には力では敵わないと分かっていたけれど、認めたくはなかったのだ。
「あなたは誤解をされている」
「誤解? 私はずっと考えていたのよ。私のグラスに毒を仕込んだのは誰なのか。あれはあなたの仕業だったのではなくて? 計画を立てた黒幕は別にいるのでしょうけれど。それに失敗したから、計画を変更して、こうして結婚しようとしているように見えるわ」
言ってしまった、とイザベラは思った。でも、これでいかに彼を嫌っているかは伝わっただろう。
自分を殺すかもしれない人間と同じ寝室で休むことなど出来ない。
イザベラは挑むように彼を睨みつけた。
フェルナンドはイザベラが話している間、ずっと表情を隠していた。
でも次の瞬間、彼はぞくりと背筋が痺れるような禍々しい笑みを浮かべた。そして、少しずつイザベラに歩み寄ってくる。
イザベラもそれに合わせて後ろに下がった。恐怖心で足が勝手に動いてしまう。
「なるほど。何をご存知か知りませんが、あなたの解釈は分かりました。しかし、それはほぼ全て間違いです」
何を言っているのかと、イザベラは彼の言葉を笑った。
その時、彼は突然彼女の後ろを指さして言った。
「すぐ後ろにソファがありますので、お立ち止まり下さい」
「え?」
足の後ろ側に衝撃を受けたイザベラは、彼に片腕を取られ、腰を抱かれながら、気づいた時にはソファに腰掛けていた。
「殺されるかもしれないと思っているのに、退路の確認もしていなかったなんて。扉はもっと左ですよ」
「初めて来た部屋でそこまで見てなんていないわ!」
「ああ。あなたは本当に考えが甘い。だから、私が今までお守りして来たのです」
「……何を言って……あっ、やめっ」
イザベラはいつの間にか、彼に両手首を一緒に掴まれていた。
そして、何を思ったか、彼はスカートの中に手を忍び込ませている。
そして、下着に覆われた太ももの、まさにあの暗殺未遂事件の時についた盛り上がった痕の上を、彼の大きな手がさする。
「放してっ」
「見せて下さい。あの時ついた痕を」
「何をっ」
彼の手は確実に彼女の膝下まである下着を脱がせようとしていた。
イザベラは抵抗するものの、掴まれた手を横に引かれて腰が半分浮いてしまう。
そして、その隙に彼の手が下着を膝下までずり下ろしてしまった。
イザベラはまさか彼がこんなことをしてくるとは思っていなかった。言われた通り、自分の考えは甘かったのだ。
それに、細身に見えても、男性の力がいかに強いかを思い知らされて、悔しさに涙が滲む。
スカートは捲り上げられて、下着が下ろされているので、白い太ももは完全に露わになっている。
色の変わった痕が、滑らかな肌に浮き上がっているのが見える。
イザベラはそれを自分が命を失わずに済んだ証だと思っているけれど、美しいとは言えない。
普通、それは忌避されるものだと思う。
彼は自分の首元からスカーフを抜き取ると、イザベラに覆い被さって、その手を後ろに回したかと思うと、そこで手を縛ってしまった。
そうしながらも、フェルナンドはイザベラの首筋を唇でなぞる。その行動は性的なものを感じさせた。
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