【完結】死に戻ったお飾り王妃は、愛を知らない成り上がり国王の最愛になる

針沢ハリー

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落ちぶれ王妃と成り上がり国王

26.成り上がり国王と側近たち

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 アルベルトはせっかく集まってもらったのに、こんなことになってしまった不手際を彼らに詫びていた。

「陛下の責任ではございません」

「王妃様に問題がおありなのでしょう」

「旧王家の方ですからね。仕方がありません」

 彼らは口々にマリアーナを責める言葉を口にして帰って行く。
 明らかにマリアーナを煽っていたコクリー男爵は、わざわざ最後の一人になるように待っていて、「王妃様は陛下のお妃に相応しいお方とは思えませんな」とアルベルトに耳打ちし、嫌な笑みを残して帰って行った。

 誰もいなくなった応接室にはマウリとアークラだけが残った。二人とも長い付き合いだ。遠慮をする間柄ではない。アルベルトは近くの長椅子に腰掛けると深く息を吐いた。

 するとマウリが横に座り、肩を組んでくる。アルベルトよりも身長がやや高いマウリは昔からよくそうする。始めにされたのは、彼に背の高さを抜かされた時だったと思う。
 アルベルトが十八歳になる頃までは、マウリの方が背が低かった。しかし、アルベルトがその年齢でほぼ背が伸びるのが止まった一方で、マウリの背はその後も伸び続けたのだ。とはいえ、ほとんど差はない。

「コクリー男爵は王妃をすげ替えようとしているのかな。確か年頃の妹がいたはずだ」

 マウリがそう言うのに、立ったままのアークラが肩をすくめる。

「コクリー男爵は、まあ私もですが、いくら末端でも貴族です。彼が言うほど王妃様を責められる立場にはありませんよ。それに勘違いも甚だしい。旧王家の出身でない者を王妃にするなんて、何の意味もない」

「外国にもこの国の旧王家の縁戚がいるの忘れてるんだろうさ。あの王女様が王妃に収まっているから、そいつらに相続権を主張されずに済んでるのに、それすらも分からんのかね」

「舞い上がっているのかもしれませんね。今の彼は権力の中枢にいる。今までの常識では、あり得ないことが起きた」
 
 マウリは「俺はあいつが嫌いだな。首にしろよアルベルト」などと無責任なことを言う。

 多少の難があっても、今はとにかく人手が必要だ。
 それに、とアルベルトは思った。彼だけではなくて、アークラのように早くから個人的に忠誠を誓っている者以外は、貴族連中はほぼ全員、アルベルトが国王でなくなったら瞬く間に手のひらを返すだろう。

 だが、それも織り込み済みだ。貴族出身者は平民出身者よりも圧倒的に学がある。だから今は彼らを利用し、平民から見込みのある者を試験で選抜し、育て始めたところだ。
 コクリー男爵のような男は、そう遠くないうちに名誉職にでも追いやるつもりでいる。


「それにしても、あそこまで本音をぶちまけるとは思ってなかったな、あの王女様。今まではかなり自分を押さえている感じだったのにな」

 相変わらずマリアーナを「王女」と呼び続けるマウリの声にアルベルトも小さく頷いた。

 アルベルトはあの場を治めるために、マリアーナを強くたしなめる必要があった。
 だが、彼女があの場で言ったことには納得できる部分もある。

 アルベルトは生まれたくて傭兵の親を持って生まれたわけではない。気づいたらそうやって暮らしていたし、ある時までは他の暮らし方があるなんて知りもしなかった。
 自らの手で殺めた人間も数えきれない。その者たちには親や妻や子ども、はたまた恋人がいたかもしれない。だが、殺した相手の気持ちも、残された者の哀しみも分かりはしない。

 アルベルトの誇りは、それを他人のせいにしなかったことだ。全て自らの手を血で汚して、今の地位まで上ってきた。

 
「もう下がれ。明日はお前たちが王妃の護衛についてくれ。あと、エンシオとブラントが何かを気にしているようだったら、話を聞いてやってくれるか」

「お前、寝室に行くのか? 王女様のいる?」

「……俺の寝室もあそこだ」

 マウリの腕を振り払って立ち上がると彼は手首をつかんできた。

「アルベルト。肩入れしすぎじゃないか? まさか惚れたなんて言わないよな?」

「……は……?」

「俺たちはあの王女様を利用しているだけだ。不要になれば切る。そうだろう?」

「何を言っているんだ。そんなことは分かっている。だが今はまだマリアーナが必要だ」

「マリアーナ、ね」

 マウリは手を離したが、眉を上げて、他にも何か言いたげな目を向けてくる。だが彼の言う意味はよく分からない。
 誰かを愛したことはない。その方法も知らない。

 アルベルトはマウリとアークラをおいて、その部屋を後にした。

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