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番外編
ポッキーゲーム
「アダム♡はい♡」
「……なんだ?どうした?」
名前を呼ばれたアダムが振り返れば、エリックが口に何かを咥えていた。棒状のそれはビスケットを細長く焼いたようなものであり、チョコレートでコーティングされている。エリックは甘い匂いのするものを口にしたまま動かないのだが、いったいなにを企んでいるのだろうか。呼び止められたアダムはもちろん、遠巻きに見ている他のメンバーも怪訝そうな顔をしていた。いつまで経っても行動を起こさないアダムに痺れを切らしたのか、エリックが咥えていたそれを一気に食べ尽くした。
「もー!アダムはこっちから食べるんでしょ!」
「……ええ……」
まるでそれが周知の事実であるかのように言われ、アダムは空いた口が塞がらなかった。ぽかんと呆けた顔をしていると、エリックがさっきの棒状のお菓子を口の中へ突っ込んだ。甘い匂いにむせ返りそうだ、と眉を顰める。口の中から排除しようとした時、エリックの顔が近付いてきて、アダムの唇を奪った。逆の先端から齧り、突き当りがアダムの唇だった。エリックの口の中は甘い味が広がっていたが、嫌な気分ではなかった。甘味を分け合いながらお互いに嚥下し、また混ざり合う。吸い付く音と吸い上げる音が、しんと静まり返った場所で交互に鳴っていた。
「……いつまでやってんだよ……」
怒りとも呆れともとれる声音が、リップ音に被さって響いた。アーサーが口を挟んだのだ。ルドガーは頭の中で「アーサー偉い!」とガッツポーズを取って褒め称えた。アイザックとミハエルもこれには同意した。
「アーサーもする?はい、ポッキー♡」
「するわけねえだろ!何考えてんだ!」
「ええ~羨ましいのかと思って……」
「おまえのその都合のいい解釈はどうやって培ってんだ?アダムか?アダムだろうなぁ!」
アーサーの正論に、エリックは持ち前の自己肯定力の高さで応じている。怒鳴るだけ怒鳴って暖簾に腕押しだと気付いた時には遅かった。
疲弊した自分と、すっきりした顔のエリック。アーサーはエリックよりはるかに体格が良い。普通、こんなに体格差があれば多少なりとも怖気づくはずだ。くわえてアーサーは短気であり、すぐ声を荒らげる。萎縮してしまうのもしょうがない。だというのに、エリックは一度も引かなかった。引いたことがなかった。同じ声量で怒鳴り返しているわけでもないのに、いつの間にか言い負かされている気になってしまう。アーサーは、胆力や精神的といった意味であっても、一度もエリックに勝てたことはなかった。どうしてこいつはこんなに精神が強いんだ。心臓に毛でも生えてんのか。いつしかアーサーはエリックに対して、呆れよりも恐れを抱くようになった。
「むう……」
「え、なに?俺じゃなくてアーサーに言ってよね」
場の空気を壊した共犯であるアダムは、言い争うアーサーとエリックを見つめ、明らかに不機嫌そうにしていた。おおかたエリックを奪われたとでも思っているのだろう。八つ当たりが自分に向くことを恐れたルドガーは、あれほど応援していた勇者のほうへ矛先を捻じ曲げようとした。
「いや、……そうだな、それもあるが」
「それもあるが?……なに?怖いんだけど」
薄く生やしている顎髭をさすり、アダムは「エリックは天才だな……」とうっとりしながら呟いた。
...end
「……なんだ?どうした?」
名前を呼ばれたアダムが振り返れば、エリックが口に何かを咥えていた。棒状のそれはビスケットを細長く焼いたようなものであり、チョコレートでコーティングされている。エリックは甘い匂いのするものを口にしたまま動かないのだが、いったいなにを企んでいるのだろうか。呼び止められたアダムはもちろん、遠巻きに見ている他のメンバーも怪訝そうな顔をしていた。いつまで経っても行動を起こさないアダムに痺れを切らしたのか、エリックが咥えていたそれを一気に食べ尽くした。
「もー!アダムはこっちから食べるんでしょ!」
「……ええ……」
まるでそれが周知の事実であるかのように言われ、アダムは空いた口が塞がらなかった。ぽかんと呆けた顔をしていると、エリックがさっきの棒状のお菓子を口の中へ突っ込んだ。甘い匂いにむせ返りそうだ、と眉を顰める。口の中から排除しようとした時、エリックの顔が近付いてきて、アダムの唇を奪った。逆の先端から齧り、突き当りがアダムの唇だった。エリックの口の中は甘い味が広がっていたが、嫌な気分ではなかった。甘味を分け合いながらお互いに嚥下し、また混ざり合う。吸い付く音と吸い上げる音が、しんと静まり返った場所で交互に鳴っていた。
「……いつまでやってんだよ……」
怒りとも呆れともとれる声音が、リップ音に被さって響いた。アーサーが口を挟んだのだ。ルドガーは頭の中で「アーサー偉い!」とガッツポーズを取って褒め称えた。アイザックとミハエルもこれには同意した。
「アーサーもする?はい、ポッキー♡」
「するわけねえだろ!何考えてんだ!」
「ええ~羨ましいのかと思って……」
「おまえのその都合のいい解釈はどうやって培ってんだ?アダムか?アダムだろうなぁ!」
アーサーの正論に、エリックは持ち前の自己肯定力の高さで応じている。怒鳴るだけ怒鳴って暖簾に腕押しだと気付いた時には遅かった。
疲弊した自分と、すっきりした顔のエリック。アーサーはエリックよりはるかに体格が良い。普通、こんなに体格差があれば多少なりとも怖気づくはずだ。くわえてアーサーは短気であり、すぐ声を荒らげる。萎縮してしまうのもしょうがない。だというのに、エリックは一度も引かなかった。引いたことがなかった。同じ声量で怒鳴り返しているわけでもないのに、いつの間にか言い負かされている気になってしまう。アーサーは、胆力や精神的といった意味であっても、一度もエリックに勝てたことはなかった。どうしてこいつはこんなに精神が強いんだ。心臓に毛でも生えてんのか。いつしかアーサーはエリックに対して、呆れよりも恐れを抱くようになった。
「むう……」
「え、なに?俺じゃなくてアーサーに言ってよね」
場の空気を壊した共犯であるアダムは、言い争うアーサーとエリックを見つめ、明らかに不機嫌そうにしていた。おおかたエリックを奪われたとでも思っているのだろう。八つ当たりが自分に向くことを恐れたルドガーは、あれほど応援していた勇者のほうへ矛先を捻じ曲げようとした。
「いや、……そうだな、それもあるが」
「それもあるが?……なに?怖いんだけど」
薄く生やしている顎髭をさすり、アダムは「エリックは天才だな……」とうっとりしながら呟いた。
...end
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