【改稿版】休憩スキルで異世界無双！チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

第54話 怒り

魔力を集め続ける大樹の前で、
魔女エレノアはユーリに従属化スキルを施した。
するとユーリの瞳から生気が失われる。


「これでもう、貴方は私のモノよ……」


クリス達から離れた場所でスキルを施した。
エレノア、サリー、少数のエルフだけだ。
サリーは、奴隷術の行使によって、
魔力が底を尽きかけている。
そのためなるべく邪魔の入らない場所で、
従属化のスキルを使おうと考えた。


「サリー、貴方の魔力が少なかったら、
　私の使い魔にできたのに……」


サリーの魔力量は四天王すら凌駕していた。
そのため使い魔にすることは出来なかった。


「でも、まあ良いわ……
　まさか魔女が駒として手に入るなんて……
　これで他の四天王にも優位に立てる」


予想外の収穫に歓喜する。
四天王との勢力争いで優位に立てると喜んだ。
そしてその喜びは束の間、
エレノアにとって邪魔者達が現れた。


「お前達、性懲りも無くまた来たのか……」


「ユーリを返してもらうぞ」


賢者がそのように言う。
見渡すと、生気を失った目をするユーリが見える。


「スキルが施されてしまったか……」


「遅かったわね……
　でも、私を殺したらあの娘も死ぬわよ」


エレノアは、勝ち誇ったように嘲笑う。
スキルの使用者が死ぬと、
使い魔も死んでしまうのだ。



そしてクリスの目にもユーリが見える。



いつも元気で、明るくて、
みんなが大好きだったユーリが、
人形のようになってしまった……



目の前のユーリを見て、
クリスの感情が爆発する。



「エレノア、お前だけは……
　お前だけは、絶対に許さない……」



そしてクリスの中で、
覇王の力が溢れる。



「き、貴様、
　まさか覇王の使い手だと！」
　

エレノアは、覇王の波動を感じ恐怖する。
初代国王との間に因縁があった。


「お前は、俺が絶対に倒す！」


クリスの波動はさらに溢れる。
修行の中で覇王を優先的に鍛えたが、
レベル5までしか上がらなかった……
しかし怒りの感情を爆発させて、
クリスは、その殻を破る成長を見せる。



スキルがレベルアップしました。
覇王
Lv.5 → Lv.6



覇王の光はクリスの身体に、
強く纏わりつくように漂う。


「クリス、お前ってやつは……
　ここに来て成長するとはね……」


エレノアへの怒りの感情によって、
覇王は、更なる高みへ進化した。


「クリス、時間がない！
　魔力が尽きる前に急ぐぞ」


「ふふふ、粋がっている所を悪いけど、
　大好きな仲間に殺されなさい！」


ユーリが氷魔法コキュートスを連発する。


修行の成果でユーリは、コキュートスを
高速無詠唱で連発できるようになった。
それが逆にクリス達を苦しめてしまう。
ユーリの魔法を回避するのに精一杯で、
エレノアの元に近づくことができない。


「ユーリ！
　目を覚ませ！」


クリスの声は全くユーリには届いていない。
まるで機械のように、
エレノアの命令だけ忠実に動いていた。
そしてクリスは、ユーリを攻撃するのを躊躇ってしまう。


「クリス、そのままユーリを抑えてろ」


賢者は言葉を発するとすぐに、
魔法の詠唱を開始する。


「あれは、時空魔法の波動……
　サリー、発動を邪魔しなさい」


サリーは再度奴隷術を発動して、
賢者の元に三人のエルフを向かわせる。
残り僅かの魔力を絞り出していた。


「奴隷操作で邪魔しにくるか……」


賢者はこの詠唱の邪魔はされたくなかった。
そのため強化格闘術でサリーを気絶させると、
エルフ達も同様に意識を失い倒れた。


「やってくれたな、ロゼ……」


エレノアは怒りを露わにすると、
大量の魔力を発生させる。


「もう終わりにしてやる！」


エレノアが、最後の使い魔デスワームを召喚した。
ビルにも近いほどの巨大なモンスターで、
厚い外殻で覆われている。


「これは参ったね……」


それを見て、賢者の打つ手は一つしか無い。
しかしその手段を使うと、クリスに負担が及ぶ。



「一つだけ手段がある……
　だが未来に帰るの少し遅れても良いか？」


「ど、どれくらいですか？」


「今後のお前の頑張り次第だな」


賢者は、冷や汗をかきながら答える。
本来、クリスのために使ってはいけない手段なのだ。


「だ、大丈夫です！
　頑張って何とかなるなら、何でもします！」


「よし、ちょっと待ってな！」


賢者は魔法の筒を取り出した。
この筒には400年貯めた魔力が詰まっている。
必要な分を計算して、
賢者は50年分くらいを飲んだ。


「あ～飲んでしまった……」


飲みたくなかったと後悔するが、
仕方ないと賢者は自分に言い聞かせる。


「さぁ、これでも喰らいな」


そして賢者の体の周りが黄金に輝き、
二つの次元結界を発動すると、
ユーリと、デスワームを覆う。
一切攻撃も回復も受け付けない空間。
中から破壊はできるが時間を要する。
そしてその結界により、
目の前のエレノアだけが残った。


「はぁ……はぁ」


デスワームを結界で封印したため、
賢者の負担は激しい。


「クリス、後はお前の仕事だ！
　いってこい！」


そう言って背中を叩きクリスを送り出す。
賢者は、宣言通り突破口を作ってみせた。


そしてクリスは、全速力でエレノアに向かう。
エレノアも迎撃するつもりだ。


「エレノア、覚悟しろよ……」


ついにクリスとエレノアの一騎打ちが始まる。
ここから戦いは終局へ向かっていく。