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第102話 聖剣の記憶
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教皇から、間違いなく聖剣の儀式を狙って、
勇者が襲撃すると告げられた。
残り期間が限られた中で、
賢者は水の神殿で聖剣技の強化を提案する。
「ようやく神殿に着いたな!」
現在、俺達は水の神殿、儀式の間の扉前に着いた。
神殿内部の扉は、水の扉となっており、
侵入者が入ろうとしても道を塞ぐ。
そして俺と賢者、マリア、シャルロット、
アリスの五人で行動している。
教皇は儀式までの準備があると言い出して、
同行しなかった。
「これが神殿の扉なのね」
目の前には水の膜のような扉があり、
教皇から事前に渡された鍵を使い、扉は消失する。
鍵がなければ、入れない仕組みだ。
「一体どんな仕掛けなのよ……」
「これも古代文明の技術だよ」
シャルロットの問いに賢者が応える。
各国が古代文明の遺産を血眼になって探すが、
財源豊富な女神教は資金を注ぎ込み、
魔導具を買い占め、水の神殿を完成させた。
「その鍵、失くすなよ……
お前の住む屋敷くらいの価値はあるから」
「はい?」
俺は、薄い紙切れ一枚のような鍵に、
それ程の価値があると思いもしない。
紛失しないか恐ろしくて手が震えていた。
「よし、いよいよ儀式の間だぞ」
そして、扉を開けて儀式の間に入ると、
そこには水中トンネルで見た景色が広がる。
部屋はガラス張りになっており、
外には魚が自由に泳ぎ、海藻や珊瑚が見えた。
「綺麗……」
マリアは深海の景色に目を奪われて、
神秘な雰囲気に感動している様子だった。
「あれが聖剣の台座さ」
そして中央の台座が見えて、
いよいよ始まる試練に緊張する。
この場所で俺とマリアは試練を受けるのだ。
「賢者、一体どんな内容なのですか?」
「言ってなかったな。
これからクリスには、
聖剣が体験した記憶の世界に飛んでもらう」
「記憶の世界……」
一体どんな世界なのか分からないが、
賢者の知る世界であれば、
もしかしたら500年前の世界かと予測する。
「聖剣を台座に刺した瞬間に、同調スキルを得る。
そのスキルを使って聖剣と同調するんだ!」
賢者がスキルについて説明をすると、
更に聖剣技について補足する。
「達成するかはマリアの成長も必要だ……
聖剣技は相手と魔力を通して繋がるからな。
だから、二人にとっての修行なのさ」
そしてマリアは何か不安に思った事があったのか、
記憶の世界の危険性について質問した。
「賢者様、記憶の世界なので、
クリスは死なないですよね?」
「いや、間違いがあれば死ぬぞ」
勝手に死なないと踏んでいたが、
その世界で死ぬと、現実にも影響する。
賢者の説明を聞き、不安が顔に出ていたのか、
俺の不安を和らげるように、賢者は魔導具を手渡した。
「記憶の世界にも、所持品を持って行ける。
遠距離メガネと通信機を待っていきな」
賢者が差し出した遠距離メガネは、
離れていても相手の視界を共有できる。
そして賢者は、その映像を見ながら通信機で助言すると言った。
「助かります……
これで賢者と会話できる……」
「あぁ、恐らく過去の世界だからな……
お前を出来る限り導くよ」
更にシャルロットも、
俺が無事に帰れるよう激励する。
「頑張りなさい!
帰って来たら、フィリアに奢らせるわよ!」
「あ!そういえばそんな事もあったような……」
マリアも一緒に食事処に連れて行ってもらえる。
フィリアとそんな約束をしたのを思い出した。
帰って来た後の楽しみを考えて、
この試練を乗り越えようと気合を入れる。
そして旅立つ前に、
最後にマリアに挨拶しようと顔を向けると、
マリアも真剣な表情で見つめ返した。
「クリス……
必ず生きて帰ってきて……」
「マリア……」
その綺麗な瞳で、真っ直ぐ見つめられると、
愛しさが込み上げてしまい、
気づいたらマリアを抱きしめてしまう……
その瞬間、急に小悪魔な笑顔のマリアが現れて、
口付けをされた。
「え?」
マリアは、俺の耳元に口を近づけて、
他の人には聞こえない程の小さい声で愛を囁く。
その時、頭が真っ白になってしまい、
何も考えられなくなった……
「クリス、一緒に乗り越えよう!
私も上手く魔力を送れるように頑張るよ!」
ただ試練に送り出すだけではなく、
一緒に力を合わせて乗り越えようと、
マリアは俺の手を握り、勇気付ける。
「そうだね……
一緒に乗り越えよう!」
俺はマリアの言葉に頷き、
聖剣の台座の方へ歩き出した……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「準備は良いね?」
賢者の言葉に無言で頷き、
俺は、姿を変えて聖剣を握りしめる。
「台座に剣を刺すんだ!
後は手筈通りだ……」
聖剣を台座に刺すと、
聖なる光が、俺の身体を包んだ。
「みんな、行ってくる……」
すると俺の身体は、瞬く間に聖剣に吸い込まれ、
目の前の景色も真っ白になってしまう。
そして、聖剣の記憶の世界へ旅立った……
勇者が襲撃すると告げられた。
残り期間が限られた中で、
賢者は水の神殿で聖剣技の強化を提案する。
「ようやく神殿に着いたな!」
現在、俺達は水の神殿、儀式の間の扉前に着いた。
神殿内部の扉は、水の扉となっており、
侵入者が入ろうとしても道を塞ぐ。
そして俺と賢者、マリア、シャルロット、
アリスの五人で行動している。
教皇は儀式までの準備があると言い出して、
同行しなかった。
「これが神殿の扉なのね」
目の前には水の膜のような扉があり、
教皇から事前に渡された鍵を使い、扉は消失する。
鍵がなければ、入れない仕組みだ。
「一体どんな仕掛けなのよ……」
「これも古代文明の技術だよ」
シャルロットの問いに賢者が応える。
各国が古代文明の遺産を血眼になって探すが、
財源豊富な女神教は資金を注ぎ込み、
魔導具を買い占め、水の神殿を完成させた。
「その鍵、失くすなよ……
お前の住む屋敷くらいの価値はあるから」
「はい?」
俺は、薄い紙切れ一枚のような鍵に、
それ程の価値があると思いもしない。
紛失しないか恐ろしくて手が震えていた。
「よし、いよいよ儀式の間だぞ」
そして、扉を開けて儀式の間に入ると、
そこには水中トンネルで見た景色が広がる。
部屋はガラス張りになっており、
外には魚が自由に泳ぎ、海藻や珊瑚が見えた。
「綺麗……」
マリアは深海の景色に目を奪われて、
神秘な雰囲気に感動している様子だった。
「あれが聖剣の台座さ」
そして中央の台座が見えて、
いよいよ始まる試練に緊張する。
この場所で俺とマリアは試練を受けるのだ。
「賢者、一体どんな内容なのですか?」
「言ってなかったな。
これからクリスには、
聖剣が体験した記憶の世界に飛んでもらう」
「記憶の世界……」
一体どんな世界なのか分からないが、
賢者の知る世界であれば、
もしかしたら500年前の世界かと予測する。
「聖剣を台座に刺した瞬間に、同調スキルを得る。
そのスキルを使って聖剣と同調するんだ!」
賢者がスキルについて説明をすると、
更に聖剣技について補足する。
「達成するかはマリアの成長も必要だ……
聖剣技は相手と魔力を通して繋がるからな。
だから、二人にとっての修行なのさ」
そしてマリアは何か不安に思った事があったのか、
記憶の世界の危険性について質問した。
「賢者様、記憶の世界なので、
クリスは死なないですよね?」
「いや、間違いがあれば死ぬぞ」
勝手に死なないと踏んでいたが、
その世界で死ぬと、現実にも影響する。
賢者の説明を聞き、不安が顔に出ていたのか、
俺の不安を和らげるように、賢者は魔導具を手渡した。
「記憶の世界にも、所持品を持って行ける。
遠距離メガネと通信機を待っていきな」
賢者が差し出した遠距離メガネは、
離れていても相手の視界を共有できる。
そして賢者は、その映像を見ながら通信機で助言すると言った。
「助かります……
これで賢者と会話できる……」
「あぁ、恐らく過去の世界だからな……
お前を出来る限り導くよ」
更にシャルロットも、
俺が無事に帰れるよう激励する。
「頑張りなさい!
帰って来たら、フィリアに奢らせるわよ!」
「あ!そういえばそんな事もあったような……」
マリアも一緒に食事処に連れて行ってもらえる。
フィリアとそんな約束をしたのを思い出した。
帰って来た後の楽しみを考えて、
この試練を乗り越えようと気合を入れる。
そして旅立つ前に、
最後にマリアに挨拶しようと顔を向けると、
マリアも真剣な表情で見つめ返した。
「クリス……
必ず生きて帰ってきて……」
「マリア……」
その綺麗な瞳で、真っ直ぐ見つめられると、
愛しさが込み上げてしまい、
気づいたらマリアを抱きしめてしまう……
その瞬間、急に小悪魔な笑顔のマリアが現れて、
口付けをされた。
「え?」
マリアは、俺の耳元に口を近づけて、
他の人には聞こえない程の小さい声で愛を囁く。
その時、頭が真っ白になってしまい、
何も考えられなくなった……
「クリス、一緒に乗り越えよう!
私も上手く魔力を送れるように頑張るよ!」
ただ試練に送り出すだけではなく、
一緒に力を合わせて乗り越えようと、
マリアは俺の手を握り、勇気付ける。
「そうだね……
一緒に乗り越えよう!」
俺はマリアの言葉に頷き、
聖剣の台座の方へ歩き出した……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「準備は良いね?」
賢者の言葉に無言で頷き、
俺は、姿を変えて聖剣を握りしめる。
「台座に剣を刺すんだ!
後は手筈通りだ……」
聖剣を台座に刺すと、
聖なる光が、俺の身体を包んだ。
「みんな、行ってくる……」
すると俺の身体は、瞬く間に聖剣に吸い込まれ、
目の前の景色も真っ白になってしまう。
そして、聖剣の記憶の世界へ旅立った……
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