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第164話 精霊界へ

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精霊の大渓谷に足を踏み入れて、
今後のためにもテレサと精霊契約することになった。


「テレサと魔力を同調させるぞ!」


「はい……」


賢者の声かけに応じて、精霊契約が始まり、
俺とテレサの光が重なり合う。
そして精霊契約が成功した。


「凄い……これが、精霊との一体化なんだ」


自然から魔力を吸収する感覚を体感して、
新たな世界を開けたと感動している。
これだけの自然エネルギーを活用できると、
精霊魔法を発動した時、その威力は強力に違いない。


「テレサ、これで成功したんだよね?」


「うん……問題なく契約出来た……」


試しに先ほどの怪鳥に洗脳魔法を使用して、
その効果を試してみた。


「俺の言うことを聞いてくれる……」


「精霊魔法は、クリスが使うことになる……
 そのまま動きをイメージしてみろ」


賢者のアドバイス通りにイメージして、
俺達の前に移動するよう命令した。
すると、その大きな背中を向けて座り込んだ。


「賢者!上手くいったよ!
 考えた通りに動いてくれる!」


「よし、問題なく操縦できているな」


本来であれば人間を乗せない魔物だが、
テレサのスキルによって操れている。
そして大渓谷へ向かうために、
賢者は、その背中に乗るように指示した。


「よし、みんな!出発するよ!」


全員がその背中に乗り込んで、
鳥は渓谷の空を羽ばたいていく……




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




俺達は、偶然にも飛行での移動手段を得て、
この地でも効率的に移動している。

そして道中で遭遇した魔物に、洗脳スキルを使用したが、残念ながら暗黒魔法を使える魔物には通用しなかった。
つまり魔王軍には、テレサのスキルは通用しない。
だが、それでもこのスキルの脅威を体感していた……


「まさか、この渓谷を無傷で通過できるなんてな……」


賢者は、現状に驚きを隠せないでいる。
精霊界にいくまでに負傷者が出るのを想定して、マリアの回復魔法を節約させようと考えたが、一切魔法を使わず進めていた。


「見えてきたぞ……」


数時間休んでは飛行してを繰り返して、
目的地である遺跡が見えてくる。
中央に配置される、転移陣に入ると、
精霊界に転移出来るとエアリーが知らせてくれた。


「あれが瘴気か……」


しかし、転移陣の周りには毒ガスのような煙が溢れている。
あまりの激しさに、浄化できそうにないと感じてしまう……


「あの……」


俺は途方に暮れていると、
ふとユーリが口を開く……



「テティスが力を貸してくれるって、
 言ってるんですけど……」


「女神が?」



賢者の問いにユーリが頷くと、
ユーリの身体から神々しい光が溢れて、
更に上空から転移陣の方向へ光の柱が発生する。



「こ、これはまさか!
 女神の裁きだと?」


「へ?」

 
ユーリは訳も分からずテティスに従い、
力を解放したが、明らかにその光は女神の裁きの照準に違いない。


「あ、あの……」


急な展開にユーリ自身も焦ってしまうが、そんな仕草とは裏腹に、女神の裁きの照準は転移陣に合わせられている。


すると転移陣近くの森から、白いドレスを着た精霊が現れて予想外の行動に出た……


「お、おい!
 多分瘴気を操る精霊だと思うが、
 土下座しているぞ!」


賢者も驚き目を見開いている。
あまりの展開に俺達は頭が追い付いていかない。


「あの……
 女神の裁きで脅してますよね……
 大丈夫なのでしょうか?」


明らかに無理矢理脅している状況を見て、ユーリは不安を口にする。
しかし、その言葉に誰も答えられる者はいなかった……



そしてしばらくしてから、
瘴気が消え去り、精霊の元に近寄ると、
エアリーが間に入り、俺達の現状を説明している。


「そういうことでしたのね……
 脅されて、殺されるかと思いました」


エアリーの言葉を聞き、
その精霊は、ホッと胸を撫で下ろして、
安心した表情に変わった。


「私は、水の精霊アウラ……
 瘴気はこの魔導具で出しました」


そう言いながら腕輪を俺達に見せる。
そしてアウラは、ユーリを見つめて、
再度目の前で跪いた……


「女神様……
 どうか私達の精霊界をお救いください」


「へ?」


いきなり跪き、精霊が地面に頭を擦り付けている。
その姿が異様で目を奪われてしまった。


「あ、あの……私にそんな力は……」


「協力してやっても良いが、条件がある!」


ユーリの声を遮るように、
賢者は、アウラに答えを口にする。
その言葉を聞いたアウラは、目を輝かせ喜んだ。


「早速、精霊界へ案内いたします!」


スキップしながら転移陣に向かうアウラを見て、賢者は笑みを浮かべていた。
そして俺達もいよいよ精霊界へ足を踏み入れる。
これからやっと母上に会えると思うと、
旅の疲れを忘れる程、足取りも軽くなっていた……
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