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第169話 消滅

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女神のスキルによって、母上の隷属の首輪の効果を打ち消した……
自我が戻り、お互いに再会を喜び合う。
そして人質を救うことができた瞬間、
残りの敵を一掃するだけになった。


「隷属の首輪を外しただと……」


まだ信じられないのか、今でも目を見開いている。
そして首輪を外した俺を睨みつけた。


「アデル、覚悟しろよ!」


神速でアデルの目前まで接近して、
聖剣で思いきり切り裂く。
今までよりも更に威力が上がり、
衝突の瞬間に確かな手応えを感じた。


「な、なに!」


真っ二つに引き裂いたと思ったが、
ゆっくりと元通りに戻る。
バルガスとは違った生々しい再生に、
何故か嫌悪感を感じてしまう。


「ふふふ、驚いた?
 私はね……命を掛け合わせて、
 手に入れたのよ……」


「永遠の命を……」


アデルの言葉が信じられないでいる。
過去に再生スキル持ちの相手と戦ったが、不死のスキルを見たことは無い。


「クリス、気を付けろ……
 コイツの言っていることは本当だ……」


「母上、それは一体?」


「私はな……コイツを何度も殺したが、
 その度に蘇ったんだよ……」


どうやら母上がアデルに捕まったのは、
不死の力が原因のようだ。
しかし本当に不死の力があるならば、
もっと以前に精霊界を落とせただろう。


「疑っているわね……
 その女に何度も殺されて痛かったのよ」


「黙れ!貴様、サリーを何処にやった?」


怒りに震えた声で、サリーについて問い詰める。
母上の表情を見た瞬間、サリーに何かがあったと悟り、不安が押し寄せてくる。
俺達もサリーの居場所を探していたが、
魔力に反応が出ていなかった。


「転移されてからミゲルの様子が変で、
 私達は調査していたんだ……
 サリーが気付いて、コイツらに」


「あ~あの子ね……
 ミゲルの施設で実験中よ」


「サリーに何をした!
 お前の目的は何だ!」


不気味な笑顔を向けて、
俺達にその野望を話し始めた。


「ミゲルを見て気付かなかったの?
 私が作ったクローン達を……」


「な、なんだと……」


ミゲルにいた人間達がクローンだと……
そうすると本当の住民達は一体何処に?


「本当の人間達はリールに連れて、
 せっせと働いているわ……
 実験動物としてね……」


「ま、まさか……
 昔、合成された魔物がミゲルに現れたのも……」


「あぁ、そんなこともあったわね……
 あれも人間の成れの果てよ」


怒りに震えてしまい言葉が出ない……
目の前の化け物を殺したくて、
自分を抑えきれないでいる。


「私は母親のように惨めに死なない……
 永遠とも言える命を使って、
 世界を手にする!」


「そんなことのために……
 幸せに暮らす人達を攫ったのか?」


アデルは俺と母上に向けて、
嫌らしい笑みを浮かべながら話す……


「残念だけど……
 お友達も魔物になってるかもね」


「アデル!!」


我慢の限界に達してしまい、
俺は聖剣を振り回して、光の一撃を繰り出した。
その一撃で再度アデルを真っ二つにしたが、先程と同様に再生してしまう。


「サリーを待っている人が……
 俺の家族がいる……」


「でも、その姿を見て、
 きっと怖がるでしょうね……」


「貴様!」


母上も怒りを露わにしている。
それはリリスが、サリーの帰りを待ち望んでいるからだ……


「母上……
 聖域スキルでアデルのスキルを無効化する!
 その間に倒してくれ!」


声を張り上げて、これからの行動を伝える。
そして魔力を聖域スキルに込めると、
温かい光が俺とアデルを包み込んだ。


「こ、これは先程の光だと!」


「母上!」


聖域スキルで不死の効果を打ち消す間、
母上は至近距離まで接近する。
更に光の剣に全力を込めて放った。


「お、おのれ!」


深傷を負い、間違いなく動揺している。
しかし、それでも時間が経つと笑みを浮かべ始めた。


「この聖域が解けるまで、
 私が死ななければ良い……」


俺もそれには気付いていた……
結局、聖域スキルが消えた瞬間、
再生されては意味がない。


「くそ!後少し……
 後少しで倒せるのに!」


「あははは!
 貴方達の魔力が無くなったら、
 私の手駒に加えてあげる」


魔力があっという間に減ってしまい、
聖域を維持できないと思った瞬間、
俺のスキルから反応があった……
テレサのスキルを使い、全ての精霊を扉の中に逃していたのだ。


「今、テレサのスキルを解除する!」


ここで扉から全ての精霊を解放する……
精霊達は、スキルを通して戦いたいと訴えていた。


「頼む、後少ししか保たない!
 俺に力を貸してくれ!」


突如、精霊界の住民がアデルを囲むように現れる。
予想外の事態にアデルは、焦り出す。


「精霊達が、今になって何故!
 何故現れる!」


そしてオリジンを中心に、
精霊王が大技を繰り出した。
その魔法によって、アデルは消滅していく。


「せっかく……四天王に……」


「でも、お友達の成れの果てに、
 絶望すれば良いわ!」


そう言い残して光の粒子となり消えていった。
サリーやミゲルの住民達は、
今も施設で捕えられている。
すぐにでもこの地を発とうとするが、
精霊界の長老オリジンが口を開く。
その言葉は、サリー達を救う希望の光となり得るものだった……
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