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第177話 予言

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神界から視察として女神が降り立ったが、人間界の危機を知らせることも目的の一つだった。
そしてアテナが魔王軍の脅威を知らせると、賢者が口を開く。


「ミゲルで人を攫っていたのは、
 ゲートを作り、侵攻の拠点とするためか……」


「まさか!ミゲルから侵略計画が!」


魔人計画を実行する場所として、ミゲルを選んでいたのには理由があった。
魔界と人間界を繋ぐ道であるゲートを使い、
ミゲルを拠点として攻める計画だったのだ。


「ミゲルを奪還できたのは大きいぞ……
 これでゲートを塞げば時間稼ぎと、
 敵への反撃も準備できる」


賢者の話を聞いて、冷静に考えると、
ここまで上手く出来すぎていると感じた。
まるで魔族が侵攻するのを知っていて、
事前にミゲルで対処したように見える。
更に絶好のタイミングで精霊を助けていた。
もし少しでも遅れていれば、
精霊達は魔族の手に落ちていただろう。


そしてアテナの話が一段落つくと、
ルミナス国王が口を開く。


「それについてだが、
 お前達を導いたと言う人物が現れてな……
 この場に同席させるのもどうかと思ったが、
 緊急事態故に仕方あるまい……」


陛下がそう伝えると入り口の扉が開き、
一人の人物が謁見の間に入る。


その人物の顔を決して忘れない。
何故ならその者の発言のせいで、
散々危険な目に遭っていたからだ。


「エメリ……
 何故お前がここにいる?」


珍しく賢者も苛立っている。
それだけこの者は、多くの者を巻き込んできた。
そして俺達全員を見渡して、
エメリは話し始める。


「結果的には私のおかげで、
 その宮廷魔術師も救えたではないか……
 それに精霊も生きている」


「お前!!」


結果を並べて都合良く言うが、
それらは俺達が死に物狂いで守り切った結果だ……
確かに母上達を救うことはできたが、
決してエメリのお陰だとは思ってはいない。


「まあ、信用されないのも分かっているさ……
 ここまで計画通りだからな……」


「お前、全てを分かっていて、
 最初からリールに潜んでいたのか!」


エメリは賢者の指摘に笑みを浮かべて、
言葉を発する。



「ここでお前達に予言してやろう……
 それが私の役割なのだ」



エメリの身体に、魔族が放ったと思えない光の輝きが溢れていく。
その魔力で未来を見通し、言葉を紡いだ。




「このまま魔族達が攻めてきたら、
 お前達は間違いなく全滅する……」




エメリの予言が謁見の間に響き渡り、
俺達はその言葉に立ち尽くしてしまう。
一瞬の間、沈黙が生まれたが、
女神がその予言に対して口を開いた。


「残念ながら、その者は嘘をついていない」


アテナの発言によって、
エメリの予言を蔑ろに出来なくなってしまった。
悔しいが全く相手にしない訳にはいかない……


「まあ……同じ敵を持つ者同士、
 協力した方が良いと言う事だ」


「エメリ、俺達はお前を信用した訳じゃない!」


例え予言が正しくても、
全てを信用できるはずがない。
エメリを睨み続けていると、
俺に向かって更に予言を伝える。


「覇王よ、お前が全ての鍵なのだよ!
 覇王の限界を越えられるかどうか……」


「……」


「覇王の更なる力を解放した時、
 お前の見える世界が変わるだろう……」


相手も魔王へ到達するために必死になってくる。
その中で俺達が勝利するには、
覇王のレベル向上が必須と言われた。
そしてその条件について賢者が言葉を発する。


「やはりそうか……
 避けて通れないと思っていたよ……
 しかし、限界突破には重要な問題がある」


賢者は複雑そうな表情を浮かべながら、
俺達に覇王のレベル上げについて説明し始めた。


「実は空中遺跡の神殿で二つ目の聖剣の儀式は終えている……
 残りの儀式は最後の一つだ……
 それには条件がある」



「条件……」



「それは……
 一度マリアとの契約を解除することだ……」



その言葉を聞いた瞬間、
信じられないと耳を疑ってしまう。
何故なら手に浮かぶ聖剣の刻印は、
マリアとの絆の証でもあるからだ……


「最後の儀式は、契約者の繋がりを解除して、
 以前の覇王所有者に挑む……」


「それって……まさか!」


その瞬間、賢者は優しさに満ちた笑顔を向けて呟く……
誰と戦わなければならないのか、
賢者の言葉と表情から一目瞭然だった……




「それは……初代国王だよ……」




既にその事実を知っていた気がする……
もしかしたら初代は覇王を通して、
俺に伝えていたのかもしれない。



俺が……向き合っていないだけで……
きっと初代国王は、待っていたのだろう……


俺が、貴方に辿り着くのを……



「ようやく理解したようだな……
 お前の進むべき道を……」



俺が試練の意味を理解した瞬間、
エメリが俺の表情を見て声をかけてきた。



「見えているのだよ……
 私には……」



そしてエメリは、最後の予言を告げる……



「この世界で唯一人……
 初代の意志を継ぐ者、
 その者が……」




「世界を救う、
 救世主となるのを……」




その言葉を最後にエメリの予言は終わった……
これから未来を守るために初代との試練に挑む。
そのためにマリアとの契約を解除しなければならない……

そして離れ離れになると分かった瞬間、
マリアへの想いが溢れてしまうのだった……

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