異世界転生興国記

青井群青

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集落2日目~外

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 カール夫妻の家を出たヒロキは町跡に行くために、小屋で準備をして集落の入り口に向かう。目的地に行くには昨日に自身が通った裏口ではなく正門に向かう必要がある。数分ほど歩くと正門が見えてきた。一応衛兵の詰め所のような建物もある。ちょうどその建物の前に衛兵が二人何やら真剣な面持ちで話し込んでいた。やがて二人は同時にヒロキの接近に気がついた。二人のうちやや鎧の装飾がある上官の衛兵が制止しつつ話かけてきた。

「ちょっと失礼、旅人のヒロキさんだったかな?私はこの集落の警備兵を束ねるオーランという者だ。少しだけ話をさせてもらいたいのだがよろしいか?」
 その表情は一応穏やかだが、まるで職務質問である。ヒロキは少し驚いたが頷くとオーランが尋ねてきた。

「見たところ、集落の外に行くようだが何処に何用なのか教えて欲しい。事と次第によっては申し訳ないが、集落を出ることは自粛してもらうことになる。あとは昨晩に何か変わったことがあったら、どんなに些細なことでもいいので、あれば教えて欲しい。」
 オーランの問いにヒロキは少し考えてから努めて冷静に答える。

「集落の外への用件は、町跡に過去にあった病気のことで少し調査をさせていただくためです。目的は今後の旅の見聞に役立てたいからです。次に昨晩は早々に寝てしまったので、特に異変は感じられませんでした。何かあったのですか?」

 ヒロキの答えにオーランは納得したような表情を見せつつ訳を話始める。
「そうか、用件はわかった。私の名において許可しよう。町跡について何かわかったら是非教えて欲しい。私もその町出身だから気になっている。あと昨晩にあったことだが、実は野盗に王都への連絡用に使っている馬を盗まれてしまったのだ。失態だが、途方に暮れるわけもいかないので、兵士一人に旅支度をさせて王都に赴き、望みはうすいが代替の馬や物資、行商人の手配を頼むつもりだが集落には蓄えがほとんどないので時間がない。せめて野盗から馬を取り戻せれば良いのだが情報もなくて困っている次第だ。」
 オーランは言い終えると深い溜め息をついた。何とも深刻な事態である。野盗も許せないが、何よりも集落の食料事情が悪すぎる。カール一家などは気丈に振る舞ってはいるが行き詰まるのも時間の問題だろう。
 ヒロキは集落の外で情報を集める決意を強めた。許可も取れたのでオーランにお礼を言い、野盗なり町跡の情報が得られたら報告することを約束して集落を発った。

 集落を出て川沿いの道を歩いて1時間程行くと左手に焼け落ちている橋が見えてきた。潮風が漂っているので更に下流を見ると海が見えた。橋はかなり河口付近に近い。ヒロキは橋まで行ってみると確かに焼け落ちてはいたが、完全に破壊されているわけではなく3~4メートル無くなっているだけであった。これなら飛び移れそうである。
 ヒロキは助走をつけて走り幅跳びの要領でジャンプした。・・・がここでとんでもないことが起こった。確かに跳躍は成功したのだが、高さが20メートル飛距離が100メートルを超える大跳躍になってしまったのである。ヒロキは驚きのあまり悲鳴をあげながら飛ぶことになった。すっかり失念していたが、元いた世界との重力比が違うのだ。そのため目標を大きく外れて対岸の河原ではなくその先にあった林も突き抜けて砂浜に出てしまった。勿論着地は失敗である。冷静でいれば、習ったばかりの風の魔法を使って着陸できたはずだが慌てていたため使えなかった。頭から砂に突っ込んだので身体中が砂まみれだ。
「・・・うう・・・。カッコ悪い。」
 ヒロキは口に入った砂を吐き出し回りを見るが、目の前には海と砂浜に椰子の木くらいしかなかった。強いて言うなら砂浜には大小様々な貝殻があるくらいで誰もいない。ヒロキは照れ隠し兼八つ当たりで椰子の木を殴った。すると木はメキメキと音をたてて倒れてしまった。少し罪悪感と後悔があったが、椰子の実が3個採れたので良しとした。実をひとつ銃剣で穴を空けて飲んでみると少し渋いが爽やかでほのかに甘味がしておいしかった。ヒロキは残りの実を雑嚢に入れて集落の土産にすることにした。
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