異世界転生興国記

戦闘？白物家電の間～VS掃除機

　自転車の間を後にしたヒロキは通路をマウンテンバイクに乗って引き返す。ダンジョンの通路自体は平坦な道なので非常に早く元の分かれ道まで戻ってこれたので再び次の部屋を目指す。次は右側の通路を進むことにした。少しだけご機嫌に自転車で進むこと１０分程で次の部屋のドアが現れた。

　ヒロキは今度もドアを慎重に開く。するとそこには最早三度目だがやはり見覚えのある物が整然と並んでいた。

「今度は家電か・・・。」
　踏み入ってすぐには何も起こらなかった。ヒロキは静かに視線を巡らせた。部屋の大きさは先ほどの自転車の間と同程度だった。並んでいる物は所謂白物家電ばかりだった。動力源は魔法石だとは思うが細かいディテールは異なるものの見た目は冷蔵庫や洗濯機、エアコンは勿論のこと電子レンジやアイロン、クリーナー（掃除機）と様々だ。

「もう此処はダンジョンではなく、家電量販店でいいのでは？」
　
　ヒロキは呆れながら一人呟くが今回は何も起こらなかった。動力源の不具合なのかこの部屋では家電が襲ってくることはなかった・・・。そのはずだった。引き返そうとドアに手をかけようとした瞬間携帯電話のバイブレーションがどこかで鳴り静かに掃除機がこちらに迫って来た。掃除機は２メートル程まで接近するとモーター音を轟かせこちらに更に近づく。恐らくはこちらを吸い込むつもりなのだろう。と思っていると風を勢い良く吐き出すとヒロキは約５メートル吹っ飛ばされた。

（掃除機は普通吸い込むものだろうが？ふざけるなっ！！）
　
　心の中で悪態をつきながらヒロキはなんとか着地をして態勢を整える。起き上がり様に火魔法で牽制するが掃除機は今度は火の玉を吸い込んで無効化してきた。なんとも忌々しい限りである。ヒロキはならばと氷魔法でソフトボール大の氷塊を作り出して力いっぱい投げつけた。念のため第２球、第３球を用意しておく。次はスライダーその次はカーブを投げるつもりだったがその必要はなかったようだ。掃除機はノズルに氷塊を詰まらせ動きが止まっていた。ヒロキはすかさず突撃し、本体目掛けて力任せに蹴っ飛ばした。掃除機は奥の壁に勢いよく激突して砕け散った。

　ヒロキは掃除機を倒すと部屋の中を警戒しながら歩く。何故かマナーモードで鳴っていた携帯電話を探していた。まだ鳴動は続いていたので然程時間をかけることなく見つかった。なんと電子レンジ中に入っていた。

「こんなところにあったらレンジが作動したら壊れるんだけど？」

　ヒロキは少々疲れた思いをしながら呆れ呟きいつも通りに携帯を逆九の時にへし折り破壊して部屋を出た。