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第15話:婚約破棄イベント(リハーサル)
教会の「聖女専用居住区画」は、控えめに言って天国だった。
最高級の羽毛布団。 温度・湿度を完全管理する魔導空調システム。 食事はベッドまで運ばれ、お風呂は天然温泉がパイプラインで直結されている。 そして何より、ここには「静寂」がある。 分厚い石壁と強力な結界に守られ、下界の喧騒は一切届かない。
「……ふあぁ」
私は、天蓋付きのキングサイズベッドの中央で、優雅にあくびをした。 聖女に就任してから一週間。 私の仕事は、一日一回、バルコニーに出て民衆に手を振ること(通称:お手振りタイム)だけ。 所要時間、約30秒。 残りの23時間59分30秒は、自由時間である。
「リリアーナ様、おやつをお持ちしました。本日は『天使のふわふわパンケーキ』です」
シスター服に身を包んだアリスが、ワゴンを押して入ってくる。 彼女もすっかりこの生活に馴染み、今や「聖女筆頭補佐官」という大層な肩書きを得ていた。
「……ありがとう。そこに置いて」
「はい! あと、本日のスケジュールですが……午後3時から教皇聖下との『沈黙の瞑想会(一緒にお昼寝)』、午後5時からはベルタ様による『安眠警備隊の査閲』となっております」
完璧だ。 ストレスが一つもない。 私の人生設計は、このまま教会で安らかに老後を迎えることで決定した……はずだった。
「……失礼します、姉御!」
ドタドタと足音を立てて(もちろん絨毯の上なので無音だが)、ベルタが飛び込んできた。 彼女は今、教会の聖騎士団を指揮する「聖女親衛隊長」として、白い鎧に身を包んでいる。 扇子の代わりに、白銀のレイピアを腰に差していた。
「……何? 騒々しいわね」
「一大事です! 王宮より、緊急の招待状が!」
ベルタが差し出したのは、漆黒の封筒に金の箔押しがされた、重厚な招待状だった。
「……黒?」
「はい。今夜開催される『建国記念の大舞踏会』への招待状なのですが……差出人が国王陛下ではなく、ジークフリート殿下個人となっております。しかも、タイトルが……」
ベルタが震える声で読み上げる。
『運命の夜会 ~過去の清算と、新たなる誓いのために~』
「……清算?」
私の脳裏に、嫌な予感が走った。
「過去の清算」。 「運命の夜会」。
これらのキーワードは、私の過去6回の人生におけるトラウマを刺激する。 そう、これは「断罪イベント」の常套句だ。 本来ならば、私が18歳になった時、学園の卒業パーティーや王宮の舞踏会で行われるはずの、破滅の儀式。
『リリアーナ・ヴェルデ! 貴様の悪行はもはや見過ごせん! ここで婚約を破棄し、国外追放を申し渡す!』
あの王子が、高らかに宣言するシーン。 民衆の冷ややかな視線。 そして、ギロチンへのカウントダウン。
(……待って。私、まだ12歳よ?)
時系列がおかしい。 断罪イベントが起きるには早すぎる。 それに、今の私は「悪役令嬢」ではなく「聖女」だ。 国民的人気は絶頂で、悪事など働く暇もなく寝ていた。 断罪される要素がゼロだ。
「……カイル」
私は天井に向かって呼んだ。
「はい」
影の中からカイルが現れる。 彼は今、「教会の影(裏掃除人)」として暗躍していた。
「この舞踏会、何か裏がある?」
「調査済みです。……どうやら、殿下が『重大な発表』をするとのこと。噂では、リリアーナ様との関係について、公の場で白黒つけるつもりだとか」
「白黒?」
「はい。『今の曖昧な関係(ストーカーと被害者)』を終わらせ、正式な『契約』を結ぶと息巻いています」
契約。 それは婚約のことか。 それとも、聖女としての専属契約か。
どちらにせよ、面倒くさい。 行きたくない。
「……欠席で」
「それが……今回は『聖女のお披露目』も兼ねているため、欠席すれば教会の面子が潰れます。教皇聖下が『這ってでも行け(意訳:輿に乗せて運ぶ)』と仰っています」
逃げ場なし。 私はため息をついた。
「……分かったわ。行く。でも、歩かないわよ」
「は?」
「一歩も歩かない。会場でも、ずっと寝ているわ。……文句ある?」
私は開き直った。 断罪だろうが何だろうが、私は私のスタイル(寝たきり)を貫く。 もし「不敬だ!」と怒られて婚約破棄されるなら、それはそれで好都合だ。 聖女の地位を剥奪されて平民になれば、真の自由が手に入るかもしれない。
「……承知いたしました。では、至高の『移動手段』を用意させます」
ベルタとアリス、そしてカイルが顔を見合わせ、ニヤリと笑った。 嫌な予感がしたが、私は考えるのを放棄して二度寝に入った。
◇
その夜。 王宮の大広間は、かつてないほどの熱気に包まれていた。
建国記念の舞踏会。 国中の高位貴族が集まり、煌びやかなドレスと宝石が光を競い合っている。 しかし、今夜の主役は彼らではない。 誰もが、入口の大扉を固唾を飲んで見つめていた。
「……来るぞ。噂の聖女様だ」 「引きこもり令嬢から、国の救世主となった奇跡の少女……」 「一体、どんなお姿で現れるのか……」
ザワザワとした喧騒の中、ファンファーレが鳴り響いた。
「聖女リリアーナ・ヴェルデ様、ご入場!!」
重厚な扉が、ゆっくりと開かれる。 そこから現れたのは、誰も予想しなかった光景だった。
「……な、なんだあれは!?」
人々が息を呑む。
リリアーナは、歩いていなかった。 彼女は、巨大な天蓋付きのベッド――いや、ベッド型の『神輿(みこし)』に乗って登場したのだ。
純白のシルクで覆われたベッド。 四隅には金色の柱が立ち、透けるようなレースのカーテンが揺れている。 その台座は宙に浮いていた(カイルと部下たちが透明化魔法を使って担いでいるのだが、側からは浮いているように見える)。
そして、その中心に。 リリアーナは、最高級のネグリジェ・ドレスをまとい、ふかふかの枕に頭を預け、優雅に横たわっていた。 目は半眼。 手には、王家から贈られた「氷華」を一輪、けだるげに持っている。
「……おお……!」 「歩かない……! 地上の穢れに触れないために、浮遊して移動されているのか!」 「なんと神々しい……。これぞ『寝釈迦』ならぬ『寝聖女』……!」
貴族たちは、そのあまりにも堂々とした「寝姿」に圧倒され、次々と膝をついた。 不敬? とんでもない。 ここまで突き抜けた怠惰は、もはや「威厳」の領域に達していた。
輿は、大広間の中央まで進み、静かに着地した。 私は、カーテンの隙間から周囲を見回した。
(……眩しい)
シャンデリアの光が目に痛い。 早く帰りたい。
そこへ、一人の青年が歩み寄ってきた。 白のタキシードに身を包んだ、ジークフリート王子だ。 今日の彼は、いつにも増して気合が入っている。 髪は完璧にセットされ、背後にはバラの花びらが舞っているような幻覚すら見える。
「ようこそ、リリアーナ。今夜の君は、月のように美しい」
王子はベッドの縁に手をかけ、跪いた。 まるで、眠り姫を目覚めさせる王子様のように。
「……眠いから、手短にお願い」
私は小声で言った。 しかし、王子はそれを「照れ隠し」と解釈し、微笑んだ。
「ああ、分かっている。君を長く引き留めるつもりはない。……ただ、一つだけ確かめたいことがあるんだ」
王子が立ち上がり、会場全体に向けて手を挙げた。 音楽が止まる。 静寂が訪れる。
「皆、聞いてくれ! 今夜、僕はここで、一つの『決断』を下す!」
会場がざわめく。 決断? まさか、婚約発表か? それとも……。
王子は、私を真っ直ぐに見つめた。 その瞳には、狂気にも似た強い光が宿っている。
「リリアーナ。……僕は知っている。君が、僕を避けていることを。君が、王妃という立場や、王宮の窮屈さを嫌っていることを」
お、分かってるじゃないか。 その通りだ。 だから解放してくれ。
「君は、自由を愛し、静寂を愛し、何よりも睡眠を愛している。……そんな君を、僕のエゴで王宮に縛り付けることは、罪だと気づいたんだ」
(……いいぞ! その調子だ!)
私は心の中でガッツポーズをした。 ついに、このストーカー王子も改心したか。 婚約破棄バンザイ! 自由バンザイ!
「だから、僕は決めた!」
王子が高らかに宣言する。
「僕は、君を王妃にはしない!」
おおお! 会場から悲鳴のような声が上がる。 「まさか、婚約破棄!?」 「聖女様を振るなんて!」
私は、こみ上げる笑いを必死に噛み殺した。 やった。 ついに自由の身だ。
しかし。 王子の言葉には、続きがあった。
「僕は! 王位継承権を放棄し! 君と共に『眠りの国』へ行く!」
「……は?」
私は固まった。 会場も固まった。 国王陛下(貴賓席にいた)が、持っていたワイングラスを取り落とした。
「王宮がうるさいなら、王宮を出ればいい! 君が寝ていたいなら、僕も一緒に寝ればいい! 僕は王になることよりも、君の隣で二度寝することを望む!」
王子は、私の手(布団から出ていた)を握りしめた。
「リリアーナ! 僕と結婚してくれ! そして、二人で世界一静かな場所で、永遠に引きこもろう!」
斜め上すぎる。 婚約破棄は婚約破棄でも、「王家との婚約(義務)」を破棄して、「個人的な愛の逃避行」を選ぼうとしている。 しかも、王位を捨ててまで。
(……馬鹿だ)
私は呆れた。 いや、呆れるを通り越して、感心した。 こいつ、本物だ。 私の怠惰ライフに付き合うために、自分の人生を棒に振る覚悟を決めている。
「殿下! 正気ですか!?」 「王位を捨てるなど……!」 臣下たちがパニックになる。
しかし、王子は止まらない。 彼は、ポケットから指輪を取り出した。 巨大なダイヤモンド……ではない。 それは、深い青色をした、魔力を帯びた石だった。
「これは『夢見の石』。これを持っていれば、夢の中でいつでも会える。……現実が辛いなら、夢の中で暮らそう。僕はずっと君の味方だ」
王子は、真剣だった。 その瞳に、嘘はない。
私は、指輪を見つめた。 綺麗だ。 吸い込まれそうな青。 これがあれば、さらに質の良い睡眠が得られそうだ。
(……悪くないかも)
王位を捨てた元王子と、引きこもり聖女。 田舎の別荘で、晴耕雨読ならぬ「晴寝雨寝」の生活。 私の理想に、限りなく近い。
「……リリアーナ。返事を聞かせてくれ」
王子が、祈るように私を見つめる。 会場中の視線が、私に集中する。
私は、ゆっくりと口を開いた。 しかし、その時。 強烈な睡魔が襲ってきた。 今日一日、緊張していた反動だ。 意識が遠のく。
(……まあ、いいか)
私は、夢現の中で呟いた。
「……あ、はい」
それは、「指輪が欲しい」という意味だったかもしれないし、「スープのおかわり」だったかもしれない。 あるいは、単なる寝言の相槌だったかもしれない。
だが、その言葉は、マイクを通して会場中に響き渡った。
「……はい、と言ったぞ!」 「受諾だ! 聖女様が、殿下の愛を受け入れた!」
「うおおおおお!」
歓声が爆発した。 王子は涙を流し、私(の乗ったベッド)を抱きしめた。
「ありがとう! ありがとうリリアーナ! 一生、君の安眠を守り抜くと誓うよ!」
こうして。 私の「婚約破棄計画」は、「王位放棄&究極の引きこもり婚約」という、誰も予想しなかった形で決着した。 ……かに見えた。
その瞬間だった。
バリィィィィィン!!
何かが砕ける音がした。 グラスではない。 窓ガラスでもない。 もっと巨大な、世界の「枠組み」そのものが割れるような、不吉な音。
「……なんだ!?」
会場が静まり返る。 音は、頭上から聞こえた。
全員が天井を見上げる。 王宮の天井画――建国の英雄と女神が描かれたフレスコ画――に、亀裂が入っていた。 いや、絵に亀裂が入ったのではない。 空間そのものに、黒い亀裂が走っていたのだ。
「……空が……割れた?」
亀裂はメリメリと広がり、そこからドス黒い瘴気が溢れ出してきた。 シャンデリアが明滅し、不気味な紫色の光が会場を照らす。
「キャアアアア!」 「な、なんだあれは!?」 貴族たちが逃げ惑う。
私は、その異様な気配に、パチリと目を覚ました。
(……この気配)
知っている。 6回の人生の中で、何度も感じたことがある。 世界がループする直前。 私が処刑され、意識が消える瞬間に感じた、あの「歪み」の気配。
「……魔王?」
いいえ、違う。 魔王なんて生易しいものではない。 これは、「時空の歪み」そのものだ。 私のループの原因であり、この世界を何度でもやり直させる、システムのエラー。
亀裂の向こうから、巨大な「目」が現れた。 ギョロリとした、無機質な瞳。 それが、私を見据えた。
『……見ツケタ……』
頭の中に、ノイズ交じりの声が響く。
『……バグ……要因……リリアーナ……』
『……排除……スル……』
声と共に、亀裂から黒い雷が放たれた。 狙いは、私。
「リリアーナ!」
王子が、とっさに私の前に立ちはだかった。 彼は剣を抜き、雷を受け止めようとする。 しかし、相手は次元が違う。 ただの人間が防げるものではない。
「……どいて」
私は、ベッドから飛び起きた。 パジャマ・ドレスの裾を翻し、王子の前に出る。
「カイル! 結界を!」 「ベルタ! アリスを連れて避難誘導!」
「はっ!」 「御意!」
私の命令に、親衛隊が即座に動く。 カイルが闇の障壁を展開し、ベルタが貴族たちを誘導する。
私は、迫りくる黒い雷を見据えた。
(……排除するですって?)
私の安眠を。 私の勝ち取った、ニート生活を。 そして、このバカだけど愛すべき王子との未来を。
「……ふざけないで」
私は、右手に魔力を集中させた。 氷華の冷気と、アリスのパンの温かさと、カイルの闇と、ベルタの闘志。 そして、私の「絶対に寝てやる」という執念。 全てを混ぜ合わせる。
「私の睡眠時間を削る奴は……神だろうがシステムだろうが、ぶっ飛ばす!」
私は、枕(アリス製)を掴んだ。 そして、全力で投擲した。
「必殺! 枕投げ・改!!」
ヒュンッ!
枕は光の矢となって飛んでいった。 黒い雷を突き破り、亀裂の奥にある「目」に向かって一直線に。
ドゴォォォォォン!!
命中。 「目」が驚いたように見開かれ、そして苦悶の表情(?)を浮かべた。
『……グオォォォ……!』
亀裂が揺らぐ。 瘴気が逆流し、吸い込まれていく。
「……今のうちに!」
私は叫んだ。 この隙に、亀裂を塞がなければならない。
しかし、私の魔力は今の一撃で空っぽだった。 眠い。 立っていられない。
「リリアーナ!」
倒れかけた私を、王子が支えた。
「僕の魔力を使ってくれ! 全部あげる!」
「……え?」
「君と一緒なら、魔力切れなんて怖くない! さあ、二人で世界を救おう(そして寝よう)!」
王子が、私にキスをした。 額に。 その瞬間、彼の膨大な王家の魔力が、私の中に流れ込んでくる。 温かくて、少し暑苦しいくらいの、純粋なエネルギー。
「……チャージ完了」
私はニヤリと笑った。 魔力満タン。 いや、オーバーフローだ。
「……閉じて!」
私は、修復魔法『完全なる幕引き(カーテンコール)』を放った。 空の亀裂に向かって、光のカーテンが広がる。 傷口を縫い合わせるように、時空の歪みが修復されていく。
『……マダ……終ワラナイ……』
亀裂の向こうから、捨て台詞が聞こえた。
『……次ハ……本体ガ……行ク……』
シュンッ。 亀裂が消滅した。 天井画が元通りになり、シャンデリアの光が戻った。
静寂。 そして、安堵のため息。
「……勝った?」
誰かが呟いた。
私は、王子の腕の中で、力尽きていた。 魔力を使い果たし、今度こそ限界だ。
「……リリアーナ?」
「……もう、無理」
私は、王子の胸に顔を埋めた。
「……あとは、任せた。……起こさないで」
「ああ。ゆっくりおやすみ、僕の聖女」
王子が優しく頭を撫でてくれた。 その感触を最後に、私は深い深い眠りの底へと落ちていった。
◇
こうして、運命の舞踏会は幕を閉じた。 断罪イベントは回避され、代わりに「世界を脅かす謎の敵」の存在が明らかになった。 そして、私と王子の「婚約」は、国を挙げた決定事項となった。
しかし。 敵は言っていた。 『次は本体が行く』と。 あれはまだ、前哨戦に過ぎなかったのだ。
ラスボス、魔王(時空の管理者?)。 そいつが、私の安眠を奪いにやってくる。
戦いは、これからが本番だ。 私の「究極の二度寝」を守るための、最後の聖戦が始まる。
最高級の羽毛布団。 温度・湿度を完全管理する魔導空調システム。 食事はベッドまで運ばれ、お風呂は天然温泉がパイプラインで直結されている。 そして何より、ここには「静寂」がある。 分厚い石壁と強力な結界に守られ、下界の喧騒は一切届かない。
「……ふあぁ」
私は、天蓋付きのキングサイズベッドの中央で、優雅にあくびをした。 聖女に就任してから一週間。 私の仕事は、一日一回、バルコニーに出て民衆に手を振ること(通称:お手振りタイム)だけ。 所要時間、約30秒。 残りの23時間59分30秒は、自由時間である。
「リリアーナ様、おやつをお持ちしました。本日は『天使のふわふわパンケーキ』です」
シスター服に身を包んだアリスが、ワゴンを押して入ってくる。 彼女もすっかりこの生活に馴染み、今や「聖女筆頭補佐官」という大層な肩書きを得ていた。
「……ありがとう。そこに置いて」
「はい! あと、本日のスケジュールですが……午後3時から教皇聖下との『沈黙の瞑想会(一緒にお昼寝)』、午後5時からはベルタ様による『安眠警備隊の査閲』となっております」
完璧だ。 ストレスが一つもない。 私の人生設計は、このまま教会で安らかに老後を迎えることで決定した……はずだった。
「……失礼します、姉御!」
ドタドタと足音を立てて(もちろん絨毯の上なので無音だが)、ベルタが飛び込んできた。 彼女は今、教会の聖騎士団を指揮する「聖女親衛隊長」として、白い鎧に身を包んでいる。 扇子の代わりに、白銀のレイピアを腰に差していた。
「……何? 騒々しいわね」
「一大事です! 王宮より、緊急の招待状が!」
ベルタが差し出したのは、漆黒の封筒に金の箔押しがされた、重厚な招待状だった。
「……黒?」
「はい。今夜開催される『建国記念の大舞踏会』への招待状なのですが……差出人が国王陛下ではなく、ジークフリート殿下個人となっております。しかも、タイトルが……」
ベルタが震える声で読み上げる。
『運命の夜会 ~過去の清算と、新たなる誓いのために~』
「……清算?」
私の脳裏に、嫌な予感が走った。
「過去の清算」。 「運命の夜会」。
これらのキーワードは、私の過去6回の人生におけるトラウマを刺激する。 そう、これは「断罪イベント」の常套句だ。 本来ならば、私が18歳になった時、学園の卒業パーティーや王宮の舞踏会で行われるはずの、破滅の儀式。
『リリアーナ・ヴェルデ! 貴様の悪行はもはや見過ごせん! ここで婚約を破棄し、国外追放を申し渡す!』
あの王子が、高らかに宣言するシーン。 民衆の冷ややかな視線。 そして、ギロチンへのカウントダウン。
(……待って。私、まだ12歳よ?)
時系列がおかしい。 断罪イベントが起きるには早すぎる。 それに、今の私は「悪役令嬢」ではなく「聖女」だ。 国民的人気は絶頂で、悪事など働く暇もなく寝ていた。 断罪される要素がゼロだ。
「……カイル」
私は天井に向かって呼んだ。
「はい」
影の中からカイルが現れる。 彼は今、「教会の影(裏掃除人)」として暗躍していた。
「この舞踏会、何か裏がある?」
「調査済みです。……どうやら、殿下が『重大な発表』をするとのこと。噂では、リリアーナ様との関係について、公の場で白黒つけるつもりだとか」
「白黒?」
「はい。『今の曖昧な関係(ストーカーと被害者)』を終わらせ、正式な『契約』を結ぶと息巻いています」
契約。 それは婚約のことか。 それとも、聖女としての専属契約か。
どちらにせよ、面倒くさい。 行きたくない。
「……欠席で」
「それが……今回は『聖女のお披露目』も兼ねているため、欠席すれば教会の面子が潰れます。教皇聖下が『這ってでも行け(意訳:輿に乗せて運ぶ)』と仰っています」
逃げ場なし。 私はため息をついた。
「……分かったわ。行く。でも、歩かないわよ」
「は?」
「一歩も歩かない。会場でも、ずっと寝ているわ。……文句ある?」
私は開き直った。 断罪だろうが何だろうが、私は私のスタイル(寝たきり)を貫く。 もし「不敬だ!」と怒られて婚約破棄されるなら、それはそれで好都合だ。 聖女の地位を剥奪されて平民になれば、真の自由が手に入るかもしれない。
「……承知いたしました。では、至高の『移動手段』を用意させます」
ベルタとアリス、そしてカイルが顔を見合わせ、ニヤリと笑った。 嫌な予感がしたが、私は考えるのを放棄して二度寝に入った。
◇
その夜。 王宮の大広間は、かつてないほどの熱気に包まれていた。
建国記念の舞踏会。 国中の高位貴族が集まり、煌びやかなドレスと宝石が光を競い合っている。 しかし、今夜の主役は彼らではない。 誰もが、入口の大扉を固唾を飲んで見つめていた。
「……来るぞ。噂の聖女様だ」 「引きこもり令嬢から、国の救世主となった奇跡の少女……」 「一体、どんなお姿で現れるのか……」
ザワザワとした喧騒の中、ファンファーレが鳴り響いた。
「聖女リリアーナ・ヴェルデ様、ご入場!!」
重厚な扉が、ゆっくりと開かれる。 そこから現れたのは、誰も予想しなかった光景だった。
「……な、なんだあれは!?」
人々が息を呑む。
リリアーナは、歩いていなかった。 彼女は、巨大な天蓋付きのベッド――いや、ベッド型の『神輿(みこし)』に乗って登場したのだ。
純白のシルクで覆われたベッド。 四隅には金色の柱が立ち、透けるようなレースのカーテンが揺れている。 その台座は宙に浮いていた(カイルと部下たちが透明化魔法を使って担いでいるのだが、側からは浮いているように見える)。
そして、その中心に。 リリアーナは、最高級のネグリジェ・ドレスをまとい、ふかふかの枕に頭を預け、優雅に横たわっていた。 目は半眼。 手には、王家から贈られた「氷華」を一輪、けだるげに持っている。
「……おお……!」 「歩かない……! 地上の穢れに触れないために、浮遊して移動されているのか!」 「なんと神々しい……。これぞ『寝釈迦』ならぬ『寝聖女』……!」
貴族たちは、そのあまりにも堂々とした「寝姿」に圧倒され、次々と膝をついた。 不敬? とんでもない。 ここまで突き抜けた怠惰は、もはや「威厳」の領域に達していた。
輿は、大広間の中央まで進み、静かに着地した。 私は、カーテンの隙間から周囲を見回した。
(……眩しい)
シャンデリアの光が目に痛い。 早く帰りたい。
そこへ、一人の青年が歩み寄ってきた。 白のタキシードに身を包んだ、ジークフリート王子だ。 今日の彼は、いつにも増して気合が入っている。 髪は完璧にセットされ、背後にはバラの花びらが舞っているような幻覚すら見える。
「ようこそ、リリアーナ。今夜の君は、月のように美しい」
王子はベッドの縁に手をかけ、跪いた。 まるで、眠り姫を目覚めさせる王子様のように。
「……眠いから、手短にお願い」
私は小声で言った。 しかし、王子はそれを「照れ隠し」と解釈し、微笑んだ。
「ああ、分かっている。君を長く引き留めるつもりはない。……ただ、一つだけ確かめたいことがあるんだ」
王子が立ち上がり、会場全体に向けて手を挙げた。 音楽が止まる。 静寂が訪れる。
「皆、聞いてくれ! 今夜、僕はここで、一つの『決断』を下す!」
会場がざわめく。 決断? まさか、婚約発表か? それとも……。
王子は、私を真っ直ぐに見つめた。 その瞳には、狂気にも似た強い光が宿っている。
「リリアーナ。……僕は知っている。君が、僕を避けていることを。君が、王妃という立場や、王宮の窮屈さを嫌っていることを」
お、分かってるじゃないか。 その通りだ。 だから解放してくれ。
「君は、自由を愛し、静寂を愛し、何よりも睡眠を愛している。……そんな君を、僕のエゴで王宮に縛り付けることは、罪だと気づいたんだ」
(……いいぞ! その調子だ!)
私は心の中でガッツポーズをした。 ついに、このストーカー王子も改心したか。 婚約破棄バンザイ! 自由バンザイ!
「だから、僕は決めた!」
王子が高らかに宣言する。
「僕は、君を王妃にはしない!」
おおお! 会場から悲鳴のような声が上がる。 「まさか、婚約破棄!?」 「聖女様を振るなんて!」
私は、こみ上げる笑いを必死に噛み殺した。 やった。 ついに自由の身だ。
しかし。 王子の言葉には、続きがあった。
「僕は! 王位継承権を放棄し! 君と共に『眠りの国』へ行く!」
「……は?」
私は固まった。 会場も固まった。 国王陛下(貴賓席にいた)が、持っていたワイングラスを取り落とした。
「王宮がうるさいなら、王宮を出ればいい! 君が寝ていたいなら、僕も一緒に寝ればいい! 僕は王になることよりも、君の隣で二度寝することを望む!」
王子は、私の手(布団から出ていた)を握りしめた。
「リリアーナ! 僕と結婚してくれ! そして、二人で世界一静かな場所で、永遠に引きこもろう!」
斜め上すぎる。 婚約破棄は婚約破棄でも、「王家との婚約(義務)」を破棄して、「個人的な愛の逃避行」を選ぼうとしている。 しかも、王位を捨ててまで。
(……馬鹿だ)
私は呆れた。 いや、呆れるを通り越して、感心した。 こいつ、本物だ。 私の怠惰ライフに付き合うために、自分の人生を棒に振る覚悟を決めている。
「殿下! 正気ですか!?」 「王位を捨てるなど……!」 臣下たちがパニックになる。
しかし、王子は止まらない。 彼は、ポケットから指輪を取り出した。 巨大なダイヤモンド……ではない。 それは、深い青色をした、魔力を帯びた石だった。
「これは『夢見の石』。これを持っていれば、夢の中でいつでも会える。……現実が辛いなら、夢の中で暮らそう。僕はずっと君の味方だ」
王子は、真剣だった。 その瞳に、嘘はない。
私は、指輪を見つめた。 綺麗だ。 吸い込まれそうな青。 これがあれば、さらに質の良い睡眠が得られそうだ。
(……悪くないかも)
王位を捨てた元王子と、引きこもり聖女。 田舎の別荘で、晴耕雨読ならぬ「晴寝雨寝」の生活。 私の理想に、限りなく近い。
「……リリアーナ。返事を聞かせてくれ」
王子が、祈るように私を見つめる。 会場中の視線が、私に集中する。
私は、ゆっくりと口を開いた。 しかし、その時。 強烈な睡魔が襲ってきた。 今日一日、緊張していた反動だ。 意識が遠のく。
(……まあ、いいか)
私は、夢現の中で呟いた。
「……あ、はい」
それは、「指輪が欲しい」という意味だったかもしれないし、「スープのおかわり」だったかもしれない。 あるいは、単なる寝言の相槌だったかもしれない。
だが、その言葉は、マイクを通して会場中に響き渡った。
「……はい、と言ったぞ!」 「受諾だ! 聖女様が、殿下の愛を受け入れた!」
「うおおおおお!」
歓声が爆発した。 王子は涙を流し、私(の乗ったベッド)を抱きしめた。
「ありがとう! ありがとうリリアーナ! 一生、君の安眠を守り抜くと誓うよ!」
こうして。 私の「婚約破棄計画」は、「王位放棄&究極の引きこもり婚約」という、誰も予想しなかった形で決着した。 ……かに見えた。
その瞬間だった。
バリィィィィィン!!
何かが砕ける音がした。 グラスではない。 窓ガラスでもない。 もっと巨大な、世界の「枠組み」そのものが割れるような、不吉な音。
「……なんだ!?」
会場が静まり返る。 音は、頭上から聞こえた。
全員が天井を見上げる。 王宮の天井画――建国の英雄と女神が描かれたフレスコ画――に、亀裂が入っていた。 いや、絵に亀裂が入ったのではない。 空間そのものに、黒い亀裂が走っていたのだ。
「……空が……割れた?」
亀裂はメリメリと広がり、そこからドス黒い瘴気が溢れ出してきた。 シャンデリアが明滅し、不気味な紫色の光が会場を照らす。
「キャアアアア!」 「な、なんだあれは!?」 貴族たちが逃げ惑う。
私は、その異様な気配に、パチリと目を覚ました。
(……この気配)
知っている。 6回の人生の中で、何度も感じたことがある。 世界がループする直前。 私が処刑され、意識が消える瞬間に感じた、あの「歪み」の気配。
「……魔王?」
いいえ、違う。 魔王なんて生易しいものではない。 これは、「時空の歪み」そのものだ。 私のループの原因であり、この世界を何度でもやり直させる、システムのエラー。
亀裂の向こうから、巨大な「目」が現れた。 ギョロリとした、無機質な瞳。 それが、私を見据えた。
『……見ツケタ……』
頭の中に、ノイズ交じりの声が響く。
『……バグ……要因……リリアーナ……』
『……排除……スル……』
声と共に、亀裂から黒い雷が放たれた。 狙いは、私。
「リリアーナ!」
王子が、とっさに私の前に立ちはだかった。 彼は剣を抜き、雷を受け止めようとする。 しかし、相手は次元が違う。 ただの人間が防げるものではない。
「……どいて」
私は、ベッドから飛び起きた。 パジャマ・ドレスの裾を翻し、王子の前に出る。
「カイル! 結界を!」 「ベルタ! アリスを連れて避難誘導!」
「はっ!」 「御意!」
私の命令に、親衛隊が即座に動く。 カイルが闇の障壁を展開し、ベルタが貴族たちを誘導する。
私は、迫りくる黒い雷を見据えた。
(……排除するですって?)
私の安眠を。 私の勝ち取った、ニート生活を。 そして、このバカだけど愛すべき王子との未来を。
「……ふざけないで」
私は、右手に魔力を集中させた。 氷華の冷気と、アリスのパンの温かさと、カイルの闇と、ベルタの闘志。 そして、私の「絶対に寝てやる」という執念。 全てを混ぜ合わせる。
「私の睡眠時間を削る奴は……神だろうがシステムだろうが、ぶっ飛ばす!」
私は、枕(アリス製)を掴んだ。 そして、全力で投擲した。
「必殺! 枕投げ・改!!」
ヒュンッ!
枕は光の矢となって飛んでいった。 黒い雷を突き破り、亀裂の奥にある「目」に向かって一直線に。
ドゴォォォォォン!!
命中。 「目」が驚いたように見開かれ、そして苦悶の表情(?)を浮かべた。
『……グオォォォ……!』
亀裂が揺らぐ。 瘴気が逆流し、吸い込まれていく。
「……今のうちに!」
私は叫んだ。 この隙に、亀裂を塞がなければならない。
しかし、私の魔力は今の一撃で空っぽだった。 眠い。 立っていられない。
「リリアーナ!」
倒れかけた私を、王子が支えた。
「僕の魔力を使ってくれ! 全部あげる!」
「……え?」
「君と一緒なら、魔力切れなんて怖くない! さあ、二人で世界を救おう(そして寝よう)!」
王子が、私にキスをした。 額に。 その瞬間、彼の膨大な王家の魔力が、私の中に流れ込んでくる。 温かくて、少し暑苦しいくらいの、純粋なエネルギー。
「……チャージ完了」
私はニヤリと笑った。 魔力満タン。 いや、オーバーフローだ。
「……閉じて!」
私は、修復魔法『完全なる幕引き(カーテンコール)』を放った。 空の亀裂に向かって、光のカーテンが広がる。 傷口を縫い合わせるように、時空の歪みが修復されていく。
『……マダ……終ワラナイ……』
亀裂の向こうから、捨て台詞が聞こえた。
『……次ハ……本体ガ……行ク……』
シュンッ。 亀裂が消滅した。 天井画が元通りになり、シャンデリアの光が戻った。
静寂。 そして、安堵のため息。
「……勝った?」
誰かが呟いた。
私は、王子の腕の中で、力尽きていた。 魔力を使い果たし、今度こそ限界だ。
「……リリアーナ?」
「……もう、無理」
私は、王子の胸に顔を埋めた。
「……あとは、任せた。……起こさないで」
「ああ。ゆっくりおやすみ、僕の聖女」
王子が優しく頭を撫でてくれた。 その感触を最後に、私は深い深い眠りの底へと落ちていった。
◇
こうして、運命の舞踏会は幕を閉じた。 断罪イベントは回避され、代わりに「世界を脅かす謎の敵」の存在が明らかになった。 そして、私と王子の「婚約」は、国を挙げた決定事項となった。
しかし。 敵は言っていた。 『次は本体が行く』と。 あれはまだ、前哨戦に過ぎなかったのだ。
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