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第17話:魔王 vs 眠り姫
気づけば、私は玉座の前に立っていた。
そこは、奇妙な空間だった。 天井はなく、無限に広がる星のない暗黒の空。 床は黒曜石のように磨き上げられ、冷たい冷気を放っている。 壁には無数の時計が飾られているが、その針はすべて止まっている。
音がない。 風もない。 完全なる静止した世界。
そして、目の前の巨大な玉座に、一人の男が座っていた。 漆黒のローブを纏い、顔全体を覆う銀色の仮面をつけている。 先ほど、王都の上空に現れ、私をここへ引きずり込んだ張本人。 時空の管理者にして、この世界のバグを修正しようとするラスボス、「魔王」だ。
「……ようこそ、特異点リリアーナ」
魔王の声は、空間そのものから響くように重厚だった。
「ここは『時の狭間』。過去も未来もなく、ただ永遠の現在だけが存在する場所だ。……気に入ったかな?」
私は、周囲を見渡した。 果てしない闇。 止まった時間。
「……悪くないわね」
私は正直に感想を述べた。
「太陽が昇らないということは、朝が来ないということ。つまり、『起きなさい』という悪魔の言葉(モーニングコール)を聞かなくて済む。……最高じゃない」
「……ほう」
魔王が面白そうに顎を撫でた。
「私の世界を見て、恐怖ではなく安堵を感じた人間は初めてだ。……やはり、君は壊れているな」
「失礼ね。私は正常よ。睡眠欲求に忠実なだけ」
私は腕を組んだ。 パジャマ姿(ネグリジェ・ドレス)だが、ここでは誰も見ていないので恥ずかしくない。
「それで? 私をここに呼んで、どうするつもり? お茶会でもする?」
「フフフ……。お茶会か。それも一興だが、残念ながら違う」
魔王が立ち上がった。 その瞬間、彼から放たれるプレッシャーが膨れ上がり、空間がビリビリと震えた。
「私は君を排除するつもりだった。世界を歪めるバグ要因としてな。……だが、考えが変わった」
彼はゆっくりと階段を降り、私に近づいてきた。
「君を、この世界の『管理補佐』にしてやろう」
「……は?」
「君は強い。あの黒竜を一撃で沈めるほどの力を持ち、時の歪みすら修復してみせた。その力、私のために使え。……そうすれば、報酬としてこの『永遠の夜』を与えよう」
魔王は両手を広げた。
「どうだ? 悪くない取引だろう。君が望む『終わらない睡眠』。それを私が保証する。その代わり、君は私の手足となり、歪んだ歴史を修正するのだ」
なるほど。 ヘッドハンティングか。 条件は「永遠の安眠」。 確かに魅力的だ。 このまま王都に帰れば、また「聖女様バンザイ」の騒音や、王子の重い愛に悩まされる日々が待っている。 それに比べれば、ここでの静寂は捨てがたい。
「……条件を確認させて」
私は冷静に交渉に入った。
「永遠の夜というのは、具体的にどういう状態?」
「言葉通りだ。太陽は昇らず、鳥は鳴かず、人々が活動することもない。ただ静謐な闇が続くだけだ」
「……ふむ。室温は?」
「常に一定だ。腐敗も老化も起きない、絶対の零度に近い」
「……寒いわね。暖房設備は?」
「……ない。ここは精神の世界だ。寒さは心の持ちようでどうにでもなる」
「……」
私は眉をひそめた。 心の持ちよう? そんな根性論、一番嫌いだ。
私はさらに質問を重ねた。
「ベッドは? 最高級のスプリングと羽毛布団はあるの?」
「……ない。肉体という檻から解放されれば、睡眠具など不要だ」
「湿度は? 乾燥してると喉が痛くなるんだけど」
「……ない。ここは無の世界だ」
「お風呂は?」
「……ない」
「美味しい朝食(パンケーキ)は?」
「……ないと言っているだろう!」
魔王が苛立ちを露わにした。
「貴様、何を勘違いしている! ここは楽園ではない! 精神を研ぎ澄まし、世界の理(ことわり)と向き合うための修練場だ! 俗世の快楽など、不純物でしかない!」
「……不合格」
私は即答した。 手でバツ印を作る。
「え?」
「あんた、分かってないわ。睡眠を舐めてる」
私は魔王を指差した。
「いい? 質の良い睡眠というのは、ただ時間が止まればいいってもんじゃないの。適切な温度、湿度、寝具の質感、そして安心感。それらが完璧に調和して初めて、魂の休息が得られるのよ」
私は床を足でコツコツと叩いた。
「この床、硬すぎ。こんなところで寝たら背中が痛くなるわ。それに寒すぎる。絶対零度? 凍死させる気? 精神の世界だろうが何だろうが、不快なものは不快なのよ」
「……き、貴様……」
「それに、『永遠の闇』って言ったけど……これ、ただの『無』じゃない。面白みがないのよ。星空の揺らぎとか、虫の声とか、そういう『1/fゆらぎ』がないと、逆にリラックスできないの。無音室に閉じ込められた人間が発狂するのと一緒よ」
私は、魔王の提案を完膚なきまでにダメ出しした。
「やり直し。もっとマシな環境を整えてから出直して」
魔王が震えていた。 仮面の奥の瞳が、怒りで燃え上がっているのが分かる。 時空の管理者たる自分が、たかだか人間の小娘に、しかも「寝心地」という謎の基準で説教されているのだ。 プライドが許すはずがない。
「……調子に乗るなよ、人間」
魔王の声が低くなった。 空気が重くなる。 先ほどまでの勧誘モードは消え失せ、純粋な殺気が満ちてくる。
「私が優しく接してやれば、つけ上がりおって……。いいだろう。快適な眠りなど与えん。私が貴様に与えるのは……『永遠の悪夢』だ!」
魔王が仮面を外した。 その素顔が露わになる。
意外にも、それは美しい青年の顔だった。 青白い肌。 血の色の瞳。 そして、目の下には……。
「……うわ」
私は思わず声を漏らした。
「何だその反応は! 恐れおののけ! これぞ魔王の真の姿……」
「……クマ、ひどくない?」
「……は?」
私は魔王の顔を指差した。 彼の目の下には、どす黒いクマが刻まれていた。 肌もカサカサだ。 唇も荒れている。
「あんた……寝てないでしょ」
「……」
「いつから寝てないの? 100年? 1000年?」
図星だったらしい。 魔王が言葉を詰まらせた。
「……愚問だ。私は管理者だ。眠る必要などない。常に世界を監視し、修正し続けるのが私の使命……」
「嘘ね」
私は断言した。 元・引きこもりプロフェッショナルとして、そして睡眠愛好家として、彼の状態は見過ごせない。
「その充血した目。イライラした態度。そして、思考の柔軟性の欠如。……典型的な『慢性睡眠不足』の症状よ」
「黙れ! 私は神に近い存在だ! 生理現象など超越して……」
「超越してないから、そんなに顔色が悪いんでしょ」
私は一歩踏み出した。
「あんた、本当は寝たいんでしょ?」
「……ッ!」
「世界を管理する重圧。終わらない孤独。誰にも頼れない責任感。……疲れてるんじゃない?」
魔王が後ずさりした。 私の言葉が、彼の精神的ガード(ATフィールド的なもの)を貫通したようだ。 物理攻撃よりも、精神分析攻撃の方が効いている。
「違う……私は……」
「『永遠の夜』なんて作ったのも、本当は自分が休みたいからじゃないの? 誰もいない世界で、誰にも邪魔されずに、ただ横になりたい……。それが本音でしょ?」
「やめろ……! 私の心を覗くな!」
魔王が叫んだ。 同時に、周囲の闇が暴れ出す。 黒い触手のような影が、四方八方から私に襲いかかる。
「否定するなら、力づくで黙らせてやる! 永遠の悪夢の中で、己の無力さを嘆くがいい!」
襲い来る影。 それは、魔王の心の闇そのものだ。 恐怖、不安、孤独、焦燥。 それらが具現化し、精神を汚染しようとしてくる。
普通なら、恐怖で発狂するだろう。 だが。
「……浅い」
私は、あくびをした。
「そんなレベルの悪夢、二度寝の時に見る『トイレに行きたいけど起きたくない葛藤』に比べれば、児戯にも等しいわ」
私は、影の触手を手で払いのけた。 魔法ではない。 ただの「拒絶」の意志だ。 私の強固な睡眠欲(メンタル)は、魔王のネガティブキャンペーンごときでは揺らがない。
「な……!? 私の闇を……素手で!?」
「あんたの闇は、質が悪いわ。ジメジメしてて、カビ臭い。……ちゃんと布団干してる?」
「布団の話をするなぁぁぁ!」
魔王が魔法を放つ。 『時空切断(クロノス・ブレイク)』。 時間を切り裂き、対象を過去の彼方へ葬り去る即死魔法。
私は、それを「枕(アリス製)」で受け止めた。 パシィッ。
「……弾いた!?」
「この枕には、アリスの『パン酵母菌』と、ベルタの『騎士道精神』、そしてカイルの『暗殺術』が練り込まれてるの。時空切断くらい、クッション性で吸収できるわ」
(※できません。リリアーナの魔力が異常なだけです)
私は枕を構えた。
「いい? 教えてあげる」
私は魔王に向かって走り出した。 浮遊魔法で加速する。
「本当の『夜』っていうのはね……!」
魔王が迎撃しようとする。 防御障壁を展開する。
しかし、私は止まらない。 障壁を枕で殴り壊し、魔王の懐に飛び込む。
「もっと優しくて! 温かくて! 幸せなものなのよぉぉぉ!」
「ひぃっ!?」
私は魔王の胸ぐらを掴んだ。 そして、至近距離で睨みつけた。
「あんた、最後に『いい夢』見たのいつ?」
「ゆ、夢……? 私は管理者だ、夢など……」
「見てないのね。可哀想に」
私は、魔王を押し倒した。 玉座の上に。 ドサッ。
「な、何をする!?」
「強制睡眠(カウンセリング)よ」
私は、魔王の上に馬乗りになった(誤解を招く体勢だが、本人は真剣だ)。 そして、右手を彼の額にかざした。
「暴れないで。……今から、あんたの凝り固まった脳みそを、ほぐしてあげるから」
「や、やめろ! 貴様の魔力が入ってくる……!?」
私は、全魔力を解放した。 攻撃魔法ではない。 究極の『リラックス魔法』だ。
『強制安眠(エターナル・スリープ)・改』。
私の魔力が、金色の粒子となって魔王の体内に浸透していく。 交感神経を強制シャットダウンし、副交感神経を極限まで活性化させる。 脳内のストレス物質を分解し、セロトニンとメラトニンを大量分泌させる。
「あ……あぁ……」
魔王の抵抗が弱まる。 彼の目から、殺気が消えていく。
「なんだ……これは……。体が……重い……?」
「それが『眠気』よ」
私は優しく言った。
「あんたはずっと気を張ってた。世界を守らなきゃ、修正しなきゃって。……でも、もういいの」
「だめだ……私が眠れば……世界は……」
「世界なんて、少しくらい放っておいても壊れないわよ。私が留守番しててあげるから」
「き、君が……?」
「ええ。……だから、安心して」
私は、魔王の瞼を指で閉じた。
「おやすみ、おじさん」
「……私は……まだ……若……」
魔王の言葉は続かなかった。 数千年の時を経て、初めて訪れた抗いがたい睡魔。 それは、恐怖でも絶望でもなく、ただただ温かい、母の胎内のような安心感だった。
「……ムニャ……」
魔王が、寝息を立て始めた。 あの恐ろしかった魔王が、今はただの疲れた青年のように、無防備な顔で眠っている。
「……ふぅ」
私は額の汗を拭った。 強敵だった。 不眠症のこじらせ具合が半端じゃなかった。
私は玉座から降りた。 魔王は玉座の上で丸まっている。 硬そうだな。
「……サービスしてあげる」
私は魔法で、玉座の硬い石を、ふかふかのソファに変えた。 さらに、虚空から毛布(私の予備)を取り出し、かけてあげた。 温度調整も忘れずに。 適温26度。
「……これでよし」
魔王城が、少しだけ温かい空間になった気がする。
さて。 魔王を寝かしつけたのはいいが、私はどうやって帰ればいいのだろう。 ここ、異空間だし。 出口がわからない。
「……困ったわね」
私は腕を組んだ。 魔王が起きるまで待つか? いや、こいつの熟睡ぶりを見るに、100年は起きそうにない。
その時。
ビリビリビリ……!
空間に亀裂が入った。 今度は、外側からの亀裂だ。
「リリアーナぁぁぁぁ!!」
聞き覚えのある声。 そして、まばゆい光と共に、空間が砕け散った。
現れたのは、ジークフリート王子だった。 彼は、王家の至宝である時空転移装置(国宝級アーティファクト)を強引に起動し、次元を超えて迎えに来たのだ。 後ろには、レオンハルト騎士団長や、カイル、ベルタ、アリスもいる。
「リリアーナ! 無事か!?」
王子が駆け寄ってくる。 私は人差し指を口に当てた。
「……シーッ」
「え?」
私は玉座を指差した。
「今、寝かしつけたところだから。……静かにして」
王子たちが玉座を見る。 そこには、毛布にくるまって幸せそうに寝ている魔王の姿があった。
「……あれは……魔王?」 「寝ている……のか?」 「聖女様が……魔王さえも改心(睡眠)させたというのか……!」
一同が驚愕する。
「改心っていうか、ただの寝不足だったみたい」
私は肩をすくめた。
「さ、帰りましょ。……ここ、やっぱり殺風景で飽きたわ」
「ああ! 帰ろう! 君の居場所へ!」
王子が私を抱き上げた(お姫様抱っこ)。 私は抵抗しなかった。 疲れていたし、歩くのが面倒だったから。
私たちは、次元の裂け目を通って元の世界へ戻った。 後ろで眠る魔王に、「良い夢を」と心の中で祈りながら。
◇
王都に帰還した私は、さらなる伝説の人となっていた。 「黒竜を撃退し、魔王を鎮めた救世主」。 もはや、誰も私に逆らえない。
魔王城での一件以来、世界に奇妙な変化が起きていた。 時空の歪みが消え、自然災害が減り、作物が豊作になったのだ。 どうやら、管理者がぐっすり眠ったことで、彼の精神状態が安定し、それが世界に良い影響を与えたらしい。 「寝る子は育つ」ならぬ「寝る管理者は世界を救う」だ。
そして、私の生活もまた、平穏を取り戻しつつあった。
……と、言いたかったのだが。
「リリアーナ様! 起きてください!」
またしても、早朝からアリスの声。
「……何?」
「教会の外に、すごい行列が……!」
「巡礼者なら、追い返して」
「違うんです! 『魔王軍』の方々です!」
「は?」
私は窓から外を見た。 そこには、魔族やモンスターたちの集団が、プラカードを持って並んでいた。
『魔王様を気持ちよく寝かせてくれてありがとう』 『我々も安眠したい』 『不眠症改善セミナー希望』
「……」
どうやら、魔王が眠ったことで、部下たちも「休息の重要性」に目覚めてしまったらしい。 彼らは戦いを放棄し、私に「安眠の教え」を請いに来たのだ。
「……カイル」
「はい」
「……整理券、配って」
「え?」
「セミナーやるわよ。……全員まとめて寝かせてやる」
私は決意した。 世界平和のためには、敵も味方も関係ない。 全員が寝れば、世界は平和になるのだ。
「ベルタ、会場設営! アリス、枕の大量生産!」
「御意!」 「はいっ!」
こうして、私の「聖女」としての活動は、 「世界規模の睡眠指導」へとシフトしていくことになった。
争いはなくなり、剣は枕に持ち替えられ、魔法は空調管理に使われる。 そんな、馬鹿馬鹿しくも平和な世界。
それが、私の目指すゴールなのかもしれない。
◇
そして、物語はクライマックスへ。 魔王も黒竜も寝かせた私に、最後に立ちはだかる敵。 それは、「18歳の誕生日」という運命の日。 ループの起点であり、本来なら私が処刑されるはずの日。
その日が、刻一刻と近づいていた。
そこは、奇妙な空間だった。 天井はなく、無限に広がる星のない暗黒の空。 床は黒曜石のように磨き上げられ、冷たい冷気を放っている。 壁には無数の時計が飾られているが、その針はすべて止まっている。
音がない。 風もない。 完全なる静止した世界。
そして、目の前の巨大な玉座に、一人の男が座っていた。 漆黒のローブを纏い、顔全体を覆う銀色の仮面をつけている。 先ほど、王都の上空に現れ、私をここへ引きずり込んだ張本人。 時空の管理者にして、この世界のバグを修正しようとするラスボス、「魔王」だ。
「……ようこそ、特異点リリアーナ」
魔王の声は、空間そのものから響くように重厚だった。
「ここは『時の狭間』。過去も未来もなく、ただ永遠の現在だけが存在する場所だ。……気に入ったかな?」
私は、周囲を見渡した。 果てしない闇。 止まった時間。
「……悪くないわね」
私は正直に感想を述べた。
「太陽が昇らないということは、朝が来ないということ。つまり、『起きなさい』という悪魔の言葉(モーニングコール)を聞かなくて済む。……最高じゃない」
「……ほう」
魔王が面白そうに顎を撫でた。
「私の世界を見て、恐怖ではなく安堵を感じた人間は初めてだ。……やはり、君は壊れているな」
「失礼ね。私は正常よ。睡眠欲求に忠実なだけ」
私は腕を組んだ。 パジャマ姿(ネグリジェ・ドレス)だが、ここでは誰も見ていないので恥ずかしくない。
「それで? 私をここに呼んで、どうするつもり? お茶会でもする?」
「フフフ……。お茶会か。それも一興だが、残念ながら違う」
魔王が立ち上がった。 その瞬間、彼から放たれるプレッシャーが膨れ上がり、空間がビリビリと震えた。
「私は君を排除するつもりだった。世界を歪めるバグ要因としてな。……だが、考えが変わった」
彼はゆっくりと階段を降り、私に近づいてきた。
「君を、この世界の『管理補佐』にしてやろう」
「……は?」
「君は強い。あの黒竜を一撃で沈めるほどの力を持ち、時の歪みすら修復してみせた。その力、私のために使え。……そうすれば、報酬としてこの『永遠の夜』を与えよう」
魔王は両手を広げた。
「どうだ? 悪くない取引だろう。君が望む『終わらない睡眠』。それを私が保証する。その代わり、君は私の手足となり、歪んだ歴史を修正するのだ」
なるほど。 ヘッドハンティングか。 条件は「永遠の安眠」。 確かに魅力的だ。 このまま王都に帰れば、また「聖女様バンザイ」の騒音や、王子の重い愛に悩まされる日々が待っている。 それに比べれば、ここでの静寂は捨てがたい。
「……条件を確認させて」
私は冷静に交渉に入った。
「永遠の夜というのは、具体的にどういう状態?」
「言葉通りだ。太陽は昇らず、鳥は鳴かず、人々が活動することもない。ただ静謐な闇が続くだけだ」
「……ふむ。室温は?」
「常に一定だ。腐敗も老化も起きない、絶対の零度に近い」
「……寒いわね。暖房設備は?」
「……ない。ここは精神の世界だ。寒さは心の持ちようでどうにでもなる」
「……」
私は眉をひそめた。 心の持ちよう? そんな根性論、一番嫌いだ。
私はさらに質問を重ねた。
「ベッドは? 最高級のスプリングと羽毛布団はあるの?」
「……ない。肉体という檻から解放されれば、睡眠具など不要だ」
「湿度は? 乾燥してると喉が痛くなるんだけど」
「……ない。ここは無の世界だ」
「お風呂は?」
「……ない」
「美味しい朝食(パンケーキ)は?」
「……ないと言っているだろう!」
魔王が苛立ちを露わにした。
「貴様、何を勘違いしている! ここは楽園ではない! 精神を研ぎ澄まし、世界の理(ことわり)と向き合うための修練場だ! 俗世の快楽など、不純物でしかない!」
「……不合格」
私は即答した。 手でバツ印を作る。
「え?」
「あんた、分かってないわ。睡眠を舐めてる」
私は魔王を指差した。
「いい? 質の良い睡眠というのは、ただ時間が止まればいいってもんじゃないの。適切な温度、湿度、寝具の質感、そして安心感。それらが完璧に調和して初めて、魂の休息が得られるのよ」
私は床を足でコツコツと叩いた。
「この床、硬すぎ。こんなところで寝たら背中が痛くなるわ。それに寒すぎる。絶対零度? 凍死させる気? 精神の世界だろうが何だろうが、不快なものは不快なのよ」
「……き、貴様……」
「それに、『永遠の闇』って言ったけど……これ、ただの『無』じゃない。面白みがないのよ。星空の揺らぎとか、虫の声とか、そういう『1/fゆらぎ』がないと、逆にリラックスできないの。無音室に閉じ込められた人間が発狂するのと一緒よ」
私は、魔王の提案を完膚なきまでにダメ出しした。
「やり直し。もっとマシな環境を整えてから出直して」
魔王が震えていた。 仮面の奥の瞳が、怒りで燃え上がっているのが分かる。 時空の管理者たる自分が、たかだか人間の小娘に、しかも「寝心地」という謎の基準で説教されているのだ。 プライドが許すはずがない。
「……調子に乗るなよ、人間」
魔王の声が低くなった。 空気が重くなる。 先ほどまでの勧誘モードは消え失せ、純粋な殺気が満ちてくる。
「私が優しく接してやれば、つけ上がりおって……。いいだろう。快適な眠りなど与えん。私が貴様に与えるのは……『永遠の悪夢』だ!」
魔王が仮面を外した。 その素顔が露わになる。
意外にも、それは美しい青年の顔だった。 青白い肌。 血の色の瞳。 そして、目の下には……。
「……うわ」
私は思わず声を漏らした。
「何だその反応は! 恐れおののけ! これぞ魔王の真の姿……」
「……クマ、ひどくない?」
「……は?」
私は魔王の顔を指差した。 彼の目の下には、どす黒いクマが刻まれていた。 肌もカサカサだ。 唇も荒れている。
「あんた……寝てないでしょ」
「……」
「いつから寝てないの? 100年? 1000年?」
図星だったらしい。 魔王が言葉を詰まらせた。
「……愚問だ。私は管理者だ。眠る必要などない。常に世界を監視し、修正し続けるのが私の使命……」
「嘘ね」
私は断言した。 元・引きこもりプロフェッショナルとして、そして睡眠愛好家として、彼の状態は見過ごせない。
「その充血した目。イライラした態度。そして、思考の柔軟性の欠如。……典型的な『慢性睡眠不足』の症状よ」
「黙れ! 私は神に近い存在だ! 生理現象など超越して……」
「超越してないから、そんなに顔色が悪いんでしょ」
私は一歩踏み出した。
「あんた、本当は寝たいんでしょ?」
「……ッ!」
「世界を管理する重圧。終わらない孤独。誰にも頼れない責任感。……疲れてるんじゃない?」
魔王が後ずさりした。 私の言葉が、彼の精神的ガード(ATフィールド的なもの)を貫通したようだ。 物理攻撃よりも、精神分析攻撃の方が効いている。
「違う……私は……」
「『永遠の夜』なんて作ったのも、本当は自分が休みたいからじゃないの? 誰もいない世界で、誰にも邪魔されずに、ただ横になりたい……。それが本音でしょ?」
「やめろ……! 私の心を覗くな!」
魔王が叫んだ。 同時に、周囲の闇が暴れ出す。 黒い触手のような影が、四方八方から私に襲いかかる。
「否定するなら、力づくで黙らせてやる! 永遠の悪夢の中で、己の無力さを嘆くがいい!」
襲い来る影。 それは、魔王の心の闇そのものだ。 恐怖、不安、孤独、焦燥。 それらが具現化し、精神を汚染しようとしてくる。
普通なら、恐怖で発狂するだろう。 だが。
「……浅い」
私は、あくびをした。
「そんなレベルの悪夢、二度寝の時に見る『トイレに行きたいけど起きたくない葛藤』に比べれば、児戯にも等しいわ」
私は、影の触手を手で払いのけた。 魔法ではない。 ただの「拒絶」の意志だ。 私の強固な睡眠欲(メンタル)は、魔王のネガティブキャンペーンごときでは揺らがない。
「な……!? 私の闇を……素手で!?」
「あんたの闇は、質が悪いわ。ジメジメしてて、カビ臭い。……ちゃんと布団干してる?」
「布団の話をするなぁぁぁ!」
魔王が魔法を放つ。 『時空切断(クロノス・ブレイク)』。 時間を切り裂き、対象を過去の彼方へ葬り去る即死魔法。
私は、それを「枕(アリス製)」で受け止めた。 パシィッ。
「……弾いた!?」
「この枕には、アリスの『パン酵母菌』と、ベルタの『騎士道精神』、そしてカイルの『暗殺術』が練り込まれてるの。時空切断くらい、クッション性で吸収できるわ」
(※できません。リリアーナの魔力が異常なだけです)
私は枕を構えた。
「いい? 教えてあげる」
私は魔王に向かって走り出した。 浮遊魔法で加速する。
「本当の『夜』っていうのはね……!」
魔王が迎撃しようとする。 防御障壁を展開する。
しかし、私は止まらない。 障壁を枕で殴り壊し、魔王の懐に飛び込む。
「もっと優しくて! 温かくて! 幸せなものなのよぉぉぉ!」
「ひぃっ!?」
私は魔王の胸ぐらを掴んだ。 そして、至近距離で睨みつけた。
「あんた、最後に『いい夢』見たのいつ?」
「ゆ、夢……? 私は管理者だ、夢など……」
「見てないのね。可哀想に」
私は、魔王を押し倒した。 玉座の上に。 ドサッ。
「な、何をする!?」
「強制睡眠(カウンセリング)よ」
私は、魔王の上に馬乗りになった(誤解を招く体勢だが、本人は真剣だ)。 そして、右手を彼の額にかざした。
「暴れないで。……今から、あんたの凝り固まった脳みそを、ほぐしてあげるから」
「や、やめろ! 貴様の魔力が入ってくる……!?」
私は、全魔力を解放した。 攻撃魔法ではない。 究極の『リラックス魔法』だ。
『強制安眠(エターナル・スリープ)・改』。
私の魔力が、金色の粒子となって魔王の体内に浸透していく。 交感神経を強制シャットダウンし、副交感神経を極限まで活性化させる。 脳内のストレス物質を分解し、セロトニンとメラトニンを大量分泌させる。
「あ……あぁ……」
魔王の抵抗が弱まる。 彼の目から、殺気が消えていく。
「なんだ……これは……。体が……重い……?」
「それが『眠気』よ」
私は優しく言った。
「あんたはずっと気を張ってた。世界を守らなきゃ、修正しなきゃって。……でも、もういいの」
「だめだ……私が眠れば……世界は……」
「世界なんて、少しくらい放っておいても壊れないわよ。私が留守番しててあげるから」
「き、君が……?」
「ええ。……だから、安心して」
私は、魔王の瞼を指で閉じた。
「おやすみ、おじさん」
「……私は……まだ……若……」
魔王の言葉は続かなかった。 数千年の時を経て、初めて訪れた抗いがたい睡魔。 それは、恐怖でも絶望でもなく、ただただ温かい、母の胎内のような安心感だった。
「……ムニャ……」
魔王が、寝息を立て始めた。 あの恐ろしかった魔王が、今はただの疲れた青年のように、無防備な顔で眠っている。
「……ふぅ」
私は額の汗を拭った。 強敵だった。 不眠症のこじらせ具合が半端じゃなかった。
私は玉座から降りた。 魔王は玉座の上で丸まっている。 硬そうだな。
「……サービスしてあげる」
私は魔法で、玉座の硬い石を、ふかふかのソファに変えた。 さらに、虚空から毛布(私の予備)を取り出し、かけてあげた。 温度調整も忘れずに。 適温26度。
「……これでよし」
魔王城が、少しだけ温かい空間になった気がする。
さて。 魔王を寝かしつけたのはいいが、私はどうやって帰ればいいのだろう。 ここ、異空間だし。 出口がわからない。
「……困ったわね」
私は腕を組んだ。 魔王が起きるまで待つか? いや、こいつの熟睡ぶりを見るに、100年は起きそうにない。
その時。
ビリビリビリ……!
空間に亀裂が入った。 今度は、外側からの亀裂だ。
「リリアーナぁぁぁぁ!!」
聞き覚えのある声。 そして、まばゆい光と共に、空間が砕け散った。
現れたのは、ジークフリート王子だった。 彼は、王家の至宝である時空転移装置(国宝級アーティファクト)を強引に起動し、次元を超えて迎えに来たのだ。 後ろには、レオンハルト騎士団長や、カイル、ベルタ、アリスもいる。
「リリアーナ! 無事か!?」
王子が駆け寄ってくる。 私は人差し指を口に当てた。
「……シーッ」
「え?」
私は玉座を指差した。
「今、寝かしつけたところだから。……静かにして」
王子たちが玉座を見る。 そこには、毛布にくるまって幸せそうに寝ている魔王の姿があった。
「……あれは……魔王?」 「寝ている……のか?」 「聖女様が……魔王さえも改心(睡眠)させたというのか……!」
一同が驚愕する。
「改心っていうか、ただの寝不足だったみたい」
私は肩をすくめた。
「さ、帰りましょ。……ここ、やっぱり殺風景で飽きたわ」
「ああ! 帰ろう! 君の居場所へ!」
王子が私を抱き上げた(お姫様抱っこ)。 私は抵抗しなかった。 疲れていたし、歩くのが面倒だったから。
私たちは、次元の裂け目を通って元の世界へ戻った。 後ろで眠る魔王に、「良い夢を」と心の中で祈りながら。
◇
王都に帰還した私は、さらなる伝説の人となっていた。 「黒竜を撃退し、魔王を鎮めた救世主」。 もはや、誰も私に逆らえない。
魔王城での一件以来、世界に奇妙な変化が起きていた。 時空の歪みが消え、自然災害が減り、作物が豊作になったのだ。 どうやら、管理者がぐっすり眠ったことで、彼の精神状態が安定し、それが世界に良い影響を与えたらしい。 「寝る子は育つ」ならぬ「寝る管理者は世界を救う」だ。
そして、私の生活もまた、平穏を取り戻しつつあった。
……と、言いたかったのだが。
「リリアーナ様! 起きてください!」
またしても、早朝からアリスの声。
「……何?」
「教会の外に、すごい行列が……!」
「巡礼者なら、追い返して」
「違うんです! 『魔王軍』の方々です!」
「は?」
私は窓から外を見た。 そこには、魔族やモンスターたちの集団が、プラカードを持って並んでいた。
『魔王様を気持ちよく寝かせてくれてありがとう』 『我々も安眠したい』 『不眠症改善セミナー希望』
「……」
どうやら、魔王が眠ったことで、部下たちも「休息の重要性」に目覚めてしまったらしい。 彼らは戦いを放棄し、私に「安眠の教え」を請いに来たのだ。
「……カイル」
「はい」
「……整理券、配って」
「え?」
「セミナーやるわよ。……全員まとめて寝かせてやる」
私は決意した。 世界平和のためには、敵も味方も関係ない。 全員が寝れば、世界は平和になるのだ。
「ベルタ、会場設営! アリス、枕の大量生産!」
「御意!」 「はいっ!」
こうして、私の「聖女」としての活動は、 「世界規模の睡眠指導」へとシフトしていくことになった。
争いはなくなり、剣は枕に持ち替えられ、魔法は空調管理に使われる。 そんな、馬鹿馬鹿しくも平和な世界。
それが、私の目指すゴールなのかもしれない。
◇
そして、物語はクライマックスへ。 魔王も黒竜も寝かせた私に、最後に立ちはだかる敵。 それは、「18歳の誕生日」という運命の日。 ループの起点であり、本来なら私が処刑されるはずの日。
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