白い結婚十年目、ようやく離縁できると思ったのに 〜冷酷公爵は今さら私を手放さない〜

なつめ

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第十二話 白薔薇の失敗


 翌朝、目を覚ました瞬間に、イゼルディナは自分の身体がひどく静かだと気づいた。

 眠れなかったわけではない。むしろ、驚くほど深く、重く眠った気がする。怒りや失望で胸が焼けるような夜のあとには、時折こういう朝が来る。感情そのものが夜のうちに燃え尽きて、灰だけを残したような静けさ。目を開けてもすぐには何も思い出さず、天蓋の布の色や、窓辺へ落ちる冬の薄光や、暖炉に残った赤い火の気配ばかりが意識へ入ってくる。

 だがそれも、ほんの数秒だった。

 今さら何を。

 昨夜、自分の口から出たその言葉が、眠りの底からゆっくり浮かび上がってくる。暖炉の火。西の小居間。言葉を失うセヴェリオンの顔。十年も黙り続けたくせに、終わりの直前になってようやく何かを言おうとして、何から話せばいいのかすらわからなくなっている男の、あまりにも遅い沈黙。

 イゼルディナはまぶたを閉じ直し、ひとつだけ息を吐いた。

 胸の奥は、もう昨日ほど熱くなかった。怒りはある。けれど夜のような鋭さではなく、冷えた刃を布で包んだような、手触りの定まった痛みへ変わっている。自分が何に怒っているのか、何が許せないのか、昨日の対話でようやく輪郭がついたのだ。だから今朝は、混乱より先に静けさがある。

 扉の外で、控えめなノックが鳴る。

「奥様、お目覚めでいらっしゃいますか」

「ええ」

 いつも通りの声で返すと、扉が開き、エウラが入ってくる。湯を張った洗面盆、朝の衣装、細い銀盆に載せた温めた紅茶。何も変わらない朝の支度。何も変わらないように見える、その丁寧さがありがたかった。

「お加減はいかがですか」

「悪くないわ」

 答えると、エウラは鏡越しにこちらを見て、小さく安堵したような顔をした。昨夜の気配が残っているのを案じていたのだろう。

 洗面の湯は少し熱めだった。エウラの気遣いだ。頬へ触れると、夜のあいだに冷えていた皮膚へじわりと温度が戻る。首筋、耳の後ろ、指先。丁寧に拭いながら、イゼルディナは無意識に左手へ視線を落とした。

 結婚指輪は、昨夜のまま鏡台の小箱にある。

 薬指にはまだ白い輪の痕が残っていた。薄い、しかしくっきりとした白。十年の輪の下にあった皮膚の色。今朝はそれが昨日より少しだけ馴染んで見えた。完全には消えていない。けれど、もう「傷跡」というより、自分だけが知っている印のように思える。

「手袋は薄いものを」

 イゼルディナが言うと、エウラは頷いた。

「承知いたしました」

 それ以上は訊かない。イゼルディナが指輪を戻していないことに気づいているはずなのに、あえてそこへ触れない。そういう沈黙の上手さに、何度も救われてきた。

 身支度を終え、薄青の朝のドレスへ袖を通す。白に近い青で、冬の終わりの光によく合う色だ。襟元は閉じすぎず、袖は少しだけ細い。実務の一日にも、来客の少ない昼にも使える仕立て。鏡の前の自分は相変わらず白く見えたが、昨夜よりは表情が整っていた。

「今日は午前の報告を短めにしましょうか」

 髪を梳きながらエウラが言う。

「いいえ。いつも通りで」

 イゼルディナはそう答えた。

「手を止める理由にはならないもの」

「……かしこまりました」

 朝食は部屋で取った。小食堂へ下りる気分ではなかったわけではない。ただ、今朝は少しだけ静かな場所で始めたかった。焼きたての薄いパン、柔らかい卵、温めた果実。紅茶の香りは穏やかで、喉にやさしい。窓の外では雪の名残が白く、空は昨日よりも少しだけ晴れていた。

 だからこそ、廊下の向こうから近づいてくる足音が、妙に早く耳へ届いた。

 急いでいるわけではない。だが、躊躇している歩き方でもなかった。一定の速度でまっすぐこちらへ来る足音。エウラが少しだけ顔を上げる。

 ノックは二度。

 そして扉の外から、若い侍従の声がした。

「奥様。旦那様より、お届け物がございます」

 その一言で、部屋の空気がほんの少しだけ張る。

 エウラが反射的にイゼルディナを見る。イゼルディナ自身は、カップを置く手が止まっただけだった。驚いたのではない。ただ、「そう来るのか」と、心のどこかが冷たく納得したのだ。

「何かしら」

 エウラが代わりに問うと、侍従は一拍置いて答えた。

「花束でございます」

 花束。

 その言葉だけで、なぜだか胸の奥がひどく静かになった。

 イゼルディナは思う。

 ああ、この人は本当に、遅いのだ。

「こちらへ」

 そう告げると、扉が開く。

 若い侍従の腕には、大きな花束が抱えられていた。真っ白な薔薇ばかりを束ねた花束。朝の薄光の中で、それは雪よりも少しだけあたたかい白に見える。花弁の重なりはきめ細かく、外側はやや青みを帯び、芯に近づくほど乳色が深くなる。咲き切ってはいない。七分から八分ほど。いちばん美しいところを計って切られたのだろう。

 香りは強すぎない。だが近づけば、白薔薇特有の澄んだ甘さが、冷えた朝の部屋へ静かに広がる。

 それを見た瞬間、イゼルディナはすぐにわかった。

 北の温室の薔薇だ。

 自分が嫁いで二年目から育て、土を替え、水やりの間隔を調整し、庭師と一緒に冬を越えさせてきた、あの白薔薇の列から切られたものだ。花弁の巻き方も、枝の癖も、長さの揃え方も、自分は知っている。知っているから、余計にわかった。

 この花束は、ただ白薔薇を買って作らせたものではない。
 自分の好きな花を知っていて。
 その中でも、この邸の温室で育てている白薔薇を選び。
 今朝早く、最も見栄えのする枝だけを切らせたのだ。

 善意なのだろう、と頭のどこかが冷静に告げる。

 セヴェリオンは、イゼルディナが白薔薇を好むことを知っていた。
 知っていたからこそ、これを選んだ。
 何をどう埋め合わせるつもりなのかは知らないが、少なくとも本人なりに「喜ぶもの」を考えた結果なのだろう。

 それが、ひどく苦かった。

「旦那様より、『お部屋へ』と」

 侍従が言う。

 その声音には困惑が混じっていた。おそらく彼も、こういう届け物を主から命じられるのは珍しいのだろう。

 イゼルディナは、花束から目を離さなかった。

 白薔薇は綺麗だった。丁寧に整えられている。茎の下葉も落とされ、水揚げの切り口も新しい。結びのリボンは飾りすぎず、淡い銀。花瓶へ挿せば、部屋の空気が一気に変わるだろう。

 昔の自分なら、きっと息を呑んだ。

 白薔薇は好きだった。
 好きだと誰かが知っていたことだけで、胸が震えたかもしれない。
 夫が、自分の好きな花を覚えていて、それを贈ってくれたのだと、たとえたった一度でも信じてしまったかもしれない。

 けれど今のイゼルディナが最初に思ったのは、それとは正反対のことだった。

 知っていたのなら、なぜ今まで何もしなかったのか。

 白薔薇が好きだと知っていた。
 温室へ通っていたことも、おそらく知っていた。
 朝の茶よりも、日暮れの淡い光の中で見る白薔薇を好むことも、知っていたのかもしれない。

 それなのに、十年のあいだ一度も、たった一度も、こうして手渡そうとはしなかった。

 今日になって突然、花束ひとつ。

 まるで、十年の空白へ白を詰め込めば何かが埋まると思っているみたいだった。

 胸の奥で、ひどく静かな痛みがひろがる。

「奥様?」

 エウラが小さく呼ぶ。

 イゼルディナはそこでようやく瞬きをした。

「……いりません」

 声は驚くほど冷たかった。

 侍従が目を見開く。

「えっ」

「受け取れません、とお伝えして」

「ですが、旦那様より」

「だからこそです」

 イゼルディナは椅子から立ち上がった。花束へ近づく。白い花弁の香りが、近くなるほどやわらかく濃くなる。その香りを、彼女は昔から好きだった。だからこそ、今は正面から見つめるのが少しつらい。

「この花は、私が好きなものです」

 侍従へではなく、自分に言い聞かせるように。

「けれど、だから受け取れないの」

 若い侍従は完全に困っていた。善意の届け物を拒まれるとは思っていなかったのだろう。エウラが一歩出て、静かに助け舟を出す。

「旦那様には、奥様のお言葉そのままをお伝えいたします。花束は……お持ち帰りください」

 侍従は花束とイゼルディナの顔を見比べた。

「本当に、よろしいのでございますか」

 その問いに、イゼルディナは少しだけ目を伏せる。

 本当によいのか。
 その問いは、ひどく残酷だと思った。

 よくない。
 こんなに好きな花なら、受け取りたかった。
 十年前なら、いや一年前ですら、もしかしたら部屋へ飾っていただろう。
 けれど、今はもう違う。

「よろしいのです」

 静かに言い切る。

「今さら、白薔薇をいただいても困ります、と」

 侍従の頬がわずかにこわばる。言葉が、そのままでは少し鋭すぎると思ったのかもしれない。だがイゼルディナはやわらげなかった。やわらげてしまえば、この苦さが正しく伝わらない気がした。

 エウラが一礼する。

「承知しました。旦那様へ申し伝えます」

 侍従はなおも一瞬だけ躊躇ったが、やがて深く頭を下げ、花束を抱えたまま部屋を出ていった。扉が閉まる。白薔薇の香りだけが少し遅れて残り、しかしすぐに薄まっていく。

 イゼルディナは、閉じた扉をしばらく見つめていた。

 受け取らなかった。
 たったそれだけなのに、胸の奥がずしりと重い。

 エウラがそっと近づく。

「奥様」

「……ごめんなさい。朝からいやな役目をさせたわね」

「そのようなことは」

 エウラは首を振ったが、その顔には明らかな痛ましさがあった。主が好きな花を拒まねばならなかったこと。その理由が、花そのものではなく、花が「今さら」であること。それら全部を、彼女も理解しているのだろう。

 イゼルディナは窓辺へ歩き、カーテンを少しだけずらした。外は薄く晴れている。庭の雪は少しずつ輪郭を失い始め、温室の硝子が鈍く光っていた。

 あの花束の白薔薇は、たぶん今朝、庭師が切ったのだ。
 いや、もしかするとセヴェリオン自身が温室を見に行かせたのかもしれない。
 どの列の薔薇がよいか、どの程度開いた枝が見栄えするか、そこまで誰が決めたのかはわからない。

 だが、彼が白薔薇を選んだことだけはたしかだ。

 知っていたのだ。
 自分が好きだと。
 好きになった経緯まで知っていたかはわからなくても、少なくとも「白薔薇を見れば少しやわらぐ」という程度には知っていたのだろう。

 その事実が、花束そのものより深く刺さる。

 知っていた。
 知っていて、何もしなかった。
 十年。

 その十年の空白があるから、今日の白薔薇はただの花になれない。

「奥様、お茶を淹れ直します」

 エウラの声に、イゼルディナは振り返った。

「……お願い」

 座り直す。カップの茶は少し冷めていた。エウラが新しい湯を用意し、今度は少しだけ渋みの強い葉を選ぶ。目を覚ますための茶だ。

 茶が注がれる音を聞きながら、イゼルディナは小さく言った。

「私、白薔薇は好きなのに」

「はい」

「好きだから、受け取れなかったわ」

 エウラは一瞬だけ手を止めたが、何も言わずに湯を注ぎ終えた。その沈黙がありがたい。

 もし「もったいないことです」とか、「旦那様もお考えがあって」といった言葉が返ってきたなら、たぶん耐えられなかった。今必要なのは説明ではないし、気遣いの解釈でもない。ただ、この苦さが苦さのままそこにあってよいという静けさだけだ。

「花束ひとつで、どうにかなるように見えたの」

 自分でも驚くほど率直な言葉が出る。

「どうにかなると思われた、とは思っておりません」

 エウラがそっと答えた。

「旦那様がそこまで浅くお考えとは、私には思えません」

 イゼルディナは茶器へ指をかけたまま、ふっと笑った。

「そうね。あの方は浅いのではなく、遅いのだわ」

 それは皮肉ではなく、あまりにもその通りの言葉だった。

 セヴェリオンはたぶん、本気で考えたのだ。何を渡せばよいか、自分が好きなものは何か、今の自分へ届くものは何か。
 そしてたどり着いたのが、白薔薇だった。

 だからこれは、たしかに善意なのだろう。
 善意で、たぶん、精一杯のつもりでもあるのだろう。

 けれど、善意だからこそ痛い。

 遅すぎる善意は、時に悪意より厄介だ。
 悪意なら、はっきり怒れる。拒める。切り捨てられる。
 だが善意は、相手が「よかれと思って」差し出しているぶん、受け取れない自分のほうが冷酷に見えそうな気がしてしまう。

 実際、今の自分は少し冷酷だったかもしれない。

 そう思うと、胸の内側がわずかに痛んだ。
 けれど、それでも受け取れなかった。

 十年の空白を抱えたまま、白薔薇だけを部屋へ飾ることはできなかった。
 それはまるで、空の食卓へいきなり二人分のカップを並べるようなものだ。
 ない時間を、ないことにしたまま、美しいものだけ置いても仕方がない。

「北の温室に戻してもらえればいいのだけれど」

 イゼルディナが呟くと、エウラが静かに言った。

「切られた花は戻れません」

 その一言が、妙に胸へ響いた。

 切られた花は戻れない。

 当然のことなのに、今はそれが何か別のものに聞こえる。

 言葉にしなくても、エウラも気づいたのだろう。わずかに目を伏せ、それ以上続けなかった。

 茶を飲む。今度の茶は少し渋い。その渋さが、かえって今の喉にはちょうどよかった。

     *

 午後の執務は、いつもより少しだけ雑音が多かった。

 誰もはっきりと口にはしない。だが白薔薇の花束が公爵夫人の部屋へ運ばれ、すぐに持ち帰られたことは、最低限の範囲で邸の中へ広がったらしい。使用人たちは言葉を濁し、足音を控え、しかし視線の奥に「あれは何だったのだろう」という戸惑いを隠しきれていない。

 イゼルディナはそれを無視した。

 帳簿を見る。寄付名簿の修正を見る。北の別邸へ送る荷の一覧へ印をつける。手は動く。頭も動く。けれど、時々ふと白薔薇の香りがまだ鼻の奥へ残っている気がして、意識の奥がちくりとする。

 夕方近く、ベルンフリートが報告書を持って入ってきた時も、彼はいつも通りの顔をしていた。

「奥様、橋の再見積もりが届いております」

「見せて」

 紙を受け取り、目を通す。輸送費はきちんと整理されている。前回より二割ほど下がった。

「よろしいわ。これで進めましょう」

「かしこまりました」

 ベルンフリートは書類を引き取る。そのあとで、ほんの少しだけ声を低くした。

「……今朝の件ですが」

 イゼルディナは顔を上げなかった。

「花は、旦那様の執務室へ戻されたそうです」

「そう」

「それ以上のご指示はございません」

「ええ」

 それだけだった。

 執務室へ戻された白薔薇の花束が、今どこに置かれているのか。机の上か、窓辺か、それとも別の部屋へ下げられたのか。イゼルディナは想像しないようにした。

 ベルンフリートはそれ以上何も言わず、一礼して出ていった。

 紙の上の数字は揺れない。
 揺れないのに、胸の内側はじっとりと重い。

 こういう時、人は派手に傷つくわけではないのだと、イゼルディナは思う。
 むしろ、ひどく静かに削られる。
 白薔薇の香りのように、やさしく、薄く、それでいて長く残る痛みとして。

     *

 夜、自室へ戻ると、窓の外はもう暗かった。

 雪は降っていない。だが庭の白は闇の中でもわかる。暖炉に火が入り、部屋はほどよく暖かい。鏡台の上の小箱には、結婚指輪が入ったままだ。エウラが夜着を整えながら、何度か言葉を探す気配を見せたが、結局何も言わなかった。

「もう休むわ」

「はい、奥様」

 侍女が去る。

 一人になると、部屋は昼よりずっと広く感じられた。朝、花束が運び込まれそうになった同じ部屋。もしあれを受け取っていたら、今ごろ白薔薇の香りで満ちていたかもしれない。

 そう思うだけで、少しだけ胸が苦しくなる。

 イゼルディナは窓辺へ寄った。カーテンを少しだけ開く。外気の冷たさが硝子越しに伝わる。

「……綺麗だったのに」

 ぽつりと零した言葉は、たぶん花束そのものへのものだった。

 好きな花だった。
 本当に、綺麗だった。
 だからこそ、あんなふうに拒むしかなかった自分が、少しだけ痛い。

 受け取れなかったのは、嫌いだからではない。
 むしろ逆だ。
 好きなものだからこそ、今さら差し出されると、そこに「知っていた」の重さが加わってしまう。

 知っていた。
 知っていて、十年。
 それを埋めようとするような白薔薇。

 甘いはずの香りが、どうしても苦くなる。

 イゼルディナは小箱を開けた。中には指輪が静かに収まっている。金属は灯りの下で冷たい色を返す。そこへ白薔薇の花弁はない。今夜も花は部屋へ来なかった。

 代わりに、鼻の奥にはまだかすかな香りの記憶だけが残っている。

「善意でも、遅ければ駄目なものがあるのね」

 誰に言うでもなく、そう呟く。

 返事はない。

 ただ、暖炉の火が小さくはぜた。

 イゼルディナは小箱の蓋を閉め、寝台へ向かった。掛け布を引き上げ、枕へ頬を寄せる。目を閉じると、朝見た白薔薇の花弁が思い出される。やわらかな重なり。切り揃えられた茎。銀のリボン。好きな花なのに、好きだと言えない痛み。

 再構築とは、たぶんこういうものなのだろうか、と一瞬だけ思う。

 相手がようやく差し出した善意が、そのまま嬉しさにならない。
 むしろ、いちばん触れてほしくなかった空白を照らしてしまう。

 白薔薇は失敗だった。

 けれどその失敗は、悪意ではなく、善意の失敗だった。

 それがいっそう苦い。

 イゼルディナは静かに目を閉じる。

 好きな花を受け取れなかった夜は、思っていたよりずっと静かで、思っていたより少しだけ痛かった。


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