余命半年の私は、あなたの愛など要りませんので離縁します

なつめ

文字の大きさ
20 / 25

第19話 遅すぎる気づき



 その夜、ヴィルレオは書斎の机に肘をついたまま、長いこと動けなかった。

 机の上には開いたままの冊子がある。リュゼリアの細い筆跡で綴られた、屋敷の人員と癖と季節ごとの注意点、それから社交の綻びを未然に防ぐための、ごく短い覚え書き。その中に、自分の名前が当たり前のように混じっている。

『旦那様 北方帰り、朝の香草強すぎると食進まず』

『書斎夜更かし翌朝は甘味より塩気』

『王城泊まり続きの週は夕刻の来客一件減らす』

『雨前は左のこめかみ痛みやすい』

 どれも些細なことだ。

 些細すぎて、まともに取り上げるほどのことではない。彼自身も、誰かに説明を求められれば「どうでもいい」と一蹴しただろう程度のことばかりだった。

 けれど、そういう些細なことが重なって、人は呼吸を楽にしたり、食を進めたり、苛立ちを抑えたりしながら日々をやり過ごしているのだと、ヴィルレオは今になって思い知らされていた。

 これまで自分は、どれだけ“整えられた状態”に慣れきっていたのだろう。

 夜更けに書斎の灯りが遅くまで消えない日でも、翌朝の茶は薄すぎず濃すぎず、胃へ重くない塩気のあるものが先に出た。北方から戻った夜は、好むとも口にしたことのない温かな汁物がひと皿増えた。雨の前には不思議と予定の詰め方が少し緩くなって、王城帰りで頭が鈍る週には、気づけば余計な来客がうまく外されていた。

 偶然だと思っていた。

 公爵家だからそうなのだと、屋敷が勝手にそういうふうに回るものなのだと、疑いもしなかった。

 だが違った。

 それは全部、あの女が見ていたからだ。

 誰より早く、自分の小さな不調や機嫌の変化を拾い上げて、その場で手当てしていたからだ。

 しかも、それを“世話”だと悟らせぬかたちで。

「……笑えないな」

 誰に聞かせるでもなく、低く呟く。

 書斎の静けさが、やけに硬かった。南の別邸の静けさとはまるで違う。あちらの静けさは風や湖や土が作る、生きたものの沈黙だった。こちらの静けさは、手を入れるべき者が抜け落ちたあとの、少しずつ息の浅くなっていく家の静けさだ。

 燭台の火がひとつ、小さく揺れる。

 ヴィルレオは冊子を閉じた。閉じても、細い筆跡は瞼の裏へ残ったままだった。

 そのまま机の引き出しを開ける。リュゼリアが使っていた小さな執務机から移された覚え書きは、まだすべてを精査しきれていない。束ねた札。季節ごとの贈答記録。侍女の配置表。厨房の月ごとの仕入れ一覧。慈善会の寄付台帳。庭師の手入れ覚え書き。どれも一見すると整然としている。だが、細部まで目を通せば、そこにいちいちリュゼリアの手が入っているのがわかる。

 たとえば、厨房の仕入れ。

 冬の終わりから春先にかけて、体を温める根菜の量が少しだけ増え、その分だけ保存の利く菓子が減っている。王城勤めの従者たちが連日夜更けまで起きる週には、苦みのある茶葉と塩気の強い乾物が追加されている。逆に、舞踏会が続く季節には香りの強い菓子が増えるが、それも来客用と内々用とでわけられていた。

 彼はそれを、料理長の采配だと思っていた。

 違った。

 仕入れの端には、ごく短い但し書きがいくつもある。

『旦那様、北方帰りの翌日は甘味少なめ』

『侍従たち王城続き。夜食は温かいもの』

『夜会週、奥方付きは立ち仕事多。翌朝の乳と果実増』

 視線がそこで止まる。

 奥方付きは立ち仕事多。

 つまり、自分ではなく、彼女自身と、その周りまで見ていたのだ。

 夜会の翌朝、自分はいつも通りの時間に起きて、用意された食卓に座り、必要な茶を飲み、必要な書類を受け取っていた。その間に、彼女は夜更けまで客を見送り、衣装を脱ぎ、ようやく眠りについたはずなのに、翌朝には自分だけでなく侍女たちの体まで気にしていたのか。

 胃の奥が、鈍く捩れた。

 ヴィルレオは引き出しを乱暴には閉じず、しかしすぐにもそこから離れたくなって立ち上がった。

 書斎を出る。

 廊下はもう夜更けで、燭台の火だけが長く床へ影を落としていた。誰もいないはずの時間なのに、気配だけは薄く残っている。遠くで夜番の侍女が扉を静かに閉める音。暖炉に薪を足す低い物音。屋敷は眠っているようでいて、完全には眠らない。

 その眠らなさを、リュゼリアはきっと誰より知っていた。

 歩くうち、足は自然と私室の奥へ向かっていた。リュゼリアの寝室。彼女が南へ発ってから、必要な確認のほかはほとんど入っていない部屋だ。扉の前で一瞬だけ迷う。だが、それもごく短いものだった。

 ノックはしない。

 もう、返事をする人はいない。

 扉を開ける。

 中は暗く、しかし整いすぎるほど整っていた。寝台の天蓋は真っ直ぐに落ち、鏡台の上には最小限の香水瓶と櫛が整然と並び、衣装部屋への扉もきっちり閉じられている。花はない。王都を発つ前、彼女が咲くところを見たかったと零した白薔薇は、温室で今ごろ半開きだ。

 室内の空気は冷えすぎていなかった。誰かが火を入れ、毎日風を通し、寝具も埃ひとつ立てぬよう整えているのだろう。だが、どれほど整っていても、そこに人の体温がないという事実だけは隠せない。

 ヴィルレオは寝台へ近づき、しばらく立ち尽くした。

 この部屋では、どんな朝を迎えていたのだろう。

 自分が起きるずっと前から、彼女は目を覚ましていたはずだ。体調が悪くても悪くなくても、食堂の時間に間に合うように、報告に目を通せるように。夜会の翌朝でも。雨の日でも。風邪を押してでも。自分の機嫌を損ねぬよう、客に失礼のないよう、屋敷が滞らぬように。

 そのくせ彼女は、寝台で怠けることに罪悪感を抱いていた。

 南の別邸で「何も急がなくていい朝」が落ち着かないと零した時の顔を思い出す。あれはただの感傷ではなかったのだ。あの女は本当に、長いあいだ何かに追われることでしか朝を迎えたことがなかったのだろう。

 その追い立てていたものの一部に、自分がいた。

 それを思うと、寝室の空気すら自分を責めているようで、ヴィルレオは低く息を吐いた。

 ふと、鏡台の端に小さな箱が残っているのが目に入る。紺のベルベット。婚礼の指輪が入っていた箱だ。

 南へ持っていかなかった。

 あれは偶然ではない。リュゼリアは意志を持ってここへ置いていったのだ。婚礼の時、儀礼として指へ通され、その後はしまわれたままだった細い金の輪。それを持っていかないことが何を意味するか、彼女はよく理解していたはずだ。

 ヴィルレオは箱へ手を伸ばし、すぐに止めた。

 勝手に開ける気にはなれなかった。

 そこへあるというだけで十分だった。彼女が、自分との婚姻の象徴を、最後まで身につけぬままここへ置いた。その事実が、もう十分すぎるほど重い。

 寝室を出る。今度は食堂へ向かった。

     ◇

 夜の食堂は、昼よりさらに広く感じられた。

 燭台の火が長い卓へ複数の光を落としているのに、温度がない。リュゼリアがいなくなってから一度だけ、料理長は「旦那様がおひとりの時は内食堂でも」と遠回しに進言した。だがヴィルレオは首を縦に振らなかった。

 ここから逃げるような気がしたからだ。

 それでも今、卓の端へ立つと、逃げたくなる気持ちもまたわかる。

 ひとりで食事をするための場所ではない。客を迎え、家格を示し、夫婦が並ぶべき場所だ。以前から会話は多くなかった。だが、それでも彼女が座るだけで、食卓はちゃんと“食卓”になっていたのだと、いまは嫌でもわかる。

 給仕が今夜のスープを運んでくる。香りは控えめだ。料理長が朝の失敗を踏まえ、調整したのだろう。たしかに、ほんの少しだけ以前に近い。

 ヴィルレオはスプーンを取る。

 一口。

 昨日よりましだ。香草も抑えられている。根菜の甘みも出ている。だが、それだけだった。食欲が戻るわけではない。うまく言えないが、食べることの輪郭がぼやけている。

 南の別邸で、リュゼリアは言っていた。

 ちゃんと食べている気がする、と。

 王都では、食べることまで役目の一つみたいだった、と。

 あの時、ヴィルレオはそれを聞いて初めて、自分が食卓をどういうものにしていたのか知った。リュゼリアは同じ場所にいながら、食事の味そのものではなく、速度や空気や沈黙に気を取られ続けていたのだ。

 では自分はどうだったのか。

 今ならわかる。彼もまた、食卓を“暮らし”ではなく“通過点”としてしか使ってこなかった。必要なだけ口にし、必要なだけ座り、終われば席を立つ。その快不快の調整まで彼女がしてくれていたから、自分はなおさら何も考えずに済んだ。

 スープを置く。

 ふと、卓上の花が目に入る。

 今日は薄桃の花だ。香りは弱い。花丈も昨日よりは高い。だが、これも違うと一目でわかる。リュゼリアなら、この季節、この時間、この食堂にはまだ白か淡黄を選ぶ。桃色は暖かすぎる。夜の食卓には少し甘い。

「……料理長を」

 給仕がすぐに頭を下げる。

 数分後、大柄な料理長が食堂へ現れた。彼はすでに自分が何を問われるか半ば察している顔をしていた。

「花も、お前か」

「いえ……花については侍女頭でございます」

「そうか」

 ヴィルレオは短く息を吐く。

「明日から、花は温室の白薔薇だけにしろ」

 料理長が目を上げる。

「食堂へ、でございますか」

「ああ」

「承知いたしました」

 なぜそう言ったのか、自分でもよくわからなかった。ただ、いまこの食堂に必要なのは、誰かが“よかれと思って”選んだ色ではなく、彼女が見たかったと零したあの白だと、直感のように思ったのだ。

 料理長が去ったあと、ヴィルレオはようやく二口目のスープを飲んだ。

 それでも味は戻らない。

 ただ前より正確になっただけだ。

     ◇

 翌朝、さらに決定的なことが起きた。

 王城からの早馬が日の出前に到着し、北方の急ぎの案件が一つ入り込んだのだ。クラウスが書斎へ駆け込み、執務の順番を組み替える必要があると伝える。以前なら、こういう時も屋敷の中は驚くほど滑らかに動いていた。朝食の時間が少しずれ、来客の順が入れ替わり、王城への返書が先に用意され、それでも誰も慌てた顔を見せないまま、気づけば全体がぴたりと整っていた。

 今朝は違った。

 書類の束は揃う。馬の用意もされる。だが、どの来客を後ろへずらすか、そのずらした来客へどう伝えるか、食事をいつ入れるか、医師への時刻変更をどう回すか、それらが一度にいくつも滞った。

「待て」

 ヴィルレオが低く言う。

「午前の来客は誰だった」

「西区の監査官と、ラングベルト伯爵家からの使者、それに」

「監査官を後ろへ回せ。ラングベルト伯は午前のほうがいい」

「ですが、監査官の馬車はすでに」

「なら控え室へ通せ。茶だけ出せ。使者は応接間へ先に」

 自分で指示しながら、以前はこれを誰がやっていたのかと気づく。

 リュゼリアだ。

 公爵の執務そのものではなく、その周辺を滑らかに通すための采配。どの客なら少し待たせても表立って不機嫌にならず、どの家はむしろ先に通すべきか。どの茶を出せば場が持ち、どの菓子なら「丁重に扱われている」と感じるか。そういうことを、彼女は日常として処理していた。

「旦那様、朝食は」

 給仕役が恐る恐る声をかける。

 ヴィルレオは一瞬だけ答えに詰まる。

 以前なら、ここでリュゼリアがもう別の形を整えていたのだろう。王城の急報が入った朝は、片手でつまめる塩気のあるものと薄い茶を小卓へ運ばせる。あるいは、移動の馬車に積ませる。だが今、その判断は誰にも降りていない。

「パンと茶を執務室へ」

 とっさに言う。

「香草のないものだ」

「かしこまりました」

 給仕が去る。

 その後ろ姿を見送りながら、ヴィルレオは無意識に机の端を強く握っていた。

 屋敷が回っていたのは、リュゼリアのおかげだった。

 昨日帳簿や人員配置を見て理解したばかりのはずなのに、今朝の混乱はその事実をさらに別の角度から叩きつけてくる。

 彼女が整えていたのは、単なる家事ではない。

 この巨大な家が、公爵の執務と王都の社交と使用人たちの生活とを、無理なくひとつに繋げておくための緩衝材だったのだ。

 だから彼は、自分が大公爵として思うままに働けているように錯覚していた。

 違う。

 彼女が、見えぬところで一つずつ角を削り、滑らかに流れるよう調整していたからこそ、自分は余計な摩擦を感じずに済んでいたのだ。

 その現実に、ようやく真正面から向き合わされる。

 あまりにも遅い。

 遅すぎて、笑えもしない。

     ◇

 午前の騒ぎが一段落したあと、ヴィルレオは南の別邸へ送る書状を書くため、ペンを取った。

 昨夜も短いものは送った。だが、それはただの確認だった。今日こそ、もう少し違うことを書けるかもしれないと思ったのだ。

 便箋を前にして、しばらく手が止まる。

 何を書けばいい。

 屋敷の花の丈が違ったことか。食卓の香草が多すぎたことか。夜番の侍女の配置が狂ったことか。北方の急報ひとつですべてがぎくしゃくしたことか。

 そんなものを、どう伝える。

 結局、それは全部同じ意味を指してしまう。

 お前がいないと、この屋敷はこんなにも下手にしか回らないのだと。

 それを書いてどうする。彼女を引き戻したいのか。罪悪感を与えたいのか。違う。そうではない。だが、なら何がしたいのかと言われても、まだ答えはない。

 ヴィルレオは眉間を押さえ、ひとつ深く息を吐いた。

 そして、思い切るように書き始める。

『本日、王都では朝から急報が入り、屋敷内も少し慌ただしかった。帳簿、人員、社交の札を見返し、お前がどれだけ多くのことを整えていたか、いまになって知った。』

 そこまで書いて、ペン先が止まる。

 紙に落ちたインクが小さく滲む。

 どれだけ多くのことを整えていたか、いまになって知った。

 その一文は真実だ。だが真実であるぶん、重い。彼女はそれを読んでどう思うだろう。遅すぎると、笑うだろうか。あるいは、そんなことはいまさら知っても意味がないと、静かに目を伏せるだろうか。

 しばらく迷い、結局ヴィルレオはその行を消さなかった。

 続けて書く。

『北方の急ぎで午前の予定が崩れたが、お前ならどう整えたかと、何度も考えた。』

『南では、お前が少しでも息をしやすくしているなら、それが何よりだ。』

『こちらのことは気にするな、と言うべきなのだろうが、嘘になる。お前がいないことを、屋敷のどこを見ても思い知る。』

 そこまで書いたところで、ヴィルレオは自分でも驚くほど長く息を止めていたことに気づく。

 嘘になる。

 その通りだった。本当は「気にするな」と書くべきなのだろう。療養へ出た妻へ、王都のことは任せて休めと。それが正しい。だがもう、そういう正しさだけで書きたくなかった。

 少なくとも一度くらいは、自分の見ている現実を、そのまま彼女へ差し出してもいいのではないかと思ったのだ。

 紙を置き、読み返す。

 不格好な文面だった。愛しているとも、必要だとも、後悔しているとも書いていない。だが、そのどれよりも裸の事実だけはそこにある。

 お前がいないことを、屋敷のどこを見ても思い知る。

 それが遅すぎる告白の一つなのだと、ヴィルレオはようやく認めた。

 封をし、クラウスを呼んでそれを託す。

「今日中に出せ」

「かしこまりました」

 クラウスが下がったあと、ヴィルレオはしばらく机に手をついたまま立っていた。

 遅すぎる。

 何もかも。

 けれど遅すぎると知ったところからしか、人は始められないのかもしれない。


感想 13

あなたにおすすめの小説

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!  って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!  父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。  アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。  最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

都合のいい女をやめた日、私は空へ戻る

凪ノ
恋愛
自他ともに認める禁欲主義の御曹司と付き合って四年目、彼は今もなお、彼女を拒んでいた。 そこで小林時絵(こばやし ときえ)は母親に電話をかけた。 「お母さん、前に言ってたパイロットの面接、もう手配してもらえる?」 電話の向こうで、時絵の母は驚きを隠せなかった。 「本当なの?でも、海浜市に残って結婚するって言ってたじゃない……あんなに好きだったパイロットの仕事も全部諦めたんじゃなかったの?」 薄暗い光の中、彼が夢中でその女に手を伸ばし、理性を失っていく彼の姿を眺めながら── 時絵は自嘲的に笑った。 ──H市に戻れば、また自分のキャリアを取り戻せる。 これからはまた、大空を自由に飛ぶパイロット、小林時絵として生きていく。 不倫に溺れた……惨めな女なんかじゃなくて……

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

身分違いの婚約、別れを認めない元カノ 〜「君だけだ」と言うけれど、私の知らないあなたの過去が苦しいのです〜

恋せよ恋
恋愛
「高位貴族以外とは結婚しない」 そう言って私と別れたはずよね? 留学先で元カノと別れ帰国した公爵令息ピエール。 そんな彼が恋したのは、父である公爵が勧める 身分違いの子爵令嬢キャサリンだった。 学園首席の才女であり、王女殿下の親友。 お見合いながら、順調に愛を育む二人。 しかし、技術者として招待された「元カノ」の出現で 結婚を半年後に控えた、平穏な幸せは一変する。 ピエールの無自覚な信頼と、元カノの悪意。 「技術のわからない貴女に、彼の隣は務まらないわ」 誤解と執着、そして一途な愛が交錯する物語。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

「もう十分に生きていると思っていた私に、殿下は毎日花を置いていきました」

まさき
恋愛
侯爵家を出て、二年が経った。 離縁のことは、もう誰にも話さない。 王都の外れに小さな部屋を借り、伯爵家の令嬢に刺繍を教え、静かに、過不足なく生きている。 泣いたのはいつだったか、もう思い出せない。 それで十分だと、思っていた。 ある晩、馴染みの花屋の前で、男が立っていた。 「セラフィーナ」 三年ぶりに聞く声が、当然のように名前を呼ぶ。 ヴィンセント王太子殿下――幼い頃から、ただひとり、自分を名前で呼び続けてくれた人。 「王宮へ来てください」 「お断りします。私はもう、十分に生きていますので」 翌日、部屋の前に花が一輪あった。 その翌日も。また翌日も。 受け取らない。でも、捨てられない。 必要とされなくても生きていける。 それはもう証明した。 だからあなたは、私を揺るがさないでください。 せっかく、平らになった心だったのに。 これは、ひとりで立つことを選んだ女が、 それでも誰かの隣へ帰るまでの物語。