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第28話 崩れる社内評価
久世ホールディングス本社の受付には、いつも静かな緊張感があった。
白を基調とした広いロビー。磨かれた石床。過度に豪奢ではないが、手入れの行き届いた調度。正面に置かれた花は、会社の空気そのものを映す鏡のようなものだった。派手すぎず、寂しすぎず、季節感があり、それでいて来客の気分を邪魔しない。誰かが意識して見ているわけではない。けれど、きちんとした会社ほど、そういうものの乱れは静かに目へ残る。
その朝、受付の花は少しだけ強すぎた。
白い胡蝶蘭に、濃い紅のダリア。立派ではある。金もかかっている。だが、どこか祝い事めいて見える組み合わせだった。しかも今日は、午前中に弔問帰りの取引先役員が立ち寄る予定になっている。受付嬢の一人は、花を見た瞬間に心の中であ、と思ったが、もう差し替える時間はなかった。
「専務、おはようございます」
出社してきた昌親へ、受付嬢が頭を下げる。昌親は軽く頷いたが、足は止めない。表情は朝からすでに硬かった。昨夜も遅くまで資料を見ていたらしく、ネクタイは整っているのに目元だけが少し疲れている。
エレベーターのドアが閉まる直前、昌親はちらりと花へ視線を向けた。ほんの一瞬だけ、眉が動く。違和感には気づいたのだろう。だが、その違和感にどんな名前をつければいいのかまでは分からないまま、扉は閉じた。
専務室へ入ると、秘書の小林がすぐ立ち上がった。
「おはようございます。本日の予定ですが、十時から三和商事の星崎常務、十一時半から新川専務との昼食会、その後二時に城南病院へお見舞い、三時半に柏木産業の奥さまからのお電話の折り返し確認が入っています」
淡々と読み上げられる予定はいつも通りだ。だが昌親は、途中でふと顔を上げた。
「柏木の奥さま、何の件だ」
「先日の受付花について、一言お礼をと伺っていますが」
その言い回しに、小林自身も少しだけ含みを感じ取っているのが分かる。単純な礼の電話なら「お礼」だけで済む。わざわざ「一言」とつく時は、大抵その向こうに別の意味がある。
昌親は机に鞄を置きながら、短く言った。
「分かった」
「それと、今日のお見舞い品なのですが」
小林が控えめに続ける。
「先方が甘味を控えていらっしゃる件は、こちらの記録に残っていました。ただ、候補として用意されていたものが焼き菓子中心で」
昌親は動きを止めた。
焼き菓子。
先方は、たしか糖質制限中だったはずだ。そう記憶しているのに、なぜそこへ焼き菓子が出てくるのか。
「誰が手配した」
「総務が、前回の見舞いの履歴を見て同じ店へ連絡したようです」
「前回と今回じゃ事情が違うだろ」
「……その点の細かい注記が、今回の共有表には反映されていませんでした」
小林は言いにくそうに言った。
共有表。以前なら、そういう細かなことは自然に一言添えられていたのだ。履歴の横に小さく。「今回は甘味不可」「包装は白系避ける」「奥さまが同席の可能性あり」そんな一言があるだけで、総務も花屋も店も迷わない。今はそれがない。あるいは、ある場所とない場所がばらばらで、現場まで届いていない。
昌親は舌打ちを飲み込み、低く言った。
「差し替えろ。今すぐ」
「承知しました」
小林が下がる。机の上には、今日の来客資料がきれいに整えられている。紙の並びに乱れはない。だが、中身の足元が揺れている。そんな感覚が、ここ最近ずっと消えなかった。
十時の三和商事との打ち合わせも、小さな綻びから始まった。
会議室へ通された星崎常務は、席につくなり、受付の花を話題にした。
「ずいぶん華やかな花でしたね」
声は柔らかい。微笑みもある。だが、その微笑みの端にひっかかるものを、昌親はもう見落とせなくなっていた。
「春らしい色合いで」
「ええ。ただ、今日はちょっと驚きました。うちから先に弔問帰りだとお伝えしていたので」
さらりと言われただけなのに、会議室の空気が一度薄く冷えた。
昌親は即座に頭を下げた。
「配慮が足りませんでした。申し訳ありません」
言葉としては正しい。だが、遅い。しかも、自分が言うまで受付の花を差し替えようと動けなかったことまで含めると、余計にみじめだった。
打ち合わせ自体は無難に終わった。数字も案件も大きく外しはしない。昌親は仕事そのものができない男ではない。だが、その「大きく外しはしない」が、今はかえって痛い。問題は表の商談ではなく、その手前にある小さな調整の連続で起きていた。以前はそれらが見えないところで滑らかに処理されていたぶん、いまの詰めの甘さだけが妙に浮くのだ。
昼食会の会場は、駅前の老舗日本料理店だった。
本来なら、そういう店選びは久世家側にとって得意分野のはずだった。個室の広さ、料理の流れ、店側の口の堅さ、先方の好み、会話のしやすさ。だがその日、小林が念のため確認した献立表には、前菜の一品に甲殻類が入っていた。
「新川専務の奥さま、海老がお苦手でしたよね」
席へ着く前、小林が小声で確認する。
その一言に、昌親の背中が冷えた。
奥さまは今日は同席しない。だが新川専務本人が、以前の会食の際に「妻は甲殻類を見るだけで気分が悪くなる」と笑い混じりに話していたことを思い出す。夫婦の話題が出た時に不用意に海老の話が卓上にあれば、それだけで印象が悪い。しかもこの店は、料理名からでは中身が分かりにくい。
「替えられるか」
昌親が急いで店へ確認すると、仲居は一瞬困った顔をした。
「申し訳ございません、すでに仕込みに入っておりまして」
本来なら、前日までに伝えてあるべきことだった。
以前はそうだった。少なくとも、こういう「なんとなく覚えているけれど手元の資料には落ちていない」種類の情報こそ、澄乃が会食前日に一言添えていた。店へも、小林へも、自分へも。だから現場で慌てる必要がなかった。
結局、前菜だけ別の小鉢へ差し替えてもらうことで何とか事なきを得た。だが昌親の胃のあたりには、食前から重いものが沈んだままだった。
昼食会の最中、新川専務がふと笑って言った。
「最近、久世さんのところ、少し雰囲気変わりました?」
何気ない雑談のような言い方だった。だが何を指しているのか、昌親にはすぐ分かった。受付花。見舞いの手配。会食前の細かな確認。そういう小さな何かが、すでに複数人の目に「少し違う」と映り始めている。
「そうでしょうか」
昌親は表情を崩さずに返す。
「春先は何かと落ち着きませんから」
「そうですね」
新川専務はそれ以上追及しなかった。だが、その引き方がかえって痛い。気のせいかもしれません、という形で逃がされる時、人はすでに一度きちんと見られているのだ。
午後の見舞い先では、さらに小さな失点が重なった。
差し替えた見舞い品自体は無難だった。だが包装紙の色味が少し明るすぎた。病院の受付で差し出した時、先方の夫人がほんのわずかに目を止める。表情は変わらない。だがその「一瞬」が、昌親には分かるようになってしまっていた。
以前なら、そういう一瞬に気づかないで済んだ。
あるいは、気づく前に誰かが手前で処理していた。
いまは違う。全部、自分の目の前へ届く。
三時半、柏木産業の奥さまから電話が入った。
小林が受話器を押さえ、小さく「お礼と……少し」と囁く。昌親はそのまま受けた。
『先日はきれいなお花をありがとうございました』
柔らかな声だった。
『ただ、あの白い百合、主人が少し驚いてしまって。病室ですと香りが強く感じられることもあるのねと、初めて知りましたわ』
お礼の形を取ってはいる。だが実質は、失礼があったという報告だ。
「配慮が足りませんでした」
昌親はまた頭を下げるように言う。
『いいえ、こちらこそ大げさに申し上げることではないのだけれど。ただ、久世さんのところはいつもそういうところまで行き届いていたから、少し珍しいなと思って』
その一言は、昼の新川専務の雑談よりも、はっきり胸へ刺さった。
いつもそういうところまで行き届いていた。
つまり、今は行き届いていない。
そして、その「いつも」は、自分ではなく澄乃が整えていたものだ。
電話を切ったあと、昌親はしばらく受話器を置けなかった。小林も黙っている。秘書として余計な顔色は見せない。だが、何が起きているかは分かっているはずだ。会社の中でも、きっと少しずつ広がっているのだろう。
専務は数字は強いが、外との擦り合わせはあの奥さま頼りだったのではないか。
そんなふうに。
それは昌親にとって、今まで考えたこともない種類の社内評価だった。
社長室に呼ばれたのは、夕方近くになってからだった。
義父は机の向こうで資料を閉じ、昌親を見る。年齢のぶんだけ皺は深いが、目はまだ鋭い。若い頃から「表より先に裏を整えろ」と言う人だった。表の数字や挨拶が滑らかに見えるかどうかは、その前段の調整で決まると。昌親はそれを頭では分かっていたつもりだった。つもりだっただけだと、いまはもう認めざるを得ない。
「最近、詰めが甘いな」
義父は前置きなしに言った。
短い一言なのに、重い。
「申し訳ありません」
「謝る前に、何が抜けているのか分かっているのか」
昌親は言葉に詰まる。抜けていることは分かる。だがそれを、どう言葉にすればいいのかがまだ掴めない。
「受付花、見舞い、会食先、慶弔の色味、相手方の家の空気」
義父が一つずつ言う。
「数字の会議では失点しない。だが外回りになると急に粗くなる。今まではそうじゃなかった」
その「今までは」に、昌親は奥歯を噛みしめた。
「以前は、澄乃が」
「その名前を私の前で言うなら、次に続ける言葉を考えろ」
義父の声が、少しだけ低くなる。
昌親は黙った。言い訳に聞こえるのだと、自分でも分かる。だが同時に、事実でもある。以前は澄乃が整えていた。家の中も、会社の外向きも。
義父は机へ肘をつき、しばらく沈黙したあとで言った。
「お前は、あれを家の仕事だと思っていたんだろう」
あれ、という呼び方に、昌親は胸の奥がじくりと痛んだ。
「だが現実には、会社の信用の端まで繋がっていた」
義父の視線はまっすぐだった。
「家が乱れるというのは、食卓が荒れることじゃない。こういうところに出るんだ」
その言葉は、茶会のあとの義母の苛立ちともつながっていた。家の乱れは家の中だけでは終わらない。外向きの顔、会社の印象、誰とどう繋がるか。その全部に薄く染み出していく。
「立て直せ」
義父は最後にそう言った。
「できないなら、できるようになれ」
突き放すようでいて、それは最後の猶予でもあった。ここで感情論は通じない。社内評価の崩れは、すでに数字にならないかたちで始まっている。まだ致命傷ではない。だが、放っておけば信用の薄いひびになる。
社長室を出たあと、昌親は廊下で一度立ち止まった。窓の外には夕方のビル群が見える。空は曇っていないのに、胸の内側だけが重かった。
家だけではなかった。
いま起きていることは、単なる家庭の混乱ではない。会社の信用の端にまで、もう影が伸びている。受付花一つ。見舞い品一つ。会食先の選定一つ。どれも数字にはならない。だが、そういう数字にならないものの積み重ねこそ、上に立つ人間の評価を静かに決めていく。
自分はそこを、ほとんど誰か任せにしてきたのだ。
しかもその「誰か」が、妻だから当然のように。
夜、久世家へ戻ると、家の空気は会社以上に重かった。
ダイニングのテーブルには義母が広げた手帳と、未整理の招待状の束がある。茶会の失敗以来、義母は明らかに外向きの付き合いに神経を尖らせていた。義父は新聞を開いているが、頁はほとんど進んでいない。瑠璃花は窓際の椅子へ腰かけたまま、ネイルの先を弄っている。誰も口を開いていないのに、部屋全体がぴんと張っていた。
「会社もなのね」
昌親が椅子を引いた途端、義母が言った。
「何が」
「何が、じゃないでしょう」
義母は手帳を閉じる。
「受付花の件、柏木夫人からご連絡があったわ。今日は新川さんのところでも少し妙だったそうね」
社内の出来事が、もう家の中へも戻ってきている。
その速さに、昌親は改めて息苦しくなる。家と会社は別だと思っていた時期がある。だがこの家では、もともとそこが薄かったのだ。家の顔と会社の顔が、互いに支え合い、互いに傷をつける。
「少し立て込んでいただけだ」
そう返した瞬間、義母の目が鋭くなる。
「少し、で済むと思っているからよ」
「母さん」
「会社のほうまでこうなるなんて」
義母の声には苛立ちより、焦燥が強かった。
「家庭が乱れているのがそのまま外へ出ているじゃない」
瑠璃花がそこで顔を上げた。もう我慢の限界だったのだろう。
「私のせいみたいに言わないでもらえます?」
義母がゆっくり視線を向ける。
「違うの」
「だってさっきからずっとそうじゃん」
瑠璃花は立ち上がった。
「家が乱れたとか、外に出てるとか、全部私が来たせいみたいに」
「来たせいもあるでしょう」
義母は容赦がなかった。
「少なくとも、あなたが入ってから家の中の流れはひどく悪くなったわ」
「流れって何」
「そういうところがもう無理なのよ」
義母は言った。
「何がどこまで繋がっているか、自分で見ようとしないところが」
瑠璃花の顔が赤くなる。
「見ようとしてないんじゃなくて、やること多すぎるんでしょ」
「だったら覚えなさい」
「全部一気に覚えられるわけないでしょ」
「覚える気があるなら、言い返す前に手を動かすの」
「何それ。もう使用人じゃん」
その言葉に、ダイニングの空気がまた固くなる。
義父が新聞を静かに畳んだ。
「その言葉をここで使うのか」
低い声だったが、鋭かった。
瑠璃花は一瞬だけ怯んだ。だが、もう引けないところまで来ている。
「だって本当じゃないですか」
「本当ではない」
義父はきっぱり言う。
「だが、そう感じる程度には、お前は何も見ていない」
瑠璃花は唇を噛んだ。
昌親はそのやり取りを見ながら、もう誰も自分の味方ではないような気分になる。義母は家庭の乱れを嘆き、義父は会社への影響を見ている。瑠璃花は反発するばかりで、現実の重さを引き受けるつもりがない。では自分はどうかと言えば、結局何一つ整えきれていない。
澄乃がいないことの影響は、家だけでなく会社の信用にも及んでいた。
その事実が、この家の中でもようやく共有され始めている。だが共有されたところで、もう澄乃は戻らない。代わりに、その不在だけがますます大きく輪郭を持つ。
義母がぽつりと言った。
「どうして、ここまで見えていなかったのかしら」
その言葉は誰か一人に向けたものではなかった。自分自身へも、義父へも、昌親へも、家そのものへ向けた問いだった。
どうして。
朝食が勝手に生えるわけではなかったように。
茶会の席順が自然に整うわけではなかったように。
会社の見舞い品や会食先や花の色や禁句や空気も、勝手に整っていたわけではない。
誰かが見て、覚えて、繋ぎ、先回りしていた。
その誰かを、あまりにも当然に使ってきたのだ。
瑠璃花が耐えきれず椅子を蹴るように引いた。
「もう知らない」
そう吐き捨てて、ダイニングを出ていく。ヒールの音が廊下へ荒く響き、そのまま遠ざかった。
義母は額を押さえ、義父は深く息を吐いた。昌親は何も言えない。言える立場でもない。会社でも家でも、積み重なっていた小さな失点が、いまや目に見える形で崩れ始めている。その中心にいるのに、自分はまだ立て直し方を掴めていない。
窓の外は、もう夜だった。
灯りの少ない庭を見ながら、昌親はふと思う。この家の崩れ方は、派手ではない。大声で壊れるのではなく、小さな礼儀と調整と気配りが一つずつ失われ、その結果として、会社でも家でも「前より少しずつ雑になる」。その静かな崩れ方こそが、一番痛いのかもしれないと。
そして、その静かな崩れを、澄乃はずっと一人で食い止めていたのだ。
それを知るのは、あまりにも遅かった。
遅くて、しかもまだ、自分がどれほど低く見られ始めているのかの全貌までは掴めていない。だが一つだけ、もう分かっている。
社内評価は、崩れ始めている。
数字ではなく、信用の輪郭のほうから。
そしてその原因は、単に運が悪いわけでも、人手が足りないわけでもなく、自分が「見なくていい」と思ってきた場所にあったのだということを、もう否定できなかった。
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