夫の不倫相手に「妻の座を譲れ」と言われたので、譲る代わりに全部置いていきます 〜行き先は老舗旅館。追いかけてきても、もう遅いです〜 

なつめ

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第36話 告白は静かに


 六月の夜は、雨が降りそうで降らないまま更けていった。

 昼のあいだに溜まった熱が、日が落ちたあともすぐには消えず、庭石や板廊下の木目の奥へじんわり残っている。けれど風だけはやわらかく、川のほうから湿り気を含んだ空気が細く流れてきていた。障子の桟を通るその風は冷たくはない。ただ、胸の奥まで届くような静かな涼しさがある。どこか遠くで水の音がする。昼間より深く、夜よりやわらかい、境目のない流れの音だった。

 水篝館の一日も、その夜はようやく穏やかに終わろうとしていた。

 灯籠まつりから続いていた忙しさも、満室の日の熱も、昌親との対峙が残したざらつきも、少しずつ薄まり始めている。何もかも解決したわけではない。久世家の側が完全に手を引いたとも言い切れないし、水篝館の仕事だって相変わらず忙しい。夏の手前は旅館にとって客の流れが変わる時期でもある。季節膳の新しい案内文も、記念日プランの細かな調整も、まだ途中のものはいくつもある。

 それでも、ここ数か月ずっと張っていた空気の糸が、今夜は少しだけ緩んでいた。

 大きな波を越えたあとの、息を吐ける夜だった。

 澄乃は帳場の小机に向かったまま、最後の確認票へ目を通していた。

 確認そのものはもう終わっている。見落としがないか、ただ癖で見返しているだけだと自分でも分かる。食事処は片づき、貸切風呂の札も最後の時間帯へ入れ替わり、記念日プランの甘味の反応も良かった。若い仲居が「今日のお客様、泣きそうなくらい喜んでくださいました」と報告してくれた時、澄乃は嬉しいと思うより先に、ようやく胸の奥から力が抜けるのを感じた。

 案内文も、祝い甘味も、手書きの言葉も。

 全部がちゃんと、誰かの一夜を少しだけやわらかくしたのだ。

 そう思える夜だった。

 帳場の灯りはもう一段落とされていて、机の上だけが手元を照らすように明るい。紙の白と木の色の境目がはっきり見え、湯呑みの影は丸く淡い。篠田はもう奥へ下がり、若い仲居たちもそれぞれの持ち場の締めへ散っている。表の廊下を歩く客の足音も、さっきからほとんど聞こえない。

 今夜は、自分ももう上がっていいはずだった。

 そう思いながらも、澄乃はなかなかその紙を机へ戻せなかった。

 仕事が残っているからではない。たぶん、自分の中のほうにまだ静まりきらないものがあるのだ。第35話のあの日、昌親へはっきり「譲ったのは座だけです」と言い切ってから、胸のどこかがずっと静かな熱を持っている。傷が痛むのではなく、ようやく固まった場所が、まだ自分の体に馴染みきっていないみたいな熱だ。

 終わった。

 もう戻らない。

 もう人生まで渡さない。

 そう言えたことは確かに澄乃を変えた。だが、そうして空いた場所へ、別の感情が入ってくることも止められなくなっていた。

 伊織のことだ。

 好きになってはいけない人だと思っていた。

 再生の途中で、誰かへ寄りかかるのが怖かった。役に立つことの先にしか居場所を作れなかった自分が、今さら誰かの隣を望んでしまったら、どこかでまた足場を失う気がしていた。だから、温かい飲み物を置かれるたび、重い荷物を黙って持たれるたび、客前で名前と仕事を自分へ返されるたび、その揺れに自分で蓋をしてきた。

 けれど、もう限界なのかもしれない。

 手を伸ばしていいですか、と自分から訊いたあの夜から、何かが静かに変わってしまった。

 指先に触れた手の温度を、まだ体が覚えている。

 あの時、伊織は強く握らなかった。ただ、そこにあることだけを伝える力で返してくれた。そのことが、どれほど深く胸へ残ったかを、澄乃はまだ誰にも言えていない。

「まだいたのか」

 低い声が、帳場の奥からした。

 顔を上げると、伊織が立っていた。今夜は濃い墨色の作務衣に、羽織は着ていない。腕まくりをした手首に、仕事終わりの気だるさが少しだけ残っている。昼間はきっちり整って見える髪も、いまは夜風に少し乱れたままで、それがかえってこの人の素の顔に近い気がした。

「もう終わっています」

 澄乃がそう答えると、伊織は机の上の紙と、まだ片づけていない湯呑みを見て、少しだけ目を細めた。

「終わってる人間は、そういう顔しない」

「どういう顔でしょう」

「帰る前に、もう一個何か考えようとしてる顔」

 その言い方に、澄乃は思わず小さく笑う。

「鋭いですね」

「見慣れた」

 短い返答。

 それだけなのに、胸の奥が少しだけやわらかくなる。

 伊織は帳場の前まで来て、机へ手をついた。

「外、少し出るか」

 言い方はいつも通り素っ気ないのに、その声の底に今日はいつもと少し違うものがあった。用事があるような、でも急かすわけではない空気。

 澄乃は一瞬だけ躊躇った。

 だが、それは断るための躊躇いではない。今夜の静けさの中で、この人と二人で外へ出たら、たぶん何かが変わると分かってしまったからだ。その予感があるのに、行きたいと思う自分がもう隠せない。

「はい」

 そう答えて、澄乃は紙を丁寧に重ねた。

 裏庭は、夜の湿りをたっぷり吸っていた。

 昼間は石や若葉に残っていた熱も、今はほとんど引いている。かわりに、土の匂いと川から上がる水気が、木立ちのあいだへ静かに溜まっていた。空には雲が薄くかかっていて、月は見えない。だから庭そのものは暗いのに、闇が重すぎない。石灯籠の小さな火だけが、足元と長椅子の半分をぼんやり照らしている。ここで何度か伊織と言葉を交わしてきた。疲れを止められた夜も、手を伸ばした夜も、この裏庭だった。

 長椅子へ着くと、伊織は今日は座らなかった。

 澄乃も立ったままでいる。目の前には、小さな木立ちと、その向こうから聞こえる川の音。風は静かで、夜の空気の中へ遠くの湯気の匂いが混ざっていた。

 伊織はしばらく、何も言わなかった。

 その沈黙が、いつもと少し違う重さを持っている。無言が気まずいわけではない。だが、今夜はその無言の中に、まだ言葉になっていないものがあるのが分かる。澄乃の胸も、同じものに触れたみたいに静かに速くなる。

「澄乃さん」

 やがて伊織が呼んだ。

 その声は低く、いつも通りで、けれどひどくまっすぐだった。

「はい」

 返事をすると、伊織は一度だけ息を整えるように視線を外し、それから再び澄乃を見る。

「こういうの、どう言えばいいか、正直あまり得意じゃない」

 その出だしが伊織らしくて、澄乃は少しだけ胸の力が抜ける。

 甘い前置きも、飾った言葉もない。ただ、苦手だと正直に言う。その不器用さが、この人の真面目さそのものに思えた。

「知っています」

 澄乃が小さく言うと、伊織はほんの少しだけ口元を動かした。笑ったというほどではない。けれど、その硬さが一瞬やわらいだ。

「助かる、って何度も思ってた」

 伊織は続ける。

「最初は本当にそれだった。帳場も、客の流れも、案内も、季節膳も、記念日プランも。お前がいると回る。細かいところまで届く。そういう意味で、助かってた」

 澄乃は黙って聞く。

 その言葉に嘘はない。仕事の中で積み重ねてきた事実だ。だからこそ、そこから先へ続く言葉の気配が、余計に胸へ触れる。

「でも、もう」

 伊織の声が少しだけ低くなる。

「助かるじゃ足りない」

 夜の空気が一段静まったように感じた。

「いてくれると、助かるじゃ足りない。もう、いないと困る」

 その言葉は、派手ではなかった。

 好きだと繰り返すわけでも、熱を煽るような台詞でもない。けれど、仕事の言葉として使ってきた「助かる」のその先に、自分の本気をきちんと置く告白だった。水篝館で共に働く相手としてだけではない。もっと深く、生活の呼吸の中へ入ってしまった存在として、いないと困ると告げる言葉。

 澄乃は一瞬、呼吸を忘れた。

 胸の奥へ何かが一気に流れ込んでくる。

 嬉しい。

 怖い。

 信じたい。

 信じたらだめだと、どこかでまだ思う。

 その全部が、涙になる寸前の熱を持って目の奥へ集まってくる。

 伊織は、その沈黙を焦らなかった。

「仕事の相棒だからだけじゃない」

 淡々と、でもはっきり言う。

「朝起きて、館のどこかにいると思うと落ち着く。帳場にいないと、今どこにいるか気になる。無理してないか見てしまう。何か良かったことがあると、先に顔が浮かぶ」

 そこまで言って、伊織は少しだけ目を伏せた。

「たぶん、ずっと前からそうだった」

 澄乃は、もう何も言えない。

 自分の胸の中で起きていたことが、そのまま別の声で語られている気がしたからだ。朝、目が覚めると、この人の足音を探してしまうこと。帳場で声がすると、それだけで胸が少し落ち着くこと。仕事のことを考えていても、最後にはこの人がどう思うかが気になってしまうこと。

 恋は劇的に始まるのではなく、生活の中で静かに根を張っていた。

 そのことを、二人とも、ようやく同じ言葉で見つけたのだ。

「無理に答えなくていい」

 伊織が静かに言う。

「まだ怖いのも知ってる」

 その優しさが、かえって澄乃の涙腺を決壊させそうになる。無理に答えなくていい。そう言われるからこそ、いま答えたいと思ってしまう。

 目の奥が熱い。

 喉の奥も詰まる。

 言葉にしなければ、このまま全部が胸の内で溢れてしまう気がした。

「……ずるいです」

 やっと出た声は、ひどく小さかった。

 伊織の目がわずかに揺れる。

「何が」

「そうやって、待ってくれるところが」

 澄乃は笑おうとしてうまくできない。代わりに、目の縁が熱く滲むのが分かった。

「私、怖かったんです。本当に」

 言葉が少しずつほどけていく。

「また誰かのそばで、役に立つことでしかいられなくなるんじゃないかって。必要とされなくなったら、捨てられるんじゃないかって。だから、好きになってはいけないと思っていました」

 もう涙はこらえきれなかった。

 一粒こぼれると、そのあとは早かった。声は大きくならないのに、目からだけ静かにあふれる。泣くつもりなんてなかったのに、体はもう正直だった。

「でも」

 澄乃は涙を拭わずに言う。

「ずっと、伊織さんの隣が落ち着いていました」

 伊織の顔が、静かに変わる。

「名前で呼ばれることも、疲れてる時に止めてもらうことも、何もない朝に一緒に川を見に行くことも、全部」

 息を吸うたび胸が震える。けれど、それでも言いたかった。

「私は、もう」

 澄乃は一度だけ目を閉じた。

 そして、はっきり言う。

「この人の隣を望んでいるんだって、知っていました」

 好きだという言葉を、そのまま口にするより先に出てきたのは、その本音だった。

 隣を望んでいる。

 それが、澄乃にとってはいちばん正確だった。激しい熱や、相手を独占したい欲ではなく、朝も夜も、仕事の中も外も、この人の隣が自然に感じられること。その自然さごと大事にしたいと思うこと。

「だから」

 涙をひとつ拭って、澄乃は伊織を見る。

「私も、いてほしいです」

 言葉は少ない。けれど、それで十分だった。

 伊織の喉が、かすかに動く。いつものように大きく感情を見せる人ではない。だからこそ、その一瞬の息の変化だけで、どれほど深く受け取ってくれたのかが分かってしまう。

「……そうか」

 低く、でもやわらかな声だった。

 その声を聞いた途端、澄乃は今さらみたいに胸の力が抜けた。泣くのをこらえていた糸が切れて、さらに涙が落ちる。けれど、それは苦しさの涙ではない。長いあいだ自分の中で言葉になりきれずにいたものが、ようやく同じ方向へ届いた安堵の涙だった。

「泣くほどか」

 伊織が言う。

 その言い方に少しだけ笑いが混じっていて、澄乃は涙のまま笑ってしまう。

「泣きます……」

「そうか」

 それから伊織は、ほんの少しだけ迷うような間を置いてから、右手を伸ばした。

 頬へ触れるでもなく、無理に引き寄せるでもない。ただ、前に一度、澄乃が自分から取ったあの手を、今度は「ここにある」と示す形で差し出す。

 澄乃はその手を見た。

 夜の裏庭で初めて触れた時より、今日はもう少しだけ迷いが少ない。怖くないわけではない。けれど、怖さごと一緒にいてくれる人だと、もう知っている。

 自分から手を伸ばす。

 指先が重なり、今度は前より自然に、その手を取ることができた。

 伊織は静かに握り返した。強すぎず、でも逃がさない力で。

 それだけなのに、胸の奥で何かがあたたかく根を張るのを感じる。

 恋がようやく言葉になったのだと、澄乃はその時、やっと実感した。

 好きです、と言う代わりに。

 いてほしい、と言い合うかたちで。

 仕事の流れの中で少しずつ育ってきた感情が、ようやく人の言葉として外へ出たのだ。

「……これからも」

 澄乃が小さく言う。

「怖くなる時、たぶんあります」

「あるだろうな」

「面倒です」

「知ってる」

 そのやり取りに、二人とも少しだけ笑う。

「それでも」

 澄乃は続ける。

「隣にいたいです」

 伊織はその言葉に、今度こそ迷いなく頷いた。

「俺もだ」

 それだけで十分だった。

 派手な演出もない。

 花束も、煌びやかな場所も、甘い台詞の洪水もない。

 ただ、夜の裏庭で、川の音を聞きながら、仕事終わりのままの手で触れ合っているだけだ。けれど、その静けさのほうが、澄乃には何より似合っている気がした。自分たちの恋は最初からずっとそうだったのだ。温かい飲み物が置かれ、重い荷物を黙って持たれ、名前で呼ばれ、朝の川を一緒に見に行くような、生活の静かな場所で少しずつ根を張る恋だった。

 だから、言葉になる瞬間もこうなのだろう。

 静かで、でも深くて、二度と「なかったこと」にはできない形で。

 夜風が一度、庭木を揺らした。

 川の音は変わらない。

 けれど、澄乃の中では、世界の輪郭が少しだけ変わって見えた。長いあいだ役割の中で削られてきた名前が、ようやくここで、人として呼ばれ、望まれ、隣を願われたのだと思うと、胸の奥がどうしようもなくあたたかかった。

 伊織の手の温度が、まだ掌にある。

 澄乃はその熱を逃がさないように、少しだけ指を重ねた。

 もう、好きになってはいけない人ではない。

 好きだと、言葉にしてもいい人だった。

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