魔霧の森の魔女~オバサンに純愛や世界の救済も無理です!~

七瀬美織

文字の大きさ
84 / 84
第二章 疑雲猜霧のファルザルク王国

第三十六話 己の身の内に潜むもの②

しおりを挟む

 香澄は世界を救う『鍵』だという。

 香澄は、世界の崩壊を救わなければならない役目を負っているのだと言われて、自覚も出来ないまま、責任だけ重くのしかかっている様に感じていた。

 元々そういう不安定な世界なのだったのだから、もしも自分の所為で、世界が終わったとしても、仕方ないと思えるのだろうか?
 香澄は常に自問自答を繰り返している。基本的に面倒くさい事は後回し派だというのに、一刻も早く世界を救う算段を立てなければならない。抱えたストレスは、皓輝の分身の小鳥皓輝にだって軽減しきれないだろう。

「そんな世界で……竜族は、わたしをどうしたいのでしょう?」
「そうねぇ……。竜族は、変わらず香澄を引き渡すように要求しているわ。竜族の使者に、香澄がアレクシリスの婚約者になった事を告げたけど、特段の反応はないないわ。竜騎士の半数以上が行方不明になっている事を使者に抗議しても、要領を得ないのよ」
「竜族の使者は、蘇芳さん……は竜族の長だから黄檗さんですか?」

 香澄を崇拝気味な黄檗ならば、少しは話ができるかもしれないと、一縷の望みに賭けてみた。

「それが、初めて使者として来た竜族で、何も分かっていない者だと思うわ」
「竜族に何かあったのは確実だ。メイラビアが探りを入れているが、行方不明になった竜騎士全員が、キプトの町に居るのが確認出来ている。ただ、どうも蘇芳ほか一部の竜族が、町から姿を消しているらしい……」

 香澄は、遊帆とマリシリスティアの会話を聞いて、真っ先に彼の名前の上がらないのが気になった。

藍白あいじろは、今、どうしているのでしょうか?」

 マリシリスティアと遊帆は顔を見合わせて考え込んでしまった。

 香澄は、自分が知り得た事を簡潔に説明した。亜希子と珊瑚、アレクシリスから藍白は『成人の儀』で白竜王に乗り移られてしまったようだと聞いている。

 そして、藍白は事前に対策していたらしいということだ。

「藍白が余計な行動をしたせいで、事態が悪化してるわね。ただ、藍白も『異界の悪魔族』が絡んでいるから焦ったのでしょうけど……」
「竜族のキプトの町を襲った皓輝じゃない方の『黒い霧』は、正確には『異界の悪魔族』ではなく、従い使役される者達だそうです。藍白以外は、互角に渡り合うのが精一杯だった感じなのに……」

 マリシリスティアは、両手でこめかみを揉みながら唸った。美女はどんな姿でも美女だなと、香澄が感心していると、唸っていたマリシリスティアは男前にザッと立ち上がった。

「そっか、だから藍白は『成人の儀』を受けて完全に力を使えるように藍白は成りたかったのね。香澄を守る為に……」
「そんな……賭けみたいな真似をしなくても……」
「白竜王か……。竜族のジレンマだな。竜族の成長を安定させるのに、古代竜族の魔道具の洗礼は必要だ。その起動に古代竜族の白竜王の竜核が必要不可欠だ。それが、白竜王の復活に結びつくとしても、受け入れて続いていた。白竜王の復活は、竜族にとって喜ばしい事、……慶事だからな」 

 遊帆の解説に香澄は信じられない気持ちで聞き返す。

「それは、 肉体を乗っ取られる運命の白竜にとっては災難でしかないですよね。白竜に生まれた時から決まった事? そんな事を言われたって、納得出来るはずないです。藍白は、それを知っていて、対策もしていたのですよね。だから、藍白は消えたりしていませんよね!」
「香澄ちゃん、振った相手に対して親身になりすぎるとお互い傷付いちゃうよ?」

 香澄は、そんな風に茶化されるのは心外だった。

「愛だの恋だのは、正真正銘、本物の若者にお任せします。藍白の事は、やんちゃな弟みたいに思っています。だから、助けたいんです」
「うわぁ……。それ、逆に藍白が可哀想かも……」
「えっ? そうですか?」
「女って残酷だよな……」
「遊帆が単純なだけじゃないの?」
「話が脱線してきてますよ。香澄さんと共有しなければならない、必要な話をして下さい」

 何故か、三人の会話はすぐに脱線してしまう。レンドグレイルが、一番冷静に会話のかじ取り役をしている。

「そうね。二日後の面談の注意点を話しておかないとダメだったわ。香澄、宰相のとウインズワース侯爵は、ファルザルク王族派なの。問題は、ジオヘルマン伯爵。伯爵は、三侯爵の内のフィルゼス侯爵派の貴族で、何かと女王陛下の政治を引っ掻き回すのが役目なの。香澄を『落ち人』の慣例と違えて『管理小屋』から出した件も含めて、王弟の婚約者に据えた件もね。あ、香澄が『異界の悪魔族』の眷属と契約した件は内密にしてあるから、それにもしも言及してきても無視してね」
「わかりました。他には何かありますか?」
「あとは、『落ち人』だから分からないで通してしまった方がいい」
「わかりました」

 まだ、この世界にやって来て日の浅い今だからこそ、知らないから許される事もある。香澄が事情通になって、ジオヘルマン伯爵に余計な警戒心を持たれても困った事態になりかねないということだ。

「政治の世界は、よくわかりません。でも、政治でも商売でも、交渉の裏で小さな足の引っ張り合いがある事は、当たり前だと理解しています」

 香澄は、素人に毛が生えた程度の商売人だが、様々な商談に関わってきた。その経験は香澄の財産になり、自信にもなっている。

 まだまだ、問題は山積している。香澄は、この先の展開を考えて長い溜息を吐いていた。


しおりを挟む
感想 11

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(11件)

ぽるくす
2019.01.25 ぽるくす
ネタバレ含む
2019.01.25 七瀬美織

 いつも、貴重なご感想をありがとうございます。

 ノックスフィムがショックを受ける前に、……知ってもショックを受けそうですが(笑)
 彼は勿論、遊帆と他の『茨の塔』の魔術師達の関係を掘り下げて、色々書きたいと思っています。ピシッと逝っちゃった魔道具を抱えて茫然とするノックスのお話……アリですね。本編か閑話で『ノックスフィムの魔道具磨き』が出てくるかもしれません。

 お読みいただき、ありがとうございます。

解除
ぽるくす
2019.01.24 ぽるくす

チョーお久しぶりです!
いやそこは真実をきちんと伝えないと後世の人が困るよ?

2019.01.25 七瀬美織


 いつも、貴重なご感想をありがとうございます。

 ご無沙汰しておりました……。m(_ _)m

 えっ? これは第三十一話の感想でしたよね……⁈ まだ未投稿の第三十ニ話を読んだ感想ではないですよね⁈
((((;゚Д゚))))))) と、混乱してしまいました。
 つまり、第三十二話も同じような感想を受けてしまいそうな内容だということです。ごめんなさい。

 精霊の真実を解明するのは、魔術師さん達に頑張っていただきましょう……。香澄は、それどころじゃないらしいです。

 随分お待たせしたのに、読んでいただき、ありがとうございます。



解除
ぽるくす
2018.02.28 ぽるくす
ネタバレ含む
2018.03.01 七瀬美織

 いつも、貴重なご意見とご感想をありがとうございます。
 (((o(*゚▽゚*)o)))

 作者が、アレクシリスに甘いのは、一種のフラグみたいなもので、付き合い始めが一番幸せパターンです。幸せとは、継続させるのが難しいものですから……。
 香澄の恋の行方は、まだまだまだ……まだ先が長くて、しかも展開が遅くて、ごめんなさい。
 確かに、男性陣はろくな奴がいないですね。この先も、危ない男しか出ないかもしれない……。反省してます(-_-;)

 お読みいただき、ありがとうございます。

解除

あなたにおすすめの小説

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

オマケなのに溺愛されてます

浅葱
恋愛
聖女召喚に巻き込まれ、異世界トリップしてしまった平凡OLが 異世界にて一目惚れされたり、溺愛されるお話

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。 女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。 そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。 夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。 だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……? ※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません…… ※他サイト様にも掲載始めました!

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。