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第一章 流行りますか?
第四話 前向きな叔母
しおりを挟む大学在学中、上京して寮暮らしの私を首都圏在住の母親の姉がよく訪ねてくれた。そして、いろいろと相談に乗ってもらったりした。
『自分の好きになった物を、みんなも好きになってくれるなんて、なかなか素敵じゃないの?』
叔母さんの言葉は軽い。でも、重い。
『人生、楽しく生きなきゃ損よ! 利用出来るなら利用して良いじゃない。ただし、身の丈にあった生き方をするのが大前提よ……』
叔母さんは、目の前で旦那さんに自殺されるという、なかなかハードな経験の持ち主だ。警察にも、保険金殺人や自殺幇助の疑いをかけられたが、何度も任意で事情聴取されても、逮捕される事はなかった。当然だ!
叔母さんは、『弱くて、優しくて、馬鹿な人だけど、そんな駄目なところが好きだったのよ』と、旦那さんの葬儀で泣きながら微笑んでいた。叔母さんは、優しくて強かった。
私は、卒業間際になっても就職内定をもらえなかった。だからといって、地元に帰って就職先を探すのも大変だ。
親友も、縁故就職は最後の手段にしたいと言って頑張っていたが駄目だった。
贅沢な話に思われそうだが、彼女の異母兄が後継ぎとして働いていたので、色々と気まずいからだった。
二人で悩んでいたが、叔母さんの一言で解決の糸口が見つかった。
『もし『私の好きなモノは流行る』のならば、いい商売になるでしょう? 二人で起業してみたら? 協力するよ?』
それから、私と親友は起業する事にした。二人の共通の趣味、大好きな和装リフォームのお店だ。難しい分野だが、私の好きな物でなければ意味がない。
私の祖母は、お茶の先生だった。その影響で、着物に慣れ親しんでいたし、浴衣くらいなら一人で着ることが出来る。親友は、更に着付けのお免状まで持っていた。
子供の頃よりも日本特有の伝統色と柄や生地を、今の方が、ずっと好きになっていた。祖母の着古した着物や帯から小物やバッグをリメイクして持ち歩いていた。友人に和装リフォームの職人がいて、彼女も協力してくれる事になったし、他にも職人を紹介してもらえた。
そして、親友の家には誰も着ない着物があり余っていた。まず、それらを利用する事にした。
起業には、在学中から入念な準備をして、親友の父親と私の叔母さんが協力してくれた。両親は、私に普通のOLになって欲しかったので、最初は反対した。叔母さんは、一緒にお店を手伝うと言ってくれ、両親を説得してくれた。
レトロな街並みが売りの観光地で、小さなオフィス兼店舗を借りて、和装小物や着物のリフォームと、簡単に着られるようにリメイクした着物を販売する。素晴らしきかな、インターネット通販!
新たにオリジナルの小物商品の企画も手掛けた。嘘みたいに商品は売れて、一年も経たずに商売は軌道に乗り始めた。
ある濃霧の朝、叔母さんは行方不明になった。もうすぐ、亡くなった旦那の一回忌だし、自分の誕生日の朝に失踪する理由など無いはずだ。私が送った、お誕生日おめでとうメールに、丁寧な文章で返信してくたというのに……。
三日後、警察に届け出をした。事件と事故、家出の可能性も視野に入れて調べてもらった。
失踪当日、濃霧ではっきりしないけど、駅周辺の監視カメラに叔母さんの姿が確認出来たそうだ。その後、叔母さんの足取りは途絶えてしまっていた。
私の不思議体験を、前向きな幸運に置きかえてくれた叔母さんの失踪はショックだった。
会社も順調で、従業員を増やして、ブランド化を検討しているし、販路も拡げていく予定だった。
私の『私の好きな物は流行る』は、効果絶大だった。
今や、リメイク着物どころか、世界規模でネオ着物衣料の大ブームが巻き起こっているのだった。
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