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第二章 異世界でも流行りますか?
第三話 はじめまして私
しおりを挟むまずは、冷静になろう! 冷静に!
私の役割は、異能『集合的無意識の支配』を使って『奴隷制度のない世界』を実現する事だ。
『集団的無意識の支配』は、私の異能に名前がないので(仮)に付けてみた。翔音は黒歴史を増やした! しかし、後悔はしていない!
私は自分の異能が、どれほどの能力なのか、本当は全然解っていない。
元いた世界の神様と、この世界の女神様にも一通り説明してもらったが、理解出来ない。そんな理解に苦しむ異能を、コントロールする自信なんてない。
だから、まずは自分の異能に名前を付けて、はっきりと自覚する事からはじめてみたのだ。
そして、私はこの世界を知らなければならない。実感を持って、心の底から『奴隷制度を憎み、平等で平和な世界を愛する』事から始めれば、何とかなると思っている。
前世の小学生時代、あまり好きでもないお菓子を、無理やり流行らそうとして失敗した経験がある。私の感情が、大きく作用するのは間違いないだろう。
ああ、親友は、会社のみんなは、家族は元気にしているのかな? 元いた世界の神様が、約束を守ってくれて、みんなが幸福になってくれたら嬉しいのだけれど、もう確かめられない……。
私は気持ち良く、豪華なベッドで二度寝をしていた。朝日が昇った頃に、乳母のルビスが起こしに来た。
今日は、私の五歳の誕生日。お誕生日会などは行わないが、お祝いに訪ねてくる人や、贈り物が大量に届くそうだ。
朝食の後、入浴して着替えさせられた。私は、お人形の様に、されるがままだった。乳母をはじめ、侍女のお姉様方が、せっせと私の世話を焼いてくれた。
全裸にむかれて、身体を洗われて、拭かれた。カノンの記憶では、これは当たり前の事だった。
前世の記憶が戻った私には、衝撃の体験だった。今の身体は幼女でも、羞恥心は大人と同じようにあるのだ。精神がガリガリ削られるとは、こう言う事なんだと妙に納得した。
幼い頃から、人前で全裸になる事に慣れていなければ、セレブになれないのかもしれない。
まだ、子供だからコルセットはつけない。絹の下着にパニエを何枚も重ねて身につけた。侍女たちが、一目で最高級品と分かる装飾過多なドレスやアクセサリーを準備している。私はガウンを羽織らされて、乳母に抱き上げられて、鏡の前の座面の高い椅子に座らされた。ドレスを着る前に、髪をセットするらしい。
あ、等身大のお人形がある。と、思ったら、鏡に映った私だった。
何! この美少女! か、可愛い! 五歳にして傾国レベルの可愛いさだ! もしかして、この世界は美形しかいない、の、か? あ、…………そんな訳なかった。侍女の皆様ごめんね! 失礼な事を心の中で考えたよ! 許して!
私の容姿は、毛先だけがクルクル巻毛の柔らかな金髪を、腰まで伸ばしている。今日は、両サイドに編み込みのおだんごを作ってあとは、そのまま下ろしておくらしい。
深い藍色の瞳は、虹彩に金色が散って、ラピスラズリのようだ。
小さな顔に、左右対称で絶妙に整った配置にバサバサまつ毛の大きな瞳と、高い鼻は、鼻筋が通っている。何も塗られていないのに、形の良い赤い唇に、肌は白くて滑らかだ。子供らしく手足はぷくぷくしているけれど、太っているわけではない。
はっ! 愛らしいお人形が、マヌケな表情を見せている。いけない! 口は閉じよう……!
しかし、この世界の女神様は、容姿は微調整出来ないと言っていたのに、美少女になるとは驚いた。きっと、両親は、美男美女なのだろう。
侍女たちは、せっせと私を飾り立てていった。今日は、自室のリビングでお祝いの訪問の予定が夕方までビッシリ埋まっているそうだ。
最初の訪問者は、今世の両親だった。
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