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「オリーブの実」
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最初に気づいたのは、コーヒーを飲みながら原稿を書いているときだった。
机の端に、オリーブの実 がひとつ、転がっていた。
僕はオリーブを買った覚えがないし、当然、食べる習慣もない。
第一、オリーブの実なんてどこで手に入る? 近所のスーパーにそんな洒落たものは置いていないはずだ。
「……まあ、誰かが置いたのか」
そう考え、深く気にせずゴミ箱に捨てた。
しかし、次の日。
また、机の端にオリーブの実がひとつ、転がっていた。
◇
三日目になると、僕はさすがに違和感を覚えた。
その朝、原稿を書くために机に向かうと、そこには昨日と全く同じ場所に、オリーブの実 があった。
まるで、何事もなかったかのように。
「誰かがいたずらしてるのか?」
だが、僕の部屋には他に住人はいない。
アシスタントが来るわけでもないし、鍵をかけて寝ている。
それなのに、毎日オリーブの実が一つだけ現れる。
◇
四日目。
朝起きると、オリーブの実が二つになっていた。
しかも、きちんと並べられている。
机の端に、左右対称にポツンと置かれていた。
試しに、昨日と同じようにゴミ箱に捨てた。
念のため、オリーブの実を取り出して調べてみたが、特に異常はない。
しかし、夜になり、部屋に戻ると――机の上には、またオリーブの実が二つ、揃って置かれていた。
誰が、何のために?
◇
五日目になると、オリーブの実は増え続けた。
机の上だけでなく、冷蔵庫の中、引き出しの奥、枕元、洗面台 にまで転がっている。
開けたはずのない場所に、知らないうちにオリーブの実が入り込んでいるのだ。
「……これは、さすがにおかしい」
この時点で、単なるいたずらや偶然ではないと確信した。
もし誰かが部屋に侵入していたずらしているなら、それはそれで問題だ。
僕は念のため、ドアと窓の鍵を確認し、しっかり施錠してから眠ることにした。
◇
その夜――僕は、夢を見た。
夢の中で、僕はどこかのオリーブ畑 にいた。
見渡す限り、緑色の葉を茂らせたオリーブの木が並んでいる。
そして、その木の下で、誰かが祈っていた。
姿は見えない。
だが、確かにそこに誰かがいる。
声は聞こえない。
だが、その気配は、はっきりと感じる。
誰かが、オリーブの木の下で、何かを願い続けている――。
◇
目を覚ますと、枕元にオリーブの実が五つ、整然と並んでいた。
いい加減にしろ、と僕はそれらをまとめて捨てた。
だが、それ以降もオリーブの実は増え続けた。
もはや数えるのも嫌になるほどに。
◇
困り果てた僕は、知り合いの植物学者に相談した。
持ち込んだオリーブの実を調べてもらったが、
「特に異常はない。ただのオリーブの実だ」
という答えが返ってきた。
「でも、毎日勝手に増えるんだ」
「……そういう品種ではないよ」
そりゃそうだ。
僕は、気味の悪さを感じながらも、植物学者のもとを後にした。
◇
そして、十日目。
――オリーブの実は、忽然と姿を消した。
あれほど増え続けていたのに、まるで最初からなかったかのように、どこにも見当たらない。
だが、机の上に一つだけ、かじられたオリーブの実 が残されていた。
まるで、誰かが満足して去ったかのように――。
◇
それ以来、オリーブの実が現れることはなくなった。
だが、それからしばらくの間、僕はオリーブの香りが鼻につくようになった。
特にオリーブオイルを使っているわけでもないのに。
部屋のどこにもオリーブの実はないのに。
それは、鼻についた香りなのか?
それとも、脳に焼き付いた記憶なのか?
どちらなのか、僕にはわからなかった――。
完
机の端に、オリーブの実 がひとつ、転がっていた。
僕はオリーブを買った覚えがないし、当然、食べる習慣もない。
第一、オリーブの実なんてどこで手に入る? 近所のスーパーにそんな洒落たものは置いていないはずだ。
「……まあ、誰かが置いたのか」
そう考え、深く気にせずゴミ箱に捨てた。
しかし、次の日。
また、机の端にオリーブの実がひとつ、転がっていた。
◇
三日目になると、僕はさすがに違和感を覚えた。
その朝、原稿を書くために机に向かうと、そこには昨日と全く同じ場所に、オリーブの実 があった。
まるで、何事もなかったかのように。
「誰かがいたずらしてるのか?」
だが、僕の部屋には他に住人はいない。
アシスタントが来るわけでもないし、鍵をかけて寝ている。
それなのに、毎日オリーブの実が一つだけ現れる。
◇
四日目。
朝起きると、オリーブの実が二つになっていた。
しかも、きちんと並べられている。
机の端に、左右対称にポツンと置かれていた。
試しに、昨日と同じようにゴミ箱に捨てた。
念のため、オリーブの実を取り出して調べてみたが、特に異常はない。
しかし、夜になり、部屋に戻ると――机の上には、またオリーブの実が二つ、揃って置かれていた。
誰が、何のために?
◇
五日目になると、オリーブの実は増え続けた。
机の上だけでなく、冷蔵庫の中、引き出しの奥、枕元、洗面台 にまで転がっている。
開けたはずのない場所に、知らないうちにオリーブの実が入り込んでいるのだ。
「……これは、さすがにおかしい」
この時点で、単なるいたずらや偶然ではないと確信した。
もし誰かが部屋に侵入していたずらしているなら、それはそれで問題だ。
僕は念のため、ドアと窓の鍵を確認し、しっかり施錠してから眠ることにした。
◇
その夜――僕は、夢を見た。
夢の中で、僕はどこかのオリーブ畑 にいた。
見渡す限り、緑色の葉を茂らせたオリーブの木が並んでいる。
そして、その木の下で、誰かが祈っていた。
姿は見えない。
だが、確かにそこに誰かがいる。
声は聞こえない。
だが、その気配は、はっきりと感じる。
誰かが、オリーブの木の下で、何かを願い続けている――。
◇
目を覚ますと、枕元にオリーブの実が五つ、整然と並んでいた。
いい加減にしろ、と僕はそれらをまとめて捨てた。
だが、それ以降もオリーブの実は増え続けた。
もはや数えるのも嫌になるほどに。
◇
困り果てた僕は、知り合いの植物学者に相談した。
持ち込んだオリーブの実を調べてもらったが、
「特に異常はない。ただのオリーブの実だ」
という答えが返ってきた。
「でも、毎日勝手に増えるんだ」
「……そういう品種ではないよ」
そりゃそうだ。
僕は、気味の悪さを感じながらも、植物学者のもとを後にした。
◇
そして、十日目。
――オリーブの実は、忽然と姿を消した。
あれほど増え続けていたのに、まるで最初からなかったかのように、どこにも見当たらない。
だが、机の上に一つだけ、かじられたオリーブの実 が残されていた。
まるで、誰かが満足して去ったかのように――。
◇
それ以来、オリーブの実が現れることはなくなった。
だが、それからしばらくの間、僕はオリーブの香りが鼻につくようになった。
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完
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