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UFO(unidentified falling object)

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「ベントラ~ベントラ~スペェスゥゥ…」

オカルト研究サークル部員がUFOを呼ぶ奇妙な節が夜空に響く。八月下旬の深夜。仙一郎は大学の中央棟の屋上で行われているオカ研主催のUFOを呼ぶ会に参加していた。山の高低を活かして建てられた学び舎の中央棟は一番高い場所にある五階建て、その屋上は校内で最も見晴らしの良い場所だ。ほぼ山の中なので周りは真っ暗で星が綺麗に瞬いている。

「よう!この度はご参加ありがとな早見!」

軽沢が仙一郎に声をかける。

「来たからといって別にオカ研に入部する訳じゃないからな。」

「わかってるって!でも来てくれてうれしいよ!今夜は存分にUFO呼んでってくれよな!」

仙一郎の肩をポンポンと叩き笑顔を見せる軽沢は隙あらばオカ研に入部させようと画策してくる男友達だ。

「しかし軽沢?UFOは良いとして何でバーベキューもやってるんだ?」

仙一郎が指さす先には望遠鏡や三脚に固定されたカメラなどUFO用の機材に混じってバーベキューグリルやテーブルに乗った飲み物やおつまみがずらりと並び、肉が焼ける香ばしい匂いが漂っている。

「まあいいじゃないか!ただ呼ぶだけなんてストイックすぎんだろ!それに肉の匂いに誘われてUFOが寄ってくるかもしれないぜ!」

「な訳あるか!」

そうツッコミを入れる仙一郎であったが、彼が参加したのは肉が食べられるからであったのでそれ以上、深く追求はしなかった。

UFOが現れる気配もなく小一時間も経過するとUFOそっちのけでBBQの方が宴もたけなわとなっていた。オカ研部員は軽沢と紅一点の呉睦を入れて七人。大半がオカ研の姫である彼女を中心に取り囲んで盛り上がっている。仙一郎は独り邪魔されることなく椅子に座って、金欠でご無沙汰だった肉にかぶりついて至福の時間を楽しんでいた。

「肉、うめぇ…。」

おもわずつぶやく仙一郎は、こんな旨い肉を食べてると知ったらアルマは怒るだろうなと思った。もしアルマにバーベキューのことを話したら嬉々としてついてきて易々と肉を喰いつくししまう可能性があったので今夜の件はUFOの事しか言わなかったのだ。

また心配していたのはそれだけではない。巨乳の呉睦に逢わせたら

「その豊満な乳で予の食料をたぶらかすか!この泥棒猫が!」

と喧嘩を売るかもしれなかったのでなおさら連れてこれなかった。そんな愚にもつかないことを考えていると上空から声がする。

「スィア!仙一郎!」

聞き覚えのあるその声に見上げると塔屋の上から羽根のようにふわりと舞い降りて来る人影があった。

「リザ!」

仙一郎が名前を呼ぶのとほぼ同時に白いワンピース姿の女性は座る彼に抱き付き勢い余って二人は地面に倒れこんだ。

「久しぶりデスネ!逢いたかったデスヨ!」

リザは声を弾ませ彼の頬に猫のように顔を擦り付ける。仙一郎が唖然としていると騒動に気づいて軽沢らが集まってきた。

「早見…君?その方は?」

軽沢の言葉にリザが反応する。

「ワタシは仙一郎のガールフレンドのリザデース!」

「イヤ!ただの友達!」

仙一郎は飛び起きて被せるように否定する。

「ま!そういうコトにしておきまシヨウ!皆さんコンバンワ!」

そう挨拶すると彼女は、あっという間にオカ研部員らに囲まれてしまうが、金髪碧眼のすらっとしたモデル体型の美人なのだからそれも当然である。しかしそんな彼女の正体は、アルマと敵対し仙一郎を殺しかけた吸血鬼にして太陽の光を苦にしないデイウォーカー。

情けをかけて見逃した彼女が、また現れたことに緊張感が高まる。リザはと言えばオカ研メンバーと呑気に談笑しハイタッチまで飛び出している。そして一通り挨拶を済ませると仙一郎の元に戻ってきたので彼は身構えた。

「仙一郎!ちょっと込み入ったお話があるのデ二人きりになれませんカ?」

リザがそう言うと仙一郎が答えるより先に軽沢が反応した。

「どーぞ!どーぞ!俺らはイイんでどーぞ連れてって下さい!」

「おい!軽沢!」

不満の声を上げると軽沢は肩に腕をまわし強引に引き寄せ耳元で囁く。

「いーから!俺らもそんなに野暮じゃないって!しかしお前がこんな綺麗な人と付き合ってるとは隅に置けないなぁ。」

「だから違うって!」

「分かった!分かった!ところでお前ちゃんと準備はしてあるのか?突然来ただろ?」

「何をだよ?」

「お前のことだから常備してねーだろ!これだよ!これ!」

そういうと軽沢は懐の財布から避妊具を取り出した。

「だから違うって言ってるだろ!」

仙一郎は慌てて避妊具を持つ手を押し戻す。

「仙一郎~!早くイキましょ~ネ!」

焦れたリザは仙一郎の腕をつかむと強引に引っ張った。軽沢は連れ去られる仙一郎に向かって親指を立て声援を送った。

「ちゃんと避妊はしろよ!」

「だから本当に違うんだってば!」

仙一郎はその言葉を全力で否認した。
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