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シスターどうでしょう
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9月初旬、朝から仙一郎は西桑都駅に向かっていた。もちろん美咲に会いに行くためだ。アルマには止められていたが。その日が美咲の一周忌だとニュース記事を調べて知っていたので、せめて花を手向ける位は良いだろうと思ったのだ。駅前の花屋に寄ってささやかな花束を買い店を出ると秋空の下、黒のワンピース姿のリザが路上に立っていた。
「スィア!仙一郎。」
「何でこんなとこに?」
「仙一郎のお供をしようト思いましテ!美咲サンのとこに行くんですよネ?」
「彼女の事はリザに言ってなかったと思うんだけど。」
仙一郎は、いぶかしげな表情でリザを見る。
「あええっト…うんんっト…」
明らかに挙動不審なリザは思いついたように言う。
「そう!愛!愛の力デース!仙一郎の気持ちはビビビッと感じるんデース!」
分かりやすい態度に仙一郎は思うところがあった。
「もしかしてアルマに聞いたんじゃないの?」
「ち!違いますヨ!絶対!」
あたふたと反論する様子を見て仙一郎は確信する。前々から彼はリザに、いなくなったアルマの捜索を頼んでいたのだが、消息を聞くたびに曖昧な答えを繰り返すばかりだった。その事と、家出して行くあての無いアルマがこの街で頼れる者が誰かを考え合わせれば自ずと答えは出る。
「アルマの奴、君の家に居るんじゃないの?」
「な!な!何を言ってるんデスーカ?」
「リ!ザ!」
仙一郎が強い口調で睨みつけると彼女は叱られた子犬のようにしょぼんとして観念した。
「ハイ…ごめんなさいデス。アルマはウチにいまス。今日も、画学生のことじゃ!予の忠告を無視して出かけるじゃろう。其方ボディーガード代わりに付いて行け!と、言われたので来ましタ。この事は内緒にって念を押されていましたノデ…本当にごめんなさいデス。」
仙一郎はリザが黙っていたことには、それほど怒ってはいなかった。それよりもアルマの所在がはっきりしたことに安堵した。
「まあ、それはイイよ。それより大変だろ?」
「そぉうなんデスヨ!アルマったら働きもぜずにゴロゴロと!仙一郎の苦労が分かりますヨ!」
仙一郎は彼女の言葉に苦笑いを浮かべるしかなかった。そして、リザの長々と続く愚痴がひと段落してから口をひらく。
「それでアルマのことなんだけど、彼女に…謝るから帰ってくるように言ってくれないか?」
リザはそれを聞いて微笑んだ。
「仙一郎ならそう言うと思ってましたネ!それに、これ以上アレがウチに居たら身上をつぶされてしまいますヨ!」
「ははは…」
リザの愚痴に仙一郎はまた苦笑いを浮かべた。
それから二人は連れ立って駅へと向かった。階段を下りると朝のラッシュアワーの時間もひと段落して閑散としたホームの端、美咲がいるベンチの前に制服姿の少女が立っているのが見える。黒髪をツインテールにまとめたその少女の制服は美咲と同じものだった。人の気配に気づいた彼女は二人を見ると軽く会釈をして近づいて来た。
「姉の…小田美咲のお知り合いの方ですか?」
「ええ、ちょっと縁があって…」
流石に亡くなってから知り合ったとは言えないので仙一郎は、奥歯に物が挟まったような答えをするしかない。美咲の妹、十万里はあまり気にすることなく再び頭を下げると礼を言う。
「姉のためにありがとうございます。私は妹の小田十万里といいます。」
「あ、僕は早見。早見仙一郎って言います。こちらはリザ。」
リザが軽く会釈をすると十万里は少しだけ見入った後に慌てて頭を下げた。
仙一郎はといえば、十万里と話している間ずっとこちらを見つめていた美咲が気になっていた。やはり妹のことが心配なのだろう。彼はベンチの横、屋根の支柱際にある十万里が供えたであろう花束と缶ジュースのとなりに、持ってきた花束を供えリザと共に目を閉じ手を合わせた。寸刻の後、目を開けると離れた場所にいた美咲がすぐそばに立っていて彼は身体をビクっと震わせて驚く。彼女はすまなさそうに小声で彼につぶやいた
「早見さん、妹に…十万里に色々話したいことがあるので間に入ってもらえませんか?」
仙一郎は小さくうなづくと十万里に言った。
「立ち話も何だから取りあえず座らない?」
そして十万里をベンチに座らせると彼女の右隣に座り、リザは立ったまま彼の横に添った。
十万里を挟んで反対側には彼女には見えていないが美咲が座る。並んで座る二人はやはり姉妹というべきかよく似ている。美咲ははやる気持ちを抑えて仙一郎に言う。
「あ…あの、元気にやってるか聞いて下さい!」
それを受けて仙一郎は十万里に訊ねる。
「初対面でこんなこと聞くのも何なんだけどお姉さんの件はもう大丈夫?」
「あ、気にしないで下さい。むしろ誰かと話したいなぁと思ってたとこなんです。」
十万里はそう言うと続けた。
「やっと気持ちの整理がついたというか…つけるために今日はここに…」
そう仙一郎に言うと遠くを見つめるように空を仰いだ。
「実は、ここには一度も来たことないんです。来れなかったんです。やっぱり半年位は何が起こったのか理解できなくて…落ち込んで部屋に引きこもることも多くて。何でお姉ちゃんが?とかイジメてた人達が憎くて殺してやりたいとも思いました。でも…」
そう言うと黙って聞いている仙一郎の方を見て言葉を呑む。
「ごめんなさい!私ばっかりしゃべっちゃって…」
「気にしないで。やっぱり誰かに聞いてもらうとスッキリすることもあるし、聞きたいのもあるから。」
仙一郎がうながすと十万里は軽くうなずいて続ける。
「いつまでもくよくよしてたらお姉ちゃんに怒られると思って。昔、まだ小さかった頃、弱虫の私が泣いてると言ってたんです。悲しいこと辛い事があったら泣きたくなるだろうけど、泣いてたらもっとつらく悲しくなるよ。そんな時こそ笑顔でいれば楽しくなるし嬉しくもなるって…」
「いいお姉ちゃんだね。」
そう仙一郎が言うと十万里は笑顔で応えた。
「それを思い出してからは笑顔でいようって決めたんです。今日ここに来たのも、もう大丈夫だよって伝えるためで…何となくなんですけどお姉ちゃんまだここに居るような気がして。」
「十万里…」
美咲が名を呼ぶが元よりその声は届かない。
「お姉さんにも届いてると思うよ。」
仙一郎の言葉に十万里は再び笑顔を見せた。
「あ…あと、嫌いなニンジン食べられるようになったか聞いて下さい。」
「うぇ?」
美咲が変な事を言い出したので仙一郎は思わず声を上げる。難色を示す仙一郎に美咲は手を合わせ懇願するので彼は仕方なしに訊ねる。
「ええっと嫌いなニンジンは食べられるようになったのかな?」
「なっ!なんでそんなこと知ってるんです?」
十万里は顔を真っ赤にし声を荒げて身構える。
「その…なんだ…お姉さんがよく愚痴ってたんで!心配してたんで!ほら!僕にじゃなくて天国のお姉さんに報告するみたいな?」
「お姉ちゃんったらそんなことまで…まあイイですけど。まだニンジンは大嫌いです!」
「はは…そうなんだ…」
「でも、これからは少しずつでも食べるようにするから心配しないで…お姉ちゃん…」
十万里はそう自分に言い聞かせるように言った。それからも美咲の心配性っぷりを発揮した質問は続き、仙一郎はヤケクソ気味に十万里に伝えた。朝ちゃんと起きられてるのか、から宿題はちゃんとやってるのか、まで。さすがに、下着は毎日かえてるかを聞くのは躊躇した仙一郎だったが、そこはリザが助け船を出して聞いてくれたので無事、下着は洗い立てを毎日かえていることを確認できた。
「ホントにお姉ちゃん色々としゃべりすぎ!個人情報のロウエイだよ!」
「申し訳ない。」
仙一郎が謝ると十万里は立ち上がり伸びをして言った。
「いえ!なんかスッキリしました!ありがとうございます早見さん。」
笑顔を見せる十万里の姿を見守る美咲の表情もどこか穏やかだった。
「スィア!仙一郎。」
「何でこんなとこに?」
「仙一郎のお供をしようト思いましテ!美咲サンのとこに行くんですよネ?」
「彼女の事はリザに言ってなかったと思うんだけど。」
仙一郎は、いぶかしげな表情でリザを見る。
「あええっト…うんんっト…」
明らかに挙動不審なリザは思いついたように言う。
「そう!愛!愛の力デース!仙一郎の気持ちはビビビッと感じるんデース!」
分かりやすい態度に仙一郎は思うところがあった。
「もしかしてアルマに聞いたんじゃないの?」
「ち!違いますヨ!絶対!」
あたふたと反論する様子を見て仙一郎は確信する。前々から彼はリザに、いなくなったアルマの捜索を頼んでいたのだが、消息を聞くたびに曖昧な答えを繰り返すばかりだった。その事と、家出して行くあての無いアルマがこの街で頼れる者が誰かを考え合わせれば自ずと答えは出る。
「アルマの奴、君の家に居るんじゃないの?」
「な!な!何を言ってるんデスーカ?」
「リ!ザ!」
仙一郎が強い口調で睨みつけると彼女は叱られた子犬のようにしょぼんとして観念した。
「ハイ…ごめんなさいデス。アルマはウチにいまス。今日も、画学生のことじゃ!予の忠告を無視して出かけるじゃろう。其方ボディーガード代わりに付いて行け!と、言われたので来ましタ。この事は内緒にって念を押されていましたノデ…本当にごめんなさいデス。」
仙一郎はリザが黙っていたことには、それほど怒ってはいなかった。それよりもアルマの所在がはっきりしたことに安堵した。
「まあ、それはイイよ。それより大変だろ?」
「そぉうなんデスヨ!アルマったら働きもぜずにゴロゴロと!仙一郎の苦労が分かりますヨ!」
仙一郎は彼女の言葉に苦笑いを浮かべるしかなかった。そして、リザの長々と続く愚痴がひと段落してから口をひらく。
「それでアルマのことなんだけど、彼女に…謝るから帰ってくるように言ってくれないか?」
リザはそれを聞いて微笑んだ。
「仙一郎ならそう言うと思ってましたネ!それに、これ以上アレがウチに居たら身上をつぶされてしまいますヨ!」
「ははは…」
リザの愚痴に仙一郎はまた苦笑いを浮かべた。
それから二人は連れ立って駅へと向かった。階段を下りると朝のラッシュアワーの時間もひと段落して閑散としたホームの端、美咲がいるベンチの前に制服姿の少女が立っているのが見える。黒髪をツインテールにまとめたその少女の制服は美咲と同じものだった。人の気配に気づいた彼女は二人を見ると軽く会釈をして近づいて来た。
「姉の…小田美咲のお知り合いの方ですか?」
「ええ、ちょっと縁があって…」
流石に亡くなってから知り合ったとは言えないので仙一郎は、奥歯に物が挟まったような答えをするしかない。美咲の妹、十万里はあまり気にすることなく再び頭を下げると礼を言う。
「姉のためにありがとうございます。私は妹の小田十万里といいます。」
「あ、僕は早見。早見仙一郎って言います。こちらはリザ。」
リザが軽く会釈をすると十万里は少しだけ見入った後に慌てて頭を下げた。
仙一郎はといえば、十万里と話している間ずっとこちらを見つめていた美咲が気になっていた。やはり妹のことが心配なのだろう。彼はベンチの横、屋根の支柱際にある十万里が供えたであろう花束と缶ジュースのとなりに、持ってきた花束を供えリザと共に目を閉じ手を合わせた。寸刻の後、目を開けると離れた場所にいた美咲がすぐそばに立っていて彼は身体をビクっと震わせて驚く。彼女はすまなさそうに小声で彼につぶやいた
「早見さん、妹に…十万里に色々話したいことがあるので間に入ってもらえませんか?」
仙一郎は小さくうなづくと十万里に言った。
「立ち話も何だから取りあえず座らない?」
そして十万里をベンチに座らせると彼女の右隣に座り、リザは立ったまま彼の横に添った。
十万里を挟んで反対側には彼女には見えていないが美咲が座る。並んで座る二人はやはり姉妹というべきかよく似ている。美咲ははやる気持ちを抑えて仙一郎に言う。
「あ…あの、元気にやってるか聞いて下さい!」
それを受けて仙一郎は十万里に訊ねる。
「初対面でこんなこと聞くのも何なんだけどお姉さんの件はもう大丈夫?」
「あ、気にしないで下さい。むしろ誰かと話したいなぁと思ってたとこなんです。」
十万里はそう言うと続けた。
「やっと気持ちの整理がついたというか…つけるために今日はここに…」
そう仙一郎に言うと遠くを見つめるように空を仰いだ。
「実は、ここには一度も来たことないんです。来れなかったんです。やっぱり半年位は何が起こったのか理解できなくて…落ち込んで部屋に引きこもることも多くて。何でお姉ちゃんが?とかイジメてた人達が憎くて殺してやりたいとも思いました。でも…」
そう言うと黙って聞いている仙一郎の方を見て言葉を呑む。
「ごめんなさい!私ばっかりしゃべっちゃって…」
「気にしないで。やっぱり誰かに聞いてもらうとスッキリすることもあるし、聞きたいのもあるから。」
仙一郎がうながすと十万里は軽くうなずいて続ける。
「いつまでもくよくよしてたらお姉ちゃんに怒られると思って。昔、まだ小さかった頃、弱虫の私が泣いてると言ってたんです。悲しいこと辛い事があったら泣きたくなるだろうけど、泣いてたらもっとつらく悲しくなるよ。そんな時こそ笑顔でいれば楽しくなるし嬉しくもなるって…」
「いいお姉ちゃんだね。」
そう仙一郎が言うと十万里は笑顔で応えた。
「それを思い出してからは笑顔でいようって決めたんです。今日ここに来たのも、もう大丈夫だよって伝えるためで…何となくなんですけどお姉ちゃんまだここに居るような気がして。」
「十万里…」
美咲が名を呼ぶが元よりその声は届かない。
「お姉さんにも届いてると思うよ。」
仙一郎の言葉に十万里は再び笑顔を見せた。
「あ…あと、嫌いなニンジン食べられるようになったか聞いて下さい。」
「うぇ?」
美咲が変な事を言い出したので仙一郎は思わず声を上げる。難色を示す仙一郎に美咲は手を合わせ懇願するので彼は仕方なしに訊ねる。
「ええっと嫌いなニンジンは食べられるようになったのかな?」
「なっ!なんでそんなこと知ってるんです?」
十万里は顔を真っ赤にし声を荒げて身構える。
「その…なんだ…お姉さんがよく愚痴ってたんで!心配してたんで!ほら!僕にじゃなくて天国のお姉さんに報告するみたいな?」
「お姉ちゃんったらそんなことまで…まあイイですけど。まだニンジンは大嫌いです!」
「はは…そうなんだ…」
「でも、これからは少しずつでも食べるようにするから心配しないで…お姉ちゃん…」
十万里はそう自分に言い聞かせるように言った。それからも美咲の心配性っぷりを発揮した質問は続き、仙一郎はヤケクソ気味に十万里に伝えた。朝ちゃんと起きられてるのか、から宿題はちゃんとやってるのか、まで。さすがに、下着は毎日かえてるかを聞くのは躊躇した仙一郎だったが、そこはリザが助け船を出して聞いてくれたので無事、下着は洗い立てを毎日かえていることを確認できた。
「ホントにお姉ちゃん色々としゃべりすぎ!個人情報のロウエイだよ!」
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