11 / 36
学園祭大騒ぎ その4
しおりを挟む
その後、アクセサリー部を後にした二人は他の模擬店を回っていた。エーミュが指輪のはまった左手を見つめているのでとなりの仙一郎が話しかける。
「どう?気に入ってくれたかな?安い物ですまないんだけど。」
「ホントはお兄ちゃんの指輪が欲しかったけど…うん!ありがと…」
エーミュは指輪を見つめたまま明け透けに答えるが、それを聞いてとりあえず安心した仙一郎は引き続き校内を廻る。飲食系の模擬店にアトラクション、美術大学らしいアートの展示から先ほど訪れたアクセサリー部のように制作した作品を売る店の数々。思えば今年入学した仙一郎にとっても学生になって初めての学園祭だったので、エーミュを案内するのが目的であったとはいえ自身もかなり楽しんでいた。
相変わらず見るもの見るもの興味深々なエーミュを引き連れ彫刻科の入る建物を歩いていると、仙一郎は壁に大きく「お化け屋敷」と書いてある教室の前で足が止まる。そのお化け屋敷の事はウワサで聞いたことがあった。制作してる有志の生徒は将来、映画の特殊効果の仕事を目指していてハリウッドばりのリアルな化物が怖いという話で、彼はちょっと見てみたくなる。
「ちょっとココ入ってみない?」
「え!ココはちょっと…」
仙一郎がそう聞くとエーミュは嫌そうな顔をする。
「嫌?」
「イヤというかなんというか…」
「もしかして怖い?」
「そんなことあるわけないじゃん!」
エーミュがぐずるので仙一郎はつい意地悪してみたくなる。
「そうだよね!このお化け屋敷、凄く怖いってウワサだけど怖いわけないよね!」
「そう!私がお化けなんか怖がるはずないじゃん!余裕!余裕!」
「さすが!じゃあ入ろ!」
「さすがなのでのぞむところだ!」
仙一郎の口車にまんまと乗せられたエーミュは意気揚々とお化け屋敷へと入って行った。
薄暗い教室に入るなりエーミュは仙一郎の腕にしがみつき落ち着きなく周りを見回す。部屋はまるで本物の廃屋のようになっていて、それだけでもさすがの出来といって良いものだったが、じめじめして魚の腐ったような匂いまで漂わせ暗い部屋の奥から人のうめき声にも聞こえる不気味な音を微かに流す念の入れようで臨場感は満点だった。
「な…なんだ!ぜんぜん怖くないじゃん!」
言葉とは裏腹に彼にしがみつくエーミュの腕に力が入りギュッと密着する。
「そんなに引っ付かれた歩きずらいよ。」
「こ…これは、お兄ちゃんに万が一の事がないように守ってるだけなんだから!化物が出てきたらこの私がやっつけて…」
そう言いかけたとき前方の暗闇から突然、ゾンビが唸り声を上げて飛び出してくる。
「ひっ!」
エーミュは顔を真っ青にしてその場に固まる。ゾンビは、その腐肉の匂いが漂ってきそうなほどリアルで、入口の注意書き『心臓の弱い方はご遠慮ください。』が納得のレベルであったが仙一郎は驚くほど冷静だった。というのも、本物の幽霊と遭遇し蛇の化物に襲われ、その上、吸血鬼と同居しているせいかすっかり「化物慣れ」してしまっていて、お化け屋敷の偽物程度では驚かなくなっていたからである。
「うううう…」
ゾンビがうめき声を上げゆっくり二人に近寄って来ると
「ひっにゃっ!」
変な声を上げてエーミュは、まるでユーカリの木にしがみつくコアラのように仙一郎に飛びつく。
「ちょっと!重いって!」
「大丈夫!こんなゾンビ位この私が…冥界の女神に仕える誇り高き怪物、エンプーサ様が…これしきの化物やっつけてぁぁぁひっ!」
夢見がちな思春期の空想の設定のようなエーミュの変なセリフは、後方から飛びかかってきた二体目のゾンビに遮られる。さらにゾンビにミイラ男、狼男、鬼、怨霊と次々二人に襲いかかり、そのたびにエーミュが叫び声を上げる。
「あぎゃぁ!」
「いぎゃぁぁ!」
「うぎゃぁぁぁ!」
「えぎゃぁぁぁぁ!」
「おぎゃぁぁぁぁぁ!」
仙一郎は、しがみついたままジタバタ暴れ大声を上げる彼女を抱え、フラフラヨロヨロしながらも何とか外までたどり着く。エーミュは両足をがっしりと彼の腰に絡ませて顔を胸にうずめて抱きつきすすり鳴いていた。
「ほら!もう大丈夫だから下りてくれない?」
さすがに足が笑い出していた仙一郎は彼女に懇願するが聞こえていないのか一向に離れようとしない。やがて二人の周りに人が集まり始め、好奇の目でじろじろと見られて気まずい雰囲気が流れ、何とか引きはがそうと必死になだめる。
「君は冥界の女神に仕える怪物なんだろ?こんな事でいつまでも泣いてたらエンプーサの名が泣くよ!」
「なっ!」
仙一郎が元気づけようとかけた言葉に反応して彼女は飛びのいた。じりじりと仙一郎から距離をとり廊下の壁を背に驚いたような顔をみせる。
「何で私の正体がバレて…」
「ふふふ…バカめ!私には最初からお見通しだ!」
仙一郎は、彼女の反応に合わせてわざとらしい演技を続ける。
「こっそり指輪を奪うために妖気を消す宝玉まで貸していただいたのに!」
「観念するんだな!」
「ちっ!ここは一時撤退だ!」
エーミュは後の窓を開けると上に飛び乗り飛び降りた。
「ちょっ!」」
仙一郎は慌てて駆け寄った。なぜならここは三階で飛び降りて無事でいられる高さではないからだ。窓から身を乗り出して外を見るとそこにはフワリと地面に着地して無傷で駆けていくエーミュの姿があった。
彼はとりあえず彼女の無事に胸をなで下ろした。
「どう?気に入ってくれたかな?安い物ですまないんだけど。」
「ホントはお兄ちゃんの指輪が欲しかったけど…うん!ありがと…」
エーミュは指輪を見つめたまま明け透けに答えるが、それを聞いてとりあえず安心した仙一郎は引き続き校内を廻る。飲食系の模擬店にアトラクション、美術大学らしいアートの展示から先ほど訪れたアクセサリー部のように制作した作品を売る店の数々。思えば今年入学した仙一郎にとっても学生になって初めての学園祭だったので、エーミュを案内するのが目的であったとはいえ自身もかなり楽しんでいた。
相変わらず見るもの見るもの興味深々なエーミュを引き連れ彫刻科の入る建物を歩いていると、仙一郎は壁に大きく「お化け屋敷」と書いてある教室の前で足が止まる。そのお化け屋敷の事はウワサで聞いたことがあった。制作してる有志の生徒は将来、映画の特殊効果の仕事を目指していてハリウッドばりのリアルな化物が怖いという話で、彼はちょっと見てみたくなる。
「ちょっとココ入ってみない?」
「え!ココはちょっと…」
仙一郎がそう聞くとエーミュは嫌そうな顔をする。
「嫌?」
「イヤというかなんというか…」
「もしかして怖い?」
「そんなことあるわけないじゃん!」
エーミュがぐずるので仙一郎はつい意地悪してみたくなる。
「そうだよね!このお化け屋敷、凄く怖いってウワサだけど怖いわけないよね!」
「そう!私がお化けなんか怖がるはずないじゃん!余裕!余裕!」
「さすが!じゃあ入ろ!」
「さすがなのでのぞむところだ!」
仙一郎の口車にまんまと乗せられたエーミュは意気揚々とお化け屋敷へと入って行った。
薄暗い教室に入るなりエーミュは仙一郎の腕にしがみつき落ち着きなく周りを見回す。部屋はまるで本物の廃屋のようになっていて、それだけでもさすがの出来といって良いものだったが、じめじめして魚の腐ったような匂いまで漂わせ暗い部屋の奥から人のうめき声にも聞こえる不気味な音を微かに流す念の入れようで臨場感は満点だった。
「な…なんだ!ぜんぜん怖くないじゃん!」
言葉とは裏腹に彼にしがみつくエーミュの腕に力が入りギュッと密着する。
「そんなに引っ付かれた歩きずらいよ。」
「こ…これは、お兄ちゃんに万が一の事がないように守ってるだけなんだから!化物が出てきたらこの私がやっつけて…」
そう言いかけたとき前方の暗闇から突然、ゾンビが唸り声を上げて飛び出してくる。
「ひっ!」
エーミュは顔を真っ青にしてその場に固まる。ゾンビは、その腐肉の匂いが漂ってきそうなほどリアルで、入口の注意書き『心臓の弱い方はご遠慮ください。』が納得のレベルであったが仙一郎は驚くほど冷静だった。というのも、本物の幽霊と遭遇し蛇の化物に襲われ、その上、吸血鬼と同居しているせいかすっかり「化物慣れ」してしまっていて、お化け屋敷の偽物程度では驚かなくなっていたからである。
「うううう…」
ゾンビがうめき声を上げゆっくり二人に近寄って来ると
「ひっにゃっ!」
変な声を上げてエーミュは、まるでユーカリの木にしがみつくコアラのように仙一郎に飛びつく。
「ちょっと!重いって!」
「大丈夫!こんなゾンビ位この私が…冥界の女神に仕える誇り高き怪物、エンプーサ様が…これしきの化物やっつけてぁぁぁひっ!」
夢見がちな思春期の空想の設定のようなエーミュの変なセリフは、後方から飛びかかってきた二体目のゾンビに遮られる。さらにゾンビにミイラ男、狼男、鬼、怨霊と次々二人に襲いかかり、そのたびにエーミュが叫び声を上げる。
「あぎゃぁ!」
「いぎゃぁぁ!」
「うぎゃぁぁぁ!」
「えぎゃぁぁぁぁ!」
「おぎゃぁぁぁぁぁ!」
仙一郎は、しがみついたままジタバタ暴れ大声を上げる彼女を抱え、フラフラヨロヨロしながらも何とか外までたどり着く。エーミュは両足をがっしりと彼の腰に絡ませて顔を胸にうずめて抱きつきすすり鳴いていた。
「ほら!もう大丈夫だから下りてくれない?」
さすがに足が笑い出していた仙一郎は彼女に懇願するが聞こえていないのか一向に離れようとしない。やがて二人の周りに人が集まり始め、好奇の目でじろじろと見られて気まずい雰囲気が流れ、何とか引きはがそうと必死になだめる。
「君は冥界の女神に仕える怪物なんだろ?こんな事でいつまでも泣いてたらエンプーサの名が泣くよ!」
「なっ!」
仙一郎が元気づけようとかけた言葉に反応して彼女は飛びのいた。じりじりと仙一郎から距離をとり廊下の壁を背に驚いたような顔をみせる。
「何で私の正体がバレて…」
「ふふふ…バカめ!私には最初からお見通しだ!」
仙一郎は、彼女の反応に合わせてわざとらしい演技を続ける。
「こっそり指輪を奪うために妖気を消す宝玉まで貸していただいたのに!」
「観念するんだな!」
「ちっ!ここは一時撤退だ!」
エーミュは後の窓を開けると上に飛び乗り飛び降りた。
「ちょっ!」」
仙一郎は慌てて駆け寄った。なぜならここは三階で飛び降りて無事でいられる高さではないからだ。窓から身を乗り出して外を見るとそこにはフワリと地面に着地して無傷で駆けていくエーミュの姿があった。
彼はとりあえず彼女の無事に胸をなで下ろした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる